日本心臓血管外科学会雑誌
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36 巻, 2 号
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  • 渡辺 成仁, 齋藤 聡, 冨岡 秀行, 山嵜 健二, 川合 明彦, 青見 茂之, 黒澤 博身
    2007 年 36 巻 2 号 p. 65-67
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    近年,動脈硬化性疾患の増加と多様性に伴い,冠動脈バイパス(CABG)術後の弁膜症,および大血管手術が増加している.1983年12月から2005月6月までの内胸動脈(IMA)グラフトの開存した弁置換術・胸部大動脈瘤人工血管置換術の計8症例を対象とし,到達法,IMA周囲の剥離と心筋保護法の選択について,手術成績を比較検討した.全症例の病院死亡率は,13%であった.また,周術期心筋梗塞2例(25%),長期人工呼吸管理6例(75%),低拍出量症候群3例(38%),急性腎不全1例(13%),敗血症1例(13%)を認めた.到達法では,8例中7例で正中切開を施行した.心筋保護は,中等度もしくは超低体温下体外循環法を施行し,順行性および逆行性の冠灌流を併用した.IMAの剥離は,可及的に回避した.正中切開とともにグラフトを剥離せず低体温体外循環法を併用することで,心筋保護効果を期待し,良好な結果を得た.
  • 北條 浩, 尾崎 公彦, 荻原 正規, 横手 祐二, 許 俊鋭
    2007 年 36 巻 2 号 p. 68-71
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.徐々に進行する呼吸苦のため当院を受診し,胸部X線写真上肺野に異常はなかったが,血液ガスでPaO241.7mmHgと低酸素血症を認め入院した.肺血流シンチ,肺動脈造影から肺塞栓症は認めず,心エコー図で心房間短絡を認め,SaO2が立位で低下,臥位で上昇し,体位変換により右-左シャントが出現することが疑われた.心臓カテーテル検査で,仰臥位から半座位になると,過延長した大動脈基部により上方から右房が圧排され,卵円孔を通して右房から左房への右-左シャントが生じることが判明し,platypnea-orthodeoxia syndromeと診断した.卵円孔閉鎖と上行大動脈の短縮手術を行い,術後経過は良好であった.約3週間後に独歩,酸素投与なしで退院した.Platypnea-orthodeoxia syndromeはまれな疾患で,その手術治験例を経験したので報告した.
  • 中村 賢, 森田 紀代造, 黄 義浩, 木ノ内 勝士, 橋本 和弘, 黒澤 博身
    2007 年 36 巻 2 号 p. 72-75
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    動脈スイッチ手術(ASO)後の狭小大動脈弁輪を有する大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対しては冠動脈パターン,大動脈-肺動脈関係など各症例の特徴に応じた弁輪拡大法の選択が不可欠である.ASO術後遠隔期のARに対するKonno法による弁輪拡大を用いた大動脈弁置換術(AVR)の1例を報告する.症例は4歳の女児,完全大血管転位症(TGA)II型の診断により生後10日目にASOを施行した.術後4年後に発症したIII度のARに対し主肺動脈切離後,肺動脈後壁から心室中隔へKonno切開を行い,大動脈弁輪を拡大し21mm SJM弁によりAVRを施行した.術後5年の現在良好に経過している.
  • 高木 剛, 藤井 奨, 山本 信一郎
    2007 年 36 巻 2 号 p. 76-80
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.2005年5月1日吐血,下血,嚥下困難を主訴に近医を受診した.MRI検査および上部消化管内視鏡検査で胸部大動脈瘤食道穿破と診断され当科紹介となった.感染のコントロールおよび手術の侵襲度を考慮し,2期手術の施行を予定したが,食道断端の縫合不全により,3期手術とすることを余儀なくされた.胸部大動脈瘤食道穿破は救命例が少なく,治療法は確立されていないのが現状である.今回われわれは,これまで報告のなかった2期手術を選択しての食道縫合不全による縦隔炎の発生に対して,適切な治療方針を選択することにより良好な結果を得ることができた1症例を経験した.同疾患に対する治療方法を検討するうえにも,示唆に富む症例と思われたので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 中村 賢, 益子 健男, 石井 信一, 長沼 宏邦, 橋本 和弘
    2007 年 36 巻 2 号 p. 81-84
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.21年前にパーキンソン病を指摘され,以後抗パーキンソン病薬により治療していた.2003年7月より夜間頻回に起こる呼吸困難のため精査目的で入院となった.心エコー上,僧帽弁,大動脈弁に中等度以上の逆流を認めた.手術は2弁置換術予定となった.パーキンソン病患者における周術期抗パーキンソン病薬の中止は重篤な合併症,とくに悪性症候群を惹起する可能性があったため,術前より詳細な抗パーキンソン病薬のコントロールを行った.術後3日目に悪性症候群類似症状を呈したが,薬剤の調整により症状が進行することなく経過した.
