日本心臓血管外科学会雑誌
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29 巻, 2 号
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  • 貯血を必要としない無輸血開心術
    大澤 宏, 土屋 幸治, 斎藤 博之, 古川 博史, 甲 陽平, 飯田 良直
    2000 年 29 巻 2 号 p. 63-67
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    70例の連続する待期的開心術に対して貯血式自己血輸血を行わず無輸血開心術を試み, 自己血貯血の必要性の再評価とさらに無輸血を目指すための検討を行った. 結果は, 初回手術例では無輸血率は84.5%で, 再手術例では41.7%であった. 再手術例と術前貧血例で輸血率が高かったが, 無輸血手術が十分可能であり, 初回手術で貧血を認めない症例では無輸血率88.4%で自己血貯血は必要でないと考える. さらに現在自己血貯血の適応でない貧血例こそ自己血貯血を検討すべきで, 自己血貯血の適応の見直しが必要と思われる. 希釈式自己血輸血, 回収式自己血輸血, および術中トラネキム酸大量投与は無輸血開心術に有用であった. 無輸血率のさらなる向上のためには, 再手術例における体外循環前からの回収式自己血輸血の使用, 貯血式自己血輸血の併用, 術前貧血例に対して鉄剤投与などにより術前Hbをできるだけ上げておくことなどが必要と考える.
  • 岡 藤博, 西村 和修, 植山 浩二, 岩倉 篤, 三和 千里, 羽生 道弥, 腰地 孝昭, 米田 正始
    2000 年 29 巻 2 号 p. 68-71
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    先天性下肢静脈形成異常の症例4例に対し外科的治療を行った. 症例は13~53歳で片側下肢の静脈瘤と腫脹が存在し, 同部の疼痛, 倦怠感と一部の症例では間欠性跛行を訴えていた. 動静脈造影および血管エコーにて深部静脈の開存を確認し, 異常静脈および不全交通枝を同定した. 外科的治療は異常静脈切除および不全交通枝結紮を施行した. 不全交通枝結紮は2例において追加結紮を要した. 外科治療1~2週間後に硬化療法を施行した. 術後経過は良好で静脈瘤はほぼ消退し, 疼痛, 倦怠感, 間欠性破行も改善した. 先天性下肢静脈形成異常の治療は困難とされ, 経過観察もしくは対症療法で加療されることが一般的であったが, 今回異常静脈切除, 不全交通枝結紮, 硬化療法を施行し, 患者の症状を大幅に改善することが可能であった. 術前の静脈造影ならびに血管エコーによる異常静脈の血液逆流, 不全交通枝の同定が重要であった.
  • 北野 育郎, 杉本 貴樹, 岡田 昌義
    2000 年 29 巻 2 号 p. 72-78
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    下肢閉塞性動脈疾患の重症度評価法として, Duplex scan を用い, 末梢動脈の血流速度, 流速波形を測定し, 血行再建術前後の改善度, および長期開存性の指標とすることを目的とした. さらに, 下肢/上肢血流速度・血流量比 (AVI, AFI) を測定し, APIならびに臨床症状と比較検討した. 流速波形を4型に分類し, 血行再建術の前後で, 末梢動脈の流速波形を測定したところ, 術後に流速波形の改善が認められた. APIと下肢/上肢血流速度比 (AVI) では一応の相関が認められたが, APIが0.7以上であるにもかかわらず, AVIが0.5以下であったものは, 4肢に認められた. これらの症例は, 動脈硬化が強く, 壁の石灰化を認めた症例で, このような症例では臨床症状や, 血流速度に比べ, APIが高く測定されることがいえる. AVI・AFIを Fontaine 分類別に比較してみると, それぞれの群に有意差を認め, 症状が強くなるほどAVI・AFIの減少が認められた. 血行再建術を施行した20肢で術前, 術後でのAVI, AFIを比較したところAVI, AFIともに術後に有意に改善が認められた.
