症例は20歳,女性.主訴は左上肢痛.2001年12月歯科治療後,2002年2月ころから発熱をくり返し,同年8月ころ右頸部の拍動性腫瘤に気づき,10月7日高安動脈炎と診断されステロイド(プレドニン30mg)治療を開始した.その後くも膜下出血,左上肢疼痛/脱力,視力障害,出血斑,
Serratia菌による菌血症など多彩な症状を呈したのち,11月26日,突然胸痛が出現し,左鎖骨下動脈仮性動脈瘤と診断され当科を紹介された.上肢血圧は右101/61mmHg,左74/46mHgであり,検査所見でWBC14,300/mm
3,CRP3.24mg/dlと炎症反応を認めた.前医の大動脈造影像では右総頸動脈狭窄後瘤形成(34mm),左総頸動脈瘤(19mm),左鎖骨下動脈狭窄後拡張がみられるのみであったが,当科転科時の左鎖骨下動脈造影では最大径36mmの嚢状の仮性動脈瘤がみられ,切迫破裂と判断し緊急手術を施行した.胸骨上縁から左第2肋間への胸骨L字切開に左鎖骨上皮膚切開を加え,瘤中枢側で鎖骨下動脈結節を行い,末梢側は鎖骨下到達法で結紮した.術後経過は良好で炎症反応の再燃はみられず,瘤は完全に血栓化し,術直後より左上肢痛は軽減された.上肢血圧は左71mmHg/右102mmHg(左右比0.70)であった.術後6週目に退院し,術後1年目の現在ステロイド投与を継続し,左右上腕動脈圧比は0.80まで回復し,頸動脈瘤の進行もみられない.
抄録全体を表示