日本心臓血管外科学会雑誌
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33 巻, 4 号
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  • マルチスライスCTによる術後グラフト評価
    吉田 聖二郎, 新田 能郎, 小田 克彦
    2004 年33 巻4 号 p. 227-230
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    術後2年以上を経過した心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)症例31例について,冠動脈に対する非侵襲的画像診断法として注目されているマルチスライスCT(MSCT)による術後グラフト評価を行い検討した.グラフト評価は,術後約2週間で冠動脈造影(CAG)にて早期評価を行い,外来検査でMSCTによる中期遠隔評価を行った.術後最長38ヵ月,平均観察期間30.9ヵ月で,非心臓死による遠隔死亡1例,その他重篤な術後合併症,心事故は認めなかった.術後2週間でのCAGによる早期開存率はLITA30/30(100%),RITA2/2(100%),RA14/15(93%),SVG15/17(88%)であった.初期の症例において,run offの悪い4PD,14PL末梢に吻合したRA,SVGに閉塞をみたが,MSCTによる中期遠隔グラフト評価では新たに閉塞をきたしたグラフトは認めなかった.マルチスライスCTを用いた冠動脈バイパスグラフト造影は,グラフトの開存性をみる方法として非侵襲的であり,容易に外来で施行できる有用なフォローアップ手段であると考えられた.
  • 丸田 一人, 福隅 正臣, 尾頭 厚, 岡田 良晴, 松尾 義昭, 饗場 正宏, 山田 眞, 高場 利博
    2004 年33 巻4 号 p. 231-234
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    内腸骨動脈瘤は希な疾患であるが,発見時にはすでにかなり大きくなっていることがある.したがって術式として流入動脈の結紮にとどまる場合も少なくないが,中枢側結紮のみでは不十分とする報告もある.当科は過去15年間で14例・22個の内腸骨動脈瘤手術を経験しており,13例・17個に対して瘤切除もしくは再建を行い,内腸骨動脈中枢側結紮を行った症例は3例・5個であった.うち2例は術後のCTにて瘤内に血流は確認できないものの,瘤径の縮小化は認められなかった.残る1例は術後6年が経過するが,CTにて瘤内に血流を認め,わずかながら瘤径が拡大している.最近の2症例で内腸骨動脈瘤の中枢側を遮断する前後で瘤内圧を測定したが,中枢側結紮するだけでは十分に瘤内圧を下げることはできなかった.内腸骨動脈瘤の治療としては瘤周囲の剥離が困難な場合は,瘤内腔より分枝血管を閉鎖するendoaneurysmorrhaphyが最善の方法であると考えられた.
  • 他年齢層と比較して
    大島 哲, 前村 大成
    2004 年33 巻4 号 p. 235-239
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    超高齢者(90歳以上)腹部大動脈瘤破裂4例を経験した.90~94歳,男性2例,女性2例で2例を救命した.他年齢層に比べ救命率が低かったが有意差はなかった.来院時血色素量の低下があり,血圧に比ベアシドーシスが進行する傾向を認めた.死亡原因は出血性ショックと広汎腸管壊死であった.救命にはさらなる治療上の工夫を要すると推察された.さらに1例は退院後脳出血にて死亡した.今後多症例の検討を要するが超高齢者腹部大動脈瘤破裂は重症ショック例,心肺停止例を除いて救急手術の価値があると思われる.
  • 半田 充輝, 高森 督, 鈴木 友彰, 安田 冬彦, 金森 由朗, 岡部 学
    2004 年33 巻4 号 p. 240-243
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1999年1月から3年8ヵ月間に感染性心内膜炎(IE)に起因した僧帽弁閉鎖不全症(MR)13例に対し,弁形成術を施行し良好な成績を得たので,術式,手術成績などを検討した.男女比8:5で,年齢は27~74歳(平均54±13.8歳)であった.治癒期IE(HIE)10例,活動期IE(AIE)は3例.術前NYHAはII度8例,III度2例,IV度3例,術前MRはsevere8例,moderate4例,mild1例であった.13例中の12例(92.3%)において弁形成術が可能であった.手術では感染巣を完全除去したうえで弁形成術が可能かを判断した.術中所見ではchordae ruptureを6例,vegetationを5例,chordae elongationを2例に認めた.術式はresection suture10例,ePTFEを用いたchordae replacementが7例,ring annuloplastyが12例であった.術後にLOS,呼吸不全,腎機能の悪化,脳合併症などは認めず,全例退院となった.術後NYHA分類は1例(II度)を除きI度であり,心エコー検査によるMRの程度は全例mild以下であった.現在まで感染の再燃,再手術,死亡例は認めていない.今後形成術の手技向上に伴いIEに対しても形成術は第1選択の術式に成りうると考えられる.
