高分子論文集
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37 巻, 10 号
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  • 秦 誠二, 土田 英俊
    1980 年 37 巻 10 号 p. 635-640
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子に結合したヘミン錯体の溶液中における運動性をスピンラベル法にて検討した. 低分子配位子 (例えば, ピリジン・イミダゾール) と比較して, 高分子配位子の系ではヘミン錯体の運動性が低下している。これは高分子溶液の粘性に基づくものではなく, 配位結合を介してヘミン錯体が高分子連鎖と結合しているためであることが明らかとなった. 高分子側鎖の配位子残基は対応する低分子配位子と比較して運動性が低く, トランス位に配位した一酸化窒素分子の運動性も, 高分子錯体では低くなっていることがわかった.
  • 西出 宏之, 大野 裕一, 土田 英俊
    1980 年 37 巻 10 号 p. 641-645
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (1-ビニル-2-メチルイミダゾール) (PMI), ポリ (1-ビニルイミダゾール) (PVI), それらの1-ビニルビロリドンとの共重合体 (PMIP, PIP), および対応する一連の置換イミダゾールを軸配位子とするヘム錯体について, 可視スペクトル測定から配位特性を考察した. PVI, PIPは六配位低スピン型ヘム錯体を形成するのに対し, 2置換イミダゾール類, PMI, PMIPのヘム錯体は五配位高スピン構造をとる. 見掛けの錯生成定数Kを比べると, 高分子配位子系では低分子イミダゾール錯体に比べて102~104倍大きく, これは高分子中の局所的に高い配位子濃度と高分子ドメイン中へのヘムの疎水的取込み効果に原因する. 安定な六配位低スピン型イミダゾールーヘムに少量のPMIPを添加すると五配位高スビン型に選択的に移行した.
  • 加藤 雅之, 西出 宏之, 土田 英俊, 佐々木 隆
    1980 年 37 巻 10 号 p. 647-650
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    低温・無触媒で重合可能な放射線法を用い, 金属イオンを鋳型とするポリ (1-ビニルイミダゾール) (PVI) 樹脂を合成した. Ni2+, Co2+, Zn2+の1-ビニルイミダゾール錯体を1-ビニルピロリドンとγ線照射により共重合, 橋かけさせ, その後, 酸処理により金属イオンを除去して, 金属イオンを鋳型とするPVI樹脂を合成した. 鋳型合成したPVI樹脂では, 金属イオンを添加せずに合成したPVI樹脂より, 金属イオン吸着率が高く, また, より広いpH範囲で効率よく金属イオンを吸着した. これは鋳型合成することによって, PVI樹脂の吸着席数および錯安定度が大きくなるためである.
  • 植嶋 宏元, 平井 雅英
    1980 年 37 巻 10 号 p. 651-656
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    金属イオンに対する高選択性を有するキレート樹脂の合成を試みた. フェノールに2個のイミノジ酢酸をマンニッヒ反応を利用し導入したモノマーを合成し, この化合物の各種金属に対する錯形成能を滴定法により調べた. 合成されたモノマーとフェノールおよびホルマリンとの共重合反応により, フェノール系キレート樹脂を合成した. 有機溶媒中での懸濁重合を行うことにより, 球状の樹脂が得られた. モノマーおよびポリマーとも第二鉄イオンに対し高い安定度を示し, フェノールに1個のイミノジ酢酸を有するポリマーとの差が明らかになった. この鉄に対する特異性を利用して, 清酒中のアミノ酸と結合している鉄の除去, 濃厚硫酸亜鉛中の第二鉄の除去, 濃厚硫酸ニッケル中の除銅などの応用研究を行い, 今までのキレート樹脂ではできなかった分野への利用が可能であることを見いだした.
