高分子論文集
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70 巻, 3 号
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一般論文
  • 山口 裕之, 中西 真二, 射場 英紀, 伊藤 敬人
    2013 年 70 巻 3 号 p. 87-93
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    ポリアクリル酸(PAA)と酸化ビスマス(Bi2O3)を反応させることによりアモルファスの反応物(PBiA)が得られ,リチウムイオン二次電池の負極活物質として使用可能であることがわかった.ポリフッ化ビニリデン(PVdF)およびポリイミド(PI)バインダーを用いて電池特性を調べたところ,バインダーの種類によりリチウム挿入挙動が異なっていた.PIバインダーはPVdFよりサイクル特性が優れており,PIバインダーを用いた場合は前駆体がPBiAやBi2O3と反応していることが示唆された.また,PIバインダーではPBiAはBi2O3よりサイクル特性が向上した.これはPBiA中の高分子鎖が活物質の膨張収縮の影響を緩和しているためサイクル特性が向上していると推測される.充放電後のXRD測定から活物質中にはナノサイズのビスマスが生成し,Li挿入時にリチウムと合金化してLi3Biになっていることがわかった.
  • 上田 悟, 江口 美佳, 小林 芳男, 堤 泰行, プトラ アナンダ, 山口 大輔, 小泉 智
    2013 年 70 巻 3 号 p. 94-101
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    固体高分子形燃料電池(PEFC)の高性能化にとりPEFCセル内の水分移動を把握することは重要な課題である.本研究は,中性子小角散乱(SANS)と中性子ラジオグラフィー(NR)を用いて発電状態下にあるPEFC内の水分移動を可視化した.SANSは直径10 mmの小さい入射ビームを使用して高分子電解質膜の膨潤挙動を観察するための効果的な方法である.発電時には電解質膜内の水クラスタサイズが電流密度の増加に伴い増大することが確認できた.またサーペンタイン状のガス流路に沿って不均一に増大することを確認した.また,NRは流路に沿ったフラッディングを確認した.SANS観測に対応して局部電池電圧を測定するために,私たちはシャント抵抗回路を組合せた分割電極セルを開発し,SANS測定と同条件でI-V試験を行い,各電極の電圧,電流密度,抵抗値をそれぞれ評価した.それらの結果とNR,SANSで得られた結果を比較することで加湿水,生成水による電解質膜の膨潤,流路へのフラッディングを電池局所の膜抵抗や発電特性を包括的に議論した.
  • 松本 英俊, 高橋 洋暁, 鴻巣 裕一, 斉藤 敬一郎, 皆川 美江, 谷岡 明彦
    2013 年 70 巻 3 号 p. 102-107
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    結晶性高分子であるシンジオタクチックポリスチレン(sPS)をスルホン化した後にキャストを行うことによって,炭化水素系電解質膜を作製した.作製した膜は結晶構造を維持しており,柔軟で取り扱いも容易であった.スルホン化時の硫酸添加量およびスルホン化時間の増加に伴って,イオン交換容量および含水率は増加した.膜抵抗は最も低いもので9.2 Ω · cmを示し,市販フッ素系電解質膜であるNafion117(10 Ω · cm)よりも低い値が得られた.この膜のイオン交換容量(2.2 mmol/g-dry memb.)と含水率(67%)はともにNafion117の2倍以上の値を示した.膜の含水率低減のために,加圧熱処理を検討したところ,含水率を低減させることはできたが膜抵抗が増加した.また,フェントン試験からsPSの結晶部が耐酸化劣化性の向上にも寄与することが示唆された.
  • 上村 太一
    2013 年 70 巻 3 号 p. 108-117
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    リチウムイオン二次電池のアルミニウム集電体に,高分子バインダーと導電性のカーボン粒子とからなる導電性コート剤を下地層としてコートすると,導電性コート層を介して活物質層とアルミニウム集電体が密着することで界面抵抗が低くなり充放電特性が向上する.筆者らは,中でもヒドロキシル基を有する水溶性高分子をポリカルボン酸で架橋したタイプのバインダーを導電性コート剤に用いた場合,上述の抵抗値低減効果がさらに顕著に現れることを見いだした.そこで,本研究ではその原因を探るべく,導電性コート剤に用いるバインダーの物性と電池特性との関係性を検証した.その結果,バインダーの収縮応力によってカーボン粒子がアルミニウム集電体表面の絶縁膜にめり込み,界面抵抗が低くなることを見いだした.さらに,前記バインダーがリチウムとアルミニウムとの相互交換反応を抑制することで,界面に空隙が発生し電池が劣化することを防ぐ効果があることも見いだした.
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