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後藤 博久, 中野 博文, 河野 哲也, 中島 恒夫, 高野 環, 天野 純, 恒元 秀夫, 深谷 幸雄
1999 年 28 巻 2 号 p.
73-77
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
1990年1月から1997年10月までに当科で手術を施行した遠位弓部大動脈瘤症例15例中, 胸骨正中切開のみで手術が可能であった7例 (男性5例, 女性2例, 年齢63歳から78歳まで, 平均年齢72.7歳) を対象とし, 術前評価による瘤の解剖学的特徴と到達法との関連性について検討した. 手術は, 全例, 中等度低体温脳分離体外循環下に弓部下行置換を施行. 手術死亡は1例で, 破裂例であった. 瘤への到達法と術前評価より得られた瘤の解剖学的特徴を検討すると, 瘤が嚢状で下行大動脈が瘤からほぼ正常な径で起始しており, 瘤の最大径が70mm以上で, 末梢側伸展度が気管分岐部近傍までであれば, 胸骨正中切開のみで手術が可能であると考えられた. また, Inclusion 法による末梢側吻合に際し, 下行大動脈起始部に3本のプレジェット付き支持糸を置いて, 牽引することでより良好な視野が確保でき, きわめて有用であった.
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山村 光弘, 宮本 巍, 山下 克彦, 八百 英樹, 井上 和重, 和田 虎三, 田中 宏衛, 良本 政章
1999 年 28 巻 2 号 p.
78-81
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
術前1カ月以上のステロイド投与開心術症例13例を対象とした. 男性4例・女性9例, 年齢は12~80歳 (平均61歳), ステロイド治療対象疾患は膠原病3例・気管支喘息2例と大動脈炎症候群・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間血色素尿症・脳腫瘍・蕁麻疹・紅斑性天疱瘡・尋常性乾癬・腎移植術後それぞれ1例であった. 術式はACバイパス術9例, MVR・reMVR・AVR・心房中隔欠損孔パッチ閉鎖術それぞれ1例であった. 術前投与量 (以下プレドニゾロン換算) は平均9.4mg/日, 投与期間は平均4年11カ月であった. 緊急手術を除く8例に術前 rapid ACTHテストを施行し, 副腎機能低下は5例 (63%) 認めた. 術中は人工心肺充填液中リンデロン
®4mg/kg添加 (通常例と同量) に加え, 麻酔前または人工心肺前にもソルコーテフ
®ないしソルメドール
®を25~1,250mg追加投与し, 術中ステロイド投与総量は平均2,488mgであった. 術後は全例ステロイド投与を継続し以後漸減した. 手術死はMVR後左室破裂の1例で, 主な術後合併症は心タンポナーデ・一過性痙攣発作・創部感染・腰椎骨折がそれぞれ1例であった. 今後も感染防止および出血に留意し, 術中および術後のステロイド投与は慎重かつ必要最少量にとどめる必要があると思われる.
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米須 功, 林田 信彦, 丸山 寛, 榎本 直史, 川野 博, 田山 栄基, 友枝 博, 尾田 毅, 川良 武美, 青柳 成明
1999 年 28 巻 2 号 p.
82-86
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
心室中隔欠損 (VSD) はもっとも頻度の多い先天性心疾患であり, 自然閉鎖が望めない症例では, 一般に幼少時に外科的治療が行われている. 従って高年齢で手術を施された症例はまれである. われわれは, 66歳の肺高血圧を伴うVSDを経験し, 外科治療を行った. 症例は66歳, 男性. 61歳で初めてVSDを指摘された. その後徐々に症状が増強し, 65歳時では動悸も認めるようになった. 心臓カテーテル検査では, 肺高血圧を認めたが, Qp/Qsは2.9, Rp/Rsは0.16で手術適応と考えられた. VSDは膜様部欠損で直径18mmと大であり patch 閉鎖した. 術後, 肺動脈圧は正常化し, 現在元気に社会生活を送っている. なお, 術中採取した肺の組織検査では血管病変は軽度で Heath-Edwards 分類の第I度であった. 高年齢者, 特に40歳以降にみられるVSDはまれであることから主として手術適応について考察した.
