日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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32 巻, 3 号
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  • 塚本 三重生, 進藤 正二, 尾花 正裕, 秋山 謙次, 塩野 元美, 根岸 七雄
    2003 年 32 巻 3 号 p. 121-125
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    大動脈解離と凝固因子とくにfibrinogenに注目し,急性大動脈解離手術における出血量,輸血量を減少させる目的で当科で経験した発症24時間以内の大動脈解離症例100例をもとに検討を行った.大動脈解離では急性期にfibrinogenが低値であり,Stanford A型はStanford B型と比較して,広範囲解離(DeBakeyI型あるいはIII型逆行性解離)は限局解離(DeBakey II型)と比較して,偽腔開存型は偽腔閉塞型と比較して有意に低値を示した.また,発症後24時間以内のStanford A型急性大動脈解離手術34例において検討したところ,体外循環中の著明なactivated clotting time(ACT)の延長(ACT≧1,000秒)は輸血量の増加をもたらすことが判明した.ACTが著しく延長することを阻止する手段として,体外循環時のヘパリン投与量を300単位/kgと定めるのではなく,術前のfibrinogen値により50~250単位/kgで随時変動させ,ACTを400秒以上に維持したところACTは有意に低下し,fibrinogenが低値であってもACT値が適正値にコントロールされた.Fibrinogenは院内で測定でき,しかも短時間で結果が得られるため,この値によりヘパリン量を決定することは,Stanford A型急性大動脈解離手術でのACTをコントロールするうえで大きな役割を果たしていると考えられた.
  • 冠動脈造影と頭部CT検査の有用性
    桜田 徹, 柴田 芳樹
    2003 年 32 巻 3 号 p. 126-131
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    閉塞性動脈硬化症(ASO)の下肢血行再建術症例に対し,術前に冠動脈造影,頭部CT検査を施行し,心疾患や脳梗塞の合併について検討した.冠動脈造影を術前施行した101例(68.4±8.0歳,男88/女13)中,71例(70.3%)に狭窄病変を認めた.主要3分枝に有意狭窄を有するものは35例で(陳旧性心筋梗塞13例を含む),冠動脈バイパス術を2例,PTCAを7例に施行した.対象症例中57例(臨床的脳梗塞21例を含む)に頭部CT検査を施行し,皮質梗塞9例,穿通枝梗塞35例,leukoaraiosis27例など画像診断異常を52例(91.2%)に認めた.遠隔期死亡は13例(心筋梗塞死3例,脳血管疾患死3例など)で,5年累積生存率は80.4%であった.ASOでは合併の多い虚血性心疾患,脳血管障害が周術期,術後予後に及ぼす影響は大きく,術前の画像診断法をもとに手術法の検討や綿密な全身管理が肝要と考えられた.
  • 内田 智夫, 山崎 真敬
    2003 年 32 巻 3 号 p. 132-136
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    われわれは炎症性腹部大動脈瘤(IAAA)の術後に遷延する発熱と肥厚した動脈瘤壁への癒着が原因と思われる十二指腸の通過障害が出現し,これに対しステロイド剤の投与が有効であったまれな症例を経験したので報告する.症例は73歳男性.腹痛を主訴に当院を受診.CRPは7.17mg/dlと高値であったが,発熱はなかった.CTでは最大径約10cmの腎動脈下から腸骨動脈分岐部までの腹部大動脈瘤を認め,動脈壁は約2cmに肥厚しmantle signを伴っていた.2001年4月10日,手術を施行した.拡大腹部正中切開で開腹.Collagen impregnated knitted Dacron 18×9mm (Hemashield®)を用いて内挿法で置換術を行った.病理では動脈壁の高度の線維化,リンパ球の浸潤を認め,IAAAとして矛盾しない所見であった.術後一時平熱になったが術後10日目頃より38℃前後の発熱が出現し,胃管より1日1,500ml前後の胃液の排液も続いた.人工血管に被覆したコラーゲンに対する炎症あるいは遺残動脈壁の炎症の関与が強く疑われた.ステロイド剤投与により解熱し,経口摂取可能となった.術後46日目に軽快退院した.術後約1年のCTではグラフト周囲の液貯留は減少し,瘤壁も薄くなり,CRPは陰性化している.
  • 鈴木 一弘, 濱野 公一, 花田 明香, 林 雅規, 白澤 文吾, 伊東 博史, 美甘 章仁, 宮本 正樹
    2003 年 32 巻 3 号 p. 137-140
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の女性で,7年前にDeBakey II型急性大動脈解離で上行大動脈置換術を受けている.急に夜間呼吸困難,咳嗽を生じ,近医を受診した.CT検査で弓部大動脈解離を疑われ,当院紹介となった.心エコー検査で弓部大動脈瘤から肺動脈に向かってのシャント血流が確認され,弓部大動脈瘤-肺動脈瘻と診断した.心臓カテーテル検査で,左-右シャントが54.3%,Qp/Qsが2.19であった.準緊急手術を行った.手術は低体温循環停止・選択的脳灌流を補助手段として行った.瘻孔部は瘤壁内より馬心膜パッチで閉鎖し,全弓部置換術を行った.術後43日目に軽快退院した.
