酸無水物とエポキシドの硬化反応における酸無水物の反応性に対する置換基効果 (誘起効果, 共鳴効果, 立体効果) についての知見を得るために, 第三アミンを促進剤に用いて, 無水フタル酸及び無水マレイン酸の各種置換体と, エポキシ化大豆油 (内部エポキシド) との硬化反応を検討した. エポキシ化大豆油と酸無水物の2次反応において, 電子吸引性の置換基 (C1, NO
2) の存在は酸無水物の反応性を高めた. 一方, 電子供与性基 (CH
3) の存在は反応性を多少高め (4-メチル無水フタル酸), あるいは低下させ (3-メチル無水フタル酸), 置換位置の違いで反応性が異なることが認められた. これらのことから, 酸無水物の反応性は, 置換基の誘起効果 (1効果) の寄与に比べて. 置換位置が関与する立体障害の程度に大きく影響されることが分かり, これは開環反応で生成した酸無水物アニオンの分子構造に起因すると推定した. また比較のために行った末端エポキシドの, ビスフェノールAのジグリシジルエーテル (DGEBA) と, 酸無水物 (無水フタル酸及びそのメチル置換体) の反応では, 酸無水物の開環反応 (0次反応) が律速となり, このとき酸無水物の反応性には大きな差は見られなかった. この結果に基づき, 酸無水物の開環反応機構を考察した.
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