ポリアクリル酸エチル (PEA) エマルジョン粒子のアルカリケン化反応によるカルボキシル基の生成挙動について検討し, つぎの諸結果を得た。未ケン化PEAエマルジョン中には, 直径約7000Åの粒子 (エマルジョン粒子) と全生成ポリマーに対して1wt%程度の約700Åの粒子 (微小粒子) とが存在した。ケン化反応は安定なエマルジョン状態で進行し, ケン化反応速度は総粒子表面積の増加につれて増大した。ケン化度約5mol%まででは, ケン化反応はエマルジョン粒子と微小粒子の表面層で起こり, その結果, 微小粒子は完全に溶解, 消失した。さらに, ケン化度が約5mol%以上では, ケン化反応はすべてエマルジョン粒子表面層で起こった。ケン化反応によりエマルジョン粒子中に生成したカルボキシル基を含むポリマー分子は水相へ溶出せず, 生成したカルボキシル基のすべてが粒子表面層に固定された。
以上のケン化反応の特長は, 粒子内部にカルボキシル基を若干分布するアクリル酸エチル-アクリル酸共重合体エマルジョン粒子との対比において, ケン化反応の状況, アルカリ増粘性, 電導度滴定曲線, pH-吸光度曲線および電子顕微鏡による粒子状態の観察などから明らかにされた。
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