高分子論文集
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61 巻, 12 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 東山 真二, 磯田 勝広, 川瀬 雅也, 八木 清仁
    2004 年 61 巻 12 号 p. 587-594
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    デンドリマーは規則的な枝分かれ構造を有する分子で, 中心部分のコア分子から段階的に伸長反応を行うことにより世代数を増加させることができ, その末端に任意の官能基が導入できる. 官能基の数は1世代増加するごとに2倍となり, この官能基を利用して種々のリガンドが高密度に導入可能である. 筆者らは肝細胞に最適な培養基材表面の創出を目指し, 基材表面に機能性を付与するためリガンド修飾デンドリマーを用い, 培養肝細胞の高密度化・機能維持について検討した. リガンドとしてフルクトースを用いたデンドリマー上でラット肝実質細胞の培養を行ったところ, 細胞がスフェロイドを形成し初期接着数が維持された. さらに接着性を向上させるために, リガンドとしてフルクトースと, アシアロ糖タンパクレセプターのリガンドとなるガラクトースを共固定したF/Gデンドリマーを用いたところ, スフェロイドの接着が維持された. またF/Gデンドリマー上で培養したラット肝実質細胞は, リガンドがフルクトース, ガラクトース単独のものに比べ, 肝特異的機能についても優れていることが確認された. このように, デンドリマーには種々のリガンドを共固定することが可能であり, 各々のリガンドの効果を相加的に基材へ加えられることが示された. デンドリマーを用いることで肝細胞に限らず, 細胞ごとに最適化した基材表面を創出することで, 組織工学全般の発展に大きく貢献すると考えている.
  • 猪飼 篤
    2004 年 61 巻 12 号 p. 595-600
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    地球上における生命誕生の成功を導いたタンパク質を土台とする生体構造の力学的成り立ちを知るために, 単一タンパク質分子の内部構造の力学的破壊と, タンパク質と細胞膜の相互作用の力学に関するナノ力学的測定を行った. その結果, 球状タンパク質内部には両端から引き伸ばすという張力的破壊力に対して抵抗を示す局所構造があることがわかり, タンパク質ナノ構造体の中の力学的不均一性が浮き彫りとなった. また, 細胞膜に埋め込まれているタンパク質を力学的に引き抜くに要する力を測定し, 細胞膜への圧入, せん孔過程に要する力と比較することにより, 細胞膜タンパク質の選択的採取の道を開いた. これらの測定は単に生体構造を理解するにとどまらず, 高分子鎖を利用してソフトな機能性マテリアルを設計する際に一つの指針を与えうると考える.
  • 望月 慎一, 狩野 有宏, 赤池 敏宏, 丸山 厚
    2004 年 61 巻 12 号 p. 601-605
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ヒアルロン酸 (HA) は肝臓類洞内皮細胞 (LSECs) に特異的に取り込まれることが知られている. そこで, ポリカチオンであるポリリジン (PLL) の側鎖にHAを導入したグラフト共重合体 (PLL-g-HA) を合成し, LSECs特異的遺伝子キャリヤーとして評価した. PLL-g-HAとDNAとの複合体形成能を評価したところ, PLL部位のカチオンとDNAのアニオンとでほぼ1: 1で複合体を形成した. 32P標識したプラスミドDNAとの複合体をラット尾静脈より投与し, その体内動態を評価した結果, 90%の放射線活性が肝臓で得られた. 肝臓内分布を調べるためFITCラベルしたオリゴDNAとの複合体を同様にラット尾静脈より投与し, 肝臓の切片を作製し観察した. PLL-g-HA/DNA複合体として投与した時, 主に肝臓類洞内皮に沿って蛍光ラベルDNAが観察された.
  • 山田 忠範, 妹尾 昌治, 近藤 昭彦, 上田 政和, 谷澤 克行, 黒田 俊一
    2004 年 61 巻 12 号 p. 606-612
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    B型肝炎ウイルス (hepatitis B virus; HBV) はヒト肝細胞に対し強い感染力を有する. その感染機構を担うHBV表面抗原 (HBV surface antigen; HBsAg) は, 組換え酵母を用いて大量生産が可能であり, 酵母由来の膜成分を取り込んで, 平均直径220nmのHBsAg粒子を形成することが知られている. 最近, HBsAg粒子内部に遺伝子, タンパク質および薬剤を封入して, 静脈注射のみでヒト肝臓特異的送達が可能なキャリヤーとして非常に有効であることを示した. また, HBsAg粒子の表面に存在するヒト肝細胞特異的な認識部位を, 他の細胞を認識する分子へ置換することにより, 粒子表面の提示分子に応じた標的細胞を生体内で標的化する「中空バイオナノ粒子」の創製に成功した. これらの結果は, 生体内ピンポイントデリバリーシステムの新しいキャリヤーとして, 特に遺伝子治療分野で中空バイオナノ粒子が非常に有望であることを示している.
  • 畑中 研一, 片岡 直人, 粕谷 マリアカルメリタ, 奥山 光作, 田村 潔, 橋本 和彦
    2004 年 61 巻 12 号 p. 613-616
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ナノ構造構築のための構成要素となるβ-シクロデキストリンの二置換体の簡便な合成を行った. 官能基としてカルボキシル基を導入するため, β-シクロデキストリンのヒドロキシル基を部分的にカルボキシメチルエーテル化 (CM化) することを試みた. 通常のCM化の方法である水酸化ナトリウム水溶液とクロロ酢酸を用いる方法では二置換体を得ることが難しいことを明らかにした. 塩基として水酸化カリウムを用いると容易に反応が起こって, 目的とする二置換体が得られた. また, CM化の試薬としてプロモ酢酸を用いると反応時間が短縮できることも見いだした. さらに, ジメチルホルムアミド溶媒中の水素化ナトリウムとクロロ酢酸メチルを用いると, 反応中に脱メチル化が同時に起こって, CM化が進行することがわかった. 逆相クロマトグラフィーで分取したジ-O-カルボキシメチル-β-シクロデキストリンを, ヘキサメチレンジアミンと重縮合することによって, 分子量1万程度のポリエステルを得た.
