日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
25 巻, 6 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 渡辺 弘, 宮村 治男, 菅原 正明, 高橋 善樹, 篠永 真弓, 建部 祥, 高橋 昌, 羽賀 学, 平塚 雅英, 江口 昭治
    1996 年 25 巻 6 号 p. 345-349
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心内修復術前に側副血行路カテーテル塞栓術 (TAE) を施行した先天性チアノーゼ性心疾患7例について検討した. 側副血管は25本 (1症例当り1~5本, 平均3.6本) で, 気管支動脈は7本中7本(100%), 肋間動脈は18本中17本 (94%) の完全閉塞が得られ, 全体では側副血管の25本のうち24本 (96%) の塞栓に成功した. 合併症は1例で金属コイルの大腿動脈への脱落を認め, 外科的に摘出をした. TAE後の5例で体動時のチアノーゼの増強や呼吸困難等の自覚症状が出現し, 1例では低酸素血症増強のため緊急に心内修復術が必要となり, 2例で一過性の発熱が認められた. TAE後, 労作時のチアノーゼ増強等の自覚症状, 更には低酸素血症の危険があることから心内修復術直前の施行が適切と思われた.
  • 迫 秀則, 葉玉 哲生, 森 義顕, 重光 修, 宮本 伸二, 添田 徹, 吉松 俊英, 和田 朋之, 内田 雄三
    1996 年 25 巻 6 号 p. 350-353
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1984年から1994年までに58例の Stanford A型大動脈解離を経験したが, このうち1985年から1991年の比較的初期のころの9例に対しリング付きグラフト内挿術を行った. 9例中3例を術死で失ったのに対し, その他の方法による49例では10例の死亡であり, リング付きグラフト内没法のほうの成績が悪かった. 生存6例の術後造影においても解離の残存が5例にみられ, 満足すべき結果を得たのは1例のみであった. リング付きグラフト内没法は手術手技が簡便で手術時間が短くて済むとされているが, すべての症例に行える術式でなく entry の閉鎖が確実に行えるとはかぎらない. したがって現在は, Stanford A型解離に対してはグラフト置換術を第一選択とし, entry が上行にあれば上行置換を, 弓部にあれば上行弓部置換を行い, より根治的で確実な手術法を行う方針としている.
  • 喜岡 幸央, 岡田 正比呂
    1996 年 25 巻 6 号 p. 354-358
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心臓手術においてアプロチニンの出血量軽減に対する有用性は広く認められている. 今回われわれは, 20人の少なくとも1本以上の動脈グラフトを用いた冠動脈バイパス術を行った患者のうち11人に1×106KIUのアプロチニンを体外循環時に使用し, 非使用患者群と比較しその効果を検討した. 術後出血による再手術はなく, グラフト開存率に有意差は認めなかった. また血栓症などの合併症も認めなかった. 血小板数, フィブリノーゲン, トロンポキサンB2, アンチプラスミンの術中および術後変化には, 2群間に有意差はなかった. 術後出血量はアプロチニン使用群が有意に少なかった(p<0.05). また術後輸血量も有意に少なかった (p<0.01). 以上の結果より, 血液生化学的検査では有用性を示唆する所見は得られなかったが, アプロチニンは術後出血軽減に有用であった.
  • 荒川 博徳, 廣瀬 一, 松本 興治, 柴田 雅也, 不破 誠行, 清島 満, 矢野 容子, 野間 昭夫
    1996 年 25 巻 6 号 p. 359-363
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    リポ蛋白 (a) [Lp(a)] は動脈硬化性疾患の独立した危険因子であるとされている. 腹部大動脈瘤(AAA) においても同様の傾向があると考え, 血清濃度を測定し, 健常者と比較した. 健常者では14.6±13.6mg/dlであったのに対し, AAAでは53.2±60.8mg/dlと有意 (p<0.001) に高値であった. また, 動脈瘤壁のLp (a) 含有量は49.8±39.2ng/mgであった. さらにLp (a) の血清濃度と壁瘤内含有量とは有意 (r2=0.79, p<0.01) の正相関を示した. また, 免疫組織染色においてLp(a) は内膜中間部の細胞外基質に存在し, 中膜および外膜には存在しなかった.
