日本心臓血管外科学会雑誌
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28 巻 , 3 号
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  • 矢野 浩巳, 石丸 新, 小櫃 由樹生
    1999 年 28 巻 3 号 p. 141-145
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    待機手術を行った腎動脈下腹部大動脈瘤50例を対象として, その手術中に腹部大動脈の遮断前後で下腸間膜動脈 (IMA) の断端圧測定を行い, 各動脈支配領域の血行動態変化を解析した. 大動脈血流の遮断前におけるIMA断端圧体血圧比は, その遮断後に有意に減少した (p<0.0001). 減少率は平均約11%であり, 血圧比からみてIMAへの側副血行路は約89%を上腸間膜動脈 (SMA) が占めており, その他は内腸骨動脈 (IIA) を中心とした骨盤領域からの血行路と考えられた. IMA断端圧体血圧比の減少率がもっとも大きかった例で術後虚血性イレウスを生じた. この例ではSMAからの側副血行路が乏しく, IIAの温存も不十分であったためと思われた. このことよりIMA断端圧を大動脈遮断前後に測定することが腸管虚血予知の指標になりえると考えられた. また, IMAを再建せずに腸管虚血を起こさなかった38例の検討では, IMA断端圧体血圧比で0.6前後が腸管虚血予防のための安全域であり, この値を保つようにIMAの再建, IIAの温存を行うべきであると考えられた.
  • 湯田 敏行, 松元 仁久, 上野 隆幸, 久 容輔, 戸田 理一郎
    1999 年 28 巻 3 号 p. 146-150
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1991年1月から1997年12月末までに経験した孤立性腸骨動脈瘤8例 (非破裂5例, 破裂3例) について検討した. 全例男性, 平均年齢は69.6歳であった. 同期間の腹部大動脈瘤 (AAA) 症例は86例でAAAに対する相対頻度は9.3%であった. 動脈瘤の部位は総腸骨動脈瘤6例, 総腸骨動脈瘤と内腸骨動脈瘤合併2例であった. 瘤の最大横径の平均は非破裂例で39.1±10.9mm, 破裂例で71.7±20.2mmと破裂例で有意に大きかった (p<0.05). 手術は動脈瘤を処理し, 7例で人工血管移植, 1例では外腸骨動脈と総腸骨動脈を端端吻合した. 合併手術として破裂例の1例で人工肛門造設・Hartmann 手術を実施した. 破裂例3例中1例を多臓器不全で失ったが, 他は軽快退院した. AAAに比して腫瘤を触知することが少なく診断が遅れがちで, 破裂して初めて診断されることもまれでない. 破裂後の成績も不満足であり破裂前の診断と早期手術が望まれる.
  • 軽部 義久, 小菅 宇之, 山崎 一也, 坂本 哲, 浦中 康子, 市川 由紀夫, 安達 隆二, 相馬 民太郎
    1999 年 28 巻 3 号 p. 151-157
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    体外循環におけるウリナスタチンの抗炎症性サイトカイン効果と臓器障害軽減効果を検討した. 冠状動脈バイパス術施行33例をウリナスタチン投与群 (UTI群, n=16) と非投与群 (Control 群, n=17) に分け比較した. 術中術後にインターロイキン6 (IL-6)・8(IL-8), 顆粒球エラスターゼ(PMNE) を測定した. また肝臓 (GOT, GPT, T-Bil), 腎臓 (BUN, Cr), 肺 (PaO2/FIO2) の術後機能障害を検討した. 大動脈遮断解除5分後IL-8 (25.5±12.8pg/dl vs. 47.8±38.9pg/dl), 経過中最高IL-8 (28.6±13.2pg/dl vs. 58.4±40.0pg/dl), 術後BUN, Crが Control 群に比べてUTI群で有意に低値を示した (p<0.05). IL-8, PMNEがBUN, Crと正の相関, IL-8とPaO2/FIO2が負の相関を認めた. ウリナスタチンの抗IL-8効果とIL-8, PMNEの抑制による術後腎臓, 肺機能障害予防の可能性が示唆された.
