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相馬 裕介, 舘林 孝幸, 野地 智
2015 年 44 巻 5 号 p.
256-260
発行日: 2015/09/15
公開日: 2015/10/16
ジャーナル
フリー
傍腎動脈腹部大動脈瘤(pararenal AAA)に対するステントグラフト治療では,開窓型ステントや枝付きステントに加えてチムニー法が用いられることがあり,チムニー法に関する文献も散見される.症例は82歳男性.以前に腎動脈下腹部大動脈瘤に対してステントグラフト内挿術が施行されていたが,pararenal AAAの拡大を認めたため両側腎動脈チムニー法を用いたステントグラフト内挿術を施行した.術後は腎機能障害と急性膵炎を認めたが,術後14日目に軽快退院した.チムニー法に関しての長期的な治療成績の報告はないが,術後良好に経過しているとする報告が多い.チムニー法は開腹手術のハイリスク症例における治療法の一つとして有用であると考えられた.
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山名 孝治, 櫻井 一, 野中 利通, 櫻井 寛久, 種市 哲吉, 大塚 良平, 大沢 拓哉
2015 年 44 巻 5 号 p.
261-265
発行日: 2015/09/15
公開日: 2015/10/16
ジャーナル
フリー
症例は14歳男児.6歳時の心エコーで大動脈弁輪拡大を指摘され,身体所見と併せて遺伝子検索でLoeys-Dietz症候群と診断された.その後の経過観察でバルサルバ洞の急速な拡大と中等度の大動脈弁閉鎖不全を認め,9歳時に手術目的で当院紹介となった.大動脈弁は3尖で器質的変性を認めず,自己弁温存大動脈基部置換術を施行した.術後経過は良好であり,外来で経過観察をしていた.平成26年12月に胸痛とCRP高値にて近医から紹介となり,心エコー,胸部CTでStanford A型急性大動脈解離と診断し緊急手術を行った.前回の人工血管末梢側吻合部のすぐ末梢から弓部大動脈中枢までの巨大なtearを認め,elephant trunkを用いた全弓部置換術を施行した.術後経過は良好であり術後17日目に退院となったが,術後13日目の胸部CTで新たに左鎖骨下動脈の解離,拡大を認めた.大動脈に残存解離腔は存在しなかった.Loeys-Dietz症候群は,大動脈瘤や解離など血管系症状と骨格系所見が特徴的な常染色体優性遺伝の疾患である.Marfan症候群に比べると大動脈径が小さくても解離を発症する危険が高く,大動脈瘤に対しては早期積極的介入が推奨されている.今回自己弁温存基部置換術後5年後にStanford A型大動脈解離を発症し救命し得たLoeys-Dietz症候群の1例を経験した.組織の脆弱性を鑑みるに,厳密な経過観察が必要であると思われる.
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遠藤 由樹, 菊地 慶太, 鈴木 耕太郎, 松山 孝義, 畝 大, 深田 靖久, 倉田 篤
2015 年 44 巻 5 号 p.
266-270
発行日: 2015/09/15
公開日: 2015/10/16
ジャーナル
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症例は81歳男性.Stanford A型,早期血栓閉塞型急性大動脈解離の診断にて当院搬送となった.高齢でありかつ血栓化偽腔は7mmと薄いため,降圧療法にて経過観察を行ったが,経過中に上行大動脈の拡大を認めたため慢性期での手術を行った.手術は胸骨上部部分正中切開によるMinimally Invasive Cardiac Surgery(MICS)にて上行大動脈人工血管置換術を施行した.術後の経過は良好で疼痛も少なく術後第11病日独歩退院となった.超高齢者に対しMICSによる上行大動脈人工血管置換術を施行し良好な結果を得ることができたため文献的考察を含めて報告する.
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川合 雄二郎, 中尾 充貴, 新津 宏和, 豊田 泰幸, 津田 泰利, 白鳥 一明, 竹村 隆広
2015 年 44 巻 5 号 p.
