高分子論文集
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49 巻, 7 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 王 秀訓, 斎藤 拓, 井上 隆
    1992 年 49 巻 7 号 p. 555-560
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリオキシメチレン (POM) /ノボラック樹脂混合系の応力-ひずみ挙動を調べた. 延性高分子であるPOMに脆性材料であるノボラック樹脂を混合したにもかかわらず, 破断伸びを増大させうる組成が存在し, 破断伸びをPOM単体のそれの6倍にもさせうることがわかった. DSC, 偏光顕微鏡観察, 光散乱法, 小角X線散乱法などによる結晶高次構造に関する知見を破断面のSEM観察結果と併せて考えることにより, ノボラック樹脂の球晶間析出を抑制して球晶寸法を極力小さくすることによって, 上述の大きな破断伸びが得られることがわかった.
  • 小林 琢磨, 加地 篤, 北川 広信, 竹本 喜一
    1992 年 49 巻 7 号 p. 561-568
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (1, 4-ブチレンテレフタレート) (以下PBTと略す) にε-カプロラクトン (以下ε-CLと略す) を開環付加重合する挙動について調べ, 以下の知見を得た. PBTとε-CLの付加反応はPBT末端カルポキンル基を開始剤として進み, 反応速度はイオン成長反応速度式に従い, 平衡モノマー濃度よりこの反応は著しく正反応サイドへ進み, 反応温度235℃では反応時間120~150分でほぼ平衡に達する. 付加反応中に生じるエステル交換反応についてDSC法で調べたが, 反応時間90~120分で融点が安定し, 反応開始後短時間でブロック性が決定される. 13C NMRで反応中のハード及びソフトセグメント長の変化を見ると, DSC法の結果と一致しており, PBTとε-CLの仕込比率が7対3, 反応温度235℃の条件下では反応開始後90分でブロック性が決定される. 以上のことよりPBTとε-CLを反応することにより高融点のポリエステル-ポリエステルブロックポリマーが得られことが分かった.
  • 小林 琢磨, 久世 勝郎, 加地 篤
    1992 年 49 巻 7 号 p. 569-576
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (1, 4-ブチレンテレフタレート) (以下PBTと略す) とε-カプロラクトン (以下ε-CLと略す) より合成されるブロックポリマーの溶融下でのブロック性の変化について調べた. 処理温度が230℃では融点の低下は小さいが250℃では融点低下は大きく, ブロックポリマーは平衡点までランダム化が進行していないことを見いだした. また, ポリマーの組成とブロックの平均連鎖数を見ると, 250℃では90分以上ではソフトセグメントの分解が認められソフトセグメント含量及び平均連鎖数が急激に低下する. ハード部とソフト部の間で起こるエステル交換反応の活性化エネルギーは66.55kcal/molと算出された. ブロックポリマーは230℃では3時間処理しても粘度低下を起こさないが, 250℃では90分以降著しい粘度低下を示した. ブロックポリマーの窒素雰囲気下での長期熱安定性については, 両末端をブロックされないポリラクトンと比べ, 重量減少率, ゲル生成度とも優れた値を示したが, 両末端がPBTユニットでブロックされるためと考えられる.
  • 下川 努, 羽鳥 浩之, 西久保 忠臣
    1992 年 49 巻 7 号 p. 577-584
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    有機強塩基であるDBUを用いた, ジメチルスルホキシド中での2-ブロモメチルアントラキノン (BMAQ) 及びプロパギルブロミド (PB) とポリメタクリル酸 (PMA) とのエステル化反応による, 側鎖にプロパギル (PG) 基とアントラキノニルメチル (AQM) 基とを有する自己増感型感光性樹脂のワンポット合成について検討を行った. 得られたポリマーのフィルム状態での光反応を, IR及びUVスペクトルの変化から追跡し, さらにグレースケール法による相対感度の評価を行った. その結果, AQM基の導入率が約13mol%のポリマーが最も高い光反応性と相対感度を有することが明らかとなった. また同様の方法により合成した, 側鎖にPG基とベンゾフェノン残基とを有するポリマーの相対感度の測定を行ったが, AQM基を有するポリマーの方が高い感度を示した. 次に自己増感型感光性樹脂と低分子増感剤添加型の系との熱安定性について比較検討を行った結果, 自己増感型感光性樹脂は低分子増感剤添加型の感光性樹脂と比較して高い熱安定性を有していることも判明した.
