高分子論文集
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45 巻, 9 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 井上 則男, 岡村 みや, 瀬川 定夫
    1988 年 45 巻 9 号 p. 677-682
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    前報において, 我々はエチレンー酢酸ビニル共重合体 (EVA) -塩化ビニル (VC) グラフト共重合体中の塩化ビニルホモポリマー (PVC), 未反応EVA及びグラフト共重合体 (P-Gr) の分離方法を提案し, ポリマー組成及びグラフト率の測定について報告した. 本報ではさらにグラフト共重合体の構造を明らかにするため, 分離した各ポリマー成分の解析を行った. P-Grのアルカリ性メタノール分解により, 枝VC鎖のグラフト点にはEVA主鎖の炭素と側鎖アセトキシ基のメチル炭素の2種類があり, 主に主鎖炭素から分岐していることが明らかとなった. また, 枝VC鎖の分子量や枝数の測定を行い, 枝VC鎖長はホモPVCよりも若干長く, 枝数は幹EVA-分子当たりたかだか1本であることが推定された.
  • 成澤 郁夫
    1988 年 45 巻 9 号 p. 683-690
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    表面処理のある場合とない場合のガラスビーズを充てんしたポリメチルメタクリラート (PMMA) のアコースチックエミッション (AE) 特性と破壊じん性について実験的に検討を行った. シラン処理したガラスビーズを充てんした試料と無処理のガラスビーズを充てんした試料の引張りにおいてはガラスビーズとマトリックスの界面はく離によるAE発生は前者の方がはるかに少なかった. 繰り返し負荷によるカイザー効果でも表面処理と無処理のガラスビーズを含む試料では明らかな相違を示した. DT試験片における安定クラック伝ばん中のAE監視によってもやはり引張りの場合と同様なAEの特徴を示したが, AEの発生頻度はガラスビーズの充てん量の増加とともに減少した. 破壊じん性値Klcはガラスビーズの充てん量が増えると増加したが, 破壊エネルギーGlcはガラスビーズの存在で最初は増加するが, ガラスビーズの体積率が増えるにつれて. 逆に減少あるいはほぼ一定値を示した. Klc及びGlcの変化をAE挙動と進行するクラック先端のブロセスゾーンあるいはダメージゾーンとの関係とで議論した.
  • 佐伯 準一, 金田 愛三
    1988 年 45 巻 9 号 p. 691-697
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    熱硬化性樹脂の流動・硬化特性を迅速, 高精度に評価するために, 成形機, 試験金型, 検出器, データ処理・演算部からなる自動計測, 解析装置を開発した. 樹脂が金型内を充てんし, 硬化反応により流動停止するまでの圧力損失, 流量, 流動距離, 平均見掛け粘度 (ηa) などの値が, 設定時間間隔ごとに求められる. 低圧トランスファー成形用エポキシ樹脂が, 製造工程に用いられる流路と同程度の断面積を持つ3種類の円管流路を流動するときの特性値を, 3種類の金型温度の下で調べた. いずれの条件でも, 流動途中にηaの最低値 (ηaM) が存在する. 流動停止時刻で定義した見掛けのゲルタイム (ta) は圧カプロファイルを利用して正確に求まる. ηaMtaは管径が小きいほど, また, 金型温度が高いほど小さい値を示す. この装置は, EMMIスパイラルフローテストなどの従来手法に比べ, 製造工程での樹脂の成形性の予測に有効なデータを得ることができる.
  • 坂見 宏, 川瀬 薫, 鈴木 憲司, 飯田 昌造
    1988 年 45 巻 9 号 p. 699-703
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    高分子量ポリエチレン (PE), 液体パラフィン (Pa), 及びポリオキシエチレンステアリルエーテル (POS) から成る混合物を種々の倍率に圧延して, Paを有機溶媒により抽出して, PE層間に微細孔を形成させた. その多孔質PEの微細構造を見掛けの比容, 窒素ガス吸着後の脱離による表面積測定及び小角X線測定により検討した. PEフィルムはPaとの混合比 (C) が0.10から0.50, 圧延温度115℃の条件で12から30倍に圧延すると, 圧延方向に層状の空孔が形成した. そのうちCが0.25と0.17で圧延倍率が20から30倍の条件では255m2/gの大きい表面積が得られた. POSはPa中でミセル粒子 (ゲスト) を作り, それがPE配向層 (ホスト) にインターカレートして支柱を形成すると推察された. 最も微細な層状孔では80Åのボス5と40Åのゲストが多量に積み重なった構造であった.