  • 主として高次脳機能に及ぼす影響について
    岡崎 悌之
    2004 年33 巻4 号 p. 244-251
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    選択的脳灌流法を用いて弓部大動脈置換術を行った13例(SCP群)について,体外循環下の心臓手術15例(CPB群)と腎動脈下腹部大動脈置換術を行った10例(Y群)を対照として術後早期の高次脳機能を比較検討した.検査にはベントン視覚記銘検査と三宅式記銘力検査を用い,四つのサブスコアで評価した.年齢,術前脳血管障害の頻度および術前検査成績には3群間で有意差を認めなかった.術後には3群とも四つ中三つのサブスコアで成績の低下を認めたが3群間に有意差は認められず,低下の程度にも有意差はなかった.低下した三つのサブスコアの一つではSCP群の術後成績が術前に比し有意に低下し,Y群間と有意差を認めたが,CPB群間と有意差はなかった.SCP群の低下例と非低下例の比較では前者で選択的脳灌流時間が有意に長かった.以上の結果より体外循環や選択的脳灌流を行うことが術後の高次脳機能低下の要因の一つであることには間違いはないが,いずれの手術においても術後早期にはある程度の低下がみられ,その重症度についてはわれわれの選択的脳灌流法あるいは体外循環法によれば,低下の程度は決して著しいものではなかった.手術に際しての全身麻酔や薬剤の使用,手術操作に伴う生体への侵襲と患者の精神的,体力的な消耗や疲労など,手術を受けたということ自体あるいはそれに付随した種々の要因が術後の高次脳機能の低下に大きな影響をもっていると考えられる.
  • 木ノ内 勝士, 黒澤 博身, 森田 紀代造, 野村 耕司, 長沼 宏邦, 松村 洋高
    2004 年33 巻4 号 p. 252-254
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は3歳女児,術前の選択的冠動脈造影において,右単冠状動脈直後より分岐し,右室流出路前面を横走する拡張した左冠動脈から右室流出路への交通を認めた.右単冠状動脈に伴う冠状動脈瘻と診断した.手術は,体外循環,心停止下に,右室流出路を切開し,心筋保護液の流出により瘻口部を確認し,自己心膜短冊で補強するU字縫合に加えて,連続縫合を行い二重に閉鎖した.術後8ヵ月に施行した心臓カテーテル検査において,残存短絡はなく,左冠動脈は良好に造影され,経過良好である.
  • 奥村 悟, 前田 吉宣, 大川原 潤
    2004 年33 巻4 号 p. 255-258
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は86歳,男性.肺結核,肺気腫,甲状腺機能低下症,胃癌に対し胃亜全摘術,直腸癌に対し直腸切断術の既往がある.洞機能不全症候群(徐脈頻脈症候群)に罹患し,右鎖骨下静脈穿刺によるDDDペースメーカー植え込み術を受けた.3ヵ月後,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌によるペースメーカー感染を合併し,ペースメーカー摘出術と新規ペースメーカー植え込み術を行った.新規ペースメーカー植え込みに際しては,胸郭変形と人工肛門があり,全身状態不良なことから,局所麻酔下左第6肋骨床小切開アプローチによる心筋電極植え込み術を実施した.手術後は感染の再発もなく良好に経過した.通常,この方法は全身麻酔下に行われているが,本例のような特殊な例では局所麻酔下による植え込みも可能であり,経静脈的心内膜電極挿入が困難な場合には選択肢の一つとなりうる.
  • 佐々木 規之, 清澤 旬, 田中 潤一, 小林 昌義, 飛田 研二, 四方 裕夫, 坂本 滋, 松原 純一
    2004 年33 巻4 号 p. 259-262
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    馬蹄腎を合併した腹部大動脈瘤の3症例を経験した.CTでは3例とも大動脈の腹側に騎乗するように馬蹄腎の峡部が認められた.また,MDCTやMRIで異所性腎動脈の分岐形態が明らかとなった.3例とも馬蹄腎峡部を切離することなく手術が可能で,症例1と2では異所性腎動脈の再建を行った.手術に際しては,馬蹄腎峡部の切離の是非や,異所性腎動脈の処置が問題となる.最終的には術中に判断を下さざるをえないことがまれではないので,術前に異所性腎動脈の分岐形態や,馬蹄腎峡部と動脈瘤の関係について,血管造影に加えて3D-CTを用いた十分な検索が必要である.
