日本心臓血管外科学会雑誌

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大動脈瘤内に形成される血栓は,ときに血栓塞栓症や消費性凝固障害などの原因となり,その器質化は患者の予防を左右する重要な因子であることが知られている.したがって,瘤内血栓の動態を知ることは,手術適応や手術術式の検討,さらに術後経過観察にあたって有力な臨床情報となる.そこで真性大動脈瘤13例,解離性大動脈瘤14例,解離性大動脈瘤術後解離腔遺残13例に対し,in vivoにおける血栓活性の指標として,¹¹¹In標識血小板による血栓シンチグラフィー(以下血小板シンチと略)を施行し,同時に施行した造影CTとの所見の相違から瘤内血栓の活性の評価を試みた.血小板シンチのRI集積は,真性大動脈瘤では腹部が胸部に比して強い傾向を示した.また,解離性大動脈瘤では病期の進行に伴いRI集積は減弱していく傾向を示し,解離腔の血栓性閉塞の完成をみた症例が存在した.術後解離腔遺残で抗凝固療法施行中の症例ではRI集積は認めなかったが,末梢側に血栓塞栓症を併発した症例では遺残解離腔に強いRI集積を認めた.これらのことから血小板シンチ像は臨床で予測される血栓活性と一致するものであった.血小板シンチはin vivoにおける血栓活性の指標として大動脈瘤の予後や合併症の予測,手術適応や手術術式の検討,さらに,術後経過観察にあたって有力な臨床情報となる.

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74歳女性の胸腹大動脈瘤に対し,胸腹大動脈置換・内臓4動脈再建を行った.術中の大動脈操作に起因すると考えられる,内臓諸臓器および下肢の広範な微小コレステロール塞栓症を起こし,術後48時間で死亡した.76歳男性の,大動脈・腸骨動脈領域と大腿・膝窩動脈領域の複合性病変に対し,中枢病変の改善を目的に大動脈-両側大腿動脈Y型人工血管バイパス術を施行した,術直後から一側の下肢が蒼白で,再手術時の造影では閉塞部末梢の後脛骨動脈にin situ thrombosisが認められた.血管外科での重大な合併症のひとつは出血であるが,その対極の塞栓-血栓もまた注意すべき問題である.大動脈手術に合併する塞栓・血栓症の予防,対策に関して言及する.

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内胸動脈(IMA)グラフトを用いた冠動脈バイパス術(CABG)後,IMAが全体に細くなるいわゆる“string sign”を示すことがある.今回,術後冠造影においてIMAが“string sign”を示し冠動脈への造影剤流入のみられない(no flow)状態となっていた一例で,冠動脈をバルーンで閉鎖してIMA造影を試み,解剖学的なIMAの閉存性を証明しえた.症例は64歳男性.LIMAをLADにつなぐ冠動脈バイパス術を施行した.術後3年目の造影検査でLADの狭窄病変は軽減しており,IMAは細く被バイパス血管への流れを認めなかった.そこでLADをバルーンにて一時的に閉鎖したところ,IMAからLADへの流入を証明しえた.IMAはno flowな状態でもanatomical patencyを保ち続けうる可能性がある.

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