高分子論文集
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31 巻, 2 号
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  • 大塚 保治, 川口 春馬, 金谷 隆雄
    1974 年 31 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 1974/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリオキシエチレン系界面活性剤 (E) と, 第二セリウムイオン (Ce4+) は, レドッケス系を形成し, 乳化重合においてEは乳化剤として作用すると同時に一部は開始剤としても機能する。この系は, 共存する塩の濃度やpHに大きく影響されるため, それらを一定に保って重合した。重合初期は, アルコールーCe4+レドックス均一重合に準じた現象を示した。重合の場へのモノマーラジカルの進入間隔, 停止反応に関与するCe4+の進入間隔を考慮したモデルによって, 重合条件と定常状態における重合挙動との関係を説明した。
  • 細井 文雄, 三井 光, 後川 正裕, 鍵谷 勤
    1974 年 31 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 1974/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    分子量1500~114000の各種ポリエチレンに, 真空中, 30℃でγ線を照射した場合の水素およびトランスビニレン基 (t-V) の生成, ならびに末端ビニル基 (Vi) およびビニリデン基 (Vd) の消失について, つぎの速度式 (mol/g-PE・hr) を得た。
    RH=d [H2] /dt=1.03×10-6Mn0.10I
    Rt-v=d [t-V] /dt=1.01×10-7Mn0.28I
    Rvi=-d [Vi] /dt=2.58×10-3Mn0.33I [Vi]
    Rvd=-d [Vd] /dt=6.57×10-4Mn0.47I [Vd]
    照射によるメチル基含量の変化は認められなかった。
    以上の結果に基づいて, 水素およびt-Vの生成, ならびにViおよびVdの消失反応の機構を考察した。
  • 吉武 敏彦
    1974 年 31 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 1974/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アクリル酸 (AA) をグラフト処理したポリ塩化ビニル (PVC) 中に存在するホモポリマーを抽出除去して得られる可及的に純粋なアクリル酸グラフトポリ塩化ビニル (AA-g-PVC) がポリビニルアルコール (PVA) とPVCの両者間にきわめて良好な接着作用を有することを見いだした。
    AA-g-PVCの溶媒としてはジメチルホルムアミド (DMF) あるいはテトラヒドロフラン (THF) を用い得るが, DMFを用いた場合のほうが, より大きなはく離強度を示した。
    グラフトポリマーの使用量は1g/m2程度でもかなりのはく離強度が得られ, PVAフィルムとPVCフィルムを適当な条件下で接着せしめた場合, はく離強度は500~1500g/1.5cm幅程度である。
    ビニロン基布と軟質PVCを同じグラフトポリマーで接着させた場合にははく離時, 軟質PVCが破断した。
  • 十時 稔, 川口 達郎
    1974 年 31 巻 2 号 p. 106-111
    発行日: 1974/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ナイロンの融点測定の際に, 試料をあらかじめアセチレンガス中でγ線照射して, 非晶部を選択的に橋かけしておけば, 昇温途中のreorganizationが効果的に抑えられることを見いだした。この方法は, 最適照射量を決めるのが容易である, またその照射量が非常に少なくてすむため照射による結晶の損失は極力避けられる, などの利点をもっている。
    本方法によると, ナイロン6未延伸糸の融解曲線は, 約155℃を中心に幅広い形状を示す。熱処理によって高温に移行し, 形状も鋭くなる。5倍延伸糸の融点は, 未延伸糸よりも高温に位置し, 形状は非常に鋭い。
  • 松本 恒隆, 大久保 政芳, 安井 正昭
    1974 年 31 巻 2 号 p. 112-118
    発行日: 1974/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリアクリル酸エチル (PEA) エマルジョン粒子のアルカリケン化反応によるカルボキシル基の生成挙動について検討し, つぎの諸結果を得た。未ケン化PEAエマルジョン中には, 直径約7000Åの粒子 (エマルジョン粒子) と全生成ポリマーに対して1wt%程度の約700Åの粒子 (微小粒子) とが存在した。ケン化反応は安定なエマルジョン状態で進行し, ケン化反応速度は総粒子表面積の増加につれて増大した。ケン化度約5mol%まででは, ケン化反応はエマルジョン粒子と微小粒子の表面層で起こり, その結果, 微小粒子は完全に溶解, 消失した。さらに, ケン化度が約5mol%以上では, ケン化反応はすべてエマルジョン粒子表面層で起こった。ケン化反応によりエマルジョン粒子中に生成したカルボキシル基を含むポリマー分子は水相へ溶出せず, 生成したカルボキシル基のすべてが粒子表面層に固定された。