  • 加藤木 利行, 饗庭 了, 茂呂 勝美, 加島 一郎, 堤 浩二, 飯野 与志美, 橋詰 賢一, 竹内 成之, 川田 志明
    2000 年 29 巻 2 号 p. 79-82
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1975年以降に当施設で施行した心外導管手術の耐術者50例の遠隔成績を検討した (弁つき導管; 26例, 弁なし導管; 24例). また同様の対象疾患に対して1984年以降に施行している, 自己組織を利用して導管を用いない手術の16例も比較検討した. 心外導管手術症例の累積生存率は20年で91.0%と良好であった. 導管狭窄による再手術の回避率は, 弁つき導管群では, 5年で87.8%, 10年で50.8%, 15年で31.2%と不良であった. 一方, 弁なし導管群では, 5年で100%, 10年で95.7%, 15年で60.4%と有意に回避率が高かったが, 10年以降の低下が明らかとなった. 心外導管として, 弁なし導管の弁つき導管に対する再手術回避率は高かったが, 長期遠隔では過半数が再手術を必要とすると予想され, 今後は導管非使用手術を積極的に採用すべきと考えた.
  • 海江 田衛, 森山 由紀則, 戸田 理一郎, 井畔 能文, 平 明
    2000 年 29 巻 2 号 p. 83-86
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は40歳女性. 心臓超音波検査で僧帽弁後尖に疣贅と僧帽弁閉鎖不全症を認め, 血液培養検査でSalmonella enteritidis が検出された. 各種抗生剤投与にもかかわらず炎症は寛解せず, 活動期の感染性心内膜炎であったが機械弁による僧帽弁置換術を施行した. 術後は胆道移行性のよい Fromoxef, Sulbactam を使用し良好な経過を得た. サルモネラ菌感染症による感染性心内膜炎は治療抵抗性のことが多く, 弁周囲へ炎症が及ぶ前に早期の外科治療が推奨される. 軽快後も胆嚢内に残存し慢性保菌者となる可能性があるので, 胆道移行性に優れた抗生剤を選択すべきである.
  • 大槻 実, 海老根 東雄, 城間 賢二, 田村 進, 横室 仁志, 隈部 俊次, 堀 泰弘, 渋谷 和俊
    2000 年 29 巻 2 号 p. 87-90
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    乳頭状弾性線維腫は, 稀な良性心臓腫瘍である. われわれは僧帽弁および腱索より発生した多発性乳頭状弾性線維腫の外科的切除を行った. 症例は59歳男性で3年前に急性心筋梗塞を発症した. 術前の経胸壁および経食道エコーでは左心室腔, 僧帽弁に付着する多発性で可動性のある球状の腫瘍を認めた. 人工心肺下に僧帽弁および腫瘍を切除し, 弁置換術を行った. 患者は退院し無症状である. 病理学的所見では計6個の腫瘍を認め, 乳頭状弾性線維腫と診断された. 乳頭状弾性線維腫は塞栓症状を引き起こすことがあり, 発見次第手術摘出が必要である.
  • 田中 常雄, 大川 育秀, 外山 真弘, 橋本 昌紀, 松本 興治
    2000 年 29 巻 2 号 p. 91-93
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈基部・弓部大動脈再建時に, 基部再建後常温で冠灌流を再開し, 心拍動下に弓部置換を行った体外循環法を報告する. 症例は, 44歳, 女性, Marfan 症候群. 突然の背部痛をきたし近医より紹介入院となった. 血管造影では, 左鎖骨下動脈末梢に entry を有する腸骨動脈までの解離があり, 大動脈基部は6cmと拡大し, III度の大動脈弁逆流がみられた. 基部再建後, 人工血管より心筋保護回路を用い37℃の血液 (300ml/min) にて冠灌流を開始した. 心拍動は自然に再開した. この後, 心筋は37℃を維持し, 体循環は, 23℃まで冷却し elephant trunk を作製した後, 弓部の3分枝を順次再建した. 冠血流遮断時間133分であった. 超低体温および心停止時間の長くなる大動脈基部・弓部の一期的再建時には, できるだけ早い時期の常温血液での冠灌流開始は, 有効であると考えられる.
