日本心臓血管外科学会雑誌
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41 巻, 6 号
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巻頭言
症例報告
  • 山部 剛史, 近藤 俊一, 廣田 潤, 横山 斉
    2012 年 41 巻 6 号 p. 285-288
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/04
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.12年前に食道癌で胸骨後食道再建術を施行されている.今回,左脳梗塞と持続する発熱,炎症反応高値に対して心エコー検査を施行したところ,巨大な左房粘液腫を認めた.胸骨正中切開によるアプローチは不可能と判断し,右第4肋間小開胸による低侵襲心臓手術を施行し,術後経過は合併症なく良好であった.本法は胸骨再正中切開に伴うリスクがなく,かつ低侵襲であり再手術にも有用な方法であると考える.
  • 山下 慶之, 隈 宗晴, 郡谷 篤史, 福永 亮大, 岡崎 仁
    2012 年 41 巻 6 号 p. 289-292
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/04
    ジャーナル フリー
    症例は52歳女性.2年前に高度進行盲腸癌で腸切除術が施行された.また腹膜播種,肝転移,肺転移に対しては外来化学療法を施行され,経過観察中であった.2011年12月,急に右上肢痛が出現し,急性動脈閉塞症の診断で当院へ紹介,CTでは右上腕動脈の血栓性閉塞,左肺門部の肺転移,多発性肝転移を認めた.局麻下に血栓除去術を施行し,上肢の血行障害は改善した.摘出した白色血栓の一部には癌細胞が混在しており,肺転移の血管浸潤からの塞栓症と考えられた.
  • 井内 幹人, 庄村 遊, 那須 通寛, 岡田 行功
    2012 年 41 巻 6 号 p. 293-295
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/04
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病は,動脈狭窄,動脈瘤,動脈瘤破裂,動静脈奇形などのさまざまな血管病変を合併するといわれている.そのなかでも動脈瘤の発生はさらに稀であり,文献的な報告も少ない.今回われわれはvon Recklinghausen病に伴う後脛骨動脈瘤破裂例を経験したので報告する.症例は53歳女性で,幼少時から頭部・全身の皮膚に多数の皮下結節を認めていたものの放置し,術前にはvon Recklinghausen病と診断されていなかった.数年前から右足内踝部に軽度の腫脹を認めていたが,入院前日から右足内踝部の腫脹が急激に増大し,痛みおよび痺れも伴ってきたため紹介受診した.エコー上,後脛骨動脈部分に内部に血流シグナルを伴う腫瘤影を認めた,後脛骨動脈瘤破裂と診断し,緊急手術を行った.手術はtourniquet techniqueにより一時的に右下肢血流を遮断し,動脈瘤切除,後脛骨動脈の中枢および末梢を結紮した.術後,右下腿皮膚治癒の遅延を認めたが創処置を行い軽快し,術後26日目に独歩退院した.術後に,皮下結節および術中に採取した血管壁の病理所見などからvon Recklinghausen病による血管病変と診断した.
  • 井上 健太郎, 近藤 智昭, 真栄 城亮, 鈴木 仁之
    2012 年 41 巻 6 号 p. 296-298
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/04
    ジャーナル フリー
    症例は37歳男性で,脳炎治療のため他院へ入院中であった.早朝に突然の前胸部痛,呼吸困難を認めたため精査され,造影CTでは両側肺動脈内,右房内,左房内に陰影欠損が認められ急性肺動脈塞栓症であった.心臓超音波検査では右房内と左房内に血栓が浮遊しており,肺高血圧(推定50 mmHg)を呈していた.左房内血栓の飛散により動脈系の塞栓症を発症する恐れがあり,当院にて緊急手術を行った.心停止下に右房を切開したところ卵円孔に管状の血栓が嵌頓していた.嵌頓していた血栓は完全に除去することができ,奇異性脳梗塞などの動脈系塞栓症を発症することなく救命することができた.稀な病態であり文献的考察を含めて報告する.
  • 菅野 幹雄, 元木 達夫, 黒部 裕嗣, 吉田 誉, 中山 泰介, 木下 肇, 神原 保, 藤本 鋭貴, 北市 隆, 北川 哲也
    2012 年 41 巻 6 号 p. 299-303
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/04
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.意識障害と失語で発症し,多発性脳梗塞と診断された.心原性塞栓症が疑われたが,洞調律で心房細動発作の既往はなかった.心エコー検査で僧帽弁の後尖弁輪を中心とした粗で高度な石灰化塊があり,その間から軽度の僧帽弁逆流がみられた.左心腔内の血栓や腫瘍,僧帽弁狭窄や左室壁運動異常を認めなかった.厳重な抗凝固療法中に再び多発性脳梗塞を併発した.僧帽弁輪石灰化が塞栓源である可能性が高いと判断し,それを可及的に取り除き,自己心膜で覆う手術を計画した.術中所見からはP2-P3間の僧帽弁輪石灰化が左房・左室間でトンネル状に断裂し,心腔内に露出した粗な石灰化面が心拍動で擦れ合うことにより,容易に石灰化粒が飛散し,再発性,多発性脳塞栓を発症したと思われた.そこで石灰化を可及的に僧帽弁とともに切除・除去し,自己心膜を用いて僧帽弁後尖弁輪欠損部を補強し,僧帽弁置換術を行った.現在,術後2年6カ月を経過するが脳梗塞の再発は認めない.僧帽弁輪石灰化が脳塞栓源となる最初の報告例である.