271-274
発行日: 2015/09/15
公開日: 2015/10/16
ジャーナル
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梅毒性大動脈瘤はペニシリンの登場以来,稀な疾患となった.梅毒性大動脈瘤は大動脈弁輪拡大を来し,大動脈弁閉鎖不全症を合併することが知られている.今回われわれは,大動脈弁閉鎖不全症を合併した梅毒性大動脈瘤に対して自己弁温存基部置換術および全弓部置換術を施行し良好な結果を得られたので報告する.症例は55歳男性.大腸憩室にて他院入院中に施行されたCTにて上行大動脈瘤を指摘され当院紹介となった.術前CTでは最大短径68 mmの上行大動脈~弓部大動脈瘤を認めた.心エコーでは大動脈弁輪拡大に伴う重症大動脈弁閉鎖不全症を認め,弁尖の変化は軽度であった.術前検査にて梅毒検査陽性であり,梅毒性大動脈瘤が疑われた.術中所見で大動脈弁弁尖の器質的変化を認めず自己弁温存が可能と判断し,reimplantation法による自己弁温存基部置換術+全弓部置換術を施行し,合併症なく術後11日目に退院した.
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上野 正裕, 井ノ上 博法, 山本 啓介, 森下 靖雄
2015 年 44 巻 5 号 p.
275-278
発行日: 2015/09/15
公開日: 2015/10/16
ジャーナル
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大動脈解離術後遠隔期に人工血管高度屈曲による溶血性貧血をきたした1例を報告する.症例62歳,女性.10年前に急性大動脈解離を発症し,弓部大動脈人工血管置換術を施行されている.数カ月前から労作時呼吸困難が出現,2カ月前に溶血性貧血を指摘された.数回輸血を行ったが効果は一時的で,諸検査から人工血管屈曲による溶血が疑われたため再手術適応となった.中等度以上の大動脈弁閉鎖不全と左鎖骨下動脈閉塞も合併していたため,手術は屈曲部の人工血管をトリミング,再縫合とともに,大動脈弁置換術と左鎖骨下動脈再建も併施した.術後経過良好で,溶血所見も消失した.
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服部 滋, 柚木 継二, 迫田 直也, 立石 篤史, 藤田 康文, 久持 邦和, 吉田 英生
2015 年 44 巻 5 号 p.
279-282
発行日: 2015/09/15
公開日: 2015/10/16
ジャーナル
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Kommerell憩室は比較的稀な疾患であるが,大動脈解離や破裂をきたすと致死的となる場合が多い.本症例は74歳の女性で,主訴は摂食中の胸部不快感であった.造影CT検査を施行したところ右大動脈弓,異所性鎖骨下動脈に伴う最大短径46 mmのKommerell憩室を認め,上部食道を高度に圧排していた.手術は二期的に行った.一期手術として異所性左鎖骨下動脈と左総頸動脈を人工血管でバイパスし,左鎖骨下動脈の起始部を結紮した.二期手術として右拡大側方開胸となる右第4肋間開胸・胸骨下部部分切開法で開胸し弓部下行大動脈置換術を施行した.良視野で安全に手術を行うことができた.術後,摂食中の胸部不快感は改善しその他大きな合併症なく退院した.Kommerell憩室に対して,これまで右拡大側方開胸下に弓部下行大動脈置換術を施行した報告は少なく,当科におけるKommerell憩室の治療経験を踏まえ,文献的考察を加えて報告する.
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山本 経尚, 岡 克彦, 坂井 修, 川尻 英長, 山崎 祥子, 渡辺 太治, 神田 圭一, 夜久 均
2015 年 44 巻 5 号 p.
283-287
発行日: 2015/09/15
公開日: 2015/10/16
ジャーナル
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狭小腹部大動脈終末部を伴った囊状腹部動脈瘤に対し,Endurant IIステントグラフトシステムを用いた腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)後早期に脚狭窄を来たし再治療を要した1例を経験したので報告する.症例は81歳,男性.Reversed taper状かつ屈曲を有する中枢neck,細い腹部大動脈終末部,太い下腸間膜動脈を伴った巨大囊状腹部大動脈瘤に対して,Endurantを用いたEVARを施行した.術中,狭小腹部大動脈終末部で右側脚は二重に,左側脚は一重になったため,左側脚内にself-expandable stentを予防的に留置した.初回術後4日目に,跛行症状は認めなかったものの,左ABIは0.88と低下し,CT上ステントグラフト左脚が,狭小腹部大動脈終末部で右脚により圧排され高度狭窄を呈していた.そのため初回術後14日目にballoon-expandable stentを用いたkissing stentによる血管内治療で狭窄を解除し,左ABIは0.99と改善した.再手術後15カ月経過した現在,再狭窄やABIの低下なく経過している.終末部腹部大動脈径が細い症例に対しEndurantを選択した場合には,脚狭窄を生じる可能性があり注意が必要である.
