日本心臓血管外科学会雑誌
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27 巻, 2 号
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  • 山村 光弘, 青木 啓一, 朝倉 利久, 田所 雅克, 古田 昭一, 宮本 巍
    1998 年 27 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    開心術における予防的抗生剤としてバンコマイシン (以下VCMと略) を投与し, 開心術におけるVCMの薬物動態を検討した. 聴力障害がなく腎障害も認めない初回・待期的開心術8例 (男性4例・女性4例, 平均年齢58.0±7.9歳) を対象とした. 術式はCABG 5例, MVR+TAP 1例, 心房中隔欠損孔閉鎖術1例, 左房粘液腫摘出術1例であった. 皮膚切開開始前にVCM1gを約40~50分かけて点滴静注し, 投与終了時より血中濃度を20分ごとに測定した. また人工心肺開始時に右心耳組織の一部を採取し, 組織内濃度を測定した. 血中濃度は投与終了後に55.3±10.1μg/mlの最高値をとりその後徐々に減少し, 体外循環中は7.6~9.9μg/mlで経過した. 右心耳の組織内濃度は18.9±6.9μg/mlで, 血中濃度との比は0.34であった. 通常のブドウ球菌に対する有効血中濃度は2.0~6.5μg/mlとされており, 手術開始前のVCM1gの予防的投与で有効血中濃度は維持されると考えられた.
  • 治療方針について
    藤井 弘史, 得能 正英, 大宮 英泰, 川口 英樹, 木戸 正訓, 二宮 英樹, 大迫 茂登彦, 大谷 肇, 田中 一穂, 今村 洋二
    1998 年 27 巻 2 号 p. 76-80
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    当教室における感染性心内膜炎 (IE) に対する治療方針は適切な濃度の感受性抗生剤の投与により血液培養が陰性化, 白血球が正常化, CRPが陰性になるのを待って手術を施行, またさらに僧帽弁のIEで弁の破壊が弁輪部まで及んでいないものに対しては可及的に弁形成を試みるのを基本としている. 当教室で外科治療を行ったIE 13例について術前経過, 手術方法, 術中採取した病理組織からIEの治療方針について検討したところ次の結果を得た. (1)感染を可及的に鎮静化させたのちに手術を行うことで良好な成績が得られた. (2)血液データで炎症が鎮静化しても術中採取した標本で活動期の炎症反応や起炎菌が認められており, 安易に抗生剤を中止すべきでなく最終的には外科的な病巣の郭清が必要である.
  • 西本 昌義, 福本 仁志, 西本 泰久, 大川 博永, 冨士原 彰
    1998 年 27 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    80歳以上の破裂性腹部大動脈瘤 (超高齢者群) の非手術症例も含めた治療成績を80歳未満症例 (対照群) と比較検討した. 腹部大動脈瘤がすでに診断されていた症例は超高齢者群で18例中10例 (55%) で, 対照群の41例中9例 (22%) に比し有意に高率であった. 来院時心肺停止症例やショック例の割合は2群間で差は認めなかった. 人工血管置換術を完遂しえた症例は超高齢者群で61.1%, 対照群で90.2%より有意に低率であった. 非手術例を含めた全体の生存率はそれぞれ38.9%, 61.0%と超高齢者群で不良であったが, 人工血管置換術例の生存率や術後合併症頻度には有意差は認めなかった. 超高齢者ではショックに対応できずに手術前に死亡する症例が多い一方で, 人工血管置換術を完遂できたものは治療成績が良好なことを考えると, 非破裂状態での積極的手術を行うべきである.