  • 渡辺 知久, 山口 悦郎, 鈴木 秀茂, 池田 進
    1992 年 49 巻 7 号 p. 585-589
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    力学的刺激と電気的刺激の差周波応答から電わい定数を直接的に測定する装置を試作し, フッ化ビニリデン (VDF) -トリフルオロエチレン (TrFE) (54/46) 共重合体の未延伸試料の電わい定数を静ひずみ, 温度, 分極状態をパラメーターとして測定した. 電わい定数は試料の処理条件にかかわらず静ひずみ依存性を示し, より高次の非線形効果の存在を示唆した. また, 試料のポーリング処理条件の違いによると思われる2種類の残留分極依存性が見られた. これらの結果からポーリング試料の電わいは主として寸法効果に, 未ポーリング試料の電わいは主として結晶中にある双極子のゆらぎのひずみ依存性に由来すると推定した.
  • 泊 清隆, 原田 敏彦, 前川 善一郎, 濱田 泰以, 濱元 秋雄
    1992 年 49 巻 7 号 p. 591-600
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ウェルドラインによる射出成形品強度低下の要因の一つである分子配向を検討した. 赤外二色比を利用して, 市販の材料である液晶ポリマー (LCP) とポリカーボネート (PC) 射出成形品中の分子配向分布を定量化した. 顕微フーリエ変換赤外分光光度計 (FTIR) により微小領域における平行偏光及び垂直偏光赤外透過スペクトルを測定し, ハーマンの配向関数から配向度Fを算出した. Fの厚さ方向分布は, LCPノンウェルド試料では複雑となり, 表層では流動方向配向性, 内層では厚さ方向配向性を示した. 逆に, LCPウェルド試料ではウェルドライン上では全体的に厚さ方向に分子配向した. ウェルドラインから1.8mm以上離れると, ノンウェルドと同様の配向性を示したことから, この範囲内のみがウェルドラインの影響を受ける領域と考えられる. 一方, PCでは任意の箇所でF=0となり, ウェルドラインの有無によらず分子がランダム状態に近いことが分かった. このような配向性の違いは樹脂の緩和時間の違いなどによるものと考えられ, 配向性が高いほどウェルドラインによる強度低下が顕著になる傾向となった.
  • 小又 基彰, 渡辺 茂隆
    1992 年 49 巻 7 号 p. 601-608
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    種々の酸無水物のエポキシドとの反応性を調べるために, 第三アミンを促進剤に用い, 内部及び末端エポキシドを対象とした硬化反応を, 示差走差熱量計 (DSC) などを使って, 反応速度論的解析法により比較検討した. 供試した7種の酸無水物とエポキシ化大豆油 (内部エポキシド) との反応は, エポキシドの濃度と酸無水物の濃度にそれぞれ依存する2次反応として進行し, 酸無水物の反応性は芳香環>シクロヘキセン環>シクロヘキサン環の順序になり, 酸無水物の立体障害が大きくなるとともに減少する傾向が認められた. また, 置換基 (メチル基) の効果は活性点への誘起効果 (I効果) よりも立体障害の寄与が大きいことが認められた. さらに, 比較のために行った上記の酸無水物と, ビスフェノールAのジグリシジルエーテル (末端エポキシド) との反応では, 酸無水物とエポキシドの両濃度に関して0次反応となり, 酸無水物の開環が律速段階になると推定され, この反応で酸無水物閤の反応性の差は, ほとんど認めることができなかった. これらの結果から, 酸無水物による内部及び末端エポキシドの硬化反応は律速段階が異なり, その原因は両エポキシドの反応性の違いによると推定される.