  • 茂木 健司, 高原 善治, 武内 重康, 櫻井 学
    2004 年33 巻4 号 p. 263-265
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    74歳,女性.10年前に,大動脈炎症候群による腎動脈分岐下腹部大動脈狭窄のため,他院で右腋窩動脈-両大腿動脈バイパス術を受けた.今回,CT上79×100mmに拡大した胸腹部大動脈瘤の破裂で,当院へ救急搬送され,緊急手術を行った.右腋窩動脈-両大腿動脈バイパス人工血管を送血路とし人工心肺を確立し,超低体温法を用いて救命した.胸部下行・胸腹部大動脈瘤破裂症例に対する治療戦略として,超低体温法は,剥離中突然大出血したときに可及的速やかに循環停止ができること,および再建中の脳脊髄・腹部臓器保護の点から大変に有用な手段である.
  • 大音 俊明, 増田 政久, 塚越 芳久
    2004 年33 巻4 号 p. 266-269
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    右房右室に浮遊する血栓像を認める2例の急性肺塞栓に対し,緊急手術を行い良好な結果を得た.症例1は生来健康な48歳の男性,症例2は心筋梗塞の既往があり左室駆出率19%と左室機能不良な65歳の女性である.両症例とも心エコー検査にて右心系に浮遊する索状物を認め,急性肺塞栓を疑われた.術前の血行動態・呼吸状態は安定していたが,右房右室の浮遊物がさらなる肺塞栓を生じた場合には突然死の可能性が高いと考え,緊急手術を行った.手術は体外循環下に両側肺動脈から血栓摘除を行ったが,両症例とも体外循環開始前に急激な血圧低下を生じた.手術所見からは右心系血栓の遊離によるさらなる肺塞栓が原因と思われた.術後,症例1は速やかに回復し,症例2は左心不全のコントロールに難渋したが術後6ヵ月で退院にいたった.右心系血栓の存在は血行動態を急変させる可能性が高いので,たとえ血行動態・呼吸状態が安定していても緊急手術の適応と考える.また急性肺塞栓は術後や長期臥床,悪性腫瘍などのハイリスク症例に発生することが多いが,体外循環下肺動脈内血栓摘除は安全性の高い術式なので,症例2のような条件の悪い症例でも積極的に手術を検討すべきと考えた.
  • 尾頭 厚, 丸田 一人, 松尾 義昭, 饗場 正宏, 川田 忠典, 高場 利博
    2004 年33 巻4 号 p. 270-273
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    きわめて希な特発性弓部大動脈破裂症例を経験したので報告する.症例は55歳,女性.突然の胸痛を訴え他院を受診した.心タンポナーデの診断で当院転送となった.来院時血圧70mmHgのショック状態であった.CTにて心タンポナーデ,上行・弓部大動脈周囲に血腫を認めたが,大動脈の解離所見は認められなかった.大動脈破裂の診断で緊急手術を施行した.弓部前面に裂孔を認め,循環停止下に縫合閉鎖した.正確な破裂孔の同定に術中経食道超音波検査が有用であった.上行・弓部大動脈には外膜血腫のみで解離の所見はなく,病理診断においても同様の結果であった.術後経過は良好で16病日に退院した.本症はきわめて希な疾患で,確定診断が困難であり予後不良である.外傷や大動脈瘤がなくても,CTでの迅速かつ詳細な検査において本症を疑い,積極的な外科治療が必要である.
  • 青木 賢治, 倉岡 節夫, 建部 祥
    2004 年33 巻4 号 p. 274-277
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.最大圧較差103mmHgのAS.NYHA IV度.乳癌に対するHalsted手術ならびに放射線治療の既往あり.放射線晩期障害の前胸壁壊死性骨髄炎にMRSA胸骨感染を合併していた.右傍胸骨切開から大動脈弁置換術を行い,術後縦隔炎,人工弁感染を惹起することなく根治せしめた.