  • 市原 利彦, 石田 英樹, 朝倉 貞二, 酒井 喜正, 保浦 賢三
    1999 年 28 巻 3 号 p. 158-162
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Noonan 症候群は比較的希な疾患で肺動脈狭窄 (以下PS) を伴わず, 動脈管開存症 (以下PDA) を伴うものは極めて希である. 今回著者らは, 37歳女性の Noonan 症候群のPDAおよび心室中隔欠損 (以下VSD) の根治手術例を経験した. 本症候群に肥大型心筋症 (以下HCM) もあると報告されているが, 自験例は拡張型の様相をした心筋症を呈し, 典型的なHCMは認められなかった. 術後の心不全の軽減や臨床症状の改善は明らかには認められなかったが易感染性は消失した. 本例の根治手術の効果の不確かさは心筋症の関与を示唆し, 手術適応についての検討と今後の観察が必要であると思われた.
  • 石川 和徳, 星野 俊一, 岩谷 文夫, 小野 隆志, 佐藤 晃一, 三沢 幸辰
    1999 年 28 巻 3 号 p. 163-166
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1歳8カ月男児, 肺高血圧を呈する一側肺無形成に合併した心室中隔欠損 (VSD), 心房中隔欠損 (ASD) の幼児に対し, 側方開胸にて心内修復術を施行した1症例を報告する. 患児は在胎40週, 3,596g, 帝王切開にて出生した. 生後4カ月時に, 胸部X線上右肺陰影の欠如, 縦隔陰影の右方偏位を認め, 胸部CT上右肺の構造は欠損しており, 右肺無形成と診断された. 心エコー検査上, それぞれ径5mmのVSD, ASDを認め, 推定右心室圧は左心室圧の50~60%であった. 1歳7カ月時に心臓カテーテル検査を施行し, 手術適応となった. 右側肺無形成のために心臓全体が著しく右方偏位しており, 右第4肋間開胸を選択することで正中切開と同様の視野を得た. VSD, ASDとも直接閉鎖し, 術後経過は良好であった.
  • 尾形 敏郎, 金子 達夫, 大林 民幸, 佐藤 泰史, 村井 則之, 垣 伸明, 森下 靖雄
    1999 年 28 巻 3 号 p. 167-169
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性で, ショックを伴う喀血を主訴に来院した. 保存的治療で軽快したが, その後の精査で下行大動脈瘤の左肺内穿破と診断され, 下行大動脈人工血管置換術を施行した. 術中所見からは, 動脈硬化で脆弱となった動脈壁が血圧負荷により破裂した, 特発性下行大動脈破裂が疑われた. さらに, 破裂後仮性瘤を形成し肺内穿破したと推察された. 手術に際しては, 癒着した仮性瘤と肺に操作を加えなかったことで術後肺合併症や感染症を予防でき, 治癒せしめた. 特発性大動脈破裂は稀であり, 特殊な経過をとった症例を経験したことから若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 水元 亨, 平岩 卓根, 木下 肇彦, 藤井 英樹
    1999 年 28 巻 3 号 p. 170-173
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性. 腹痛を主訴に来院. また来院直後より胸痛が出現しECG所見では, V1-3誘導でST上昇が認められた. 緊急CTおよびCAG施行した結果, 急性心筋梗塞を合併した腹部大動脈瘤 (AAA) 破裂と診断し緊急手術を施行した. 手術は体外循環下に冠状動脈バイパス術 (CABG) を行った後, 補助循環中にAAA切除, 人工血管 (Yグラフト) 置換を行った. また慢性腎不全患者であったため術中透析を行った. 本術式は体外循環中にAAA手術を行うため大動脈周囲の操作は極めて容易であり, また心配された出血のコントロールも容易であったため本症例のように心機能低下を伴う虚血性心疾患 (IHD) とAAA合併例には有用な術式と考えられた.
