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大場 淳一, 青木 秀俊, 吉田 俊人, 金岡 健, 大江 公則, 安田 慶秀
1999 年28 巻6 号 p.
359-363
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
左冠動脈主幹部の急性閉塞による心筋梗塞に対して, 緊急冠動脈バイパスを行った2症例を経験した. 2例ともIABP, PCPSによる循環補助下に手術室に搬送し, 静脈グラフトを用いた2枝バイパスを行った. 症例1は合併症なく回復し, 術後30日目に無事退院したが, 症例2は心機能の回復がなく, 術後2日目に死亡した. この症例は当初, 左冠動脈前下行枝のみの閉塞であったが, PTCA後に留置したステントの操作によって左冠動脈主幹部が閉塞したものである. 左冠動脈主幹部急性閉塞に対する手術成績はきわめて不良であるが, 手術適応の判断を迅速に行い, 緊急手術に対応できる体制を整えること, IABP, PCPSなどの循環補助手段を積極的かつ早期に開始すること, 灌流カテーテルなどの方法で可能なかぎり心筋血流を確保しておくことなどが救命の可能性を高めると考えられた.
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山口 博一郎, 山内 秀人, 迫 史朗, 濱本 浩嗣
1999 年28 巻6 号 p.
364-369
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
術前の頭部CTまたはMRIで異常所見を認めたCABG症例の術中脳酸素代謝の変化を観察した. 対象は連続CABG 36例で異常所見検出群 (A群) と対照群 (B群) に分け, 術中の近赤外分光法による酸化Hb/全Hb (%Oxy-Hb) とSjO
2を両群で比較し, 術中因子との間で回帰分析を行った. A群は13例 (36%) で全例無症候性脳梗塞であった. A群/B群での体外循環中の平均%Oxy-Hb (%), SjO
2(%) はおのおの51.2±4.1/62.0±12.1 (
p=0.04), 63.5±8.6/68.1±7.7 (
p=0.12) で, 経時的には%Oxy-Hbは体外循環後期で, SjO
2は初期でA群が有意に低値であった. 術中因子との関係ではB群では一定の傾向がなかったのに対し, A群では灌流圧とSjO
2の間に正の相関 (
r=0.699,
p<0.0001) を認めた. 無症候性脳梗塞合併CABG症例では術中の酸素代謝は不利であり, 体外循環灌流圧を高めに維持する必要性を確認した.
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河野 哲也, 後藤 博久, 中島 恒夫, 中野 博文, 天野 純, 原田 順和
1999 年28 巻6 号 p.
370-373
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
症例は29歳, 女性. 幼児期より心雑音を指摘されていたが, 妊娠時に心臓精査を施行した結果, 僧帽弁閉鎖不全症を合併した左冠動脈肺動脈起始症 (BWG症候群) と診断された. 以後保存的に治療されていたが最近労作時呼吸困難を自覚したため手術目的で紹介された. 手術は direct aortic reimplantation および僧帽弁形成術を施行し, 術後合併症は認めず, 第27病日に退院となった. 成人型BWG症候群の報告例は少なく, またその左冠動脈再建術に関してはさまざまな問題がある. 今回 direct aortic reimplantation および僧帽弁形成術を施行し, 良好な結果を得たため, 若干の考察を加え報告する.
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吉鷹 秀範, 畑 隆登, 津島 義正, 松本 三明, 濱中 荘平, 森下 篤, 中村 浩己, 篠浦 先, 南 一司
1999 年28 巻6 号 p.
374-376
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
胸部大動脈人工血管置換術後の縦隔洞炎は致命的になりやすいが, 良好な結果が得られたので報告する. 症例は57歳男性. 上行~弓部大動脈にかけての80mmと下行大動脈の55mmの大動脈瘤に対して胸骨正中切開と左第5肋間開胸により上行から下行大動脈まで一期的に置換を行った. 術後20日目に正中創より排膿を認め縦隔洞炎を発症. 膿培養より
Staphylococcus epidermidis を検出. 全身状態が良好であったことより胸骨を開放し, 縦隔洗浄を行い, 培養で細菌の検出しなくなった術後3カ月目に胸骨, 縦隔掻爬を行い, 縦隔内に大網充填を行い創閉鎖を行った. その後は縦隔洞炎の再発は認めていない.
