両末端にエトキシシリル基をもつポリエチレングリコール (PEG) とWO
3とをゾルーゲル反応より調製した淡黄色透明のハイブリッドは, 紫外線照射時間とともに無定形WO
3がタングステンブロンズ構造に変化するために淡黄色から青色に着色し, 暗所放置時間とともに脱色した. 短時間の紫外線照射, 暗所放置の繰返しに対しても, 良好なフォトクロミズム (PC) を示した. X線広角回折測定から, フイルム内部の無定形WO
3の一部がX線の高エネルギー照射によってタングステンプロンズ構造へ変化していることがわかった. X線小角散乱測定からは, PEG末端のシラノール基どうしの化学結合によってシリカドメインを形成し, そのドメイン間の干渉ピークが現れたが, 電子密度の高いWO
3を充てんするとシリカドメイン間干渉が見えなくなるほどの強い散乱を示した. 試料は室温付近以上の広い範囲の温度でゴム状プラトー領域を示し, 同領域での弾性率はWO
3充てん量に応じて増加するのは, PEGマトリックス中にWO
3クラスターが分散するためであるが, WO
3クラスターによるPEGセグメントのミクロブラウン運動への束縛が少ないと解釈された. WO
3充てん量に応じて引張破断強度が増加するが, ひずみにはほとんど変化が見られなかった. 結果的に, 比較的WO
3充てん量の多いハイブリッドは, 靱性をもち, PC特性の良い材料と考えられる.
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