  • 永谷 公一, 田林 晄一, 井口 篤志, 秋元 弘治, 津留 祐介
    2003 年 32 巻 3 号 p. 141-144
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    人工血管感染に対し,凍結保存homograftを使用し良好な結果が得られたので報告する.症例は70歳,男性で,胸部下行大動脈瘤に対し,左開胸により胸部下行置換術を施行した.術後炎症反応が遷延化し,血液培養でMethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)陽性となったが抗生剤投与により軽快したため,外来で経過観察としていた.術後192日目炎症反応の増悪と血液培養でMRSAが同定され再入院となった.CT検査で,人工血管に沿って膿瘍を認め,胸腔内洗浄,開胸ドレナージ,ポピドンヨード液ガーゼパッキングを3日間行ったのち,凍結保存homograftによる胸部下行再置換術を行った.再手術後炎症反応は改善し,現在再手術後14ヵ月経過しているが,感染の兆候はなく,homograftの拡張および仮性動脈瘤なども認めていない.
  • 大澤 久慶, 杉本 智, 前川 功二, 渡辺 祝安, 田中 利明
    2003 年 32 巻 3 号 p. 145-147
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.平成12年6月腰痛を自覚,近医受診したところCT検査にて腹部大動脈瘤を指摘され当院へ紹介された.CT検査で下大静脈を圧排する後腹膜血腫が存在し腹部大動脈瘤の慢性破裂と診断し,平成12年9月27日Y字型人工血管で腹部大動脈瘤を置換した.手術所見で腎動脈下の瘤右側後壁寄りに10×20mm大の破裂孔と多量の陳旧性血腫を認めsealed ruptureと診断した.自験例はJonesらが提唱した“chronic contained rupture”の概念に相当するものと思われた.
  • 野口 学, 柴田 隆一郎, 岩松 みよ子
    2003 年 32 巻 3 号 p. 148-151
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.DeBakey I型の急性大動脈解離に対し選択的脳分離体外循環法で弓部大動脈部分置換術を施行した.術後,頭部CTで右大脳半球の広範囲な梗塞,正中線偏位,右鉤回ヘルニアを認め,開頭外減圧術を施行した.ひき続き中等度脳低温療法(直腸温34℃)を開始.左片麻痺あるものの意識清明となり全身状態改善し術後147日めに退院となった.急性大動脈解離手術中に発生した広範囲脳梗塞に対する開頭外減圧術と軽度脳低温療法の併用は,有用で比較的安全に試行可能であった.
  • 福田 幸人, 内藤 和寛, 木川 幾太郎
    2003 年 32 巻 3 号 p. 152-154
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    大動脈弁置換術後のためワルファリンによる抗凝固療法を受けinternational normalized ratio (INR)=2.90と安定していた患者が,扁平苔癬のためミコナゾール200mgを9日間点滴静注を受け,プロトロンビン時間がINR=31.39と著明に延長した.このためワルファリンを中止したが,INRが回復しワルファリン再開まで14日を要し,約50日後に安定が得られた.ミコナゾール投与はワルファリンの抗凝固作用を著明に延長させ,また回復に長期間を要するため,ワルファリンを内服中の患者ではどうしても必要な場合のみとし,必ず凝固時間の測定下に慎重に使用すべきと考える.
  • 岡本 雅彦, 蔵田 英志, 伊達 康一郎
    2003 年 32 巻 3 号 p. 155-157
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    患者は34歳女性.心タンポナーゼによるショックで発症した.心エコー,CT,MRI,冠動脈造影より右房血管肉腫と診断し,腫瘍切除術を施行した.術中迅速組織診断で診断が確定したので,腫瘍を含め広範囲に右房を切除し,牛心膜でパッチ再建した.術後放射線療法を含めた集学的治療を施行した.患者は一時質の高い生活を送っていたが,術後2年5ヵ月目に肝転移巣の破裂による腹腔内出血により亡くなった.
  • 田山 雅雄, 阪越 信雄, 安田 治正
    2003 年 32 巻 3 号 p. 158-160
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    長期間ステロイドを服用していた下垂体機能不全症に発生した大動脈解離を経験した.症例は58歳男性.20年前に下垂体腺腫切除を受け,続発性の下垂体機能不全によりステロイドホルモン(ハイドロコーチゾン:30~40mg/日)と甲状腺ホルモン(レボチロキシンナトリウム:150~200μg/日)を内服していた.Stanford A型の急性大動脈解離に対し,上行大動脈人工血管置換術を施行した.周術期ホルモン補充療法として,ステロイドは人工心肺開始前にメチルプレドニゾロン1,000mgを静注し,術後はハイドロコーチゾン500mgを4日間静注したのちに40mg/日を内服させた.甲状腺ホルモンは術後6日目よりレボチロキシンナトリウムを200μg/日で再開した.ステロイドの長期連用は大動脈壁の脆弱化から大動脈解離につながる可能性がある.このような報告はSLEなどにおいて散見されるが下垂体機能不全に合併した大動脈解離の報告は文献上自験例が3例目である.
