高分子論文集
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53 巻, 1 号
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  • 石川 優, 杉本 昌隆, 畑田 浩一
    1996 年 53 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エチレン-プロピレンゴム (EPR) をモディファイヤーとしてブレンドしたポリプロピレン (PP) の変形様式とタフネスの発現機構についてU字型切り欠きを用いた平面ひずみ下の三点曲げ試験により検討した. EPRの添加に伴う変形様式の変化は塑性不安定理論により, またタフネスの改善はEPRから形成されるボイドによるひずみの拘束の解放により応力集中の大きさがフィブリルの強度以下に緩和されることによって理解できることを示した. EPRをブレンドしたPPの塑性変形の安定性は低下した.
  • 石川 優, 杉本 昌隆, 畑田 浩一
    1996 年 53 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン (PP) をマトリックス樹脂, エチレンープロピレンゴム (EPR) をモディファイヤーとしてブレンドした耐衝撃性ポリプロピレン (HIPP) の射出成形試料について, PPの分子量そしてEPRの粘度がHIPPのタフネスの大きさに与える影響について, ひずみの拘束による高分子材料の変形と破壊機構を基礎として検討した. 高分子量のPPを用いることによって生じるタフネスの改善はマトリックス樹脂のPPのフィブリルの強度の向上による効果が大きい. PPとEPRの粘度の差が小さい場合, 射出成形によって配向したモディファイヤーは降伏応力の増加をもたらす. その結果, このHIPPでは応力集中の大きさが増加し, タフネスは低下する.
  • 折原 勝男, 野内 健太郎, 土屋 和尋, 青木 勝博
    1996 年 53 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    通常の高真空蒸着装置を用いて, 数種の金属と水素化フタロシアニン (H2Pc) との二元同時蒸着を試みた. 得られた混合膜中のH2Pcの化学構造の変化に注目して, X線光電子分光 (XPS) および紫外・可視吸収スペクトルによる解析を行った. その結果, Cu, Al, Sn, およひAuとの同時蒸着膜においては蒸着金属の衝突によると思われるH2Pc分子の破壊が示唆された. 他方, NiおよびInとの同時蒸着膜 (Ni×H2Pc, In×H2Pc) に関しては, 特にNi×H2Pcの場合, XPSと紫外・可視吸収スベクトル双方共にH2Pcのそれらとは異なり, 既成のニッケルフタロシアニン錯体 (NiPc) のそれらと類似しており, 真空蒸着法によってNiPcを形成できる可能性が示唆された. これに対しIn×H2Pcに関しては, 未反応H2Pcの場合と全く同様のスペクトルが得られた.
  • 和田 牧子, 藤重 昇永, 内野 滋己, 大栗 直毅
    1996 年 53 巻 1 号 p. 20-32
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子多糖類の熱分解や燃焼挙動を明らかにするためのモデルとして, グルコース, セロビオース, マルトースに加えてマルトースの同族体である重合度3~7に相当する線状オリゴマーならびに重合度6~8に相当する環状オリゴマーを用いて, キューリーポイントパイロライザーを直結した熱分解ガスクロマトグラフィーにより熱分解挙動を追跡した. 熱分解に際しては熱分解と同時に熱分解生成物の誘導化を図る熱分解メチル化法を併用し, 熱分解挙動の追跡を容易にした. 423℃の熱分解により同じ重合度の線状オリゴ糖と環状オリゴ糖を比較すると通常の熱分解法ではほとんど同じ特徴ピークが検出されるのに対して, 熱分解同時メチル化法では著しい相違が見いだされた. α-シクロデキストリンの熱分解同時メチル化ではレポグルコサンの生成が抑制される代わりにレボグルコサンの2, 3, 4位の-OHが-OCH3基で置換された3種のフラグメントが検出された.
