日本心臓血管外科学会雑誌
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23 巻, 5 号
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  • 佐藤 尚司, 小林 亨, 中埜 粛, 島崎 靖久, 金香 充範, 宮本 裕治, 平石 泰三, 松田 暉
    1994 年 23 巻 5 号 p. 301-306
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    われわれは大腿動静脈より比較的簡便に装着できる経皮的左心補助 (percutaneous left ventricular assist system: PLVAS) を開発し, 臨床応用している. PLVASは大腿静脈から経心房中隔経由にて左房脱血を行い, 遠心ポンプを用いて大腿動脈に送血する新しい左心補助システムである. 大動脈内バルーンパンピングまたは経皮的心肺補助下に心不全の進行, または改善しない心原性ショックを示した6例にPLVASを適用した. PLVASの装着は2方向X線透視下に, 安全かつ迅速に行えた. PLVASにより3~4l/minの流量補助が得られ, すべての症例において循環動態は改善し, 急性心筋梗塞の1例を救命することができた. PLVASに起因する合併症は軽微であった. PLVASは重症心不全に対する新たな機械的循環補助法として臨床上きわめて有用であると考えられた.
  • 小塚 裕, 柳生 邦良, 川内 基裕, 田中 修, 中島 淳, 古瀬 彰
    1994 年 23 巻 5 号 p. 307-313
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    教室では complicated PDAに対し, 補助手段として体外循環 (ECC) を積極的に用いて手術を行ってきた. ECC下に手術を行った complicated PDAの10症例を対象としてECCを用いた理由, 術式, 手術成績, 術後在院期間などについて検討を行った. ECCを用いた症例の年齢は平均46±17歳と高齢で, ECCを用いた理由は重複例を含み高齢8例, 動脈管の硬化・石灰化7例, window 様動脈管5例, 右側下行大動脈1例, 動脈管動脈瘤2例, 結紮術後再開通1例であった. 2例では正中アプローチ, 他の8例では左開胸アプローチ (F-Fバイパス) で手術を行い, 動脈管の石灰化の程度や動脈管動脈瘤の有無によって, 種々の術式を選択した. 術後の在院日数はECC非使用例に比べやや長かったが, 手術死亡・入院死亡ともになく, 満足しうる結果であった. Complicated PDAに対する手術では安全性を最も重視すべきであり, ECCを積極的に利用することは手術の安全性向上に有用であった.
  • 近藤 敬一郎, 佐々木 進次郎, 巽 孝彦, 蓑原 靖一良, 長谷川 滋人, 澤田 吉英, 武内 敦郎
    1994 年 23 巻 5 号 p. 314-320
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1974年から1992年8月までに教室で施行したCABG 712例中, 狭心症再発によりPTCAを34例 (4.8%), 再手術 (Re-do) を11例 (1.5%) に施行した. 不安定狭心症はPTCA群で82%と多く, 症状再発時にはPTCAが選択されることが多かった. 半数が術後1年未満の再発で吻合部狭窄等のグラフト不全が原因であり, 冠動脈病変によるものは4年以後にみられた. PTCA施行部位およびRe-doのグラフトの短期開存率はおのおの86%, 92%で有意差は認められなかった. 静脈グラフトのPTCA成功率は良好だが, 中枢側吻合部の再狭窄の発生率は高くRe-doを考慮すべきである. 両者において死亡例はなく, 急性心筋梗塞が各1例ずつみられた. PTCAは急性期における成績は良好であり第一選択とすべきであるが, Re-doによる長期生存率は高く, 再狭窄例にはPTCA後1年未満にRe-doを施行すべきである.
