日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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22 巻, 4 号
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  • 仁科 健, 岡林 均, 嶋田 一郎, 榎本 栄, 大野 暢久, 湊谷 謙司, 亀山 敬幸, 宮本 忠臣
    1993 年 22 巻 4 号 p. 319-321
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腎動脈下の腹部大動脈瘤に対し経腹膜的到達法16例と腹膜外到達法25例との比較検討を行った. その結果, 術中比較として手術時間に有意差はみられなかったが, 出血量・輸血量は腹膜外到達法施行時よりセルセーバーを使用し, 腹膜外到達法が有意に少ない傾向にあった. 輸液量には有意差はなかった. 術後比較として経口水分摂取開始時間・歩行開始時間は腹膜外到達法が有意に短時間であり, 鎮痛剤の使用回数も有意に少なかった. さらに, イレウスの合併例は1例も存在しなかった. 経腹膜的到達法に比べ腹膜外到達法は, 手術時間にも差はなく離床が早く術後の創部痛も少ないことから良い方法であると思われた.しかし, まれに側腹部の膨隆をきたすものがあり, 術後早期より腹帯を使用しているが, 今後さらに経過観察が必要と思われた.
  • 解離腔血栓閉塞の有無と大動脈径からの検討
    佐々木 建志, 田中 茂夫, 池下 正敏, 杉本 忠彦, 庄司 佑, 高野 照夫, 田中 啓司, 隈崎 達夫, 大矢 徹
    1993 年 22 巻 4 号 p. 322-327
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Stanford B型大動脈解離の急性期症例61例に保存的内科治療を優先する方針のもとに治療を行い, このうちの非手術症例48例を対象として, 発症早期の大動脈径と解離腔の血栓閉塞の有無が, 本症の遠隔予後や残存解離腔の運命に与える影響について検討を行った. 経過中, 手術を必要とせず生存退院しえた症例は, 解離腔血栓閉塞例 (T型) の92%, 開存例 (P型) の61%で, P型では手術症例や病院死が多かった. 発症時大動脈径はP型がT型よりも大きく, 経過中拡大傾向を示したが, T型は縮小傾向を示した. 遠隔予後をみると, 生存曲線からはT型とP型で有意差はなく, 発症時の大きい大動脈径, 真性胸部大動脈瘤の存在などが予後に影響する因子として重要であった. 残存解離腔の改善率はT型がP型より有意に良好で, また解離腔の改善例の予後は, 非改善例よりも良い傾向にあった. 以上より, 現在のP型の治療方針については再考を要すると考えられた.
  • 稲葉 雅史, 笹嶋 唯博, 和泉 裕一, 郷 一知, 吉田 博希, 大谷 則史, 東 信良, 久保 良彦
    1993 年 22 巻 4 号 p. 328-333
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1976年11月から1991年12月までに教室で施行した下肢閉塞性動脈硬化症に対する extra anatomic bypass 術 (EAB) 症例は100例165肢である. 術式は腋窩-大腿動脈バイパス (Ax-F) 26例, 大腿-大腿動脈バイパス (F-F) 27例, 大動脈-大腿-大腿動脈バイパス (Ao-F-F) 47例である. 5年一次累積開存率および生存率は, Ax-F 64.4%・20.8%, F-F 65.9%・51.1%. Ao-F-F 96.5%・70.4%であり, Ao-F-Fでは標準術式と遜色ない良好な結果が得られているが, Ax-F, F-Fでの遠隔成績はAo-F-Fに比較し有意に不良であった. したがって腹腔内感染症, 腹部手術の既往歴などの局所的要因は別としてEABの適応は主として高齢者 high risk の limb salvage 症例であるのはいうまでもないが, Ax-F, F-F術式は, 自力歩行に対する意欲のない生活活動性のきわめて低い例に限定すべきであり, 適応の拡大には慎重であるべきと考える.
