高分子論文集
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59 巻, 10 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 佐野 正人
    2002 年 59 巻 10 号 p. 565-570
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    単層カーボンナノチューブは, 1枚のグラファイトシートが直径1nm程度の円筒に巻いた構造を有し, 長いものでは数μmにも達するひも状物質で, 通常の炭化水素を主体とした高分子と同様の大きさをもつ. パイ電子共役系が全長に発達した構造は, ほかの物質にみられない優れた電気, 熱, そして, 弾性特性を生み出している. ここでは, ナノチューブを剛直高分子の一種として捉え, 有機化学的手法を用いてナノチューブの構造や表面特性を制御した研究について述べる. 特に, ナノチューブのコロイド性, 溶液中での剛直性と移動特性について, 環状構造体や星型超構造体を合成しながら評価した結果をまとめる. 溶液特性を理解することにより, 自己組織化プロセスを基盤とする超分子的手法がナノチューブ構造体の構築に適応可能であることを示す.
  • 堀内 伸, 藤田 隆, 早川 晃鏡, 中尾 幸道
    2002 年 59 巻 10 号 p. 571-577
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ブロック共重合体のナノドメイン構造を利用することにより, シングルナノサイズの金属微粒子を一方の相に選択的に成長させ, 3次元状にナノレベルで配列させる簡便なドライプロセスを見いだした. 昇華性金属錯体であるパラジウム (II) ビスアセチルアセトナート (Pd (II) (acac) 2) を窒素雰囲気下, 180℃において, ポリマーフィルムと共存させると, 錯体蒸気がフィルム内に浸透, 同時に熱分解, 還元され, 金属微粒子が形成される. その際, ブロック共重合体を用いると, 相対的に還元力の強い相で微粒子が選択的に形成され, フィルム内部にブロック共重合体のナノドメイン構造を反映したナノ粒子の配列が得られる. 錯体蒸気はフィルム内部まで浸透するため, 配列は3次元状になる。本報では, 本手法により形成された金属微粒子の粒径および配列制御機構について考察する.
  • 古川 英光, 堀江 一之
    2002 年 59 巻 10 号 p. 578-589
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子ゲル内部の微細な網目構造を非破壊で測定できるキャラクタリゼーション法について報告する. 化学ゲルの網目構造には, 重合時の濃度ゆらぎに起因する凍結した不均一性が存在するために, 動的光散乱によって特徴的なスペックルパターンが観測される. これは媒体の非エルゴード性に直結するので, 動的光散乱でゆらぎの自己相関関数を測定する際には測定量の平均の取り方に注意する必要がある. この問題に対し, 走査型顕微光散乱によってアンサンブル平均のゆらぎの自己相関関数を厳密に測定する方法を確立した. 算出した相関関数に対して逆ラプラス変換で解析を行うと, これまで測定が困難であった不均一なゲルの場合でも, 動的ゆらぎの緩和スペクトル分布を決定し, 網目サイズの不均一性や複数の緩和の存在を定量的に議論できる. さらに走査測定によって複数の緩和について, それぞれの緩和の空間的な相関長を決定できることを示した.
  • 角 裕子, 青木 純, 宮下 徳治
    2002 年 59 巻 10 号 p. 590-595
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    反応性高分子ラングミュア・ブロジェット (LB) 膜を作製し, より効果的かつ簡便に高分子薄膜に機能団を導入する方法を報告する. 反応性基として側鎖端末にアミノ基を有するN一ドデシルアクリルアミド共重合体は水面上で安定な単分子膜を形成し, LB法により固体基板上に積層された. このLB膜の構造は表面圧-面積等温線, X線回折 (XRD), フーリエ変換赤外分光法 (FT-IR) によって調査された. LB膜中のアミノ基の反応性は蛍光プローブとしてフルオレセインイソチオシアネート (HTC) を用いて詳細に検討した. 蛍光スペクトル測定から, LB膜中のアミノ基とFITCのイソチオシアニル基の反応は30分で完了し, LB膜内でも高い反応性を保持していることが実証された. また, これらの化学結合の形成はFT-IRにて確認した. HTCで修飾されたLB膜の発光強度を利用してpHセンサー能を調査したところ, pH5~9の間でよい応答性を示した. 同様の発光挙動は蛍光顕微鏡でも観察され, 視覚的にもそのセンサー能を確認することができた.