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高沢 賢次, 山本 平, 細田 泰之
1999 年 28 巻 2 号 p.
87-93
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
体外循環を使用した coronary artery bypass grafting (CABG) の手術成績と遠隔期成績について検討した. 手術成績: 1991年から1996年の間のCABG 730例の検討; LOS 2.6%, PMI 1.9%, IABP 1.2%, 呼吸器合併症4.4%, 急性腎不全3.8%, 縦隔炎1.2%, stroke 1.8%, 再開胸止血1.2%, 在院死亡0.7%, 低左心機能, 慢性腎不全症例の合併症として不整脈, 呼吸器合併症が多かった. 高齢者と若年者では不整脈で有意差を認めた (
p=0.033). 1枝と4枝バイパス以上の症例では在院日数に有意差を認めた (
p=0.0147). 遠隔期成績; 1984年1月から1994年12月までに施行された待機的CABGのうちLADにITAを使用した827例を検討した; 術後10年の累積生存率, 心臓死回避率, 心事故回避率は89.4%, 96.7%, 80.9%. 完全血行再建と不完全血行再建の2群では, 心事故回避率 (
p=0.0428), PTCA回避率 (
p=0.0343) で有意差を認めた.
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廣谷 隆, 亀田 正, 熊本 隆之, 城田 庄吾, 山野 元嗣
1999 年 28 巻 2 号 p.
94-100
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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近年, 両側内胸動脈 (ITA) を用いた冠状動脈バイパス手術 (CABG) の良好な遠隔成績が報告されている. 当施設では, 両側ITAの使用を1993年より開始し, 1995年より積極的に行うようになった. そこで95年1月より97年12月までの全CABG 219例のうち両側ITAを使用した119例の手術成績を検討した. 右ITAは, 左前下行枝 (77), 対角枝 (8), 回旋枝 (14), 右冠動脈近位部 (12), 遊離として右冠動脈遠位部 (8) に用いた. 病院死亡は5例 (4.2%) であった. 術後合併症としては, 胸骨感染2例, LOS 2例で, 出血による再開胸はなかった. 同時期の一側ITAを使用したCABGや静脈のみのCABGと比較して, 術後創感染率, 無輸血手術率に差は認められなかった. また, high risk 症例においても, 一側ITAを用いたCABGと比較して手術リスクは同様であった. 両側ITAを用いたCABGの手術成績は満足できるものと考えられた.
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加藤 泰之, 村田 紘崇, 北井 公二, 安岡 高志, 向井 資正
1999 年 28 巻 2 号 p.
101-104
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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心尖部に限局性に膿瘍を合併した僧帽弁感染性心内膜炎は非常に稀と考えられ報告する. 症例は49歳, 男性. 高血糖による意識障害のため精査. 加療目的にて入院. 翌日前胸部痛, 頭痛が出現し, 心エコーにて僧帽弁前尖に疣贅とIII/IIIの僧帽弁逆流を, また頭部CTにて多発性脳出血を認め, 感染性心内膜炎による脳塞栓, 脳出血を発症したと思われた. 心不全の進行のため入院10日目に手術を施行した. 心尖部心筋層内に限局性に膿瘍が形成されており, 膿瘍腔と心内腔とは交通していなかった. 僧帽弁置換術と膿瘍腔切除を施し, 心尖欠損部は8×5cmの Goretex patch にて修復した. 血液, 疣贅, 膿瘍の培養は陰性であった. 心尖部に膿瘍が形成された原因として, 脳出血と胸痛が同時に出現したこと, 心内腔と交通がなかったこと, 限局性であったことから, 疣贅による冠動脈塞栓により感染が波及したと考えられた.
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田中 攻, 川良 武美, 押領司 篤茂, 小須賀 健一, 青柳 成明
1999 年 28 巻 2 号 p.