  • 諸 久永, 小熊 文昭, 名村 理, 上野 光夫, 斉藤 憲, 林 純一, 宮村 治男, 江口 昭治
    1993 年 22 巻 4 号 p. 334-338
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠状動脈入口部狭窄を含めたLMT病変に対する直達手術後の遠隔成績を, CAGならびにトレッドミル所見から検討した. CAG上, LMTに90%以上の狭窄を呈した5例を対象とした. 病因は梅毒性2例, 動脈硬化性3例であり, これらに対して, LMT内膜パンチアウト法, 大動脈内膜剥離切除法, saphenous vein graft (SVG) パッチ拡大法を用いて, 直達手術を施行した. 大動脈内膜切除術を施行した1例を術後早期にLOS, MOFにて失ったが, 他の4例では, NYHA分類の改善と狭心痛の消失を認めた. 術後後期では, SVG拡大術を施行した1例に, 術後1年目のCAG上で狭窄が認められた. 他病死した1例を除いた他の2例は術後5年以上経た現在でも, 胸痛もなく, 社会生活を営んでいる. 以上から, 適応に留意することによっては, LMTへの直達手術にても, 良好な遠隔成績が得られうると考えられた.
  • 楠原 健嗣, 三木 成仁, 上田 裕一, 大北 裕, 田畑 隆文, 山中 一朗
    1993 年 22 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腸骨動脈閉塞症 (IAO) に対する血行再建術81例における術後成績より術式, さらにバイパス流量 (BF) と開存率について検討した. 手術の内訳は, 大動脈大腿動脈バイパス術46例 (AF-B群), 腸骨動脈血栓内膜剔除術11例 (TEA群), 大腿動脈大腿動脈バイパス術26例 (FF-B群), 腋窩動脈大腿動脈バイパス術2例 (AXF-B群) であった. 術後早期閉塞はAF-B群, TEA群, AXF-B群ではなく, FF-B群の2例であった. BFは, AF-B群, TEA群, FF-B群, AXF-B群でそれぞれ平均382, 331, 219, 200ml/minであった. 遠隔期成績 (5年) ではTEA群では閉塞例はなく, AF-B群で96%, FF-B群で63%であった. 早期および遠隔期閉塞はBFも150ml/min以下の例が多く, run-offの悪い例であった. 開存率向上のため, 高齢者でも, 重篤な心疾患のない症例は, 安定した成績の得られるAF-Bを用いる, また下肢末梢の血管病変のある場合は積極的に膝窩動脈以下への同時バイパスを行う方針である.
  • 林 載鳳, 浜中 喜晴, 末田 泰二郎, 松島 毅, 辻 勝三, 渡橋 和政, 呑村 孝之, 森田 悟, 香河 哲也, 松浦 雄一郎
    1993 年 22 巻 4 号 p. 345-347
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1987年4月から1992年3月までの5年間に広島大学第1外科で大動脈, 腸骨動脈領域の閉塞性動脈硬化症に対し人工血管バイパス術を施行した51症例を, 非解剖学的バイパス術を施行したEAB群18例と, 解剖学的バイパス術を施行したAB群33例に分け, retrospective に両群の比較を行った. 背景因子の検討では, EAB群の平均年齢はAB群よりも約10歳高齢で, 症状的には Fontaine 分類III, IV度の重症例が多く, 腎機能と肺機能もEAB群が劣っており, 脳梗塞等の合併症もEAB群で高かった. PGE-1製剤を術前術後にわたって長期間使用すること, 全身麻酔下に良好な視野を得て手術を行うこと, 末梢側病変に対しては全例同時血行再建手術を行うこと, externally supported external velour knitted Dacron 人工血管を使用すること等をルーチンに行っているが, 5年間に閉塞例を1例も認めていない. EAB群でもAB群に劣らない手術成績を得たので報告した.