  • 山田 泰美, 田坂 茂, 稲垣 訓宏
    1996 年 53 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    テトラメチルシラン (TMS), ジメチルジメトキシシラン (DMDMOS), およびテトラメトキシシラン (TMOS) のプラズマ重合により合成されるSiOxを主成分とした薄膜からの脱炭素化について, リモート酸素プラズマ照射が及ぼす効果を検討した. 膜堆積基板の位置が酸素プラズマ発生源から離れるに従い, モノマーの種類に関係なく, 堆積膜中の炭素成分は減少した. これは有機シランのプラズマ重合反応中に副生するアルキル基の分解が, リモート酸素プラズマにより促進されたためと考えられる. また堆積した膜の構造は, モノマー構造による差がほとんどなくなり, Siがほぼ完全酸化したSi- (O) 4構造を有していた. これはモノマー構造中のSi-CH3, Si-O-CH3基のアルキル基の分解も促進されたためである. 以上の結果からリモート酸素プラズマ照射は炭素成分の少ないSiOx薄膜の合成に効果的であることが示唆される.
  • 鈴木 雅雄, 永井 晃, 高橋 昭雄
    1996 年 53 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    芳香族シアナミド化合物のシアナミド基のオルト位にアルキル基を導入し, 反応性を抑える試みを行った. その結果, 反応速度はアルキル基の嵩高さに依存し小さくなることを確認した. その効果の解釈を半経験的分子軌道法を用いて試み, 以下の結果を得た. オルト位へのアルキル基導入による立体的な反発がシアナミド基のねじれを引き起こし, ベンゼン環とシアナミド基とのπ共役が切れるのに伴ってシアナミドの窒素上の電子密度を増大し求核性が増大する. また, ニトリル基の求電子性が増大するのと同時に, HOMO-LUMOのエネルギー差△Eを大きくする. これらが, 相対的にシアナミド化合物の反応速度定数を低減させる原因であると考えられる.
  • 杉山 一男, 福知 幹男, 岸田 晶夫, 明石 満, 門磨 義仁
    1996 年 53 巻 1 号 p. 48-56
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ホスホリルコリン基を含むコポリマーをグラフトしたポリウレタンをマクロモノマー法で合成した. すなわち, 2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine (MPC) とmethylmethacrylate (MMA) のラジカル重合をthioglycerol (TG) 存在下で行って得た末端ジオールのマクロモノマーMac (MPC/MMA) とポリエーテルのジイソシアネートへの3元重付加重合から一連のグラフトコポリウレタン (gPEU-III~VI) を合成した. ポリエーテルはPEG#2000とPPG#2000を用い, ジイソシアネートはtolylene2, 4-diisocyanateと4, 4′-diphenylmethane diisocyanateを用いた. gPEU-III~VI ([η] =0.13~0.20dL・g-1) のフィルムの水への浸漬前後のXPS測定から, 水中ではMPC成分とポリエーテル鎖はフィルムの表面付近に配向していることが分かった. gPEU-III~VIはalbuminの吸着を抑制し, マウス繊維芽細胞 (L-929) を全く接着しなかった.
  • 堀邊 英夫, 熊田 輝彦, 久保田 繁
    1996 年 53 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ベース樹脂, 溶解抑制剤および酸発生剤からなる化学増幅系3成分ポジ型レジストにおいて, 溶解抑制剤は露光で発生した酸により溶解促進剤になる. 今回, 溶解促進剤の酸性度 (pKa) に着目し, 溶解促進剤と露光部の溶解速度との関係を検討した. ベース樹脂にポリ (p-ビニルフェノール) (PVP), 溶解促進剤にカルボン酸誘導体を用いモデル膜を作製した. カルボン酸誘導体の添加量が多いほど, またカルボン酸のpKaが小さい (酸性度が高い) ほど, モデル膜の溶解速度は大きくなることがわかった. カルボン酸の溶解促進効果は, 現像液中に大量に存在する塩基成分が膜中のカルボン酸と選択的に中和反応を起こし, 塩が溶出することにより, PVPと塩基との反応確率が増加し, 生じると考えられる. 高解像度レジストに必要なレジスト露光部の溶解速度向上には, 露光後に高酸性度を示す溶解抑制剤を用いることが効果的である.