  • 小澤 英樹, 栗原 寿夫, 古川 博史, 大門 雅広, 勝間田 敬弘
    2003 年 32 巻 3 号 p. 161-163
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    抗生剤投与中,急速に進行する胸部仮性大動脈瘤破裂を経験した.人工血管置換にさいして瘤壁には多数の疣贅が存在したが,順行性大動脈送血のみの体外循環の使用と大動脈非遮断により,術中塞栓症を回避しえた.心内病変の遠隔病変として大動脈は急速な瘤化,破裂をきたしうる.
  • 西村 好晴, 岡村 吉隆, 藤原 慶一, 関井 浩義, 山本 修司, 栗山 雄幸, 戸口 幸治, 本田 賢太郎
    2003 年 32 巻 3 号 p. 164-167
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.既往歴として15年前,狭心症に対し冠動脈バイパス術が施行された.今回,グラフト閉塞に伴う再発狭心症と腹部大動脈瘤に対する手術目的で入院となった.手術はグラフトとして右胃大網動脈を用い,経横隔膜的に胸腔に誘導し,左開胸下にoff-pump CABGを行い,ひき続き,一期的に腹部大動脈瘤人工血管置換術を施行した.術後合併症は認めなかった.このような症例に対し,本術式は胸骨正中切開と腹部正中切開の連続性を回避し,より低侵襲に一期的手術を行ううえで有用であったと思われる.
  • 赤坂 純逸, 津留 祐介, 新田 能郎, 高橋 悟朗, 田林 晄一
    2003 年 32 巻 3 号 p. 168-171
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性.平成11年2月13日に急性A型大動脈解離の診断にて上行大動脈置換術を施行した.平成13年4月遠位弓部大動脈より左総腸骨動脈に及ぶ残存解離と胸部下行大動脈の拡大を指摘され手術適応とされた.手術は開放式ステントグラフティングを併用した弓部大動脈置換術を施行した.術後呼吸障害を合併したが,対麻痺の合併なく軽快退院した.
  • 桜井 学, 高原 善治, 茂木 健司
    2003 年 32 巻 3 号 p. 172-174
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,男性.1歳8ヵ月に心室中隔欠損症(VSD),動脈管開存症(PDA),大動脈縮窄症(Co/Ao)の診断にて二期的にVSD閉鎖術および大動脈縮窄切除直接吻合術を施行.15歳時に大動脈の再狭窄のため左鎖骨下動脈-下行大動脈バイパス術を14mm人工血管(Cooley double velour knitted Dacron, Meadox社)にて施行.術後,定期的に胸部X線検査で経過観察されていたが,平成13年1月胸部X線検査で左第1弓に異常陰影指摘され,胸部造影CT検査を施行し,人工血管径が60mmに拡大し,ひょうたん型を呈していたため,人工血管劣化による非吻合部瘤の診断で破裂の危険のため手術適応となった.手術は右側臥位にて左大腿動脈送血,PCPS用の脱血チューブによる右心房脱血で体外循環を開始.左第4肋骨床開胸.20℃の超低体温循環停止下に瘤切開,16mm INTERVASCULARTMを用い左鎖骨下動脈下行大動脈再置換を行った.術後1年後の現在経過良好である.現在用いられている人工血管の耐久性については問題ないとされているが,古いタイプのものでは劣化することがあり長期の経過観察が必要であると思われた.
  • 鉢呂 芳一, 原田 英之, 馬場 俊雄, 本間 之子, 安倍 十三夫
    2003 年 32 巻 3 号 p. 175-177
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    左腋窩動脈を中枢側としたoff-pump再CABGの2症例を報告する.症例1は63歳,男性.13年前にCABG3枝が施行されているが今回の精査にてグラフトはすべて閉塞しており,またLITAも造影上途中閉塞していた.患者が再CABGを拒否したためLADへのPTCAを施行したが,冠動脈解離を発生し緊急手術となった.症例2は66歳,男性.12年前にCABG3枝が施行されているが,最近頻回に胸痛を自覚するようになり入院となった.LITA-LAD,SVG-RCAは閉塞,SVG-LCXの中間部に99%狭窄を認めたため,まず同部位に対しPTCAおよびステント留置を施行した.2週間後LADに対し再バイパス術を施行した.手術は両症例ともLITAが閉塞しているため,SVGを用い左腋窩動脈よりLADへ心拍動下に吻合した.術後造影,経過とも問題なく2週間で退院した.
  • 2003 年 32 巻 3 号 p. e1
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
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