  • 二神 大介, 吉田 英生, 海老島 宏典, 徳永 宜之, 柚木 継二, 久持 邦和, 大庭 治
    2007 年 36 巻 2 号 p. 85-87
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    右心系感染性心内膜炎の発生頻度は全感染性心内膜炎の5~10%と低く,左心系に比して抗生剤の反応は良好で,内科的に70%は治癒しうるとされている.そのため,外科的介入の適応や時期などに関してはまだまだ議論のあるところである.症例は26歳,女性.術前に播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した三尖弁感染性心内膜炎を発症した.既往歴として先天性心疾患や歯科治療の既往は認められなかった.心臓超音波検査で三尖弁前尖に巨大な疣贅を認め,中等度の三尖弁逆流を認めた.前尖の一部とともに疣贅を切除し,三尖弁形成術・弁輪縫縮術を施行した.抗生剤の点滴静注を4週間つづけ,術後経過良好であった.手術適応とその時期について若干の文献的考察とともに報告する.
  • 金光 仁志, 吉鷹 秀範, 杭ノ瀬 昌彦, 津島 義正, 南 一司, 都津川 敏範, 小澤 優道
    2007 年 36 巻 2 号 p. 88-91
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    右鎖骨下動脈起始異常は右鎖骨下動脈が大動脈弓の第4分枝として胸部下行大動脈から分岐する発生異常である.われわれは2例の右鎖骨下動脈起始異常を伴った胸部大動脈瘤に対して弓部大動脈全置換術を施行した.2例とも右鎖骨下動脈は大動脈弓の第4分枝として左鎖骨下動脈より末梢から分岐しており,起始部の拡張を認め,食道・気管の背側を横走していた.手術は低体温循環停止,選択的脳分離体外循環下に右鎖骨下動脈再建を含む弓部大動脈全置換術を施行した.右鎖骨下動脈は気管前方経路で再建した.術後経過は良好で,とくに合併症もなく独歩退院した.
  • 汐口 壮一, 入江 嘉仁, 権 重好, 田中 恒有, 今関 隆雄
    2007 年 36 巻 2 号 p. 92-95
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    冠動脈病変,腹部大動脈瘤,胆管癌を合併した希な症例を経験したので報告する.症例は65歳,男性.平成17年11月下旬より黄疸を認め,精査により下部胆管癌,腹部大動脈瘤(70mm),冠動脈病変(重症2枝)と診断された.拡大手術を回避するため二期的手術を選択,初回に心拍動下冠動脈バイパス術(LITA to LAD,Ao-SVG to 4PD),腹部大動脈瘤は小切開法により人工血管置換術を施行した.心血管系術後21日目に当院外科に転科となり幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(Child変法)を施行した.術後,大きな合併症はなく,経過良好であった.二期的手術の有効性をもとに,心血管系病変,腹部悪性病変を合併した症例の治療戦略に関し,文献的考察をふまえ検討する.
  • 北條 浩, 尾崎 公彦, 荻原 正規, 横手 祐二, 許 俊鋭
    2007 年 36 巻 2 号 p. 96-99
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.5年前より胸部レントゲンで異常陰影を指摘されていたが,症状がないためにとくに精査もせず経過観察されていた.朝排尿時,突然の意識消失発作のため,緊急搬送となった.来院時,血圧低下を認め,心エコー図で心嚢液の貯留を認め,心タンポナーデによる心原性ショックと診断した.心エコー図,胸部CT検査で左肺動脈前面に位置する最大径約50mmの腫瘤が認められ,冠動脈造影では円錐動脈が流入血管となっている冠動脈瘤と診断した.冠動脈瘤破裂による心タンポナーデを疑い,緊急手術を施行した.術中に冠動脈肺動脈瘻も認め,冠動脈肺動脈瘻閉鎖,冠動脈瘤縫縮術を施行した.術後経過は順調で,術後の冠動脈造影でも問題なく,第18病日に退院とした.