  • ワーファリン投与開始量の決定について
    橋本 雅史, 長田 鉄也, 工藤 龍彦, 石丸 新, 古川 欽一
    1994 年 23 巻 5 号 p. 321-327
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心臓手術後早期に0.1mg/kgのワーファリン単回投与を行い, 投与24時間のワーファリンおよびビタミンKの血中濃度の変化, 凝固系因子の変化について検討し, 術後早期における投与開始方法および投与量について検討を行った. 対象は心臓手術症例30例, 健常人20例を対照とした. 心臓手術後症例のプロトロンビン時間は, ワーファリン投与24時間後には中等度治療域に近い抗凝血効果が得られた. 一方, ビタミンK血中濃度はビタミンK1, ビタミンK2ともに心臓手術後群は対照群と比較して低値を示した. 両群間の抗凝血能の差は肝細胞におけるビタミンK供給量の差異が大きな要因と考えられた. したがって心臓手術後のワーファリン開始量によっては, ビタミンKの欠乏状態に応じ, 急激に凝血能の低下する危険性が示唆される. 心臓手術後早期のワーファリン開始量は0.1mg/kg程度より開始するのが安全かつ有効な方法であると考えられる.
  • 榊原 直樹, 川筋 道雄, 手取屋 岳夫, 上山 圭史, 高橋 政夫, 安田 保, 渡辺 洋宇
    1994 年 23 巻 5 号 p. 328-333
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    積極的胸膜切開下での内胸動脈 (ITA) グラフト剥離が胸膜温存した場合と比べて胸部合併症が多いか検討した. 対象はITA剥離を積極的胸膜切開下で行った50例 (I群) と胸膜を可及的温存した50例 (II群) とした. I群には左開胸例40例 (Ia群) と両側開胸例10例 (Ib群) があり, 胸膜は開窓のまま閉胸した. II群には胸膜を完全温存した22例 (IIa群) と胸膜穿孔を修復した28例 (IIb群) があった. I群はII群よりITA剥離時間が短く, 術後1週間以内の呼吸管理に関する因子では胸腔ドレーン排液量のみがIa群およびIb群でII群より有意に多かった. 術後1か月までの胸部合併症はIIa群以外で胸膜肥厚をわずかに認めたが, それ以外はIIb群に横隔膜神経麻痺に起因する胸水貯留を1例のみ認めた. 積極的胸膜切開法はITA剥離時間の短縮, ITA中枢側剥離の容易化, In-situ グラフト走行の最短化が得られる優れた術式で胸部合併症はほとんどなかった.
  • 末田 泰二郎, 渡橋 和政, 川上 恭司, 松浦 雄一郎
    1994 年 23 巻 5 号 p. 334-339
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    最近5年6か月の間に経験した遠位弓部大動脈瘤は17例であった. 内訳は真性瘤13例, III型解離性動脈瘤でエントリー部が嚢状となったもの4例であった. 17例中3例が破裂瘤であった. 手術補助手段として用いたのは遠心ポンプによる左心バイパス法 (LHB) 6例, 逆行性脳灌流法 (RCP) 5例, 選択的脳灌流法 (SCP) 6例であった. LHBは左鎖骨下動脈を含みそれより遠位側大動脈に瘤が存在する症例に, 左総頸動脈との間で大動脈を遮断して用いた. 手術死亡例はなかったが, 脳梗塞2例を認め, うち1例が入院死した. RCPは限局型の嚢状瘤や破裂緊急例に用いた. 最近の3例にはPCPS回路を用いて, 循環停止を併用して左開胸のみで, 無遮断下に手術を行った. SCPは弓部にまで病変の及んだ症例に用いて, 6例中 (弓部全置換4例) 1例を失った. 瘤の形態, 広がり, 緊急性により補助手段を使い分けた.