  • 小野口 勝久, 佐々木 達海, 橋本 和弘, 蜂谷 貴, 高倉 充宏, 長堀 隆一, 竹内 成之
    1999 年 28 巻 3 号 p. 174-177
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    スタンフォードA型の解離性大動脈瘤に対して発症7日目に上行大動脈人工血管置換術を施行した. 術後, 経口食摂取を開始したところイレウス状態に陥り, 1カ月間の禁食の後の再開でも再度イレウス症状から Enterococcus faecium による敗血症を来した. 消化管造影, 内視鏡検査などから消化管の器質的障害は否定的であったが, 血管造影, CT検査などでは abdominal angina の可能性を否定できず, 開腹手術を施行した. 手術は, 腹部大動脈の開窓術, および大動脈-上腸間膜動脈バイパス作成術を施行した. 術後はイレウス症状の再発もなく, 無事退院することができた.
  • 恒元 秀夫, 野原 秀公
    1999 年 28 巻 3 号 p. 178-180
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠状動脈狭窄を合併した狭小弁輪による大動脈弁狭窄症の高齢者女性に対して冠状動脈バイパス術, CarboMedics supra-annular aortic valve, いわゆる“Top Hat Valve”を用いた大動脈弁置換術を施行した1例を経験した. 症例は79歳女性, 意識消失発作, 胸痛の精査の結果, 冠状動脈狭窄, 高度石灰化を伴った狭小弁輪による大動脈弁狭窄症と診断された. 手術は胸骨正中切開にて, “Top Hat Valve” 19mmによる大動脈弁置換術, 左内胸動脈による左前下行枝へのバイパス手術を一期的に施行した. 術後人工弁圧較差は23.6mmHgであり良好であった. 大動脈弁輪拡大術と比較し, この人工弁による大動脈弁置換術は, 手術時間の短縮, 手術侵襲の軽減が可能であり, 高齢者等 high risk 症例に対し, 手術術式の一つの選択肢になりうると思われた.
  • 山田 卓史, 山口 敬史, 高木 正剛, 釘宮 敏定
    1999 年 28 巻 3 号 p. 181-184
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞後の左室自由壁破裂は最も予後不良の合併症である. この中でも特に救命困難とされる blow out 型破裂例に, 外科治療を行い救命に成功した. 症例は68歳男性で, 広範囲前壁心筋梗塞で緊急PTCR施行後ショック状態となり, 心停止を来したが, 何とか蘇生に成功し当科に転送された. UCG, CTにて心破裂と診断され緊急手術を施行した. 手術はまず大腿動静脈バイパス (FF) による部分体外循環を確立した後に, 胸骨正中切開で心臓に到達し, 破裂部を含めた梗塞壊死部を切除後, フェルトサンドウィッチ法で補強し縫縮した. 術後経過は良好で, 大きな合併症も認めず, 術後心カテーテル検査でも, 心係数2.91l/min/m2と問題なく, NYHAI度の状態で軽快退院した. blow out 型心破裂例では, 経皮的心肺補助システム (PCPS) あるいはFFにより体外循環を確立した後に手術を施行することが, 救命率の向上に有効と考えられた.
  • 古澤 武彦, 篠原 正典, 中野 博文, 篭島 充, 宮下 保男, 武居 久美子, 天野 純
    1999 年 28 巻 3 号 p. 185-187
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 男性. CABG後グラフト狭窄に対する血行再建として, MIDCABとステントによる Hybrid Revascularization を施行した. 冠血流を供給する右SVGが正中創の直下に存在したが本法により安全にアプローチすることができた. インターベンション後に左胸腔内出血があったと思われるが, 保存的に治療した. インターベンション時には一時的にヘパリン化しその後も強力な抗凝固療法が続くので, 手術からの期間をおくか, 出血のモニターとして胸腔ドレーンを留置しておいたほうがよいと思われた. 本法は再手術, ハイリスク症例には有用と考えられた.