  • 松山 翔, 園田 拓道, 山木 悠太, 大石 恭久, 田ノ上 禎久, 西田 誉浩, 中島 淳博, 塩川 祐一, 富永 隆治
    2012 年 41 巻 6 号 p. 304-307
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/04
    ジャーナル フリー
    症例は37歳男性.左冠動脈主幹部完全閉塞による左室広範囲心筋梗塞を発症した後,重症左心不全を併発し,他院で内科的加療を行うもコントロール不能の状態に陥った.そのため,心移植を考慮した左室補助人工心臓(LVAS)植込み術を施行するため当院へ搬送となり,体外設置型左室補助人工心臓(NIPRO-Toyobo LVAS)植込み術が施行された.術直後の経過は良好であったが,術後31日目に右季肋部痛,発熱を認め,精査にて急性胆嚢炎と診断され緊急胆嚢摘出術を行った.NIPRO-Toyobo LVAS装着中のため,ワルファリンにてプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)は3.0~4.0と高めにコントロールされており,易出血性であることから,術直前に新鮮凍結血漿を急速投与し,PT-INRを2.0程度へ下げた.また送脱血管が上腹部正中付近で皮膚を貫通していることから,経傍右腹直筋アプローチでの開腹胆嚢摘出術を施行した.術後1日目よりヘパリンによる抗凝固療法を再開し,術後4日目よりワルファリンの内服を開始した.周術期に出血,血栓症,敗血症やグラフト感染等の重大な合併症は認めなかった.体外設置型LVAS植込み術後に開腹手術が必要となった場合でも,適切な抗凝固コントロールとアプローチ方法の選択によって満足できる結果が期待される.
  • 船本 成輝, 南方 謙二, 山崎 和裕, 三和 千里, 丸井 晃, 村中 弘之, 高井 文恵, 熊谷 基之, 仲原 隆弘, 坂田 隆造
    2012 年 41 巻 6 号 p. 308-311
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/04
    ジャーナル フリー
    高度僧帽弁輪石灰化をともなう症例の僧帽弁手術は,弁輪部の処理にともない房室間溝からの出血や左室破裂などの致死的合併症を発生する可能性があり,手術の難易度は飛躍的に高くなる.今回,われわれは弁間線維体の広範囲石灰化をともなう大動脈弁狭窄症(AS)および僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症(MSR)に対して,大動脈弁および僧帽弁置換術を行った症例を経験したので報告する.症例は76歳女性で,2年前より労作時呼吸困難と下腿浮腫が出現し,半年前から意識消失発作を認めるようになった.心エコーにて高度のASとMSRおよび弁間線維体で連続する弁輪高度石灰化を認め,手術目的で当院紹介となった.僧帽弁は前尖弁輪全体から後尖弁輪にかけて高度の石灰化を認めた.後尖弁輪の石灰化は超音波外科吸引装置(CUSA)にて左房内より除石灰を行い,前尖弁輪の石灰化は大動脈弁越しにロンジュールとCUSAにて除石灰を行った.除石灰は徹底的には行わず,針の刺入が可能な状態までの石灰化破砕に留めることで,弁輪再建をせずに通常どおりの弁置換で対応可能であった.術後弁周囲逆流はなく,近医へリハビリ転院となった.
  • 喜岡 幸央, 田邊 敦, 栗山 充仁
    2012 年 41 巻 6 号 p. 312-315
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/04
    ジャーナル フリー
    膀胱癌に対するBacillus Calmette-Guérin(BCG)膀胱内注入療法は効果的治療として広く認められ,その感染性合併症は稀である.BCGに起因する感染性動脈瘤症例を経験したので報告する.患者は膀胱癌治療歴を有する64歳男性で,発熱,腹痛を主訴に緊急入院,CTにて右総腸骨仮性動脈瘤を認め緊急手術施行した.一般細菌培養は陰性であった.術後3カ月のCTで,新たな仮性瘤が腎動脈分枝レベルの腹部大動脈に認められ,徐々に拡大,中枢側への進展が認められた.初回手術より9カ月後の初回手術部残存骨盤後腹膜腫瘤の生検にて,抗酸菌感染による肉芽腫の診断,抗酸菌は遺伝子解析によりBCGと同定された.抗結核剤3剤の投与を開始したが,初回手術より14カ月後のCTで感染性大動脈瘤の急速な拡大を認め,リファンピシン浸漬人工血管にて胸腹部大動脈置換術を施行した.抗結核剤は10カ月投与で中止した.現在2回目手術より9カ月経過するが,再発の徴候は認めていない.BCG感染性動脈瘤治療は,一般細菌などによる感染性動脈瘤と異なる臨床像を呈するため,十分な病歴調査と手術時の組織診断,抗酸菌培養による確定診断,術後の抗結核剤投与が重要である.