  • 厚美 直孝, 五味 聖吾, 阿部 正一, 重田 治, 軸屋 智昭, 榊原 謙, 寺田 康, 三井 利夫
    1998 年 27 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    小児心臓手術後急性期に大量の肺出血をきたした7例について検討した. 疾患の内訳は, 非開心術が Fallot 四徴症 (TOF)+肺動脈閉鎖症 (PA) 1例, 心内膜床欠損症 (CAVC)+大動脈縮窄症 (CoA)+動脈管開存症 (PDA) 1例, 開心術が心房中隔欠損症 (ASD)+心室中隔欠損症 (VSD)+PDA1例, 総動脈幹症 (PTA) 2例, 総肺静脈還流異常症 (TAPVC) 1例, CAVC1例であった. 7例中5例を術後8から54日に呼吸不全のため失った. CAVC+CoA+PDAは鎖骨下動脈フラップ法の術後で, 高圧が伝搬したことによる肺毛細血管の拡張と破綻が原因として考えられ, TOF+PAは体肺動脈短絡術後で網状の側副血行の破裂が原因として考えられた. 開心術の5例は, 全例が術後肺高血圧の治療に難渋した症例であった. これらの症例にも毛細血管の破綻が原因として疑われた症例があり, 発生すると致命的となる合併症であるため注意が必要と考えられた.
  • 櫻田 卓, 菊池 洋一, 光島 隆二, 中島 慎治, 草島 勝之
    1998 年 27 巻 2 号 p. 92-95
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    ゼラチン被覆 (Gelseal®) 4分枝付き人工血管を用いた弓部大動脈瘤手術を1996年4月より12月までに9例に施行し, その操作性, 手術成績および問題点について検討を行った. ゼロポロシテイーであるこの人工血管は preclotting の必要がないうえ, 分枝作成の煩わしさもなく, 特に緊急手術時など人員および時間の制約のある場合に有用であると思われた. 手術成績は, 死亡例なく, 急性I型大動脈解離の1例に術後に対麻痺を認めたが, 全例軽快退院し, 良好な結果を得た. しかし, 術後1か月で20%程度のグラフト径の拡大を認めており, 今後の厳重な経過観察を要すると思われた. また, 術後2週目にCRPおよび白血球値の再燃を認めた. 同時期に穿刺を要した心嚢液および胸水の貯留を1例ずつにみたが, グラフトとの関連は不明であった.
  • 久高 学, 古謝 景春, 国吉 幸男, 赤崎 満, 宮城 和史, 下地 光好, 上江州 徹, 草場 昭
    1998 年 27 巻 2 号 p. 96-99
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部限局型解離性大動脈瘤は比較的稀な瘤形態である. 今回われわれは本症に対する手術を行う機会を得たが, 瘤が上腸間膜動脈直下より起始しており, 腹部主要4分枝再建を含む人工血管置換術を施行した. 症例は44歳, 女性で, 突然の腰痛で発症し, 精査目的で紹介入院となった. 当科におけるCT検査および大動脈造影で腹部限局型解離性大動脈瘤の診断を得た. 手術は側枝付き人工血管を用いて腹部主要4分枝再建および肋間・腰動脈再建をもあわせて施行した. 術中の臓器保護の観点から, 上腸間膜動脈と両側腎動脈に選択的に灌流を行った. 術後経過は良好で, 対麻痺や肝・腎障害の発生はなく, 術後造影結果も良好であった. 術後35日目に軽快退院した.
  • 山村 光弘, 宮本 巍, 山下 克彦, 佐賀 俊彦, 八百 英樹, 安岡 高志, 井上 和重, 南村 弘佳, 和田 虎三, 河中 正裕
    1998 年 27 巻 2 号 p. 100-103
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    患者は65歳・女性, 8年前より末端肥大症を指摘されるも放置していた. 1994年4月に急性心筋梗塞にてPTCA (#6, #11) を施行された. 同年8月より胸痛発作が頻回となりCCUに入院, CAGにて#6完全閉塞, HL75%, #11 75%と再狭窄および冠状動脈病変の進行を認めた. 同年9月27日緊急CABG3枝 (LITA-LAD, SVG-HL-Cx) を施行した. 術前成長ホルモン (growth hormone, 以下GHと略) は65.5ng/ml (正常値5ng/ml以下) で, 人工心肺中は92.7ng/mlまで上昇したが, 手術終了時には15.9ng/mlに減少した. しかし第3病日より再度上昇し術後2週目には125ng/mlと最高値を示した. それに伴い血糖値のコントロールも不安定となり, 術後はブロモクリプチンの増量を必要とした. 末端肥大症に合併した不安定狭心症は極めてまれである. 術中・術後GHの変化には定説はないが2次性糖尿病からみても周術期のGHのコントロールが肝要であると思われる.