  • 動脈硬化性血栓症と塞栓症の比較
    竹中 博昭, 秋山 紀雄, 古谷 彰, 瀬山 厚司, 吉村 耕一, 久我 貴之, 藤岡 顕太郎, 大原 正己, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    1993 年 22 巻 4 号 p. 348-351
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1975年1月から1991年4月までに経験した急性動脈閉塞症例37例を血栓症と塞栓症別に比較検討した. 血栓症16例17肢中4例が退院時死亡, 6肢が切断となったが, 塞栓症21例25肢では死亡2例, 肢切断1肢と血栓症に比し予後は良好であった. 血栓症例16肢に手術が施行され血栓除去した6肢中3肢は閉塞, うち1肢は最終的に肢切断となったがバイパス術を行った5肢は全例救肢した. また塞栓症例22肢に手術が施行され肢切断した1肢を除き塞栓除去18肢, バイパス術3肢の肢救済に成功した. 以上より血栓症にはバイパス術, 塞栓症には塞栓除去が第一選択と思われた.
  • 林 載鳳, 浜中 喜晴, 末田 泰二郎, 松島 毅, 渡橋 和政, 呑村 孝之, 森田 悟, 香河 哲也, 松浦 雄一郎
    1993 年 22 巻 4 号 p. 352-355
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の男性で, 両下肢の腫大, 易疲労感を訴えて受診した. 下大静脈造影検査において, 吸気時に肝部下大静脈のノズル状の狭窄が認められたが, 呼気時には狭窄が解除された. また狭窄部の上下には吸気時に大きな圧較差が認められた. 経皮的血管形成術を行ったところ, 吸気時の狭窄が解除され, 自他覚症状も軽快した. 吸気時のみの狭窄であるのに Budd-Chiari 症候群様の症状を呈する点が特徴的であった. 本症はもともと横隔膜部下大静脈狭窄を有しており, 壁在血栓の形成, 進行により症状が出現したものと推測された.
  • 福本 仁志, 西本 孝, 岡本 健
    1993 年 22 巻 4 号 p. 356-359
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    当センターでは開設以来6年8か月間に24例の破裂性大動脈瘤に対して手術を行った. このうち80歳以上の高齢者の4例 (男性3例, 女性1例) について検討を行ったので報告する. 術前に重症なショックを呈した症例は2例で, 破裂の発生から手術までの平均時間は17時間であった. 全例 infra-renal typeで, 人工血管置換術を3例に, 瘤閉鎖および腋窩-両大腿動脈バイパス術を1例に行った. 平均大動脈遮断時間73分, 平均手術時間205分であった. Fitzgerald 分類のII, III型の3例 (75%) を救命したが, 術前のショックが高度で, 術中出血量が7,500mlと大量であったIV型の1例を多臓器不全で失った. 80歳以上の高齢者の破裂性腹部大動脈瘤例でも救命しうる症例は多く, 積極的な手術を行うべきである.
  • 賀嶋 俊隆, 道端 哲郎, 久米 誠人, 森本 和大, 饗場 正宏, 高場 利博
    1993 年 22 巻 4 号 p. 360-363
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    当施設では, これまで22例の先天性大動脈二尖弁の症例を経験しているが, 今回同胞に発生した大動脈二尖弁狭窄を経験し, 文献上検索したかぎり1例の報告も認められなかったので報告する. 症例は兄58歳, 妹56歳であり, 兄は51歳時, 妹は15歳時より心臓弁膜症を指摘されていた. 両者とも大動脈二尖弁狭窄の診断にて21mm Medtronic-Hall 弁にて大動脈弁置換術を施行し, さらに妹ではペースメーカー植込み術を追加した. 術後経過は両者とも良好である. 先天性大動脈二尖弁は遺伝的な関係が関与するため, 発見されたなら, 家族内および親族の精査が必要であろうと考えられる.
  • 藤田 雄司, 豊田 秀二, 秋山 紀雄, 古谷 彰, 瀬山 厚司, 吉村 耕一, 藤岡 顕太郎, 江里 健輔
    1993 年 22 巻 4 号 p. 364-366
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    管前型大動脈縮窄症は心奇形を合併することが多く予後不良である. そのため, 管前型の成人症例は非常に少ないとされている. 最近, われわれは管前型大動脈縮窄症を伴った胸部下行大動脈瘤の症例を経験した. 症例は, 49歳女性. 左鎖骨下動脈分岐部より末梢側の下行大動脈に約5cmにわたる狭窄を認め, その末梢側が後狭窄性拡張となっていた. 瘤切除および人工血管置換術を行った. 大動脈瘤の成因として, 血流ジェットが影響し瘤が発生したと推測できた. 術後経過は良好である.
