高分子論文集
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45 巻, 7 号
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  • 山城 誠一
    1988 年 45 巻 7 号 p. 535-542
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンアジペート-4,4′ ジフェニルメタンジイソシアナートー各種ジオール類からのセグメント化ポリウレタン弾性糸の100%弾性率はハード成分の量とともに直線的に増加するが, 伸張回復率は直鎖脂肪族ジォールではハード成分/ ソフト成分のモル比 (R′) 1.5付近で極大値を示した. ハード成分の凝集状態がゴム弾性に寄与していることを, 1) ハード成分の側鎖にメチル基を導入すると弾性率, 伸張回復率とも大幅に低下する, 2) 130℃以上の雰囲気で弾性率及び赤外特性吸収のアミド吸収が昇温とともに大きく変化することより明らかにした. このハード成分の凝集力を強化するために芳香核をもつジオールとして1, 4-ビス (β-ヒドロキシエトキシ) ベンゼンを鎖伸長剤に使用するとR′ が1.0でも優れた弾性及び耐熱性をもつ弾性糸が得られた.
  • 田中 裕子, 小川 弘正, 伊与田 惇
    1988 年 45 巻 7 号 p. 543-548
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂とポリアミンとの初期硬化反応過程を明らかにするために, ビスフェノールAジグリジジルエーテル (DGEBA) とN- (3-アミノプロピル) -N-メチル-1,3-プロパンジアミン (M) 及びN- (3-アミノプロピル) -1, 3-プロパンジアミン (P) との反応をNMRを用いて, ゲル化点近くまで追跡した. 反応生成物の構造及び生成量をシグナルの位置と強度から解析した. その結果, DGEBA-M系の場合は, 生成した第2アミノ基の反応が予測以上に速く, また, DGEBA-P系においても, P分子内の第ニアミノ基の反応が予測以上に速かった. このことより, 低分子量で分枝構造の分子が多く生成し, 三次元化が急速に進むことがわかった. 1H NMRスペク卜ルから, 求めた反応率とDSC測定による反応熱から求めた反応率は比較的よく一致した.
  • 大槻 荘一, 同前 保彦
    1988 年 45 巻 7 号 p. 549-553
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    4-ビニルピリジンまたは2. ジメチルアミノエチルメタクリラートと, 4′.メタクリロイルオキシカルコン (4′MC) との共重合体を1. ブロモプロパンで4級化した. 得られた高分子電解質をくし形電極付アルミナ基板にコートし, 紫外光の照射により橋かけした. 4級化したボリ-4-ビニルピリジンまたは4級化したポリ-2-ジメチルアミノエチルメタクリラートに比べ, 光橋かけした高分子電解質の相対湿度-インピーダンス特性は, ほとんど変わらなかったが, わずかにヒステリシスの増加が認められた. 4′MCユニットを有する高分子電解質は, 光照射する前は水溶性であるが, 基板上で光照射した高分子電解質は耐水性を有し, くり返し水に浸せきしても一定のインピーダンスを示した.
  • 末次 憲一郎
    1988 年 45 巻 7 号 p. 555-559
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリカーボネート/ガラス繊維 (GF) 系材料, ポリプロピレン/GF系材料, ポリアミド/GF系材料, ABS/GF系材料, ポリブチレンテレフタレート (PBT) /炭素繊維 (CF) 系材料, エポキシ樹脂/GF系材料などの多くの複合材料について, 引張り強度と曲げ強度との関係を調べた. その結果, 衝撃値が5 (kg-cm/cm, アイゾット・ノッチ付き) 以上で伸びの大きい (1.0~3.0%程度) 射出成形材料では, 引張り強度と曲げ強度がほぼ直線関係にあることを見いだした. 一方, べースポリマーが結晶性の場合や樹脂/充てん剤間の密着度が良好でない場合には, この直線からややずれる傾向がみられた. また衝撃値が2 (kg-cm/cm) 以下, 伸びが小さい (0.2~0.5%程度) 繊維強化熱硬化性材料では, この直線から大きくずれることがわかった. これは直線関係が得られる射出成形材料では, 曲げ変形において引張り破壊が生じ, 伸びが小さい材料系ではせん断破壊が生じているからだと考えられる.
  • 中 裕之, 一柳 高時, 剣持 加津衛
    1988 年 45 巻 7 号 p. 561-565
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    射出成形解析における熱可塑性樹脂の非ニュートン流勤特性を規定する粘度評価手法について, 従来から用いられてきた, キャピラリーレオメーターの考え方に対し, 新たに薄板平板流をモデル化した粘度評価手法と評価式を提案した. 代表例としてポリスチロール樹脂を選び, 二つの評価手法に従って実験的に粘度定数を求め, 双方を比較した. さらに2組の定数を流動解析に適用し, 精度として最も敏感な流動圧力に関して, 解析結果を実験値と比較した. その結果, 485~528Kの樹脂温度範囲内で, 従来法では±数10%の圧力解析娯差を生ずるのに対し, 本提案の手法では-3%~7%以内の解析誤差に収まることが確認された. また, 同様の効果は, ABS樹脂についても成立した.
