デンドリマーは規則的な枝分かれ構造を有する分子で, 中心部分のコア分子から段階的に伸長反応を行うことにより世代数を増加させることができ, その末端に任意の官能基が導入できる. 官能基の数は1世代増加するごとに2倍となり, この官能基を利用して種々のリガンドが高密度に導入可能である. 筆者らは肝細胞に最適な培養基材表面の創出を目指し, 基材表面に機能性を付与するためリガンド修飾デンドリマーを用い, 培養肝細胞の高密度化・機能維持について検討した. リガンドとしてフルクトースを用いたデンドリマー上でラット肝実質細胞の培養を行ったところ, 細胞がスフェロイドを形成し初期接着数が維持された. さらに接着性を向上させるために, リガンドとしてフルクトースと, アシアロ糖タンパクレセプターのリガンドとなるガラクトースを共固定したF/Gデンドリマーを用いたところ, スフェロイドの接着が維持された. またF/Gデンドリマー上で培養したラット肝実質細胞は, リガンドがフルクトース, ガラクトース単独のものに比べ, 肝特異的機能についても優れていることが確認された. このように, デンドリマーには種々のリガンドを共固定することが可能であり, 各々のリガンドの効果を相加的に基材へ加えられることが示された. デンドリマーを用いることで肝細胞に限らず, 細胞ごとに最適化した基材表面を創出することで, 組織工学全般の発展に大きく貢献すると考えている.
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