  • 永田 康久, 大西 祐輝, 梶山 千里
    1996 年 53 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を, N-メチル-2-ピロリドン (NMP) のような高沸点かつポリアミド酸の良溶媒中で熱イミド化を行わせ, 1~10μmの特殊形状の高結晶性ポリイミド微粒子が作製できた. 重合した数種のポリアミド酸を, NMP中150~200℃にて熱イミド化を行わせ, 析出した微粒子を乾燥・熱処理し, ポリイミド微粒子とした. 微粒子のFT-IR測定結果は, イミド構造を支持しており, SEM観察では束状あるいはサンゴ状の特有な粒子形状が観察された. このような形状はポリマーの球晶成長の過程で観察される形態に類似しており, 広角X線回折の結果より結晶性の高いことが定性的に認められ, 球晶状の微粒子であることが明らかとなった. 微粒子の表面に対して垂直方向に電子線を入射したED像では, (200) および (110) 面からの反射が六点回折像となり, ポリイミド分子鎖が表面に対して垂直方向に規則的に配列していることが示唆された.
  • 瀬尾 利弘, 下村 與治, 卯西 昭信
    1996 年 53 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ビグアニド基を有するキトサンの合成を, a) 溶融法, b) 金属塩法, およびc) グアニル-O-メチルイン尿素 (GOMe) 法を用いて行った. キトサン塩酸塩とジシアンジアミドを高温加熱した前2者のでは, 置換率 (DS) は30%以上になったが分子量は低下した. 一方, アルカリ処理キトサンとGOMe塩酸塩を室温で反応した場合は, DS約20%で高分子量を保持した生成物が得られた. 多含窒素官能基含むこれら誘導体は, 酸性水溶液中で電解質的粘度挙動を呈した. キトサンビグアニドの金属イオン吸着能は, Zn (II) <Ni (II) 《Cu (II) の順に増大し, Cd (II) やHg (II) にも局い吸着率を不した. さらに, カオリンおよび活性白土懸濁液に対する凝集作用を調べた結果, キ トサンへのビグアニド基の導入による凝集能の向上が認められた.
  • 大藤 吉雄, 江口 保
    1996 年 53 巻 1 号 p. 77-79
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    塩化アンモニウム触媒存在下3, 3′, 4, 4′-テトラアミノビフェニル (TAB) と1, 3-ジシアノベンゼンの一段溶融重縮合により得られた高分子量ポリ (2, 2′-m-フェニレン-5, 5′-ビベンゾイミダゾール) の力学特性, 熱特性, および電気特性等を評価した. 得られた試料はジメチルスルホキシドなどの極性溶媒に可溶で, フィルムおよび繊維への成形が可能であった. TABとイソフタル酸ジフェニルの溶融-固相二段重縮合法 (Marvel法) により得られるポリマーと比較して. 同等の優れた耐熱性を示すが, フィルムの強度および伸度はそれより大きく, ヤング率は若干低い. また, 室温でのポリマーの吸湿性は極めて高く, 低体積抵抗率で, 優れた帯電減衰性を示す.
  • 草薙 浩
    1996 年 53 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    15種類の疎水性ポリマーに収着した軽水と重水の赤外スペクトルを初めて測定し, 水の三っの基本振動バンドνa, νs, δの振動数をそれらのポリマーについて整理した. その結果, (1) 逆対称伸縮振動νaの値に対して, 対称伸縮振動νsと変角振動δの値をそれぞれプロットすると両者とも直線関係になるがνaa直線とδ-νa直線とで勾配が逆向きになる事実を見いだした. さらに, (2) 疎水性ポリマー収着水の伸縮振動νaときごνsについての同位体振動数比r (軽水/重水) の値は, 液体水よりも気体水に近い値であった. これら二つのデータ整理から, 疎水性ポリマー中の収着水は液体水のような状態でなく気体水と同様な単分子状態で, かつポリマーから弱い引力相互作用を受けた状態で存在しているとする我々のこれまでの考えを支持・補強する結果を得た.
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