  • 合田 秀樹
    2002 年 59 巻 10 号 p. 596-601
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ハードセグメント (HS) とソフトセグメント (SS) の共重合ポリマーであるセグメントポリウレタンを原料にして, ゾルーゲル法によって, シリカとの分子ハイブリッド材料を合成した. 本ハイブリッド材は, SS連続相中にHS-シリカハイブリッドドメインが分散したミクロ相分離構造をもっており, シリカの局在化はSEM/EPMAから観察される. シリカはドメインに局在化しているため に, SSには影響を与えず, ポリウレタンの柔軟性 (フィルムの伸び) は保持される. 一方で, HSのTgを消失させ, 弾性率などの力学強度, 耐水性などを大幅に向上する効果を示す.
  • 菊池 裕嗣, 阿部 洋, 入江 博文, 梶山 千里
    2002 年 59 巻 10 号 p. 602-607
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ネマチック液晶に高分子を相溶させた複合系を新規に創成し, 濃度誘起型の光学的等方相における, カー効果に基づく高速応答光シャッター機能について検討した. 高分子としてシアノフェニル基とイソプチル基を側鎖置換基として有するポリアクリレート共重合体を用い, 共重合組成を変化させると, (高分子/液晶) 複合系のネマチック-等方相転移温度が大幅に降下する, 共融現象と類似の現象が観測された. この濃度誘起型等方相におけるカー効果の測定の結果, カー係数は一般の有極性液体よりは大きいものの液晶物質単独に比べて1/4程度に減少することが観測された. この結果は, 等方相における液晶分子の配列秩序の相関長が高分子鎖によりナノレベルに細分化されたためと考えられる. 応答速度の測定の結果, 立ち上がりと立ち下がり応答ともに液晶物質単独と比較して高速化されることが観測された. 以上より, (高分子/液晶) 複合系の濃度誘起型等方相において, 高分子により細分化された液晶により高速の電気光学効果が発現されることが明らかとなった.
  • 伊掛 浩輝, 福田 由美子, 清水 繁, 栗田 公夫, 矢野 彰一郎
    2002 年 59 巻 10 号 p. 608-615
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    両末端にエトキシシリル基をもつポリエチレングリコール (PEG) とWO3とをゾルーゲル反応より調製した淡黄色透明のハイブリッドは, 紫外線照射時間とともに無定形WO3がタングステンブロンズ構造に変化するために淡黄色から青色に着色し, 暗所放置時間とともに脱色した. 短時間の紫外線照射, 暗所放置の繰返しに対しても, 良好なフォトクロミズム (PC) を示した. X線広角回折測定から, フイルム内部の無定形WO3の一部がX線の高エネルギー照射によってタングステンプロンズ構造へ変化していることがわかった. X線小角散乱測定からは, PEG末端のシラノール基どうしの化学結合によってシリカドメインを形成し, そのドメイン間の干渉ピークが現れたが, 電子密度の高いWO3を充てんするとシリカドメイン間干渉が見えなくなるほどの強い散乱を示した. 試料は室温付近以上の広い範囲の温度でゴム状プラトー領域を示し, 同領域での弾性率はWO3充てん量に応じて増加するのは, PEGマトリックス中にWO3クラスターが分散するためであるが, WO3クラスターによるPEGセグメントのミクロブラウン運動への束縛が少ないと解釈された. WO3充てん量に応じて引張破断強度が増加するが, ひずみにはほとんど変化が見られなかった. 結果的に, 比較的WO3充てん量の多いハイブリッドは, 靱性をもち, PC特性の良い材料と考えられる.