  • 鈴木 暁, 長 泰則, 芳賀 佳之, 加藤木 利行
    2004 年33 巻4 号 p. 278-281
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.うっ血性心不全のため入院し体部CTと経胸壁心エコーにて左房腫瘍を疑われ,経食道心エコーにて左房腫瘍と左房内壁への腫瘍浸潤を診断された.肺水腫となり緊急手術にて心房中隔に付着した3.5×4.0×2.0cmの球状の腫瘍を摘出し,病理組織診断では粘液腫様の所見とring structureの形成のほかに細胞の密な部分も認めた.CA125値が術前167.7U/単位と高値を示したが術後80日で正常化した.術後14ヵ月の経胸壁心エコーにて腫瘍の再発を認め,経食道心エコーにより左房腫瘍と左房内壁に左心耳まで及ぶ腫瘍の浸潤像を認めた.再手術では左房腫瘍の再発と左心耳・右肺静脈まで及ぶ腫瘍浸潤を認め浸潤部位を含めた腫瘍摘出術を行った.病理組織所見では粘液腫様部分,ring structure形成部分に加え核分裂像と壊死巣を認め粘液肉腫と診断された.腫瘍の再発のため初回手術後20ヵ月に死亡した.きわめて希な左房粘液肉腫の症例を経験した.腫瘍の左房内壁への浸潤の診断には経食道心エコーが必須でCA125の有用性も示唆された.手術的切除を行ったが予後不良であった.
  • 谷口 巌, 森本 啓介, 丸本 明彬, 足立 洋心
    2004 年33 巻4 号 p. 282-286
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Marfan症候群では異時的ばかりでなく,同時に心血管病変が多発し,拡大手術,多期手術が必要になることも多い.全身状態と再手術を考慮して症例に合わせた必要十分な手術術式を選択,工夫することが重要である.今回,われわれは大動脈弁閉鎖不全を伴う大動脈基部拡大,僧帽弁閉鎖不全,Stanford B型慢性大動脈解離を合併した39歳,女性のMarfan症候群の症例に対し,Carrel patch法による大動脈基部置換,僧帽弁置換,上行弓部胸部下行大動脈置換を一期的に行い良好な結果を得た.待機例での2弁同時置換に上行弓部下行大動脈置換を行った報告はわれわれが知るかぎりでは本症例が初めてであるが,若く,合併症のない症例であったので,脳保護法,心筋保護法などの発達した現在では許容しうる手術侵襲であった.手術時の工夫を若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 青木 哉志, 一関 一行, 棟方 護, 鈴木 保之, 福井 康三, 高谷 俊一, 福田 幾夫
    2004 年33 巻4 号 p. 287-290
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.腰痛,発熱で発症し,腹部CT上,腎動脈下大動脈および下腸間膜動脈起始部の周囲の低吸収域と,肝門部の肝膿瘍を認めた.入院当初より感染性動脈瘤を疑っていたが,確診は得られず,抗生剤の投与を開始した.炎症所見の消退と解熱がみられたが,第12病日に吐血し,ショック状態となった.緊急CTを施行したところ,腹部大動脈周囲低吸収域は拡大し,下腸間膜動脈根部に最大径16mmの拡張・瘤化が認められた.感染性動脈瘤切迫破裂の診断のもと,緊急手術を施行した.腹部大動脈周囲には壊死組織と血塊からなる6cmの腫瘤を認め,腫瘤は十二指腸水平脚に接していた.大動脈内腔には潰瘍形成を認め,十二指腸へ穿通していた.腹部大動脈を腎動脈下大動脈と大動脈末端で縫合閉鎖し,左腋窩-大腿動脈バイパスをおいた.開放した腹部大動脈と十機二指腸の間には大網を充填した.大動脈周囲壊死組織の培養検査では,Klebsiella pneumoniaeが検出され,抗生剤の投与を継続した.術後経過は良好で,術後46日目に退院した.感染性動脈瘤の十二指腸穿通例は死亡率も高く予後不良であり,早期診断,治療開始が最も肝要と考えられる.感染初期から感染性動脈瘤形成および十二指腸穿通までの経時的経過を観察し,緊急手術により救命しえたので報告する.