  • 吉永 隆, 國友 隆二, 森山 周二, 岡本 健, 坂口 尚, 田爪 宏和, 川筋 道雄
    2012 年 41 巻 6 号 p. 316-319
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/04
    ジャーナル フリー
    Loeys-Dietz症候群は,大動脈瘤や解離などの血管系症状と特異的な骨格系所見に特徴づけられる常染色体優性遺伝の疾患である.Marfan症候群に比べると大動脈径が小さくても解離を発症しやすく,大動脈瘤に対しては早期の積極的介入が推奨されている.今回われわれは,急性A型大動脈解離術後に遠位弓部大動脈の急速増大をきたしたLoeys-Dietz症候群の1例を経験したので報告する.症例は45歳,男性.33歳時に本院にて大動脈弁置換術を受けた既往がある.Stanford A型急性大動脈解離の診断でエントリー切除を含む上行大動脈置換術を施行し経過良好であったが,2週後のCT検査で末梢側吻合部以遠の解離腔残存と遠位弓部大動脈の急速な増大を認めた.このため術後3週目にエレファントトランク法を用いて全弓部置換術を施行した.本症例は前回手術時および今回入院時にLoeys-Dietz症候群との認識はまったくなかったが,緊急手術後に身体的特徴を小児科医から指摘され初めて疑いを持った.本人および家族の承諾を得て施行した遺伝子診断ではTGFBR2遺伝子変異が認められ,血管系合併症および特徴的な骨格系所見からLoeys-Dietz症候群と診断した.
  • 徳田 貴則, 村上 貴志, 山田 有紀, 山本 剛, 大谷 悟
    2012 年 41 巻 6 号 p. 320-322
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/04
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術後の大動脈弁狭窄症に対し,右小開胸アプローチにて大動脈弁置換術を施行した患者を経験したため報告する.症例は81歳男性.当院で9年前に冠動脈バイパス術を施行した.以後,1年に1度経過観察されていた.外来受診時に労作時呼吸困難感の増強を訴えられ,心エコーにて大動脈弁口面積の狭小化,大動脈弁圧較差の上昇,三尖弁閉鎖不全症などを認めたため,手術目的に入院となった.冠動脈バイパス術後の胸骨正中切開ではグラフト損傷の可能性があり,高齢,ADL低下,軽度の認知症などのリスクから低侵襲手術が望ましいと考えられたため,右小開胸アプローチにて大動脈弁置換術(Carpentier Edwards Perimaunt弁19 mm)を施行した.術後経過は良好で,術後9日目に施行した心エコーでは術前LVEF 53%が75%まで左室機能の改善を認め,平均大動脈弁圧較差は8 mmHgであった.術後12日目に退院した.PORT ACCESSによる右小開胸アプローチは,冠動脈バイパス術後のredoの大動脈弁狭窄症手術に対して有効な選択肢のひとつであると考えられた.
  • 岸本 祐一郎, 佐伯 宗弘, 中村 嘉伸, 藤原 義和, 白谷 卓, 大野原 岳史, 大月 優貴, 岸本 諭, 西村 元延
    2012 年 41 巻 6 号 p. 323-326
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/04
    ジャーナル フリー
    Stanford B型,DeBakey IIIa型慢性大動脈解離に閉塞性動脈硬化症による両側腸骨動脈閉塞を合併した症例に対して,ステントグラフトを用いたハイブリッド治療を行い良好な経過を得たので報告する.症例は66歳,男性.胸部レントゲン写真にて異常陰影を指摘されStanford B型慢性大動脈解離と診断された.経過観察中に増大傾向が認められ,最大径67 mmとなったため手術目的に紹介された.精査の結果,慢性大動脈解離に閉塞性呼吸障害,腎機能障害,両側腸骨動脈閉塞を合併していた.大動脈-両側大腿動脈バイパスを先行させ,ついで胸骨正中切開アプローチにて弓部置換と同時に末梢側の真腔内に自作ステントグラフトを留置,4週間後にステントグラフト内挿術を施行した.術後経過は良好でステントグラフト内挿術後2週間目に独歩退院した.術後3カ月目のCTにて瘤径の縮小が認められた.
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