  • 高澤 亮一, 吉川 功, 荒木 孝二
    2002 年 59 巻 10 号 p. 616-622
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    トリアミドシクロヘキサン誘導体は, 強固な三重水素結合により擬似高分子鎖を形成することが知られている. この水素結合性擬似高分子鎖を非極性で柔軟なジイソプロピルオクチルシリル基で覆うという分子設計に従い合成したTris [3- (diisopropyloctylsilanyloxy) propyl] -cis, cis-1, 3, 5-cyclohexane-tricarboxamideは, 加熱紡糸 (150℃, 紡糸速度8-11m/min) により柔軟な超分子繊維 (φ=0.1-0.3mm) となる. 赤外吸収スペクトルから, アミド間三重水素結合による擬似高分子鎖が形成されていること, そしてX線回折から, 超分子繊維中で擬似高分子鎖が繊維軸に沿って高度に配向していること (配向関数fc=0.6) が示された. また引張強さは1MPa程度であった. 偏光顕微鏡観察から, 紡糸した超分子繊維中は繊維全体が一様に軸配向した構造ではなく, 10-50μmスケールのドメインが形成されていることが判明した.
  • 谷垣 宣孝, 吉田 郵司, 京谷 裕子, 海藤 彰, 八瀬 清志
    2002 年 59 巻 10 号 p. 623-630
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (ジーnーヘキシルシリレン) (PDHS) の配向薄膜を摩擦転写法によって作製した. この薄膜の作製温度条件を検討し, 高配向薄膜について配向構造を分光法, および全反射X線回折法によって評価した. その結果, PDHS分子鎖は摩擦方向に平行に配向しており, さらに基板に対しても特定の配向をしていることがわかった. また, 摩擦転写膜の相転移前後における配向を評価した結果, 配向をほぼ保ったまま相転移すること, 高温相から低温相に再結晶化するときに配向が若干乱れることが観測された. さらに配向薄膜の偏光蛍光スペクトルを測定し, エネルギー移動を観察した.
  • 谷 昌明, 福嶋 喜章
    2002 年 59 巻 10 号 p. 631-636
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エポキシ環をもつトリアルコキシシランと金属塩化物より有機/無機ハイブリッド層状高分子を合成した. これは無機部が雲母, スメクタイトなどと同様の層状ケイ酸塩構造であり, エポキシ基を含む有機側鎖が無機部のシリカ4面体層のシリコン原子と共有結合で結ばれた構造の有機/無機複合体である. 合成したハイブリッド層状高分子とエポキシ樹脂, エポキシ樹脂用硬化剤の混合物の粉末X線回折 (XRD) 結果よりハイブリッド層状高分子はエポキシ樹脂や硬化剤により膨潤することを確認した. ハイブリッド層状高分子をエポキシ樹脂/硬化剤系にフィラーとして添加した場合, 動的粘弾性 (DMA) 測定において貯蔵弾性率が全温度域で増加し, ガラス転移温度が上昇した. 無機層状粒子と共有結合したエポキシ基がエポキシ樹脂/硬化剤マトリックスと反応結合することにより耐熱性向上に効果的に寄与したものと考えられる.
  • 鈴木 正郎, 笠井 均, 三浦 啓彦, 岡田 修司, 及川 英俊, 仁平 貴康, 袋 裕善, 中西 八郎
    2002 年 59 巻 10 号 p. 637-641
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリイミドの前駆体ポリマーであるポリアミック酸ナノ粒子を再沈法により作製した後, 化学イミド化処理を施すことでサイズ制御されたポリイミドナノ粒子を分散液状態で得ることに成功した. また, 走査型電子顕微鏡観察により, ポリイミドナノ粒子の形態は球状であり, ポリアミック酸ナノ粒子のモルホロジーが化学イミド化後もそのまま保持されていることを明らかにした.
  • 横山 士吉, 益子 信郎
    2002 年 59 巻 10 号 p. 642-645
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    数nmの分子径をもつデンドリマーを用いて, 2光子吸収によるリソグラフィーを行った. デンドリマーの空間的しゃへい性は, 系内に包括させた蛍光色素と重合開始剤の系間交差を抑制する効果があることを見いだし, 色素を高濃度にドープした機能性構造物の作製が可能となった. 本手法を用いて, 0.35μm以下の精度で3次元直接描画が可能であることを示した.