  • 太田 壮美, 山口 眞弘, 吉田 昌弘, 芳村 直樹, 大瀧 義郎, 長谷川 知巳
    2004 年33 巻4 号 p. 291-294
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は6歳,男児,感染性心内膜炎による大動脈弁閉鎖不全症(AR)にて紹介入院となった.入院時検査で炎症所見の上昇がみられ,血液培養検査でStaphylococcus aureusが検出された.心臓超音波検査にて大動脈弁に3mmの疣贅,右冠尖(RCC)の穿孔および中等度の逆流が認められた.内科的治療を開始し,早期に炎症所見の改善傾向を認めたため,厳重に管理しながら感染の沈静化をはかり,待機的手術を行うこととした.その後炎症所見は消失したが,ARの悪化,右冠動脈洞に瘤状病変を疑わせる所見の出現が認められ,入院後44日目にRoss手術を施行した.術中所見で大動脈弁は無冠尖が高度に破壊され,RCCには約3mmの穿孔が認められた.右冠動脈口の下部には5mm大の瘤が認められたが,周囲に膿瘍はみられなかった.大動脈弁および瘤壁を切除し,自己肺動脈弁を移植した.右室流出路は,後壁は自己心膜で形成,前壁はMVOP#22を用いて再建した.術後経過は順調でARは完全に消失した.綿密な術前管理と適切な術式および手術時期の選択が重要であると思われた.
  • 柚木 純二, 樗木 等, 内藤 光三, 久島 和洋
    2004 年33 巻4 号 p. 295-298
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    心室中隔厚(IVS)が16mmで非対称性中隔肥大(ASH)を認めない閉塞性肥大型心筋症(HOCM)に対し僧帽弁人工弁置換術(MVR)を行い良好な結果を得た.症例は54歳,男性.主訴は胸部不快感.44歳時にHOCMを指摘され,以後薬剤療法を行ったが改善を認めなかった.大動脈-左室内圧較差は143mmHgでII度の僧帽弁閉鎖不全(MR)を認めた.心エコー検査上,IVSが16mmと比較的薄かったため心筋切除術を選択せずSJM27mm弁にてMVRを施行した.大動脈-左室内圧較差は10mmHgに改善し,術後約1年経過した現在も日常生活に制限なく社会復帰している.IVSが比較的薄くASHを認めないHOCMにはMVRが有用である.
  • 中村 栄作, 桑原 正知, 松山 正和, 古川 貢之, 鬼塚 敏男
    2004 年33 巻4 号 p. 299-301
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性で,比較的希なリウマチ性三尖弁狭窄症を伴う連合弁膜症の診断で3弁置換術を行った.大動脈弁,僧帽弁位の人工弁は,年齢から機械弁を選択し,三尖弁位には,抗血栓性を重視し生体弁を使用した.三尖弁位における人工弁選択についての考察も加えて報告する.
  • 安達 勝利, 水元 亨, 畑中 克元, 日置 巌雄
    2004 年33 巻4 号 p. 302-305
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤(AAA)に弓部大動脈瘤(TAA)および狭心症を伴った症例に対して,一期的手術を施行した1例を経験したので報告する.症例は腹痛を主訴として転送された71歳男性で,CT検査で最大径5cmのAAAに加えて最大径8cmのTAAが診断された.降圧療法で腹痛は改善したが,胸痛と心電図にて心筋虚血が疑われたために,緊急冠動脈造影を行い3枝病変と診断された.周術期における心筋虚血あるいはTAA破裂のリスクを考慮して,一期的に弓部大動脈人工血管置換術(TAA repair),冠動脈バイパス術(CABG),腹部大動脈人工血管置換術(AAA repair)を施行し救命できた.
  • 斎藤 雄平, 青田 正樹, 小池 裕之, 植草 英恵, 中根 武一郎, 小西 裕
    2004 年33 巻4 号 p. 306-308
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    先天性孤立性大動脈四尖弁は非常に希な先天性半月弁異常とされており,本邦での手術例の報告も少ない.症例は47歳,男性.発熱,呼吸困難のために当院入院後,症状が増悪し,挿管となり,人工呼吸管理が開始となった.血液培養にてStreptococcus agalactiaeが検出され,経食道心エコーでは,大動脈弁は四尖弁で,IV度の逆流と,弁尖に疣贅の付着を認め,感染性心内膜炎と診断された.抗生剤を投与したが,炎症反応は完全には改善せず,心不全も軽快しないため,挿管から26日目に,大動脈弁置換術を施行した.大動脈弁は四尖よりなり,2弁尖が大きく,ほかの2弁尖は小さい形態をしており,各弁尖間には完全な形の交連が存在していた.さらに,弁輪部には膿瘍の形成を認めた.膿瘍部は自己心膜を用いてパッチ閉鎖後,21mmのSJM弁を用いて置換した.術後4日目に抜管し,その後の経過はおおむね良好で,心電図上,ブロックも認めず,断層心エコー上も異常所見を認めず,術後46日目に退院となり,社会復帰した.
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