  • 蔵田 英志, 尾崎 直, 加瀬 昌弘, 中山 治彦, 市川 由紀夫, 梶原 博一, 近藤 治郎, 松本 昭彦
    1993 年 22 巻 4 号 p. 367-371
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    ベーチェット病に合併した大動脈弁閉鎖不全症に対し大動脈弁置換術を行った. 人工弁は左冠尖側から右冠尖側にかけては大動脈内壁に短冊状のフェルトを当て, 無冠尖側は大動脈外壁に短冊状のフェルトを当てて固定した. 右冠動脈入口部の狭窄により心筋保護が十分行えず, 術中心筋梗塞を生じたが, 遠心ポンプによる右心補助を行い救命した. 本症例は術前の冠動脈造影にて異常はなかったが, 手術待機中に病変が進行したものと思われた. 手術に際しては大動脈弁のみならず冠動脈の病変にも注意を払うことが大切であるとともに術前, 術後を通してステロイド剤による炎症のコントロールも重要であると思われた.
  • 内外報告10例の集計も含めて
    吉田 英生, 寒川 顕治, 榊原 裕, 末広 晃太郎, 岡田 正比呂, 七条 健, 大庭 治
    1993 年 22 巻 4 号 p. 372-375
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) を合併した症例の開心術の報告は少なく, 内外の文献で10例を数えるにすぎない. ITPおよび糖尿病を合併した僧帽弁再置換術症例を経験したので報告する. 症例は62歳, 男性で, 10年前僧帽弁狭窄症にて Carpentier-Edwards 弁を用いた僧帽弁置換術を受け, 今回同弁機能不全と診断され入院した. 入院時検査で血小板数は52,000/mm3と著明に減少し, PA-IgGの増加, 骨髄検査所見よりITPと診断した. 術前4週間プレドニゾロンを投与し, 術前5日間はγグロブリン大量投与 (20g/日) も行ったが, 手術開始時の血小板数が56,000/mm3のため体外循環前より濃厚血小板血漿を投与し, 術中最低血小板数は37,000/mm3であった. SJM弁で再弁置換術を施行し, 術中術後に血小板輸血を行い術後経過は良好であった. ITP合併症例に対してはγグロブリン, ステロイドおよび脾摘を組み合わせた周術期治療に加え, 効果の確かな血小板輸血を適宜行うことが必要と考えられた.
  • 戸部 道雄, 坂本 哲, 浜田 俊之, 久保 誠秀, 内田 敬二, 佐藤 順
    1993 年 22 巻 4 号 p. 376-379
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    動脈硬化性大動脈瘤の手術歴を有する腕頭動脈瘤の2手術例を経験した. 腕頭動脈瘤の成因は動脈硬化性と非特異性炎症性であった. 人工血管により血行再建術を施行したが, 脳虚血に対する補助手段として1例に内シャント法を用いた. 腕頭動脈瘤は末梢動脈瘤のなかでもまれなものであるが, 炎症性のものばかりでなく, 多発性動脈硬化症の一環として発症する可能性もあり, 今後増加が予想される.
  • 脇田 昇, 志田 力, 顔 邦男
    1993 年 22 巻 4 号 p. 380-382
    発行日: 1993/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性で, 冠動脈バイパス手術術後に縦隔乳糜瘻を発生した. MCT (medium-chain triglyceride) の投与, 高カロリー輸液を開始したが, 排出量は変わらず早期閉塞は困難と考え, 術後6日目に手術治療を行った. 乳糜は前縦隔の胸腺断端付近より漏出しておりこれを結紮した. 術後, 直ちに乳糜漏出は止まり2日目にドレーンを抜去しえた. 胸骨縦切開後の乳糜瘻は, 胸腺および胸腺周囲からの乳糜の漏出が最も考えられ, 心機能が安定しておれば, 発症後早期に手術治療を行うのがよいと思われた.
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