  • 滝口 信, 原田 順和, 竹内 敬昌
    1999 年 28 巻 3 号 p. 188-191
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    われわれはこれまでに総動脈幹遺残症 (TrA) 5例の外科治療を経験した. 手術時体重は2.4~5.71 (平均3.47)kg, 手術時日齢は6~133 (平均38.2日) であった. TrAは全例 Collet & Edwards 分類のI型であった. 4例に Barbero-Marcial 法を施行した. 術前の総動脈幹弁閉鎖不全症 (TrVR) が心エコーにて moderate で播種性血管内凝固症 (DIC) を合併したショック状態に陥った1例を急性期に失った. 術前の心エコーでTrVRが mild 以下の症例では手術死亡はなかった. TrVRが moderate 以上でかつ狭窄症を伴っていた1例は同種大動脈弁を用いた弁置換術を施行し, その後の人工弁置換術までのつなぎ役として良好な役割を担った. 弁修復術を施行しなかった症例に対しては, 術後遠隔期のTrVRの発症に留意した厳重な経過観察が必要である.
  • 黄 義浩, 大久保 正, 星野 良平, 神垣 佳幸, 大内 真吾
    1999 年 28 巻 3 号 p. 192-196
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性. 以前より心雑音を指摘されていた. 4年前に不整脈が出現し, 冠動脈造影術を施行したところ両冠動脈肺動脈瘻が認められた. その後2回の coil embolization を施行したが症状の改善が得られず, また瘻の再疎通, 拡大も見られたため, 手術を施行した. 瘻は主肺動脈と右室流出路上の叢状血管腫に交通しており, 瘻起始部結紮, および主肺動脈において瘻孔の直接閉鎖術を行い, 初めて症状の改善を得ることができた.
  • 山本 哲也, 河内 寛治, 浜田 良宏, 中田 達広, 加洲 保明, 高橋 広, 渡部 祐司
    1999 年 28 巻 3 号 p. 197-200
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    81歳高齢者の心筋梗塞後に発症した血栓を伴う左室瘤に対し左室瘤切除術と右冠動脈バイパス術を施行した. 術前検査では左冠動脈 (#7) に99%, 右冠動脈 (#1) に90%の狭窄があり, 前壁から心尖部にかけて左室瘤を認めた. 狭心症状が改善せず, さらに瘤壁に血栓を認めたため手術を施行した. 手術は体外循環下で順行性と持続的逆行性心筋保護を併用した. 左室瘤内には比較的新鮮な血栓を認め, 血栓除去と瘤切除を行いフェルトストリップを用い直接縫合閉鎖した. 切除範囲は左前下行枝を含んでおり, SVGによる右冠動脈バイパス術 (#3) のみ行った. 体外循環からの離脱は容易で術後経過は良好であった. 本邦における80歳以上の高齢者に対する左室瘤切除術の文献的報告例はなく, 本症例が最高齢と考えられるため報告した.
  • 松元 仁久, 湯田 敏行, 上野 隆幸, 久 容輔, 森山 由紀則, 平 明
    1999 年 28 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデスでの大血管病変の報告は稀である. 本疾患で23年の治療歴を持ち, 腹部大動脈瘤を発症した1例を経験した. 症例は49歳女性. 26歳時に全身性エリテマトーデスと診断され, ステロイド療法を開始され, 28歳時にループス腎炎と診断された. 内科外来通院中に腹部大動脈瘤を指摘され, 手術を行った. 動脈瘤は腎下型で最大径7cm, 長径8cm, 周囲との癒着はなかった. 動脈瘤壁は薄く, 一部石灰化し, 厚い壁在血栓を伴っていた. 直型人工血管で置換し, 術後経過良好で現在復職している. 動脈瘤壁の病理診断は動脈硬化性大動脈瘤であった. 全身性エリテマトーデス患者は炎症性疾患であるが, 動脈硬化が進行しやすいという側面も持っており, 比較的若年で動脈硬化性の大動脈疾患を発症する可能性があり, この点を念頭に置いた経過観察が必要である.
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