  • 小又 基彰, 渡辺 茂隆
    1992 年 49 巻 7 号 p. 609-615
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    酸無水物とエポキシドの硬化反応における酸無水物の反応性に対する置換基効果 (誘起効果, 共鳴効果, 立体効果) についての知見を得るために, 第三アミンを促進剤に用いて, 無水フタル酸及び無水マレイン酸の各種置換体と, エポキシ化大豆油 (内部エポキシド) との硬化反応を検討した. エポキシ化大豆油と酸無水物の2次反応において, 電子吸引性の置換基 (C1, NO2) の存在は酸無水物の反応性を高めた. 一方, 電子供与性基 (CH3) の存在は反応性を多少高め (4-メチル無水フタル酸), あるいは低下させ (3-メチル無水フタル酸), 置換位置の違いで反応性が異なることが認められた. これらのことから, 酸無水物の反応性は, 置換基の誘起効果 (1効果) の寄与に比べて. 置換位置が関与する立体障害の程度に大きく影響されることが分かり, これは開環反応で生成した酸無水物アニオンの分子構造に起因すると推定した. また比較のために行った末端エポキシドの, ビスフェノールAのジグリシジルエーテル (DGEBA) と, 酸無水物 (無水フタル酸及びそのメチル置換体) の反応では, 酸無水物の開環反応 (0次反応) が律速となり, このとき酸無水物の反応性には大きな差は見られなかった. この結果に基づき, 酸無水物の開環反応機構を考察した.
  • 市川 朝子, 荒木 千佳子, 中島 利誠
    1992 年 49 巻 7 号 p. 617-623
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (L-リジン) (PL) とポリグルタミン酸 (PGA) の種々の組成比のポリイオンコンプレックスフィルムを60%ギ酸水溶液を溶媒として調製し, 得られたフィルムの吸水挙動などについて検討した. 水に浸漬した場合の吸水膨潤度はPL/PGAの繰り返し単位モル比が5/5の時, 最小値となった. 酸性溶液下では, PL含有量の増加に伴い, 値は増加したが, アルカリ性下では, PGA含有量の増加による顕著な値の増加はみられなかった. 浸漬液に電解質を加えた場合, 特に電解質として塩化カルシウムを用いた場合には, 3/7と1/9組成の吸水膨潤度は著しく低下した. IRスペクトルにより3/7, 5/5, 及び7/3組成で, 架橋結合形成に由来するとみられる新しい吸収が1630cm-1にみられた. 13CNMRスペクトルにより, 5/5組成は, 50及び170ppmにおけるピークの半値幅が最も広く, PL/PGAコンプレックス間の架橋密度が大きく, 動きが拘束されていることが示された. DSCにより, フィルムに吸収された水の凝固, 融解点いずれもPL含有量の比率が増加すると高温となり, さらに3/7~7/3組成フィルムには, より多くの結合水の存在が示された.
  • 小林 琢磨, 北川 広信, 加地 篤
    1992 年 49 巻 7 号 p. 625-633
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (1, 4-ブチレンテレフタレート) (以下PBTと略す) とε-カプロラクトン (以下ε-CLと略す) より合成されるブロック共重合体の分子量及びブロック長に及ぼす原料PBTの分子量の影響について調べた. 原料PBTの粘度を高くするほど, 得られる共重合体の還元粘度ηsq/cは高くなった. PBT末端基数より求めた数平均分子量Mnと還元粘度ηsq/cの間には相関関係が認められた. ブロック共重合体のハードセグメントとソフトセグメントの間で起こるエステル交換反応の反応速度は, PBTの粘度を高くするほど, 低くなった. PBTとε-CLの仕込重量比が同じでPBTの粘度を高くすると, ハードセグメントの平均連鎖長及びソフトセグメントの平均連鎖長とも長くなった. PBTの粘度とブロック共重合体の融点, 結晶化温度の関係を見ると, PBTの粘度が高いほど, 融点及び結晶化温度は共に高くなる傾向を示した. ブロック共重合体の引張り強度及び引裂き強度は, PBTの粘度が高いほど高くなり, 引張り破断伸度は低くなった. ブロック共重合体の硬度及び弾性率は, PBTの還元粘度ηsq/c=0.887~1.273の間では, PBTの粘度の影響を示さなかった.
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