  • 木地 達也, 木島 祥行, 山口 明満
    2000 年 29 巻 2 号 p. 94-97
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は46歳, 男性. 全身倦怠感・頭重感等を主訴に前医を受診. 上半身高血圧と圧差110mmHgに及ぶ上下肢血圧差を認めた. 画像診断上, 近位下行大動脈から腎動脈下腹部大動脈まで高度石灰化を伴う狭窄を認め, 一部内腔径が5mmとなっていた. 内科的治療に抵抗性を示し, 外科的治療目的で当科に紹介された. 腎機能は正常で血漿レニン活性も正常範囲内であったため, 高血圧の成因に腎性の因子は関与していないものと判断し, 低侵襲的な axillo-bifemoral bypass を施行した. 術後の上下肢血圧差は約10mmHgと著明に縮小し, 自覚症状も消失, 良好な血圧コントロールを示した. 広範囲下行大動脈に及ぶ異型大動脈縮窄症に対する術式として大動脈-大動脈間バイパスの報告例が多いが, axillo-bifemoral antery bypass も低侵襲的手術として一つの有用な選択肢になりうると考えられた.
  • 鈴木 伸一, 近藤 治郎, 井元 清隆, 戸部 道雄, 岩井 芳弘, 岡本 雅彦, 中村 光哉, 高梨 吉則, 稲山 嘉明
    2000 年 29 巻 2 号 p. 98-101
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は51歳, 男性. 1996年12月に弓部大動脈瘤の診断で, 瘤切除人工血管置換術を施行した. 瘤壁の病理診断で大動脈炎症候群を確定した. 最大径32mmの腹部大動脈瘤を合併していたが, 経過観察とした. 術後1年4カ月に左大腿部に拍動性腫瘤を認め, 血管造影検査により左浅大腿動脈瘤と診断した. 瘤より末梢の浅大腿動脈は閉塞し, 膝窩動脈より末梢には側副血行で血流は維持されていた. 腹部大動脈瘤も48mmに拡大し, 手術適応と判断した. 腹部瘤切除人工血管置換術と浅大腿動脈瘤切除術を同時施行した. 手術所見で左浅大腿動脈瘤はすでに破裂し, 仮性瘤を形成していた. 瘤壁の病理診断はいずれも動脈炎であった. 術後, ステロイド療法で炎症所見は低下し, 術後約1年のCT検査で吻合部動脈瘤および新たな動脈病変を認めず, 経過は順調である.
  • 木地 達也, 山口 明満
    2000 年 29 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Marfan 症候群に合併したAAE・ARに対し, Medtronic 社の Freestyle™ stentless valve を用いて大動脈基部置換術を施行し良好な結果を得た. 症例は61歳の女性で, AAE・ARによる急性心不全のため, 手術目的で当科に紹介された. 上行大動脈は最大径55mmの洋梨状拡大を認めた. 大動脈弁尖は逸脱が激しく自己弁温存術式を断念し, 患者の希望もあり Freestyle 弁による大動脈基部置換術を行うこととした. 自己弁の各交連部を縫縮することにより, 至適サイズの Freestyle 弁を直接弁輪に, 連続縫合で縫着できるよう工夫した. 左右の自己冠状動脈は Carrel patch 法で再建した. 大動脈遮断時間は97分であり, 従来より行われてきた Bentall 変法と比較して手術手技, 大動脈遮断時間ともに大差はなかった. Freestyle 弁による大動脈基部置換術は, とくに高齢者や抗凝固療法禁忌例に対して有用と考える.
  • 本村 禎, 田代 忠, 助廣 俊吾, 中村 克彦, 芝野 竜一, 財津 龍二, 岩橋 英彦, 木村 道生
    2000 年 29 巻 2 号 p. 106-109
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    8年間のステロイド治療歴のある全身性エリテマトーデス (SLE) 患者に発症した DeBakey I型解離性大動脈瘤に対し, 外科治療および術後早期のステロイド投与を行い良好な結果を得たので報告する. 症例は45歳女性. 突然の胸背部痛を主訴に来院し, 胸部CT等の検査の結果, 急性 DeBakey I型大動脈解離と診断した. 降圧療法ののち, 発症後2カ月にて大動脈弓部置換および弓部分枝再建を行った. 術後経過は順調でSLEの再燃もなく, 術後3年の現在も良好な日常生活を送っている.