  • 黒瀬 彰男, 杉山 勝雪, 白井 汪芳, 林 貞男, 北條 野正
    1980 年 37 巻 10 号 p. 657-663
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    部分リン酸化ポリビニルアルコール (以下phos. -PVAと略す) の, Cu (II) 錯体を生成し, その性質について検討を行った. その結果, Cu (II) -phos. -PVA錯体は, pH<5ではCu (II) イオンは, ペンダントであるリン酸基と八面体錯体を形成し, pH5~8でリン酸基とPVAのOH残基と両方に配位した混合配位子型錯体となりpH>11ではPVAの1, 3-グリコール位と配位子交換してCu (II) -PVAと同じ構造の錯体に変化することが結論された. また, Cu (II) -phos. -PVA錯体の熱力学的パラメーターを求めた, ΔH値は, 第1, 第2配位段階では正, 第3, 第4段階で負となり, 第3, 第4段階で配位結合が安定化されている. ΔS値からも, 分子内キレート効果による錯体の安定化が明らかになった. また, 側鎖のリン酸基による立体障害, 静電場効果も観察された.
  • 北條 舒正, 白井 注芳, 中嶋 和彦, 林 貞男
    1980 年 37 巻 10 号 p. 665-669
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    水に溶解性の部分的にアシル化 (アセチル化またはプロピオニル化した) したポリビニルアルコール (以下, PVAと略す) とCu (II) イオンとの錯体生成反応を水溶液中で研究した. Cu (II) イオンはビニルアルコール (VA) -酢酸ビニル (VAc) 共重合体中の1, 3-グリコール単位に選択的に配位し, VAc単位のカルボニル基へは配位しないことがわかった. Cu (II) イオンとの錯体生成に及ぼす共重合体中のアシル基の影響をGregor-Bjerrumの方法で調べた. 共重合体中のアシル化度が増すと錯生成定数は小さくなった. VA-VAc共重合で35mol%以上VAc単位があると, Cu (II) 錯体は不安定になった. 部分けん化PVAとCu (II) イオンの錯生成から, この効果はポリマー連鎖中のVAc単位が集団的になると小さくなることがわかった.
  • 上山 憲一, 中田 道生, 中村 晃
    1980 年 37 巻 10 号 p. 671-676
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポーリエチレングリコール (PEG, 平均分子量3,000) の末端アミノ化によってNH2-PEGを合成し, DNP法で定量した. このポリマーとシステイン (Cys) から酸アミド結合でCys-NH-PEGを合成した後, Mo2O2 (μ-S) 22+イオンとの反応によりMo2O2 (μ-S) 2 (cys-NH-PEG) 2 (cys=システイン, 配位に関与している残基を小文宇で示す) を合成した. この錯体はテトラヒドロフラン (THF) に可溶であり, また水にも可溶であった. 赤外, 可視, CDスペクトルの測定から, システイン部分はSNリガンドとしてモリブデンに結合している. また, このNH2-PEGから, Bocで保護したアミノ酸を使い, 段階的にジベプチドが結合したAla-Cys-NH-PEGを合成した. このべプチドからMo2O2 (μ-S) 2 (ala-cys-NH-PEG) 2を合成し, THF中で可視およびCDスペクトルを測定した. これらの錯体はPEGの親水性のために水に良く溶けるので, 金属酵素のモデルとして有用である.
  • 森田 好次, 山内 通秀, 安田 源, 中村 晃
    1980 年 37 巻 10 号 p. 677-684
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    1, 3-ジエンの鉄およびルテニウムカルボニル錯体をペンダントとする有機金属高分子の合成法を研究した. 3-ビニル-1, 5-ヘキサジエンのトリ (カルポニル) 鉄 (0) 錯体は, カチオン重合し, 重合度20の重合体を与えたが, このモノマーは90℃, 1時間加熱すると水素移動が起こり, 安定な錯体に異性化し重合能を失った. 3-ビニル-3-ベンテニルビニルエーテルのトリ (カルボニル) 鉄 (0) およびトリ (カルボニル) ルテニウム (0) 錯体はカチオン重合で分子量20,000の重合体を与えた. これに塩化水素を付加してπ-アリル錯体に導いた後, 銀塩あるいはスズーアマルガムと反応し, 金属-金属結合を含む高分子錯体を合成した. 低分子二核錯体を用いてモデル実験を行い考察した. 高分子反応による錯体合成を, 1, 2-ポリブタジエンおよび3, 4-ポリイソプレンを高分子配位子として用い, 鉄カルボニル化合物との反応により行った.