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出淵 亮, 徳永 滋彦, 長 知樹, 安田 章沢, 磯松 幸尚, 益田 宗孝
2015 年 44 巻 5 号 p.
288-291
発行日: 2015/09/15
公開日: 2015/10/16
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大動脈弁位一葉傾斜機械弁下パンヌス形成による弁下狭窄に対して,CUSA(Cavitron ultrasonic surgical aspirator:超音波外科用吸引装置)を用いた経弁的パンヌス切除が有用であった症例を報告する.症例は77歳女性.30年前に大動脈弁狭窄症に対してBjörk-Shiley弁(23 mm)による大動脈弁置換術を施行した.今回,石灰化を伴う弁下パンヌス形成による重症大動脈弁狭窄症に対して手術の方針となった.術中所見では,機械弁に開放制限はなく,major orifice側の弁下パンヌスによる弁下狭窄が原因であった.バルサルバ洞の石灰化が著明であり視野不良で術野展開が非常に難しく,単純大動脈弁再置換術は困難と判断し,経弁的パンヌス切除を試みた.パンヌスは石灰化が著明であったためメスによる切除は不可能であり,CUSAを用いて弁下石灰化パンヌス切除を試行し,ほぼ完全にパンヌスを切除でき,弁下狭窄を解除することができた.術後大動脈弁通過流速は低下し,術後1年半となる現在まで流速の上昇なく外来経過観察中である.
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中嶋 和恵, 吉村 幸浩, 外山 秀司, 前川 慶之, 皆川 忠徳, 貞弘 光章
2015 年 44 巻 5 号 p.
292-295
発行日: 2015/09/15
公開日: 2015/10/16
ジャーナル
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Von Willebrand病を合併した患者に対し大動脈弁置換術(AVR)を施行した.症例は30歳男性で,13歳時に軽度の大動脈弁閉鎖不全症(AR)を指摘されていた.当時施行した心臓カテーテル検査の際に出血傾向を認め,von Willebrand病と診断された.今回AR IV度と増悪がみられたため,手術の方針とした.手術は通常どおり体外循環下に,機械弁を用いたAVRを施行した.術前検査で第VIII因子活性の低下を認めたため,術前より凝固因子補充療法を開始し,周術期に異常出血を認めなかった.他家血輸血を必要とせず,順調な経過を得た.
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大山 翔吾, 大内 真吾, 岡林 均
2015 年 44 巻 5 号 p.
296-298
発行日: 2015/09/15
公開日: 2015/10/16
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症例は55歳女性.平成8年に慢性大動脈解離,大動脈弁輪拡張症,大動脈弁閉鎖不全症,Marfan症候群で近医から当院へ紹介となり,Bentall手術,上行弓部大動脈全置換術(CarboMedics 25 mm,Hemashield 28 mm)を施行した.その後,平成15年に腹部大動脈瘤に対してY型人工血管置換術(Gelwave 22×11 mm),平成19年に胸部大動脈瘤に対して下行大動脈置換術(Hemashield 28 mm),平成22年に胸腹部大動脈瘤に対して胸腹部大動脈置換術(Hemashield 24 mm 4分枝付)を施行した.外来で経過観察中に冠動脈近位部が瘤化し,左冠動脈は17 mm,右冠動脈は25 mmに拡大したため,手術の方針となった.手術は以前のCarrel patch部分の上行大動脈を人工血管(J graft 28 mm)で再置換し,左右の冠動脈を切除し,大伏在静脈で置換した.手術翌日に抜管した.冠動脈瘤は病理組織で冠動脈の三層構造が保たれている真性瘤だった.術後第12病日に3DCTでグラフトの開存を確認した.第17病日に独歩退院した.Marfan症候群における両側の冠動脈真性瘤の報告は少なく,稀な症例と考えられたため,報告する.
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