105-108
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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症例は71歳, 男性である. 大動脈弁輪拡張症 (AAE) による大動脈弁閉鎖不全症 (AR) に対し, 大動脈弁置換術を施行した. しかし4年後に, 拡大した Valsalva 洞のため右冠状動脈の過伸展および狭窄を来して急性心筋梗塞を発症し, 大動脈基部置換術を必要とした. AAEにおける胸痛はARに起因し, Valsalva 洞の拡大による冠状動脈病変は稀である. それは, 瘤径が大きい洋梨状拡大型では上行大動脈が拡大するため, 冠状動脈の過伸展を来さず, また Valsalva 洞拡大型では瘤径が比較的小さいため, 冠状動脈の過伸展を来すことは少ないことによる. 自験例では Valsalva 洞の最大径が, 4年間で6cmから8.5cmまで急速に拡大したことが, 右冠状動脈の過伸展を生じた原因と考えられる. この様な経過をたどることは稀だが, AAEに対しては大動脈基部置換術を基本術式とすべきであると痛感した.
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下地 光好, 古謝 景春, 国吉 幸男, 宮城 和史, 久高 学, 上江洲 徹, 新垣 勝也, 赤崎 満
1999 年 28 巻 2 号 p.
109-112
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
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結核性胸部大動脈瘤破裂の1手術治験例を報告する. 症例は66歳の女性で肺結核, 脊椎カリエス(L4, 5) にて入院治療中であった. CT検査より胸部下行大動脈瘤を指摘され, 当科へ転科となり大動脈造影検査にて横隔膜上に嚢状瘤が描出された. 入院後6日目に喀血しショック状態となり, 動脈瘤破裂, 肺穿破の診断でF-Fバイパス下に瘤切除, 解剖学的経路におけるグラフト置換に加え大網被覆術を緊急で施行した. 採取した瘤壁の病理所見では Langhans 巨細胞や類上皮細胞の出現, リンパ球の浸潤を認めた. 術後経過は良好で54病日目に脊椎カリエスの治療を行うべく紹介先へ転院となった. 術後2年経った現在, グラフト感染や再発の兆候はない. 結核患者の治療においては, 本疾患の存在も念頭においた経過観察が必要であり, 早期診断早期治療に努めることが肝要である.
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金岡 祐司, 種本 和雄, 村上 貴志, 黒木 慶一郎, 杭ノ瀬 昌彦
1999 年 28 巻 2 号 p.
113-116
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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症例は53歳, 女性. 37歳時に高安動脈炎と診断され47歳時より大動脈弁閉鎖不全症, 異型大動脈縮窄症を指摘されていた. その後, 上記の進行および僧帽弁閉鎖不全症のため次第に症状が進行しNYHA 3度となった. 大動脈弁置換術, 僧帽弁形成術に加え上行大動脈-腹部大動脈バイパスを行った. 体外循環中は腹腔内臓器の虚血防止のため, 上行大動脈に加えて大動脈終末部に吻合したグラフトからも送血した. 術後大動脈内の圧較差は消失し, 自覚症状も著明に改善した. 高安動脈炎症例で本例のように異型大動脈縮窄症を伴う場合は, 体外循環使用にあたって臓器の低灌流など血流の不均衡の予防およびそのモニター等様々な注意が必要であると思われた.
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木戸 正訓, 服部 玲治, 藤原 祥司, 山野 元嗣, 川口 英樹, 二宮 英樹, 大谷 肇, 今村 洋二
1999 年 28 巻 2 号 p.
117-120
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
今回われわれは, 38歳男性の上行大動脈三腔解離を経験した. 術前弓部分枝血管は真腔, 腹部分枝血管は偽腔から分枝していると診断した. 手術は, 右房脱血, 左大腿動脈および右腋窩動脈送血で超低体温脳分離体外循環下に弓部大動脈部分置換術を施行した. 復温中, 解離の波及による腕頭動脈の閉塞をきたした. 右腋窩動脈送血を再開し, 腕頭動脈を人工血管置換しことなきを得た. 第一解離腔が DeBakey II型, 第二解離腔が DeBakey IIIb型で逆行性解離より上行大動脈が三腔解離構造を示した.
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津久井 宏行, 青見 茂之, 遠山 悟史, 国井 佳文, 西中 知博, 前田 朋大, 小柳 仁
1999 年 28 巻 2 号 p.