  • 小川 智弘, 星野 俊一
    1996 年 25 巻 6 号 p. 364-370
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    僧帽弁置換後遠隔期の人工弁機能, 心機能について検討した. 単独僧帽弁置換後5年以上経過した35症例で, 1葉弁置換群をI群, 2葉弁置換群をII群に分類し, 心臓超音波, 心臓カテーテル法にて評価した (再弁置換例は再弁置換前に評価). NYHA分類では両群とも改善し, CTRの推移ではII群は遠隔期に術前より縮小を認めたが, I群は縮小を認めず, 人工弁機能の影響が考えられた. 人工弁機能ではI群 (とくに Omniscience, Omnicarbon 弁) は弁開放角の低下を認め, II群がI群より有利な傾向があった. 左心機能は遠隔期, 両群とも良好で, また右心系も両群で遠隔期に右室負荷の改善傾向を認めた. 以上より遠隔期のII群の弁機能はI群より優位な傾向があったものの, 心機能は良好で両群とも有効な弁であった. 人工弁機能不全では, 左室機能は比較的保たれているものの, 人工弁流入障害によるものと思われるLVEDVIの低下と Severe TRを伴った右心負荷を認めた.
  • 心内奇形および気管軟化症合併例について
    柴田 芳樹, 阿部 忠昭, 栗林 良正, 関根 智之, 相田 弘秋, 関 啓二
    1996 年 25 巻 6 号 p. 371-376
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    乳幼児期に呼吸器症状にて発症した重複大動脈弓3症例に対し, 大動脈弓離断術を施行した. 2例が気管軟化症を, 全例に心内奇形を合併していた. これが原因で3例ともに術後の長期呼吸管理を要した. 1例は残存するVSD+PHによる心不全, 呼吸不全のために第49病日にVSD閉鎖を必要とした. われわれの経験した気管軟化症合併例はいずれも保存的治療にて抜管可能であった. 気管軟化症に対する外科治療としては Aortopexy, Splinting, ステントなどが試みられているが, 決定的な術式はないのが現実であり, われわれは積極的に同時手術を行ってはいない. しかし, 血管輪解除術後にも呼吸器症状が改善しない症例では症状の主たる原因が何に起因するのかを見極め, 適切な治療方針をたてる必要がある.
  • とくに自己血貯血と限外濾過法併用について
    小野 隆志, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 丹治 雅博, 渡辺 正明, 星野 俊一
    1996 年 25 巻 6 号 p. 377-384
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    術前貯血と限外濾過法併用により同種血輸血回避を目指した90症例を対象に無輸血開心術について検討した. 無輸血率と関連があると思われる13因子と無輸血開心術達成の多変量解析による検討で, 術後出血量, 術中失血量, 体表面積が, 無輸血開心術への関連度の高い因子として選択された. 無輸血開心術が困難と予想される症例においては, 蛙跳び法による術前貯血量の増量, さらに新鮮自己血輸血により凝固因子の温存をはかり, 出血量の軽減を行うことにより無輸血率を向上させうると考えられた.
  • 関口 昭彦, 島田 宗洋, 高岡 哲弘, 戸成 邦彦, 野間 美緒, 石澤 瞭
    1996 年 25 巻 6 号 p. 385-389
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大血管転位症に対する心房内血流転換術後に経静脈的なペースメーカ治療を必要とした4症例に対してDDD様式のペースメーカ植え込み術を経験したので, その手技的問題点を中心に検討した. 4例の内訳は Mustard 術後完全房室ブロック2例, 洞性徐脈+I度房室ブロック1例, Senning 術後完全房室ブロック+洞機能不全症候群1例であった. リード挿入経路は, 右鎖骨下静脈3例, 左鎖骨下静脈1例であったが, 左右による手技上の差はなかった. 使用したリードは, 心房では全例J型 screw-in リードで, 心室では全例直の screw-in リードであった. 1例には心房, 心室共に単極を用いたが, 他は双極であった. 合併症は心房リード逸脱1例, 心房双極リードによる左横隔神経刺激1例であった. 本術式後のDDD式ペースメーカー植え込み術のポイントは, 心房リードを解剖学的左心耳に誘導することと, 心室が解剖学的左室になるため心室には screw-in 式を用いることである.
