高分子論文集
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60 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 柳ヶ瀬 昭, 長谷川 章
    2003 年 60 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    乳化重合系でのリビング重合の可能性については, Smith-Hwartの乳化重合理論における粒子生成時のメカニズムに示唆されているが実験的な議論が少なく, わずかにMikurasovaらによる開始剤を工美したリビングラジカル乳化重合の実験例が報告されているに過ぎない. スチレンの乳化重合において, 特定の乳化剤を高濃度で用いる条件で極微量の過酸化物を使用したレドックス系開始剤によるラジカル重合を行うことにより乳化重合の初期段階ではリビング重合的に進行することを明らかとした. また, この乳化重合挙動をSmith-Ewart-Gardonの理論より解析した.
  • 高橋 淳, 渡部 秀樹, 中本 潤, 伊藤 忠員
    2003 年 60 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    二峰性のゴム粒子径分布を有するメチルメタクリレートーブタジエンースチレン樹脂 (MBS樹脂) の耐衝撃性と透明性を調査した. 今回は, 大粒子径としてのゴム変性MBS樹脂と小粒子径としての乳化グラフトのブレンド物を評価した. その結果, ゴム粒子径の大きなゴム変性MBS樹脂は乳化グラフトのブレンドにより高い耐衝撃性を示したが, 乳化グラフトゴムが少ない場合は透明性が低かった. 破壊部のSEM観察と亀裂先端部のTEM観察の結果, ゴム変性MBS樹脂と乳化グラフトのブレンド物の耐衝撃性にはせん断降伏が重要な役割を果たしていることが示唆された.
  • 名取 至, 中橋 順一
    2003 年 60 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    両末端に無水トリメリト酸基を有する水素化ポリブタジエン (TA-HPB) を含有するエラストマー強化ポリアミド66 (PA66) の調製とその特性に関する研究を行った. エラストマー強化PA66の耐衝撃強度と曲げ弾性率 (FM) は, 変性エラストマーと未変性エラストマーの引張弾性率 (TM) によって大きな影響を受けた. PA66/変性エラストマー組成物の低温度雰囲気下における耐衝撃強度は, TA-HPBを添加することによって大幅に改良された. PA66, TMの高い変性エラストマー, TMの低い未変性エラストマー, TA-HPBの組合せは, エラストマー強化PA66の組成物において, 高いFMと低温度雰囲気下における高い耐衝撃強度を両立することが見いだされた. 本研究の成果として, 組成が最適化されたTMの高い変性エラストマーとTA-HPBを含むエラストマー強化PA6は, 低温度雰囲気下において高い耐衝撃強度を発現する新しいタイプの超耐衝撃性ポリアミド樹脂として提案された.
  • 屈折率制御用新規相溶性透明ポリマーブレンドの形成
    魚津 吉弘, 堀江 一之
    2003 年 60 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    プラスチック光ファイバ, ロッドレンズおよび光導波路といった屈折率分布を有する光学素子を形成するために, 数種のメタクリル酸エステル系ポリマーをそのポリマーとは屈折率の異なるポリマーを形成するモノマーあるいはモノマー混合物に均一に溶解させた状態で紫外線照射を行い, ポリマーブレンドを形成することにより, 従来の手法では相分離を起こし不透明となるポリマーの組合せに対して, 透明なポリマープレンドを実現した. この現象は, 光重合の重合速度が速く, 初期の均一状態を維持できるためと考えられる. また, メタクリル酸フッ素化アルキル系ポリマーとポリメタクリル酸メチルとのブレンドでは相溶性に関して, 水素結合の影響が確認できた. このポリマーブレンド形成技術ならびに新しい透明ポリマーブレンドは屈折率分布型透明材料の開発に非常に有用なものである.
  • 白石 浩平, 三浦 浩二, 浅見 剛, 光田 益士, 杉山 一男
    2003 年 60 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    2- (Dansyloxy) ethyl methacrylate [DnsEMA] とN-tert-butoxycarbonyl-O-methacryloyl-L-serine diphenylmethyl ester (Boc-SerMA-Ph2) を合成し, ラジカル重合により得た共重合体をトリフルオロ酢酸 (TFA) で脱保護して, ダンシル (Dns) 基でラベル化した両性イオン構造をもつpoly (O-methacryloyl-L-serine) [poly (SerMA-co-DnsEMA), DnsEMA含量: 0.8mol%] TFA塩を得た. poly (SerMA-co-DnsEMA) 存在下, pH=1.5~12溶液中で蛍光測定 (励起光: λex=325nm) した結果, 蛍光波長はほとんど変化しなかったが, pH=6.2のPoly (SerMA) の等電点付近まではpHの増大とともに蛍光強度が直線的に増加するpH応答性を示した. またpoly (SerMA-co-DnsEMA) 水溶液に血漿タンパク質アルブミン (Alb), γ-グロブリン (Glo), およびフィブリノーゲン (Fib) を添加するとλex=325nmの蛍光はAlb添加系のみにおいてブルーシフトし, 強度も増大した. また, λex=290nmでAlb中に存在するトリプトファン (Trp) 励起するとpoly (SerMA-co-DnsEMA) 存在下では350nm付近のTrPに基づく蛍光以外に, 440nm付近にDns基に基づく蛍光が認められ, Alb中のTrPとpoly (SerMA-co-DnsEMA) 中のDns基との相互作用を認めた.
  • 内山 昭彦, 池田 吉紀, 谷田部 俊明
    2003 年 60 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    液晶表示装置用の位相差フィルムとして広く用いられているビスフェノールAポリカーボネート (BPAPC) 延伸フィルムの3次元屈折率と複屈折波長分散の相関およびIR, WAXSによる分子構造との相関を検討した. その結果, 通常の位相差フィルム製造条件であるTg近傍で延伸条件を変化させることによりBPAPCの分子配向を示す3次元屈折率が変化しても, 複屈折波長分散は変化しないことがわかった. また, 偏光IR, IRコンホメーション解析, WAXS測定で観測される特定の結合や原子団の配向状態と複屈折の関係は, 3次元屈折率が変化してもほとんど変化がないことがわかった. これらの結果から, 通常の位相差フィルム製造条件であるTg近傍で延伸されたBPAPCフィルムにおいては, 3次元屈折率測定から得られる分子配向変化が生じても, セグメントまたはそれに近い大きさでの微視的な分子構造変化が生じていないため, 複屈折波長分散が変化していないものと考えられる.
  • 紺野 慎行, 日下石 進, 中井 由実, 大橋 佳奈
    2003 年 60 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2003/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレート (PET) の熱分解時に発生するラジカルを利用して, このラジカルと反応する低分子化合物が存在すればふたたびラジカルがカップリング反応を開始すると想定した. 本研究では, カップリング反応物質としてテレフタル酸テレフタル酸ジエステル, それに対応した触媒と して酢酸カルシウム, 多価フェノールを用いた. これらをPETに添加したときのin situ重合による分子量変化について検討した. テレフタル酸やテレフタル酸ジメチルを約200ppm添加することでPETの分子量は20-70%増加した. またこのときの分子量増加は橋掛けによるものではないことが, 動的粘弾性の結果から裏付けられた. さらに, ESRの測定からPETのラジカルは安定して存在した. このことから, PETのin situ重合はエステル交換反応ではなく, ラジカル反応によって, 進行すると考えられた.
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