121-124
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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椎体椎間板炎を合併した感染性腹部大動脈瘤を2例経験した. 症例1は, 抗生剤の効果が認められたため, また糖尿病を合併していることから感染症を十分にコントロールし, 1年後に
in situ reconstruction を行った. 症例2は, 感染症が活動期であったが椎体椎間板炎による前縦靱帯穿孔により膿瘍が脊髄を圧迫し, 両下肢麻痺が進行性に悪化したため手術となった. 感染巣に人工血管を留置しない目的で Axillo-femoral bypass (A-Fx bypass) を行い, 瘤への血流を遮断した後に瘤内の感染巣の debridément を行い, 瘤壁で感染巣を閉鎖した. 両症例とも経過は良好であった. 感染性腹部大動脈瘤の治療においては, 感染症のコントロール状態, 患者の基礎疾患, 年齢, 日常生活動作などを考慮した上で決定すべきと考えられた.
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高沢 有史, 秋山 一也, 前田 朋大, 山西 秀樹, 赤澤 年正
1999 年 28 巻 2 号 p.
125-127
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
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心房細動の80歳の女性に脳梗塞が再発し, 経食道心エコーにより, 左心耳内に2×3cmの可動性血栓像を認めた. 体外循環心停止下に左心耳内部に付着した血栓を除去後, 左心耳入口部を縫合閉鎖した. 血栓は大部分は白色血栓化していた. 術後経過良好であり, 合併症もなく元気に退院した. 左房内血栓の診断には経食道心エコーが有効であり, 高齢者であっても塞栓症を繰り返す症例では検査を行い, 全身状態が良好であれば除去すべきと思われた. 本邦では非弁膜症性心房細動に伴う左房内血栓の除去術はこれまでに6例報告され, 80歳以上は本例が2例目であった.
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橋山 直樹, 梶原 博一, 平野 克典, 岩井 芳弘, 浜田 俊之, 佐藤 順
1999 年 28 巻 2 号 p.
128-131
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
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脂肪肉腫の心臓転移例に対して外科的切除を施行した. 術後経過は良好であったが, 治癒切除ではないため術後に化学療法を併用した. 術後約40カ月後の現在健在であるが, 脂肪肉腫の心臓転移例の予後は極めて不良であり, 更に十分な経過観察が必要である.
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木戸 正訓, 岡 隆紀, 藤井 弘史, 川口 英樹, 二宮 英樹, 大迫 茂登彦, 大谷 肇, 今村 洋二
1999 年 28 巻 2 号 p.
132-135
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
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動脈瘤は大動脈瘤が多く, 末梢動脈瘤は少ない. その中でも鎖骨下動脈瘤は比較的稀な疾患である. 原因は, 動脈硬化, 非特異性炎症, 胸郭出口症候群, 外傷などである. 今回われわれは57歳, 女性の右鎖骨下動脈瘤を経験した. その術中所見から右第4鯉弓動脈と右第6鯉弓動脈末梢部の遺残により右鎖骨下動脈に狭窄部ができ, poststenotic dilatation によって瘤が形成されたと推測された.
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上村 和紀, 宇藤 純一, 国友 隆二, 坂口 尚, 北村 信夫
1999 年 28 巻 2 号 p.
136-139
発行日: 1999/03/15
公開日: 2009/04/28
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症例は60歳男性. 58歳時に発作性心室頻拍を発症. このとき心臓エコー上, 右室前壁の肥厚を認め, 心臓腫瘍が疑われ経皮的心内膜心筋生検を施行されるも腫瘍組織診断が得られなかった. それから6カ月後, 完全房室ブロックのためペースメーカーを植え込まれた. 発症から2年後, CT上, 右室前面から大動脈基部に至る心筋内浸潤性の心臓腫瘍が疑われたため, 組織学的診断の確定と可及的外科的切除を目的として手術を施行した. 胸骨縦切開下に心筋生検を行い悪性リンパ腫の診断を得たが腫瘍はすでに広範に伸展しており根治切除は元より部分切除も不能であった. 一般に心臓悪性腫瘍は生前診断が難しく, 本例のごとく悪性疾患が疑われる場合には, 確実な直視下生検により可及的早期に診断を得ることは疾患の治療方針や予後を知るうえで妥当な選択肢の一つと思われた.
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