    以上のケン化反応の特長は, 粒子内部にカルボキシル基を若干分布するアクリル酸エチル-アクリル酸共重合体エマルジョン粒子との対比において, ケン化反応の状況, アルカリ増粘性, 電導度滴定曲線, pH-吸光度曲線および電子顕微鏡による粒子状態の観察などから明らかにされた。
  • 加門 隆, 斎藤 和美, 三輪 泰彦, 佐伯 健作
    1974 年 31 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 1974/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    酸無水物で硬化したエポキシ樹脂の構造と動的粘弾性について検討した。ゴム状態式のフロント係数 (φ) はすべて1より小さく, またジアミン硬化エポキシ樹脂のφより小さかった。同一酸無水物硬化樹脂系でのφは橋かけ密度 (ρ) が小さくなると小さくなっていく。
    ガラス転移温度 (Tg) は芳香環や脂環などの嵩だかい酸無水物で硬化した樹脂のほうが脂肪族酸無水物より高い。そして, 同一酸無水物系では, Tgとρの間には次式の関係にあることが見いだされた。
    Tg=K1logK2ρ
    ここでK1, K2は定数。
    K1は嵩だかい脂環族酸無水物系のほうが脂肪族酸無水物系より大きい, そしてK2は両系ともほぼ同じ値であった。
  • 新保 正樹, 越智 光一
    1974 年 31 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 1974/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ビスフェノール型エポキシ樹脂を, 構造を異にする5種のポリエチレンポリアミンで硬化し, 硬化物の動力学的性質, 力学的性質および接着性を調べ, これらの諸性質が硬化物の橋かけの状況や硬化剤の構造によってどのような影響を受けるかを検討した。このようにして得られた結果をゴム弾性理論式から誘導される見かけの橋かけ間分子量と対比すると, 両者の間にはかなりよい相関が見いだされ, 硬化剤の構造の影響はほとんど見られなかった。
    硬化エポキシ樹脂の力学的諸性質は, 転移領域では硬化の進行に伴って急激に変化するが, ガラス状領域ではほぼ一定値を示すことが明らかとなった。また硬化エポキシ樹脂の接着に関する諸性質のうち, 引張せん断強さは凝集破壊領域では橋かけ密度に支配される。これに対してはく離強さは硬化物のガラス転移温度が室温すなわち接着の破壊試験温度にほぼ一致したときに極大値をとり, この点を境に破壊の形式は凝集破壊から界面破壊に移行することが明らかにされた。
  • 小田 隆, 前田 松夫, 日比 貞雄, 渡辺 修一
    1974 年 31 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 1974/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    急冷ポリブテン-1皮膜について結晶転換 (形態IIからI結晶へ) に及ぼす環境温度-20 (ガラス転移点付近), 0,25 (室温) と95℃ (融点付近), および伸張歪の効果がX線回折法と密度法により検討された。
    放置時間に対する結晶転換速度は室温付近に極大があり, 伸張歪の増加とともに促進される。
    結晶転換の時間依存性を明確にするため, 転換した結晶 (形態1) 分率をAvramiの式でプロットした。対数放置時間に対するlog {log (1/ (1-φ)) } の勾配は上記四つの温度でおよそ1である。さらに伸張歪が増加すると直線の勾配はゆるやかになるが, 瞬時に転換する結晶分率は多くなる。これらの結晶と2次結晶化を考慮して結晶転換機構が議論される。
  • 光多 豊, Ferry J.D.
    1974 年 31 巻 2 号 p. 135-137
    発行日: 1974/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子の希薄溶液粘弾性において, 分子量分布の影響が極めて大きい。分子量分布が狭い所 (Mw/Mn<1.5) で, 還元固有定常ずりコンプライアンスj0eRについて, 分布の影響を簡便に補正する方法を検討した。分子量分布をもつ4分枝星型ポリスチレンのθ状態における希薄溶液粘弾性測定値にこの方法を応用して, Zimm-Kilb理論の流体力学的相互作用定数h*が分子量分布が無い場合の値として0.40と求められた。
  • 川崎 信弘, 福永 健一
    1974 年 31 巻 2 号 p. 138-139
    発行日: 1974/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    結晶性高分子のガラス転移点での比熱の変化に注目し, DSCについて試料容器での熱の定常状態を仮定して次式を得た。
    χ1-δQχQ0
    ここで, δQχは結晶化度χの試料について, ガラス転移点前後での熱容量の変化によつて生じるDSC曲線の不連続な変化量, δQ0は結晶化度が零の場合のものである。
    ポリクロロプレンについて, 種々結晶化時間を変えて上式より求めた結晶化度と, それぞれの融解熱との間には良い直線関係が得られた。このことより上式は, 結晶化度が零の場合のガラス転移点前後におけるDSC曲線の不連続な変化量がわかれば, 完全結晶の融解熱を必要としない簡便な結晶化度の評価法であると考えた。
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