  • 佐藤 洋, 岡村 雅雄, 岡田 昌義, 松田 均
    1994 年 23 巻 5 号 p. 340-344
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Blue toe syndrome, および Myonephropathic metabolic syndrome を術前に併発したと考えられた腹部大動脈瘤手術症例を経験したので報告する. 症例は49歳, 男性で右腰部から右下腿にかけての疼痛を主訴とし, 右下肢とくに下腿以下の腫脹, 硬結, 足趾のチアノーゼを認めた. 腹部CT, 腹部超音波検査, 血管造影にて腹部大動脈瘤が判明したが, 右下肢の主要血管には閉塞性病変は認められなかった. 血中CPKは最高46,460IU/l, 尿中ミオグロビンは, 4,200ng/mlと著明に増加し, 腹部大動脈瘤の壁在血栓が遊離し下肢動脈を閉塞し, その後自然再開通したことにより Myonephropathic metabolic syndrome が発生したものと考えられ, 筋膜切開, 局所冷却, 大量輸液, 利尿剤投与による強制利尿を行い急性期をのりきった. その後右足趾のチアノーゼは乾性壊死に陥ったため切断し, 創が治癒した後に腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術を施行した. 現在術後2年目であるが患者は元気に社会復帰をなしている.
  • 澤村 俊比古, 細井 靖夫, 梅本 琢也, 安田 博之, 石川 真
    1994 年 23 巻 5 号 p. 345-349
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部アンギーナのー症例に血行再建術を施行し良好な結果をえたので報告する. 症例は75歳, 女性で, 食後の下腹部痛, 体重減少を主訴とし来院した. 上腹部にスリルを触れ血管雑音を聴取した. 腹部大動脈造影検査では腹腔, 上腸間膜および下腸間膜動脈は根部で閉塞しており, 内腸骨動脈から側副路を介し下腸間膜, 上腸間膜動脈が造影されていた. 腎動脈下の大動脈に壁不整があり, 内腸骨動脈にも有意の狭窄病変を認めることから血行再建術を施行した. Gore-Tex グラフトを用い腹腔動脈直上の腹部大動脈から上腸間膜動脈にバイパスし, ついで Gore-Tex グラフトに自家静脈の側枝をつけ腹腔動脈にバイパスした. 術後造影で Gore-Tex グラフトは開存していたが自家静脈グラフトは閉塞していた. 術後, 食後の下腹部痛は全く消失し, 約8kgの体重増加を認めた.
  • 植松 正久, 沢村 敏郎, 服部 哲也
    1994 年 23 巻 5 号 p. 350-354
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    在宅酸素療法中の慢性呼吸不全患者に偶発した大腿深動脈瘤に対し, 動脈結紮術を施行し良好な結果が得られた. 本術式は手術方法が容易で, かつ手術時間も短時間に施行できることから, poor risk の患者や破裂例に対しては, 試みても良い方法であると思われた.
  • 打田 俊司, 渡辺 直, 林 和秀, 山西 秀樹
    1994 年 23 巻 5 号 p. 355-359
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 男性. 大動脈弁閉鎖不全症 (AR) に対し大動脈弁置換術 (AVR) が行われた. 初回AVR時の上行大動脈径は45mmと軽度拡大を認めていたが放置されていた. 経過順調であったが, 術後4年目に前胸部痛を自覚. 次第に症状の増強と頻度の増加が見られた. 大動脈造影にて冠動脈起始部直上から腕頭動脈起始部近傍にかけて最大径90mmの拡大を伴う上行大動脈の解離が認められ, 解離性上行大動脈瘤切迫破裂と診断し準緊急的に Bentall 手術 (Piehler 変法) を行った. 術後は経過良好である. 以上の経過より, 軽度の上行大動脈拡張を伴った大動脈弁膜症に対しては将来的な瘤形成予防を考慮した術式の選択が必要と考えられた.
  • 河内 秀幸, 中村 昭光, 橋本 宇史, 中路 進
    1994 年 23 巻 5 号 p. 360-364
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    僧帽弁置換術後の左室破裂は救命率の低い重篤な合併症である. われわれは僧帽弁交連切開術13年後, 58歳男性の慢性透析患者の左房内血栓を伴う僧帽弁狭窄閉鎖不全症, 大動脈弁狭窄閉鎖不全症, 三尖弁閉鎖不全症に対して, 大動脈弁・僧帽弁置換術, 三尖弁形成術を施行した手術終了直後に血圧上昇を誘因とした左室破裂を経験した. 再度の人工心肺, 心停止下にパッチ補填法で修復可能であったが, 術後61日目に持続的携行型腹膜透析 (CAPD) が感染経路と考えられる敗血症のために失った. このような high risk group の僧帽弁置換術では術中の愛護的手術操作に加えて, 術直後の血圧上昇を避けるなどの全身管理技術が重要であると考えられる. また慢性透析患者の開心術に際してCAPDは血液透析 (HD) より有利と考えられているが, 感染経路とならない厳重な注意が必要である.