  • 古性 均, 近間 克巳, 宮本 久恵, 長崎 幸夫
    2002 年 59 巻 10 号 p. 646-650
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, ポリアリルアミンをテンプレートに用い半導体ナノ粒子の合成法の検討および溶液中における半導体微粒子の蛍光発光特性の検討を行った. その結果, その蛍光発光波長は, テンプレートに用いるポリマー濃度に依存し, 濃度の増加に伴い短波長シフトすることが明らかとなった. これは硫化カドミウム (CdS) 粒子径がポリマー濃度の増加に伴い小さくなることを示す結果である. 透過型電子顕微鏡 (TEM) 観察の結果, 粒径がポリマー濃度に依存していることが明らかとなった.
  • 橋本 裕一, 澤田石 哲郎, 居城 邦治, 下村 政嗣
    2002 年 59 巻 10 号 p. 651-655
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    導電性高分子であるポリー3ーヘキシルチオフェン (PHT) 希薄高分子溶液を加熱した固定電極基板上ヘキャストすることで規則的に配列した幅15~3μm, 厚さ約70nmの細線がパターン構造を作製した・導電性カンチレバーを超微小電極とした導電性原子間力顕微鏡を用いて1本の細線構造の導電性を測定した. 形状と電流分布を同時に測定した結果, ポリマー細線上にのみ電流が流れることが確認され, 固定電極からの距離と測定電流の関係より細線構造にはオ-ムの法則が成り立つことが示唆された. また, 光照射により測定電流が増加することからPHT細線の光導電性を測定することができた. キャストフィルムと比較して, 自己組織化により形成された細線構造は, 電気伝導度が向上した. 細線構造中の分子の配向が要因であることが示唆される.
  • 篠原 浩美, 中尾 愛子, 西出 宏之
    2002 年 59 巻 10 号 p. 656-660
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    コバルトテトラフェニルポルフィリン (CoTPP) とオクチルメタクリレートとビニルイミダゾールの共重合体 (OIm) の錯体から, CoTPPを高い濃度で含み酸素の促進輸送能をもつ緻密薄膜を, 多孔質支持膜上に膜厚80~90nmで作成できた. CoTPPは膜内にほぼ均一に分布し, OImイミダゾール残基と5配位錯体を形成していた.
  • 加賀 和明, 岡本 潔, 知場 亮太, カートハウス オラフ
    2002 年 59 巻 10 号 p. 661-664
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    マイクロメートルサイズのポリスチレンドロブッレトか「ポリスチレンドーム」中の3, 3'-diethyl-9-methylthiacarbocyanine iodideの蛍光作用を研究した. そのサンプルは, 基板の上にポリマー/色素の希薄溶液をキャスティングすることによって作製する. ディウェッティングプロセスによって, 1~100μmの直径と100nmから数μmの高さをもった小さなポリマードームをつくることができる. 蛍光顕微鏡によって, 色素が, これらポリマードームに取り込まれた様子を見ることができる. その観察によって, 吸収と蛍光スペクトルが, ポリマードームのサイズに依存することがわかった. より大きなドームほど, 赤色にシフトした蛍光スペクトルを示す.
  • 登阪 雅聡, Gerd KAUPP
    2002 年 59 巻 10 号 p. 665-668
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    マイカ基板上に形成したpoly (tetrafluoroethylene) (PTFE) 配向膜にnanoindentationを行った. 応力を取り除く過程における応力-押し込み深さ曲線を解析することにより, 硬さと還元弾性率Erの値が得られた. また, PTFE薄膜のErとマイカ基板単体のErからPTFE薄膜単体のヤング率を評価する際, 必要となる重み付けのパラメータを得た.
  • 松下 忠史, 長谷川 博一, 橋本 竹治
    2002 年 59 巻 10 号 p. 669-671
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ラメラ状ミクロ相分離構造をもつポリスチレンーポリイソプレンジブロック共重合体について, バルクに対してはテトラチアフルバレン (TTF) /7, 7, 8, 8-テトラシアノキノジメタン (TCNQ) 電荷移動錯体を, 膜表面および超薄膜に対してはTTF/ヨウ素電荷移動錯体を一方のミクロドメイン相へ選択的に導入することを試みた. 選択溶媒を用いることにより, 膜表面および超薄膜に対しては有効な選択的電荷移動錯体導入方法を見いだし, バルクに対してもその可能性を示すことができた.
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