  • 佐藤 貞雄, 山口 章三郎, 長尾 貴格, 向野 稔
    1988 年 45 巻 7 号 p. 567-572
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    定常法の熱伝導率測定装置を製作し. 装置の性能と溶融プラスチックの熱伝導率及び温度依存性について実験的に検討した. その結果, 本装置による熱伝導率は±4~10%程度の精度が得られた. 特に, 溶融領域における精度は平板法に比べて20%程度向上した. 定常状態における内部シリンダー壁面の軸方向の温度分布とその時間的変動は, 前者では±0.05~0.2℃. 後者では±0.2~0.7℃程度のばらっきを示し, 軸方向の熱流を無視することができた. 熱伝導率の温度依存性はPEに少しみられるがポリカーボネート (PC), ポリアセタール (POM) においてはあまりみられなかった.
  • 中前 勝彦, 西野 孝, 清水 幸夫, 松本 恒隆
    1988 年 45 巻 7 号 p. 573-579
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
     で表される共重合アラミド (HM-50) 及びポリ (p-フェニレンテレフタルアミド) (Kevlar 149) の分子鎖軸方向の結晶弾性率 (El) をX線回折法を用いて測定した. Kevlar 149のEl値は156 GPaであり, Kevlar, Kevlar 29, Kevlar 49について従来得られたEl値に一致した. 一方, HM-50について2θ=14.7°, 27.0°42.2°の三つの子午線反射を用いて得られたEl値は互いに一致し91 GPaであるのに対し, 2θ=29.7°の子午線反射を用いて得られたEl値は74 GPaであった. この現象についてPoint Modelを用いて検討した結果. 前者が共重合体全体のEl値を表しているのに対して, 後者がHM-50中の共重合成分の局値を表しているものと考えられた. 試料弾性率はKevlar 149で144 GPa, HM-50で75GPaであり, これら芳香族ポリアミドにおいて試料物性への結晶物性の寄与が極めて大きいことが明らかとなった.
  • 奈倉 正宣, 小西 淳, 孟 艶清, 石川 博
    1988 年 45 巻 7 号 p. 581-586
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    分子量のほぼそろったトロポコラーゲンのゼラチン水溶液とムコ多糖の一っであるコンドロイチン硫酸-C水溶液とから30℃一定下で形成されるコァセルベートの形成条件と遠心分離後乾燥して得たフィルムの微細構造を検討し, 以下の結果を得た. 1) コアセルベートはpH4.5, コンドロイチン硫酸-C分率0.10付近で最も良く形成し, 時間とともにその大きさが増す. 2) 形成されたコアセルベートのフィルム状試料中のコラーゲン分子は3重ヘリックスを再生しているが, 再生量は少なく, かっ3重ヘリックスの集合した桔晶中の乱れは大きい. またこの結晶はコラーゲン特有のバンド構造を形成することはない. 3) 形成されたコアセルベートの外表面には. コンドロイチン硫酸-C分子の-OH基とコラーゲン分子のべブチド基 (-NHCO) とが水素結合した層が存在する. またこの外表面はコンドロイチン硫酸-C分子が他の部分より相対的に多く, 水との境界層を作ると予想される.
  • 後藤 昌生, 新保 實, 宮野 靖, 國尾 武
    1988 年 45 巻 7 号 p. 587-595
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    反応射出成形ポリウレタンの実用に際し, 高い強度と耐熱性の要求が強い. それゆえ, 化学構造因子の効果を明らかにすることは材料設計上重要であり, 今回芳香疾イソシアナートに対してポリオールは骨格構造及びプロビレンオキシド (PO) の付加モル数を2~3種類変えたものを用い. 実用機により反応射出成形した平板について-60~160℃の温度範囲で衝撃特性を検討した. (1) 衝撃値Isは, 測定温度に対し極大値をもつ. この衝撃値の転移温度 (Tis) と見なされるTisを境にTis以下の温度では, 最大応力σが大きく, ひずみεが小さい. Tis以上ではσが小さくεが大きいことがわかった. (2) TisはPO付加モル数n (1<n<6) の増加, 橋かけ密度の減少とともに低温側へ移動する. (3) Tis及びガラス転移温度はポリオールの骨格構造, 官能基数の影響がnの増加とともに小さくなり, nが5を越えるとある温度に収束する傾向がある. (4) 材料設計面から見て, 高耐衝撃性・高耐熱材料を得るにはポリオール骨格へのベンゼン環の導入とnの適正化が有用である.
  • 松田 正治, 神沢 千代志, 小林 力夫
    1988 年 45 巻 7 号 p. 597-603
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    種々の酸を塩形成剤として用いキトサン及び修飾キトサン限外濾過膜, 透析膜をキャスト法により調製した. モノカルボン酸とともにスルファミン酸及びグルタミン酸も優れた塩形成剤であることがわかった, キトサン膜の耐溶剤性を増大させるために, 二つの化学手法を用い膜を修飾した. 一つは芳香族ジアジド化合物を用いた光化学反応によるキトサン膜の橋かけであり, 他の方法はカルバモイル化による化学修飾であった. 特に後者の手法は効果的であり, 性能が優れ. かつ耐溶剤性の優れた膜を調製することができた.
  • 松田 五男, 中村 耕也, 水田 政輝
    1988 年 45 巻 7 号 p. 605-608
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    <syn-ベンズアルドオキシムとN-フェニルマレイミドとの反応を行い, 付加生成物を単離し, アルドオキシムがマレイミドの炭素一炭素二重結合へ付加転位反応し, アミド結合を形成することを確認した. エタノール中では酸触媒により付加転位反応し, DMAc中では硫酸により反応が促進されることから, アルドオキシムのマレイミドへの付加転位反応はBeckmann転位反応に類似した反応機構で進行すると推定した.
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