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大内 真吾, 中島 隆之, 皆川 幸洋, 菰田 研二, 川副 浩平
1999 年28 巻6 号 p.
377-380
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
症例は73歳, 男性. 主訴は右下腹部痛と血圧の低下であった. 腹部CT所見より, 腹部大動脈瘤の破裂と診断し, 緊急的にY型人工血管置換術を施行した. 術中所見では, 約1cmの穿孔を腹部大動脈の総腸骨動脈分岐部直上の後壁に認めた. 術後に後腹膜炎を合併し, また術中に採取した大動脈瘤内の血腫と, 術後の後腹膜腔ドレナージ液の培養から
Bacteroides fragilis が検出された. 第10病日に, axillo-bifemoral bypass を作製し, Y型人工血管を摘除した. 以後, 後腹膜腔の持続洗浄を行ったが, 後腹膜の炎症は改善せず, 術後約2カ月で敗血症のため死亡した.
Bacteroides 属による感染性腹部大動脈瘤は稀な疾患であり, その感染経路を推察し, 感染性腹部大動脈瘤の治療に関して若干の文献的考察を行った.
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青山 貴彦, 太田 敬, 成宮 千浩, 間瀬 武則, 塩井 健介, 永田 昌久
1999 年28 巻6 号 p.
381-384
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
症例は65歳男性, 腰背部痛から起立困難となり来院した. 腹部の造影CTで右腎梗塞像と腹部大動脈内の異常陰影を認め, また心エコーで左房内に腫瘍を疑わせる像を認めた. 二次血栓塞栓の予防のため同日緊急で腎動脈塞栓症に対する塞栓摘除術を施行した. 術後頭部CTを行い多発脳梗塞を認めた. 初回手術の1週間後に体外循環下に左房粘液腫摘出術を行った. 粘液腫は左房後壁に茎を有しており, 病理にて腎動脈の塞栓子と同一組織であることを確認した. 初回手術後3週目にレノグラム, レノシンチにより腎機能を測定したが, 右腎の機能はほぼ消失していた. 心臓粘液腫は比較的稀な原発性心臓腫瘍であり, その合併症としてしばしば多彩な塞栓症を認める. 今回われわれは腎梗塞の発症を契機に発見され, 腎塞栓摘除術後に左房粘液腫の摘出術を行った1例を経験したので報告した.
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森田 一郎, 正木 久男, 稲田 洋, 菊川 大樹, 野上 厚志, 藤原 巍
1999 年28 巻6 号 p.
385-388
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
われわれは非常に珍しい高安大動脈炎が成因と考えられる高位腹部大動脈閉塞症の1例を経験したので報告する. 症例は46歳男性, 主訴は間歇性跛行の増悪, 下腹部痛, 発熱. 入院時, 血液検査で炎症所見著明で, 腹部CT上も大動脈壁の著明な肥厚を伴う腹部大動脈閉塞を認めた. ステロイド内服を開始し, 炎症所見が正常化した後手術を施行した. 手術は大動脈-両側大腿動脈バイパス術で, 中枢側吻合は端々吻合で行い, グラフトの残りで吻合部のラッピングを追加した. また大動脈周囲の癒着は著明で, 炎症性病変を示唆した. 血管壁の病理診断は高安大動脈炎であったが, 術前の抗リン脂質抗体陽性より, 抗リン脂質抗体症候群も本症例の成因の可能性を示唆した. 今後, 炎症の再燃に十分気をつけながら経過観察していくつもりである.
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迫 秀則, 葉玉 哲生, 森 義顕, 重光 修, 宮本 伸二, 穴井 博文, 添田 徹, 和田 朋之, 岩田 英理子
1999 年28 巻6 号 p.