  • 半奇静脈前方転位および半奇静脈-肝静脈直接吻合
    中田 朋宏, 猪飼 秋夫, 藤本 欣史, 太田 教隆, 村田 眞哉, 坂本 喜三郎
    2007 年 36 巻 2 号 p. 100-104
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は1歳7ヵ月,女児,診断は多脾症候群,単心房,右室系単心室,左側上大静脈,下大静脈(IVC)欠損.Total cavopulmonary shunt (TCPS)術後に両側肺動静脈瘻(PAVF)が発生し,同時に,拡張した半奇静脈と心房の間で圧迫されて,左肺静脈狭窄(PVO)も合併していた.PVOの解除を目的として半奇静脈前方転位を行い,両側肺循環への肝静脈血流の付与を目的として半奇静脈-肝静脈直接吻合を行う完全右心バイパスを施行した.術後9ヵ月のカテーテル検査でPAVFは消失しており,また,通路狭窄もなかった.本術式の利点は,1)半奇静脈経由で肝静脈血を肺に流すことで左右均等な血流分布が構築できること,2)半奇静脈の拡張によるPVOが解除できること,3)自己組織の成長も期待できることであり,IVC欠損の単心室群に適応可能な術式と考えられた.
  • 濱路 政嗣, 河野 智, 松田 光彦
    2007 年 36 巻 2 号 p. 105-107
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤が下大静脈に穿破し,動静脈瘻を形成した報告は散見されるが,腹部大動脈瘤に並存した下大静脈破裂の報告はみられない.われわれは腹部大動脈瘤破裂の疑いで緊急手術を施行したところ,腹部大動脈瘤に明らかな破裂部位は認めず,下大静脈破裂による出血性ショックであった症例を経験した.症例は79歳,女性.下腹部痛により発症し,浣腸で症状は軽快したが,下腹部痛が再燃した.CT上,腹部大動脈瘤と後腹膜血腫を認めた.腹部大動脈瘤破裂の診断で開腹し,腹部大動脈を遮断したが循環動態は改善しなかった.また,瘤を切開したが破裂部位はなく,下大静脈前面に約2cmの破裂を認め,ウマ心膜パッチで閉鎖した.同時に腹部大動脈瘤は人工血管で置換した.術後経過は良好であった.
  • 松山 重文, 川内 義人, 土井 一義, 濱田 正勝
    2007 年 36 巻 2 号 p. 108-111
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.1995年12月,急性大動脈解離(Stanford A型)のため上行・弓部大動脈人工血管置換術を施行された.2004年10月ころより心不全症状が出現し,近医へ入院し精査をうけたところ,computed tomography(CT),経食道心エコーで大動脈基部の再解離,大動脈弁閉鎖不全症(AR)III°を認め,外科的治療を目的に当院紹介となった.Freestyle#25,full root法により大動脈基部置換術を施行した.術中,無冠尖を主座とした大動脈基部に偽腔の拡大,内膜の一部欠損を認めた.術後,再開胸止血術を要したが,術後23日目に軽快退院となった.肉眼所見よりgeratin-resorcin-formalin(GRF)glueの使用が再解離の発生に関与しているのではないかと思われた.また,Freestyle弁によるfull root法は術後の血行動態の維持に有用であるとともに,抗凝固療法を必要としないため残存解離の存在する本症例では有用な方法だと思われた.
  • 村上 達哉, 加藤 裕貴, 牧野 裕
    2007 年 36 巻 2 号 p. 112-116
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Porcelain aortaを伴った大動脈弁狭窄症に対しballoon occlusionを併用した超低体温循環停止下大動脈弁置換術を施行し良好な結果を得た.症例は78歳,女性,慢性透析患者.透析時血圧低下をきたし心エコーで大動脈弁狭窄症と診断され大動脈弁置換術の適応となった.胸部CTで上行大動脈にほぼ全周性に著明な石灰化を認め大動脈遮断は不可能であった.MRAで左鎖骨下動脈の高度狭窄も認めた.手術は上行大動脈小弯側から送血可能で右房脱血により人工心肺を開始,左椎骨動脈血流維持のため左腋窩動脈から脳分離体外循環も併用した.全身冷却し直腸温24℃で2分間循環停止とし大動脈横切開,上行大動脈内にocclusion balloonを挿入した.半流量で体外循環を再開し生体弁による大動脈弁置換を行った.19℃で再度循環停止としballoonを除去,大動脈切開部のendarterectomyを行い馬心膜により断端形成したのち,大動脈を閉鎖した.循環を再開,加温し人工心肺を終了した.人工心肺からの離脱は容易で術後脳障害なく経過良好であった.本術式は超低体温循環停止法単独に比べ循環停止時間を短縮できる点で安全であり,大動脈切開線のendarterectomy,異種心膜による断端形成も止血に有用な方法であった.
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