1999年5月から2004年8月までに経験した慢性透析患者の弁膜症手術症例43例を対象として術後成績と問題点を明らかにし,代用弁の選択について検討した.手術術式は大動脈弁置換術(AVR)20例,僧帽弁置換術(MVR)9例,AVR+MVR8例,僧帽弁形成術(MVP)6例,代用弁の種類はAVRで機械弁23例,生体弁5例,MVRで機械弁13例,生体弁4例であった.病院死亡を3例(7%)に認め,死因は心不全1例,肺炎1例,敗血症1例であった.遠隔期死亡は10例(23%)で心不全2例,肺炎2例,創部感染1例,脳梗塞1例,悪性腫瘍2例,閉塞性動脈硬化症1例,不明1例であった.1,3,5年生存率はそれぞれ81%,74%,47%,出血・血栓塞栓症といった合併症は術後早期・遠隔期を通して機械弁を使用した群(機械弁群)では29例中3例(10%),生体弁を使用した群(生体弁群)で9例中0例(0%)であり,両群間に有意差は認めなかった(
p=0.25).また,生体弁の早期劣化(19ヵ月,24ヵ月,50ヵ月)による再手術を3例経験した.慢性透析患者における代用弁の選択は,機械弁群と生体弁群で出血・血栓塞栓症といった合併症に差はなく,諸外国に比べ比較的予後の良好なわが国では,生体弁の早期劣化による再手術の危険性を考慮すると,基本的には機械弁を選択するのが良いと考えられた.
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