パラジウム(Pd)触媒クロスカップリング反応は,π共役系高分子合成法の発展に寄与してきた.たとえば,アレーン(Ar)間の炭素–炭素(C-C)結合形成反応であるStilleクロスカップリング(Ar-SnR
3+Br-Ar)や鈴木–宮浦クロスカップリング(Ar-BR
2+Br-Ar)は,多彩なπ共役系高分子設計を実現してきた.一方,直接的(C-H)アリール化と呼ばれる炭素–水素(C-H)結合の切断を伴うクロスカップリング反応(Ar-H+Br-Ar)は従来法と比べて試薬の入手が容易であり,原子利用効率が高く,有機金属副生成物が生成しないなどの利点をもつことで,π共役系高分子合成法として近年注目されている.しかし,反応効率,反応位置選択性,モノマーの多彩性の観点から,高分子の多彩な構造(トポロジー)制御はあまり実現されていない.本報では固相担持パラジウムを触媒としたβ位無置換チオフェンの直接的アリール化重縮合によるπ共役系高分子の構造制御,塩化物イオンによる反応促進効果を利用したπ共役系高分子の高分子量化,そしてさまざまなアレーンモノマーの直接的アリール化による直鎖,分岐,編目(ネットワーク)高分子などの合成とその構造評価について解説する.
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