  • 大谷 規隆, 古屋 将美, 畠平 郁, 山崎 誠
    1988 年 45 巻 9 号 p. 705-712
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    橋かけ高分子相間移動触媒を酵素包括担体とする新規な非水系酵素反応の方法を検討した. 第四級アンモニウム塩 (QX) が結合したゲル型ポリスチレン (PS) 樹脂を有機溶媒で膨潤した状態でα-キモトリプシン (α-CT) 水溶液を吸収させ, N-アセチル-L-フェニルアラニンエチルエステル (AcPhoOEt) のn-プロピルアルコール (PrOH) とのエステル交換反応ならびにn-プロピルアミン (PrNH2) によるアミド化反応の触媒として用いた. その結果, これら樹脂固定α-CTは両反応について非固定系と比ベ高活性を示し, トルエンなど樹脂を良く膨潤する非極性溶媒を用いるとき最もα-CTの活性は高くなった. また, 求核基質の濃度, 水量には最適値が存在することが分かった. さらに, 吸収させるα-CT水溶液のpH及び使用する緩衝液の濃度などが樹脂固定α-CTの活性をどのように支配するかを詳細に検討し, 樹脂固定α-CTの基本的性質を明らかにした.
  • 日比 貞雄, 片桐 武司, 安藤 寿規, 野田 栄造, 前田 松夫, 中西 英二
    1988 年 45 巻 9 号 p. 713-719
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    引張り及びねじりの各種速度比の下でポリオキシメチレン (POM) 及びポリエーテルエーテルケトン (PEEK) の各丸棒に引張り-ねじり複合応力が負荷された. 実験結果はvon Mises・Tresca及び修正von Misesの降伏条件による降伏点とフックの法則及びReussの方程式に従う理想弾塑性体の場合として解析された. 相互作用曲線が二次元応力空間で描かれ, 実験から得られた降伏応力の値とよい一致を示す. これらの曲線と負荷条件下の応力空間内の応力状態との交点から, 応力-ひずみ曲線に沿って変形が起こる弾塑性状態の変化が検討された. 降伏点がvon Misesの降伏曲面の内側に認められるとき, 軸対称応力状態で与えられる修正von Misesの降伏条件を検討した.
  • 柿本 雅明, 西片 康成, 今井 淑夫
    1988 年 45 巻 9 号 p. 721-726
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    酸クロリドを用いる低温溶液重縮合法を適用することにより, 3,4′-オキシジアニリンとイソフタル酸クロリドから両末端が酸クロリドの芳香族ポリアミド (アラミド) オリゴマーを合成し, このものを単離することなく両末端が脂肪族アミンのポリオキシェチレンーポリオキシプロビレン共重合体と重縮合反応させて, 対数粘度が0.29~0.43dl/gのポリエーテルーアラミド系ブロック共重合体を合成した. 比較のために, 亜リン酸トリフェニルとピリジンを縮合剤とする直接重縮合法により, 同じジアミンとイソフタル酸と同じポリエーテルオリゴマーの組合せから, ブロック共重合体を合成したが, 酸クロリド法の方が好結果を与えることがわかった. 得られたポリエーテルーアラミド系ブロック共重合体はアラミドの良溶媒であるアミド系溶媒に溶解した. 熱分析によると, このブロック共重合体は二段階で分解し, ポリエーテルオリゴマーとアラミドの中間に位置する熱分解性を示した.
  • 白井 汪芳, 黒瀬 彰男, 中島 正人, 増田 悦子, 北條 舒正
    1988 年 45 巻 9 号 p. 727-732
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ウラシル (U) 及びウラシル誘導体5-fluorouracil (5-FU) は, 銅 (II) アミン錯体と錯生成し, 混合配位子錯体を形成することがわかった. 5-FUは, 抗がん剤として知られており, 今回合成した混合配位子錯体によるマウスP388白血病に対する制がん作用についても検討した. 顕著な制がん効果は認められなかったが, 毒性は少なかった.
  • 芹田 元, 村井 幸一
    1988 年 45 巻 9 号 p. 733-739
    発行日: 1988/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (2-または4-ビニルピリジン) とβ-プロピオラクトン (PL) の反応をメタノールあるいはクロロホルム中で行って両性グラフト高分子電解質 (GPVP) (2I, 4I, I) または (2II, 4II, II) を得た. GPVP中のPLモル分率 (F1) のグラフト鎖長 (r). グラフト率 (GR), 置換率 (SR), 固有帖度 (ηinh), 及び軟化温度 (SP) への影響を検討した. IR, NMRスベクトルから, プロトン溶媒を用いて得られたポリマー2I, 4Iはいずれもベタイン構造を示し, 非プロトンを用いて得られた2II, 4IIは, いずれもエステル構造を示すことがわかった. 置換率は4I>4II>2I>2IIの順であり, グラフト蹟長は, 逆に2II>2I>4II>4Iの順となり, また, グラフト率は2II>4II>4I>2Iの順となることから, 上述のスベクトルの結果が支持された. Iの固有粘度はSRの最大値を示すF1で最大値を示したが, IIのそれはF1の増加に伴って直線的に減少した. Iの軟化温度はIIのそれよりも高い値を示した.
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