389-391
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
Bentall 術後13年目に人工弁感染を起こし, 緊急で再手術を行った症例を経験したので報告する. 症例は39歳, 男性. 1985年に大動脈弁輪拡張症に対し他院で Bentall 手術を受けた. 1998年6月下旬より39度を超える発熱が続き, 7月3日当院内科へ入院した. 入院翌日, 右中大脳動脈領域および右小脳の梗塞を発症し, 経食道心臓超音波検査を行った結果, 人工弁周囲に疣贅を認めた. 脳梗塞発症後2日目であり, 体外循環を行うことを躊躇したが, 再び塞栓症発生の可能性が高いと判断し, 緊急手術を行った. 左室流出路はほぼ血栓で閉塞した状態に近く, この血栓を摘出するときに膿汁の流出をみた. composite graft をすべて摘出し, Gelseal 24mm graft とSJM 23mmの人工弁を用いて置換し, 右冠動脈は直接に, 左冠動脈は10mm人工血管を介在させて再建した. 摘出標本から
Staphylococcus aureus が培養検出され, 感受性のある抗生剤を5週間投与した. 術後高熱の出現はなく, CRPはしだいに陰性化し, 術後45日目に退院した. 現在術後9カ月で再感染の兆候もなく, 元気に外来通院している.
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本邦報告例の検討を含めて
服部 良信, 渡辺 浩次, 根木 浩路, 武田 功, 入山 正, 杉村 修一郎
1999 年28 巻6 号 p.
392-395
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
左室粘液腫は稀な疾患で, 本邦では13例が報告されているにすぎない. 生来健康な14歳の女児で, 1983年11月右片麻痺が突然出現し, 某病院に入院した. 脳梗塞と診断され, 麻痺は軽快したが, 心エコー, 心臓カテーテル検査で左室内の2個の腫瘤を指摘され, 手術目的で当科に紹介された. 発症から約1カ月後に手術を施行した. 体外循環下, 心停止下に左室の心尖部を切開し, 心尖部中隔から有茎性に発育した2個の腫瘍を摘出した. 摘出した腫瘍の大きさはおのおの2.0×1.7cm, 1.9gと1.9×1.5cm, 1.1gで, 病理組織学的には粘液種であった. 術後は合併症もなく退院し, 術後15年を経た現在無症状で, 再発を認めていない. 本邦報告例を含めて若干の文献的考察を加えて報告した.
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赤須 晃治, 小須賀 智一, 飛永 覚, 林 伸介, 友枝 博, 尾田 毅, 田山 栄基, 丸山 寛, 川良 武美, 青柳 成明
1999 年28 巻6 号 p.
396-398
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
症例は36歳女性. 5歳時に心室中隔欠損症 (VSD) の診断を受け経過観察中であった. 36歳時, 労作時の軽度の息切れと動悸を認めるようになったことから精査目的のため, 当科紹介となった. 心エコー検査では肺動脈弁直下に直径約1cmのVSDを認めたが, バルサルバ洞の瘤状の突出像は確認できなかった. 右室造影像では肺動脈弁直下の右室流出路に, 円形で大きさが1.0cm×1.5cmの陰影欠損を認め非破裂性バルサルバ洞動脈瘤 (今野分類I型) と診断し手術を施行した. 術後経過は良好で術後14日目の左室造影検査ではVSDは完全に閉鎖されバルサルバ洞動脈瘤もまったく造影されなかった. また, 診断には右室造影検査が有用であった.
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服部 良信, 入山 正, 渡辺 浩次, 根木 浩路, 山下 満, 武田 功, 杉村 裕志, 杉村 修一郎
1999 年28 巻6 号 p.
399-402
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
緊急手術により救命し得た鈍的外傷性胸部大動脈破裂の4例を経験した. 4例とも交通事故で受傷し, 胸部大動脈峡部の破裂であった. 症例1は19歳の男性でIV-DSAのみで, 症例2は41歳の女性でIV-DSAと造影CTで, 症例3の32歳の男性と症例4の50歳の男性は造影ヘリカルCTのみで胸部大動脈破裂と診断し, 緊急手術を施行した. 症例1は一時的バイパス, 症例2は肺動脈-大腿動脈バイパス, 症例3と4は左心バイパスを補助手段に用い, 全例自己回収装置を併用した. 症例2は端々吻合で再建したが, 他の3例は人工血管で置換した. 全例術後対麻痺の合併もなく回復した. 鈍的外傷性胸部大動脈破裂の早期診断には造影ヘリカルCTは他の合併損傷の有無や程度を知るためにも非常に有用であり, 術中の経食道心エコーも有用であった.
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末田 泰二郎, 岡田 健志, 渡 正伸, 渡橋 和政, 四方 裕夫, 松浦 雄一郎
1999 年28 巻6 号 p.