  • 朽方 規喜, 寺田 功一, 落 雅美, 浅野 哲雄, 日置 正文, 田中 茂夫
    1998 年 27 巻 2 号 p. 104-106
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    内臓正位の修正大血管転位症 (SLL) にAAE, ARを合併する症例を経験した. 症例は52歳, 男性. 主訴は労作時呼吸困難. 1983年, 完全房室ブロックのためペースメーカー植込み術を施行した. 1994年, NYHA III度の心不全となった. 心臓カテーテル検査は, Seller's 分類で大動脈弁閉鎖不全2度, 左側房室弁閉鎖不全2度. 体心室 (右室) 造影で駆出率25%と低値であった. Cardell 分類B3で, 冠動脈は Shaher type 4であった. 手術は, 27mm St. Jude Medical 弁と30mm woven Dacron graft で composite graft とし冠動脈用導管を用いて Cabrol 手術を施行した. 左側房室弁は三尖構造を認め, 右房から経中隔アプローチで到達し, Kay 法で形成した. 術後, 胸部X線写真は心胸郭比52%, NYHA I度に改善した. 術後観察期間は2年であるが良好な経過である.
  • 吉成 大介, 石川 進, 大滝 章男, 佐藤 泰史, 小谷野 哲也, 山岸 敏治, 大木 聡, 荻野 隆史, 森下 靖雄
    1998 年 27 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    人工血管繊維の破綻により術後遠隔期に非吻合部仮性動脈瘤をきたした稀な1例を経験した. 症例は77歳, 男性で, 1982年に右総腸骨動脈の閉塞性動脈硬化症に対して, Cooley double velour knitted Dacron graft を用いた左外腸骨-右大腿動脈間バイパス術を受けた. 11年8か月後に右鼠蹊部に人工血管破裂による仮性動脈瘤を生じたため, 人工血管の部分切除および Hemashield® 人工血管による置換術を行った. 非吻合部仮性動脈瘤の成因としては, 鼠蹊靱帯からの機械的外力による人工血管繊維の劣化が最も考えられた.
  • 朽方 規喜, 平野 滋之, 平田 知己, 久吉 隆郎, 日置 正文, 田中 茂夫
    1998 年 27 巻 2 号 p. 111-113
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    黄疸を呈した収縮性心膜炎の一例を経験した. 症例は28歳男性. 主訴は労作時呼吸困難. 高ビリルビン血症と胸部X線像で心膜の石灰化を認めた. 心臓カテーテル検査で中心静脈圧上昇 (24mmHg), 両心室の dip and plateau, 卵円孔開存 (PFO) を認めた. 手術は体外循環下に, 右房全体から右室自由壁にかけて著明に肥厚し一部石灰化した心膜を切除し, PFOを閉鎖した. 術後, 心機能および肝機能は回復し社会復帰した.
  • 有泉 憲史, 橋本 良一, 虎走 英樹, 加賀 重亜喜
    1998 年 27 巻 2 号 p. 114-117
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    脊椎カリエスに合併した慢性破裂性腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を行った. 腹部大動脈の後壁には17×17mmの punched out defect が存在し, 仮性動脈瘤は著明に変形した推体に連続していた. 瘤内部には陳旧性の器質化血栓を認めた. 発生機序は, 脊椎炎の炎症が腹部大動脈に波及し, 仮性動脈瘤を形成したものと推測された. 形態的には腹部大動脈瘤の sealed rupture あるいは chronic contained rupture と類似していたが, 本例は非常に稀な病態と考えられた.
