通常の高真空蒸着装置を用いて, 数種の金属と水素化フタロシアニン (H
2Pc) との二元同時蒸着を試みた. 得られた混合膜中のH
2Pcの化学構造の変化に注目して, X線光電子分光 (XPS) および紫外・可視吸収スペクトルによる解析を行った. その結果, Cu, Al, Sn, およひAuとの同時蒸着膜においては蒸着金属の衝突によると思われるH
2Pc分子の破壊が示唆された. 他方, NiおよびInとの同時蒸着膜 (Ni×H
2Pc, In×H
2Pc) に関しては, 特にNi×H
2Pcの場合, XPSと紫外・可視吸収スベクトル双方共にH
2Pcのそれらとは異なり, 既成のニッケルフタロシアニン錯体 (NiPc) のそれらと類似しており, 真空蒸着法によってNiPcを形成できる可能性が示唆された. これに対しIn×H
2Pcに関しては, 未反応H
2Pcの場合と全く同様のスペクトルが得られた.
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