  • 金子 正夫, 山田 瑛, 根本 重幸, 横山 正明
    1980 年 37 巻 10 号 p. 685-690
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリスチレンを2,2′-ビピリジル化し, これをcis-ジクロロピス (2,2′-ビピリジル) ルテニウム (II) (Ru (bpy) 2) と反応きせて, トリス (2,2′-ビピリジル) ルテニウム (II) 高分子錯体 (PSt- (bpy) 3Ru) を合成した. ビピリジル化ボリスチレンとRu (bpy) 2との錯形成反応はキシレンー1-ブタノール混合溶液中で速やかに進行し, その速度は低分子bpyのそれより速かった. PSt- (bpy) 3RuはPStの溶媒に可溶性で, DMF-H2O溶液中でトリエタノールアミンまたはEDTAを還元剤とするメチルビオロゲン (MV2+) の光還元に対する触媒作用を示した. PSt- (bpy) 3RuとEDTAの混合固体相をMV2+のメタノール溶液相に共存させ, 可視光照射すると固-液界面で光電荷分離が起こり, 固相のEDTAから液相のMV2+に電子移動してカチオンラジカル (MV+) が生成した. 液相にプロトンと白金触媒を共存させると, 光照射によるMW+生成に続いて水素が発生した.
  • 梶原 鳴雪, 森 清広, 斉藤 肇
    1980 年 37 巻 10 号 p. 691-696
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    ジアミノテトラフェノキシシクロトリホスファゼンN3P3 (NH2) 2 (OC6H5) 4 (APT) を(NPCl2) 3, アンモニアおよびナトウムフェノキシドとの反応で合成した. APTはリン酸二水素カリクム, ホウ酸およびリン酸二水素カリウムとホウ酸との反応で得られた生成物とアンモニアガス量が定常状態になるまで170~250℃で反応させた. 生成物は赤外線吸収, ラマン, 1HNMRスペクトル, ゲルパーミエイションクロマトグラフィおよび化学分析で調べた. 生成物は [OP (O) OK] x, [NHP3N3 (OC6H5) 4] v, [OBO2] xの単位から構成されているものと推定された. 生成物の塩化ビニル板への接着強度を調べた. 接着強度はx単位の濃度とともに大きくなることがわかった.
  • 平井 英史, 小松崎 茂, 戸嶋 直樹
    1980 年 37 巻 10 号 p. 697-700
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ ((R) -グルタミン酸) とジ-μ-クロロビス [ビス (シクロオクテン) ロジウム (I)] をグルタミン酸残基のロジウム (I) に対する仕込みモル比20でN, N-ジメチルアセトアミド中に混合してポリ ((R) -グルタミン酸) ・ロジウム (I) 錯体溶液を調製した. この高分子錯体溶液は, 80℃に12時間保持することにより, N, N-ジメチルアセトアミド中, 1気圧においてオレフィンの均一系水素化触媒となった. ポリ ((R) -グルタミン酸) ・ロジウム (I) 錯体触媒溶液は1-ヘキセン, アクリル酸メチル, およびマレイン酸ジメチルに対して均一系で大きな水素化活性を示した. ジ-μ-クロロビス [ビス (シクロオクテン) ロジウム (I)] を過剰の塩化リチウム共存下で用いた低分子系では1-ヘキセンの水素化反応中に金属ロジウムが析出した.
  • 大澤 善次郎, 神田 正之, 相場 光弘
    1980 年 37 巻 10 号 p. 701-704
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アタクチックポリプロピレン (APP) の熱酸化をトリクロルベンゼン溶液中で行い, ステアリン酸銅および酸化生成物のモデル化合物として選んだオクタン酸の影響を, 主に酸素吸収法により検討した. APPの銅接触熱酸化は銅濃度の増加に従い促進されるが, ある濃度 (約7.9×10-4M) 以上になると逆に抑制され, 酸素吸収量は低下した. 少量のオクタン酸 (10-13~10-2M) によって, APPの銅接触熱酸化は抑制されたが, 約10-1M以上では促進された. 酸素吸収の飽和した系に, プロピオン酸またはAPPを加えると再び熱酸化が開始された. これらの結果から, APPのステアリン酸接触溶液酸化では, ごく微量の初期酸化生成物によって銅の触媒活性が著しく影響されることが示唆された.
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