  • 池田 英二, 名和 清人, 内藤 稔, 藤田 康文
    1998 年 27 巻 2 号 p. 118-120
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は25歳, 妊娠第38週の女性・左腰部痛を主訴に当院産婦人科を受診, 胎児心音微弱となり緊急帝王切開術が施行され, 後腹膜に血腫が認められたが軽度のため放置された. 術後, 腰部激痛をきたしショックに陥った. 腹部CT検査にて左腎動脈瘤破裂を疑い, 外科で緊急手術を行って, 腎動脈瘤破裂を確認した. しかし3分枝分岐部の瘤であり, 患者の全身状態も不良のため腎動脈再建は困難と判断, 左腎全摘術を行った. 母児ともに順調に経過した. 摘出標本にて, 瘤は周径27mmで下半周にわたり破裂していた. 病理組織では, 内弾性板は断裂し中膜の平滑筋線維は部分的に消失して線維芽細胞に置換されていた. 破裂性腎動脈瘤の予後は不良であり, 救命率向上のためには本症を念頭においた早期診断, 早期治療が必要と思われた.
  • 竹谷 哲, 門場 啓司, 澤 芳樹, 今川 弘, 西 宏之, 松田 暉
    1998 年 27 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈弁病変に対する弁形成術は以前より報告されているが, その形成は困難なことが多い. とくに大動脈二尖弁は弁輪の狭小化, 自己弁の変性, 石灰化より手術操作が困難なことがある. 今回, われわれは大動脈二尖弁による大動脈弁閉鎖不全症 (以下AR) に対し種々の形成術を組み合わせ大動脈弁形成術を施行した一例を経験し良好な結果を得たので報告する. 症例は31歳の男性. 10年前より心雑音を指摘され次第に労作時呼吸困難を認めたため精査施行したところ大動脈弁は二尖弁であり, 高度のAR (IV度) を認めた. 手術は raphe の一部を切除した後に弁尖縫縮を行い, 弁尖の接合性を良くするために redundant cusp の両側縁で交連部 cusp plication とさらに subcommissular annuloplasty を追加した. 手術は無輸血手術で可能であり, 術後経過は良好で, 大動脈弁逆流の残存, 圧較差を認めず, 弁尖の接合性は良好であった. 本症例では交連部における交連形成および肥厚した弁尖に対する切除縫合が有効な手技と考えられた.
  • 八百 英樹, 宮本 巍, 山下 克彦, 井上 和重, 南村 弘佳, 和田 虎三, 田中 宏衛, 良本 政章, 平井 康純, 杉本 智彦
    1998 年 27 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は71歳女性, 1987年1月に Carpentier-Edwards ウシ心膜弁 (以下CEP弁) による僧帽弁置換術を施行された. 1992年4月貧血の増悪, LDHの高値, 夜間の褐色尿により発作性夜間血色素尿症 (以下PNH) と診断されプレドニン25mg/日を投与された. 1993年2月ごろよりうっ血性心不全をきたし, 胸部 cine film によりCEP弁のステントワイヤーの3か所の折損が確認され生体弁機能不全症と診断された. 同年3月16日 Hancock IIブタ大動脈弁による再僧帽弁置換術を施行した. 摘出したCEP弁はステント付着部の弁膜が3か所で亀裂が生じていた. 再僧帽弁置換術後第45病日に軽快退院し, 近医にてPNHに対しプレドニン5mg/日を投与されているが通常の日常生活に復帰している.
  • 木川 幾太郎, 福田 幸人, 赤城 治彦, 池田 晋悟, 鰐渕 康彦
    1998 年 27 巻 2 号 p. 129-131
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は胸部大動脈疾患に関する家族歴をもつ非 Marfan 症候群の64歳, 女性. 上行大動脈径38mm, Valsalva 洞径48mmと Valsalva 洞限局型の軽度大動脈弁輪拡張症 (AAE) による大動脈弁閉鎖不全 (AR) に対して大動脈弁置換術 (AVR) を予定した. しかし手術待機中に急性A型大動脈解離を併発し, 心タンポナーデから心停止に至り緊急手術となった. 上行大動脈にエントリーを認め, 大動脈弁には器質的な異常はなかった. 大動脈基部置換術 (Cabrol 手術) を行い救命した. 本症例のように瘤径が小さくても, あるいは典型的な洋梨型でなくとも, AAEには解離の合併が多いことを念頭におき手術のタイミングを図る必要があること, また同様の理由により, このような非典型的なAAEに対してもAVRではなく, 当初より大動脈基部置換術を手術方針とすべきと思われる.
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