特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を合併した開心術では,術前のγグロブリン大量静注療法によって血小板数を増加させて手術に臨むことが多い.今回われわれはγグロブリン大量静注療法が奏功しなかったITPに対し,トラネキサム酸の持続静注を行うことによって止血が容易であった症例を経験したので報告する.症例はITPを既往に持つ82歳,女性.労作時呼吸困難を主訴に当院を受診し,重症の大動脈弁狭窄症と診断された.術前にγグロブリン大量静注療法(400 mg/kg/日,5日間投与)を行ったが,血小板数は2.1×10
4/mm
3 から1.9×10
4/mm
3 と増加しなかった.手術は生体弁を用いた大動脈弁置換術を行った.手術開始から終了までトラネキサム酸20 mg/kg/時の持続静注を行った.さらに体外循環終了後に濃厚血小板製剤40単位を輸血した.止血は容易であり,術後も出血性合併症を認めなかった.
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