  • 手取屋 岳夫, 明元 克司, 笠島 史成, 安田 保, 上山 武史
    1994 年 23 巻 5 号 p. 365-368
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    動脈硬化性鎖骨下動脈閉塞症はその経路が持つ解剖学的特徴により症状を複雑にしていることが多い. 鎖骨下動脈起始部閉塞は, 前斜角筋第一肋骨付着部の機械的圧迫に動脈硬化性変化が加わった病態と考えた. これに対しては鎖骨下動脈-総頸動脈端側吻合を選択した. 鎖骨下動脈が内胸動脈分岐部から胸肩峰動脈分岐部まで閉塞していた症例は, 前斜角筋および鎖骨下筋による圧迫が関与した病態と考えられた. これに対しては, 人工血管を用い総頸動脈-腋窩動脈バイパス術を施行した. グラフトが斜角筋群および鎖骨下筋で圧迫されないように解剖学的経路より外側を通過させた. 鎖骨下動脈閉塞症に対する血行再建の術式選択は, 閉塞部の解剖学的特徴を理解することが重要で, 動脈と同時に神経圧迫も解除し, これにより上肢および肩甲部の神経症状を軽快させうると考えている.
  • 金沢 俊行, 小柳 勝司, 江本 秀斗, 堀越 茂樹
    1994 年 23 巻 5 号 p. 369-371
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは自殺企図による心内伏針を経験したので報告する. 症例は51歳, 女性, 自殺企図により左前胸壁より縫針を刺入したとのことで, 胸部単純X-P, 胸部CTをとったところ心室壁を貫く伏針を認めた. 胸部CT上心嚢液を認めたこと, 発熱があり感染も考えられたこと, 伏針の移動により新たな損傷も考えられたことなどによりわれわれは人工心肺スタンバイのもと緊急手術を行った. 手術は胸骨正中切開にて心臓に達した. 心膜を切開すると, 左前下降枝の右室側約2mmの心室壁に針の頭を認め, その先端は横隔膜に達していた. 心拍動下に針を抜去し, 出血のないことを確認し閉胸した. 術後経過は順調で術後14日に退院となった.
  • 九鬼 覚, 松村 龍一, 奥田 彰洋
    1994 年 23 巻 5 号 p. 372-375
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    無名動脈起始部に限局した嚢状動脈瘤に対して補助手段を使用せず単純遮断下に瘤切除および血行再建術を行い良好な結果を得た. 本例では術前の Matas' test 下の脳血管造影検査では対側よりの cross-filling は良好であり, 単純遮断法による血行再建術は症例を選択した上で施行すれば有用な術式であると考える.
  • 山本 典良, 今井 茂郎, 元廣 勝美
    1994 年 23 巻 5 号 p. 376-379
    発行日: 1994/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で, 主訴は左側頸部と左肩部の疼痛である. CT検査で同部の出血を確認できたが, さらに血管造影を施行し肋頸動脈瘤破裂の診断を得た. 同時に出血部中枢側をバルーンカテーテルで閉塞させ出血をコントロールした後, 手術を施行した. 到達方法に苦労する部位であり, また von Recklinghausen 病の合併症のため, 血管が脆かったが, 出血部位の詳細な検討がなされていたため視野が得易く, 瘤根部にて結紮でき救命しえた. von Recklinghausen 病に合併する血管病変は多彩であり, また病変部は非常に脆く弱いため, 術前血管造影は重要と考える.
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