  • 内田 直里, 石原 浩, 山崎 力, 浜石 誠, 加納 幹浩
    2000 年 29 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    MIDCABと大腸癌の一期手術を行い良好な経過を得たので報告する. 症例は81歳. 女性. 労作時胸痛と血便を主訴とし, 大腸内視鏡検査で横行結腸に出血を伴ったボールマン2型の大腸癌を認め, 冠動脈造影検査でLAD Seg 6の just proxymal から long lesion の狭窄を認めた. LADの吻合予定部位は蛇行し, 心筋内走行でないと推測されたため, MIDCAB可能と判断し, 大腸癌手術との一期手術を行った. まず左前胸部小切開で左内胸動脈をLADにバイパスし, ついで上腹部正中開腹で横行結腸切除およびリンパ節郭清を行った. 手術時間は, MIDCABに2時間10分, 大腸癌手術に1時間20分で, 計3時間30分であった. 術後翌日にICUから一般病棟に転棟し, 術後冠動脈造影検査でLITAの開存を確認した. 横行結腸切除の病理組織検査は, moderate differenciated adenocarcinoma, ss, n1, Po, Mo stage 3a であった. 術後15日目に退院となった.
  • 菅原 由至, 末田 泰二郎, 四方 裕夫, 渡橋 和政, 渡 正伸, 岡田 健志, 松浦 雄一郎
    2000 年 29 巻 2 号 p. 114-117
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 男性. 異型大動脈縮窄症, 高度左室肥大に伴う急性心不全で今回緊急入院した. 血管造影およびMRIでは, 弓部分枝がすべて閉塞し, 大動脈縮窄前後の肋間動脈からの側副血行路と右内胸動脈, 右胸背動脈の逆行性血流をうける右椎骨動脈により脳血流が供給されていた. 頭部CTでは右中大脳動脈領域の脳梗塞症を認めた. 大動脈炎症候群IV型と診断し, 上行-腹部大動脈バイパスおよび大動脈-右鎖骨下動脈バイパス術を施行した. 上行大動脈の部分遮断による大動脈圧上昇を回避するため, 腹部大動脈および右鎖骨下動脈にあらかじめ吻合したグラフトから送血を行い体外循環補助下に中枢側吻合を行った. 近赤外線酸素モニター (NIRS) を術中脳血流モニターとして用い, 周術期の脳合併症を認めなかった. 弓部分枝全閉塞と異型大動脈縮窄を伴った本症候群例の手術において, NIRSは術中脳循環モニター法として有用であった.
  • 鈴木 裕子, 高橋 幸宏, 菊池 利夫, 小林 信之, 中村 栄作
    2000 年 29 巻 2 号 p. 118-121
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈縮窄複合の乳児3例 (体重4.2, 6.1, 5.2kg) に対し, 同種血非使用にて一期的修復術を施行した. 人工心肺の初期充填量は195mlで, 体外循環中の最低ヘマトクリットは, 15, 16, 13%であった. 大動脈再建は, 脳と心臓のみの灌流, 心拍動下に行った. 大動脈再建後復温時の最低, Base excess は-9.4, -8.0, -4.9mEq/lと4.0~6.0kgの心室中隔欠損症の同種血非使用開心術に比してより低下したが, 合併症はなく術後の循環呼吸状態は良好であった. 現在, 神経学的および精神運動発達に問題は認めていない.
  • 荒木 善盛, 田嶋 一喜, 岩瀬 仁一, 阿部 知伸, 加藤 亙, 田中 啓介, 井尾 昭典, 末永 義人
    2000 年 29 巻 2 号 p. 122-125
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    循環虚脱に陥った急性広範性肺血栓塞栓症 (PTE) は突然死にいたり救命することが難しい. 今回われわれはPCPSにより救命し外科的血栓摘除が奏功した症例を経験した. 症例は66歳, 女性で, 腎動脈造影検査で入院中に急性PTEを発症しショック状態となった. 心肺蘇生を行いながらPCPSを導入し, 経皮的血栓摘除術を試みたが, カテーテルが心嚢に穿破し, 緊急開胸止血術となった. 手術ではPCPSから通常の人工心肺使用体外循環に切り替え, 損傷部位を縫合止血したのちに肺動脈本幹より直視下に血栓摘除を行った. 体外循環からは容易に離脱できた. 術後2カ月に左腎摘除術のため抗凝固療法を中止したところPTEを再発したが, 経皮的血栓摘除術と血栓溶解療法で軽快し, 再発予防のため下大静脈フィルターを留置し, 良好な結果を得た.
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