403-405
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
症例は34歳, 女性, 高度の大動脈弁逆流 (IV度) と大動脈拡大 (大動脈径58mm), 弓部分枝動脈の狭窄を呈した大動脈炎症候群. 術前CRPが高くプレドニン投与にて炎症を沈静させ, translocated Bentall 手術を施行した. SJM 23mm人工弁を26mm人工血管の断端から1cm上方に縫着し, 人工血管断端を大動脈弁輪に縫合. 冠状動脈再建は10mm人工血管を介在させた. 術後もプレドニン投与を継続し, 合併症なく経過した. 本法は人工弁離脱の危険のある炎症性大動脈弁輪拡大症に適した術式と考えられた.
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安田 保, 山本 信一郎, 石田 善敬
1999 年28 巻6 号 p.
406-409
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
症例は50歳, 女性. 主訴は上腹部痛, 腰痛. 既往歴, 8年前慢性腎不全にて血液透析導入. 現病歴, 1997年2月7日上腹部痛を覚え当院救急受診, 経過観察するも2月15日の透析前採血にて白血球およびCRP上昇, 発熱, 腰痛を認め, 緊急入院となった. CT検査および血管造影検査にて胸腹部大動脈瘤切迫破裂の所見が見られたため緊急手術を行った. spiral opening にて胸腹部大動脈に到達, 大動脈を切開すると, 大動脈瘤壁内に膿瘍を認めた. 同部を可及的に除去した後人工血管で置換し, 腹部分枝および肋間動脈再建を併施した. 補助手段として, 部分体外循環および超低体温を用いた. 大動脈壁培養からは黄色ブドウ球菌が検出され, 抗生剤は術後4週間静脈内投与した. その後の経過は良好で, 現在術後22カ月であるが感染の再燃はなく, 当院にて維持透析継続中である.
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後藤 博久, 深谷 幸雄, 西村 和典, 天野 純
1999 年28 巻6 号 p.
410-413
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
症例は69歳, 男性. 67歳時, 急性心筋梗塞 (AMI) で#7にステントを留置され, 68歳時, 不安定狭心症で#6にステントを留置されている. 今回, このステントとステントの中間の部分にAMIを発症したため緊急PTCAを行ったところ, 左冠状動脈主幹部 (LMT) 解離に伴う急性冠状動脈閉塞が発生した. 心原性ショックとなったため, PCPSにより循環を補助し, LADに perfusion catheter, Cxにガイドワイヤーを挿入して緊急冠状動脈バイパス術 (CABG) を施行した. 手術は, PCPS下に体外循環確立後, VfとしてSVGをLADに吻合し, perfusion catheter とガイドワイヤーを抜去した後, 大動脈を遮断し, SVGをCx#13に吻合した. LMT解離に伴う急性冠状動脈閉塞に対するCABGにおいては, 確実な心筋保護が問題となる. perfusion catheter によりLADの灌流を維持したままVf下にSVGをLADに吻合した後に心停止とした今回のわれわれの方法は, 有用であったと考えられた.
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川妻 史明, 齊藤 力, 上沢 修, 三澤 吉雄, 布施 勝生
1999 年28 巻6 号 p.
414-417
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
鈍的胸部外傷による胸部大動脈破裂の急性期手術例を経験したので報告する. 症例は20歳の男性で, 乗用車を運転中にトラックと衝突して前胸部と右腕を打撲し, 近医にて右肘関節脱臼骨折と胸部単純CT上縦隔陰影の拡大を指摘され当院に搬送された. 胸部造影CTや血算などにて, 下行大動脈損傷による縦隔血腫・左血胸と診断したが, 当院初診時と近医での胸部CTを比較し活動性の出血はないと判断し, 知覚異常などの神経症状の進行してきた右肘関節脱臼骨折の観血的整復術を優先した. 術後貧血の進行と胸部CT上血腫の拡大を認めたため, 部分体外循環下に下行大動脈置換術を施行し良好な結果を得た. 本症の診断, 経過観察には胸部CT検査が有用であり, 合併損傷を考慮して手術時期を決定することが重要である.
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1999 年28 巻6 号 p.
418
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
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1999 年28 巻6 号 p.
419
発行日: 1999/11/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー