再生不良性貧血は汎血球減少を特徴とする症候群であり,心臓手術時には出血量の増加と術後感染症が問題となる.今回再生不良性貧血を合併した僧帽弁閉鎖不全症に対し,右小開胸による僧帽弁形成術を施行し良好な経過が得られたので報告する.症例は70歳女性.労作時呼吸苦を主訴に当院を受診した.この際,汎血球減少(WBC 2,150/µl,Hgb 8.8 g/dl,PLT 5.0×10
4/µl)を認め骨髄生検の結果再生不良性貧血と診断された.また,心臓超音波検査において重度の僧帽弁閉鎖不全症と診断され,手術目的に紹介となった.白血球および血小板低下に対し,術前に顆粒球コロニー刺激因子を投与し,また手術時に濃厚血小板30単位を輸血し右小開胸による僧帽弁形成術を施行した.術後は感染症や出血による合併症はなく経過は良好であった.本症例のような出血傾向と易感染性の症例に対して右小開胸による手術は,有用な選択肢と成り得ると思われた.
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