  • 山口 敦司, 安達 秀雄, 水原 章浩, 村田 聖一郎, 紙尾 均, 井野 隆史, 岡田 昌彦
    1996 年 25 巻 6 号 p. 390-393
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    異型大動脈縮窄症に急性大動脈血栓閉塞を合併した症例に対し緊急で右腋窩-両大腿動脈バイパス (人工血管径8mm) を施行したが, 術後上下肢の血圧差と血中レニン活性の高値を認めた. その後の血管造影で, 胸部大動脈は弓部の末梢にて閉塞していた. 内科的治療では上半身の血圧コントロールが不十分であり, 腹部主要分枝への灌流を改善させるために上行大動脈-右総腸骨動脈バイパス術を追加施行した. 腹部正中切開, 胸骨正中切開の後, 下大静脈の左前方にて横隔膜を貫き, 腹腔動脈起始部から腹部大動脈の左側を剥離し, 人工血管のトンネルを作成した. 径16mmの人工血管を用いてバイパスを作成したところ, 術後上下肢の血圧差はほぼ消失した. 異型大動脈縮窄症に対する本術式は, 腹部臓器を灌流するための十分な太さの人工血管を用いることが可能で, 症例によっては考慮に値する術式である.
  • 永吉 正和, 岩永 祐治, 宮田 昭, 末綱 靖, 井 清司
    1996 年 25 巻 6 号 p. 394-397
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    深大腿動脈瘤は解剖学的, 組織学的理由から末梢動脈瘤のなかでもまれな疾患とされており両側に発生した症例はさらに少なく本邦報告は12例にすぎない. 慢性腎不全, 腹部大動脈瘤を合併する72歳の男性に両側深大腿動脈瘤を認め一側を結紮空置, 他側は結紮し血行再建を行った. 本症は破裂の頻度が高く積極的外科治療が必要であり, 浅大腿動脈から膝窩動脈へ閉塞性病変を認めれば血行再建術は不可欠と考えられる.
  • 末田 泰二郎, 三井 法真, 岡田 健志, 森田 悟, 渡橋 和政, 松浦 雄一郎
    1996 年 25 巻 6 号 p. 398-401
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Stanford B型大動脈解離を伴う Annulo aortic ectasia (以下AAE) を呈した51歳の男性に, 胸骨正中切開のみで, 弁付きグラフトを用いた大動脈基部再建術 (Phieler 法による冠状動脈再建) と左鎖骨下動脈より遠位4cmに存在した解離口閉鎖を含む弓部全置換術を同時に行い良好な結果を得た. 大動脈の壁構造は中膜壊死を呈し Marfan 症候群と診断した. 大動脈の脆弱性を伴うAAE+B型大動脈解離症例では, 大動脈を無遮断下に手術する本法のような同時手術は有用な手技と思われた.
  • 杭ノ瀬 昌彦, 種本 和雄, 金岡 祐司
    1996 年 25 巻 6 号 p. 402-405
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    虚血性の高度低左心機能 (心プールシンチで左室駆出率6.2%, 心エコーでLVDd=74mm, LVDs=71mm, %FS=10%) 症例に対し, 人工心肺を用いない心拍動下冠状動脈バイパス術を施行し, 良好な結果を得た1例を経験した. 症例は67歳, 男性で4年前に心筋梗塞を発症. 今回入院時の冠状動脈造影検査にて右冠状動脈の完全閉塞を含む重症3枝病変と診断. 通常の手術では人工心肺よりの離脱が困難となる可能性が高いと考え, 唯一心筋 viability が残されている右冠状動脈領域に心拍動下CABG (右胃大網動脈-右冠状動脈) を施行した. 術後心不全症状は著明に改善し, 軽快退院した. 自験例は欧米では心臓移植も考慮されるべき重症例と考えられ, 虚血性低左心機能に対する治療法として有用であると考えられた.