  • 畠山 義治, 南 昌宏, 梅津 光央, 大原 智, 高見 誠一, 阿尻 雅文
    2004 年 61 巻 12 号 p. 617-622
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    近年, バルク状態とは異なる物性を示すナノ粒子やカーボンナノ材料に関する研究が急速に発展し, それらナノクラスターをアセンブリし機能発現を行うことが期待されている. 本報では, DNAの自己組織化を利用したナノ粒子パターニングを目標とし, 一辺が約10nmのひし形格子を一単位としたDNA平面構造体の形成制御とそれを用いた金ナノ粒子のアセンブリを行った. DNA平面構造体は, 設計された複数の一本鎖DNAをアニール後徐冷することによって形成できるが, その徐冷過程を二本鎖DNAの熱変性温度を考慮することによって, 効率的に構造体を形成されることに今回成功した. また, その平面構造体形成過程に一本鎖DNA修飾金ナノ粒子を導入したところ, ナノ粒子に固定化したDNA鎖と平面構造体中に設計した相補的塩基配列と結合を起こし, DNA構造体をテンプレートとした金ナノ粒子のアセンブリを観測できたことを報告する.
  • メソポーラスカーボンヘのリゾチームの吸着挙動
    宮原 雅彦, Ajayan VINU, 中西 尚志, 有賀 克彦
    2004 年 61 巻 12 号 p. 623-627
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    メソポーラスカーボン (MC) へのlysozyme (Lz) の吸着挙動について, pHおよび孔径依存性を調べた. MCとしてCMK-3を用い, pHを変えて (pH=6.5~12) 吸着量を調べたところ, Lzの等電点 (pI=10.8) 付近で極大を示した. この結果は, LzのMCへの吸着にはLz間および表面とLzとの間の疎水性相互作用が重要であるということを示唆する. またCMK-3よりも孔径の小さなCMK-1を用いると, 吸着量が著しく減少する結果が得られ, 細孔の大きさの選択によりタンパク質の吸着を制御できることが明らかとなった. 吸着後のMCおよびLzの構造をXRD, N2吸着, IRにより検討した. 吸着によるMC構造の変化やLzの変性は無視しうることが確認できた.
  • 鶴間 章典, 田中 賢, 福嶋 伸之, 下村 政嗣
    2004 年 61 巻 12 号 p. 628-633
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    微細加工技術によってさまざまなマイクロパターンを作製した基板上に細胞を培養することにより細胞の接着形態, 機能や増殖能を制御できることが検討されている. 筆者らは, 従来の微細加工技術に頼らずに, さまざまな希薄高分子混合溶液を高湿度の雰囲気下でキャストすることにより, 自己組織化によって規則的なハニカム構造と微細孔を有する多孔質フィルムが得られることを報告してきた. 本研究では, この生分解性高分子からなるハニカムパターンフィルム上に神経細胞を培養し, フィルムの微細孔の孔径変化に伴う神経細胞の接着形態や神経突起形成への影響を走査型電子顕微鏡, 共焦点レーザー顕微鏡によって神経細胞の接着形態を観察することで検討した. 平膜上では, 神経細胞は紡錘形の形態であり, 神経突起はランダムに伸展した. 一方, ハニカムパターンフィルム上の神経細胞は, フィルムの微細孔の孔径変化に伴い細胞の接着形態が変化し, 神経突起はパターンの幹に沿って伸展しネットワーク構造を形成した.
  • 出羽 毅久, 家田 由佳利, 森田 一行, 吉田 清貴, Li WANG, Robert C. MACDONALD, 飯田 浩史, 山下 啓 ...
    2004 年 61 巻 12 号 p. 634-639
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    非ウイルス系遺伝子導入キャリヤーとして, スペルミジン, スペルミン, およびポリエチレンイミン (平均分子量1800) をカチオン部位にもつジパルミトイルポスファチジン酸誘導体を新規に合成した. β-ガラクトシダーゼアッセイにより, これらが遺伝子導入効果を有することがわかった. これらのポリカチオン化リン脂質は水溶液中では90~200nm程度の集合体を形成しており, これらがDNAとの複合体を形成することを原子間力顕微鏡により直接観察した. 遺伝子導入効果は, その複合体サイズが小さいものほど高いことが認められた.
  • 清水 秀信, 横原 智美, 和田 理征, 岡部 勝, Li WANG
    2004 年 61 巻 12 号 p. 640-642
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレングリコール (PEG) の片末端からN-イソプロピルアクリルアミド (NIPAM) の重合を行うことにより, 感熱応答機能を有するジブロック共重合体の合成を試みた. 重合温度やNIPAMの仕込み量が, ジブロック共重合体生成物の分子量に及ぼす影響について検討を行ったところ, PNIPAM水溶液の相転移温度以下 (32℃以下) で重合させた場合には, NIPAMの仕込み量の増加にともない, ジブロック共重合体生成物の分子量は増大した. これに対し, 相転移温度以上で重合を行った場合には, NIPAMの仕込み量にかかわらず, 分子量1000以上のPNIPAM鎖は得られなかった.
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