高分子論文集
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65 巻, 9 号
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総説
  • 陣内 浩司, 森田 裕史, 新原 健一
    2008 年 65 巻 9 号 p. 547-561
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    近年,高分子の不均一構造を三次元的に実空間直接観察することにより,材料の評価・解析を行う新しい実験手法(三次元イメージング法)が注目を浴びている.高分子混合系の相分離過程の三次元観察などに用いられた共焦点レーザースキャン顕微鏡(Laser Scanning Confocal Microscopy, LSCM)に加え,高分子ナノ構造を三次元観察できる透過型電子線トモグラフィー法(Transmission Electron Microtomography, TEMT),不透明な高分子材料の μm スケールでの三次元観察を可能とする X 線 CT(X-ray Computerized Tomography, X-ray CT),さらに集束イオンビームを用いメゾスケールの三次元観察に最適な Scanning Electron Microscopy Combined with a Focused Ion Beam (FIB-SEM)の登場により,nm から μm にわたる広い空間スケールでのシームレスな三次元イメージングが現実のものとなった.本報では,最近特に発展が著しい TEMT の装置・測定法の新展開と新しい三次元イメージング法である FIB-SEM について概説する.また,TEMT と他の構造解析法との組合せによるブロック共重合体・無機/高分子ナノコンポジット材料の最新の三次元観察・解析例を紹介し,三次元イメージング法による新しい高分子構造研究の方向性とその将来性について述べる.
一般論文
  • 三角 潤, 大山 俊幸, 友井 正男, 高橋 昭雄
    2008 年 65 巻 9 号 p. 562-572
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    スチレン-N-フェニルマレイミド交互共重合体(PMS)にグラフト鎖としてポリエチレンオキシド(PEO)を導入したコポリマー(gPMSE)をエポキシ樹脂系中にて in situ 生成させ,エポキシ樹脂の熱的,機械的特性を損なうことなくじん性を向上させることを試みた.その結果,改質剤添加量が 16 wt%の系で,未改質系に比べて KIC の値が約 2.5 倍に向上した.この時,曲げ強度の低下は約 10%に抑制され,曲げ弾性率,ガラス転移温度(Tg)は未改質系の値が維持された.改質硬化物断面の透過型電子顕微鏡(TEM)より,数十 nm 程度の改質剤相がエポキシマトリックス中に分散していることが観察された.PMS にグラフト鎖として PEO ユニットを導入する方法が,改質剤とエポキシマトリックスの相容性向上に有効であり,エポキシ樹脂のじん性が向上することが確認された.
  • 松島 敏則, 村田 英幸
    2008 年 65 巻 9 号 p. 573-578
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    本報では,電極/正孔輸送層および正孔輸送層/発光層の界面制御が有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子の素子特性に与える影響について検討した.0.75 nm の超薄膜酸化モリブデン(MoO3)の正孔注入層を indium tin oxide(ITO)電極と N,N′-diphenyl-N,N′-bis(1-naphthyl)-1,1′-biphenyl-4,4′-diamine (α-NPD)正孔輸送層の界面に挿入することで,ITO と α-NPD 界面でオーミック接合が形成され,有機 EL 素子の駆動電圧の低減と素子寿命の向上が観測された.MoO3 正孔注入層を用いることに加え,α-NPD 層と tris(8-hydroxy-quinoline)aluminum (Alq3)発光層のへテロ接合界面において 5 nm の界面混合層を形成させることで,有機 EL 素子の駆動電圧と素子寿命がさらに改善された.
  • 間々田 祥吾, 矢口 直之, 鈴木 実, 半坂 征則
    2008 年 65 巻 9 号 p. 579-586
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    圧電材料はセンサーやアクチュエーターのデバイスとして注目されているが,セラミック系圧電素子などの現用材料については非常にもろいことや作製できる形状が限定的であるなどの理由から,振動伝達を防止する箇所などでの使用が困難な状況となっている.これに対し,圧電セラミック粒子を配合し分極させた圧電ゴムにより,柔軟性・形状追随性を有する圧電材料が作製できるものと考えられる.しかし,これまで圧電ゴムに対する適正な特性評価法が見いだされてなかった.また,圧電ゴムの材料検討も限定的で,ゴム材種や圧電粒子配合量などの材料因子と圧電特性との関係も十分に解明されているとはいい難い.このため,圧電ゴムの圧電特性評価法として衝撃加振試験を応用した新しい手法を開発した.さらに,この手法を用いて圧電ゴムのゴム材種,圧電粒子の粒径,配合量,カーボンブラック配合量などの材料因子の圧電特性に与える影響を評価した.
  • 片野 肇, 塚谷 才英
    2008 年 65 巻 9 号 p. 587-593
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    ベンゾトリアゾール系,ベンゾフェノン系紫外線吸収剤をポリマー製品に添加すると,黄味の初期着色を与えることがある.その原因の一つとして,フェノール性ヒドロキシル基と共存するアルカリ物質ないしは金属化合物との相互作用があげられている.紫外線吸収剤を含む有機溶液に水酸化テトラブチルアンモニウムおよびチタン(IV)テトラブトキシドを添加すると,同ヒドロキシル基の H+ に伴う吸収の長波長シフトにより溶液が黄色を呈する.この黄色溶液に低分子電解質を高濃度加えると無色となった.この効果が,近接した電解質カチオンが H+ と同様の負電荷の局在化を行うことによるとし,電荷密度の高いカチオンとしてポリアンモニウムの利用を試みた.その対アニオンに疎水性のビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸を選び,有機媒体に易溶としたポリアンモニウム電解質を用いた場合,低濃度の添加でも呈色を抑制できた.このポリアンモニウム電解質はポリビニルブチラール樹脂などにも添加でき,黄変抑制効果を示した.
  • —ピロールの乳化重合におけるトルエン添加効果—
    伊藤 守, 原澤 純一, 中村 洋介, 西村 淳
    2008 年 65 巻 9 号 p. 594-600
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    導電性ポリマーであるポリピロール粒子の分散体(塗料)を得るため,ピロールの酸化重合をトルエン存在下およびトルエン非存在下(方法 I および II)で行い,それぞれを比較検討した.方法 I で平均粒子径が 50 nm のポリピロール分散体(トルエン溶媒)が得られた.しかし,ポリピロール粒子が長時間の保存で凝集して塗料としての安定性に欠けた.一方,方法 II によれば,得られたポリピロールの平均粒子径は方法 I のそれと変わらないものの,分布を狭くすることができた.また,長期保存安定性にも優れ,かつ導電性の高いポリピロール分散体(塗料)を得ることができた.
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