  • 荒木 善盛, 末永 義人, 田嶋 一喜, 吉川 雅治, 阿部 知伸, 井尾 昭典
    1996 年 25 巻 6 号 p. 406-410
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    高齢者の巨大左房粘液腫の1治験例を経験した. 症例は81歳, 女性. 動悸, 安静時呼吸困難, 食思不振, 下肢浮腫を主訴とする心不全症状で入院し, 心エコー図にて左房を広範囲に占拠する左房粘液腫と診断した. 同時に中等度三尖弁逆流を認めた. 高度の僧帽弁狭窄様症状を呈した心不全として管理し, 軽快した後, 摘出術を施行した. 手術は, 経心房中隔左房上方切開にて左房に到達した. 腫瘍は経心房中隔に広基性に付着しており, 心内膜を含めて一塊に摘出が可能であった. さらに三尖弁逆流に対して DeVega 法による弁輪縫縮術を行った. 術後, 心房細動を合併するも自然に洞調律に復帰し, 術後36日に退院した. 80歳以上高齢者における巨大左房粘液腫はまれであり, 内科治療の困難な心不全症例に対して外科的治療で治癒しえた1治験例を報告した.
  • 麻柄 達夫, 野島 武久, 桂 敦史, 西川 忠男, 尾上 雅彦, 勝山 和彦
    1996 年 25 巻 6 号 p. 411-414
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞 (AMI) の重篤なる合併症として心破裂は現在のところ予後不良な疾患の一つである. 当院における6例の心破裂症例について検討し, 心破裂の分類について文献的検討を加え報告した. 1995年3月までに6例のAMI後心破裂に対する手術を経験した. 6例はすべて男性であり, 年齢は59~76歳 (平均65.2歳) であった. AMI発症~心破裂まで8時間から4日 (平均2.6日), 破裂~緊急手術まで1時間から24時間 (平均11時間) であった. 6例のうち2例は術前ショック状態で, このうち1例はIABP, PCPSを使用下に手術室へ搬送した. 2例とも破裂孔は blowout type で Felt Sandwich 法で閉鎖したが出血をコントロールできず死亡した. 残りの4例は心嚢ドレナージ後, 循環動態の改善がみられ, その後手術を施行した. Blowout type の1例は出血にて死亡したが, 出血解離型の2例は Felt Sandwich 法で縫合し, oozing type の1例はフィブリン糊とコラーゲンシートにて止血を行い救命しえた. 出血解離型や oozing type の成績は良好であったが blowout type は不良であり, とくに出血のコントロールや愛護的操作など今後もその対策を検討する必要があると考えられた. 肉眼的病理所見と臨床経過の対応を検討すると blowout 型や Becker のI型は急性型に属し, 出血解離型と oozing type の一部が亜急性期に, oozing type の一部と仮性左室瘤形成型および左室瘤形成型が慢性期症例にあたるものと考えられた.
  • 森本 喜久, 向原 伸彦, 麻田 達郎, 樋上 哲也, 大保 英文, 顔 邦男, 岩橋 和彦, 小澤 修一
    1996 年 25 巻 6 号 p. 415-418
    発行日: 1996/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    近年, 大動脈解離の治療成績は向上したが, 臓器虚血をきたした症例の治療成績は未だ不十分である. われわれは Stanford B型急性大動脈解離による腸管虚血症例に対して上腸間膜動脈 (以下SMA) へのバイパス術を行い良好な結果を得たので報告する. 症例は36歳, 男性, Marfan 症候群. 突然の激しい前胸部痛を自覚し, 近医を受診. CTにて Stanford B型大動脈解離の診断を受け, 当院を紹介された. 入院時, 強い腹痛とアシドーシスを認めた. 大動脈造影にて大動脈解離に伴う腸管虚血と診断した. 初回手術は腹部大動脈にて開窓術を施行したが, 効果不十分であったため, 翌日, 大伏在静脈グラフトを用いた左総腸骨動脈-SMAバイパス術を施行し, 血行再建に成功した. 本術式は侵襲が少なく簡便で効果の大きい術式であり, 大動脈解離に伴う腸管虚血に対する第一選択術式と考えられた.
feedback
Top