高分子論文集
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53 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 伊藤 浩志, 滝本 淳一, 多田 和美, 小山 清人
    1996 年 53 巻 6 号 p. 333-338
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    大型射出成形過程における結晶化過程のシミュレーションを行った. 大型成形品の場合, 射出時間が長いため表層の少し内側では充填中に結晶化が開始することが分かった. 一方, 表層では冷却終了段階でもあまり結晶化が進行していなかった. 大型射出成形条件では圧力が大きく変化するため, 結晶化を決定する重要な要因は線成長速度の温度と圧力依存性であった. 表層は金型に接するため温度が低いが, 常圧ならば結晶化は進行するはずの温度である. しかし, 成形過程の最後まで圧力が高いため結晶化が進行しない.
  • 大岡 進, 高田 公太郎, 城所 勝己, 土佐 隆廣, 小宮山 真司, 浅沼 正実
    1996 年 53 巻 6 号 p. 339-344
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    射出成形品におけるウェルドラインは外観上しばしば問題となる. しかしウェルドラインを外観不良という観点から研究した報告は少なく, 未だその形成過程については不明瞭な点が多い. そのため勘や経験による成形条件やシボ加工, ゲート位置の変更などにより対策を施しているのが現状である. そこで我々は, ウェルドラインの見え方について単純な形状の成形品を用いて研究を行い, 成形手法として一般に知られているウェルドを目立ちにくくする方法を, 物理現象としてとらえる試みを行った. その結果, ウェルドの目立ちやすさは, その長さ, 深さによって表され, ウェルド長さには伸長粘度および表面張力が, ウェルド深さには比熱および樹脂の表面温度降下速度が影響していることが分かり, 外観不良としてのウェルドラインの予測の可能性を示した.
  • 瀧野 日出雄, 草野 正明, 中山 尚行
    1996 年 53 巻 6 号 p. 345-351
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    プラスチックレンズを種々の条件で射出成形し, レンズ面形状に及ぼす成形条件の影響を検討した. 樹脂にはポリメチルメタクリレート (PMMA) を用い, レンズ形状は球面メニスカスとした. 成形されたレンズの面形状を接触式測定機によって高精度に測定し, レンズ面の金型面からの変化量Δzを求めた. また計算により, 変化量Δzを近似球面成分Δfと同球面からの偏差成分Δgに分離し, 同時に同球面の曲率半径RLも求めた. さらに金型面に対するレンズ面の曲率半径RLの変化率αを算出した. その結果, 成形条件を変化させた場合, Δfが大きく変化するのに比べて, Δgの変化は微小であった. これより, 成形条件の変化によるレンズ面形状の変化は, その球面成分の変化が支配的であることがわかった. また, 変化率αのレンズ両面間の相関を調べた結果, 両者は線形関係にあり, 相関式はレンズ形状ごとに固有であった. これらより, 成形条件の変化によるレンズ成形品の変形モデルを提示した.
  • 福永 謙二, 前田 修一, 亀井 衛一
    1996 年 53 巻 6 号 p. 352-357
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    Andreasらの手法で生じるドロップを押し出したキャピラリの影響を受けない溶融ポリマー間の界面張力導出手法について検討した. このためドロップ像の画像解析によって得られるドロップの曲率と深さの回帰直線を用いて界面張力を導出した. さらに導出した界面張力の値を用いて逆にドロップを数値計算して元のドロップと比較し正確な界面張力の値が得られているか判定した. この手法を用いて測定した界面張力の値はドロップの体積やキャピラリの内径に依存しなかった.
  • 李 洪玲, 氏平 祐輔, 七沢 淳
    1996 年 53 巻 6 号 p. 358-365
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    陽電子消滅法は高分子の自由体積の大きさ, 大きさの分布, および濃度に対する情報を非破壊的に観察する極めて有力な手段であり, 高分子の緩和現象, レオロジー特性, 機械物性など自由体積が関わる諸性質を研究する上で欠くべからざる分析法としての発展が期待されている. 本研究では, 直鎖あるいはスター分岐といった構造の異なる非結晶性アタクチックポリスチレンを試料とし, 200℃ (473K) から20℃ (293K) に急冷して得た成型品の自由体積を, 陽電子消滅寿命法を用い観察した. いずれの試料も363K, 150K付近に自由体積の大きさの温度依存性変曲点としてそれぞれにガラス転移, γ転移温度が, また250~300K付近の自由体積の数濃度の温度依存性変曲点としてβ転移と思われる転移が観察された. 自由体積分率は, 試料の種類および試料作成方法により絶対値そのものは異なるが, いずれの試料もβ転移温度以下では温度によって顕著には変化せず, 分子は自由体積の大きさと濃度がお互いに打ち消し合う形で運動していることが示唆された. 自由体積濃度には試料の分子量と関連する挙動が見られ, 分子末端と分子内部の運動性の違いが示唆された. 直鎖構造と分岐構造の違いによる自由体積挙動の間には, 緩和時間の短い分岐構造体は試料作成過程で凍結された自由体積が少ないという点を除き, 明確な差は見いだせなかった.
  • 陽電子消滅寿命測定, 蛍光プローブの蛍光異方性比測定および回転拡散運動測定で得られた結果の比較
    伊藤 賢志, 氏平 祐輔, 浅野 真理, 山下 俊, 堀江 一之
    1996 年 53 巻 6 号 p. 366-374
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    体積相転移を引き起こす溶媒組成, 温度の変化により陽電子プローブ, 蛍光プローブ法を用いて, ポリ (N-イソプロピルアクリルアミド) ゲルおよびポリアクリルアミドゲル中の自由体積の平均サイズ, 数濃度, サイズ分布変化について検討し, 蛍光プローブ法による測定結果と電子消滅寿命測定の結果と比較し, 高分子中の自由体積の測定手法としての有効性について検討した. メタノール/水混合溶媒中におけるメタノール分率依存性では, 自由体積の数濃度に蛍光プローブの蛍光異方性比との相関が観測された. 温度変化による膨潤・収縮では, 収縮状態において構成分子の相分離構造を形成していると予測される結果が得られた. 自由体積パラメーターより, 溶媒組成・温度変化による収縮状態において, 分子サイズレベルでのゲルネットワークの凝集性が相違しているとの知見が得られた.
  • 馬越 淳夫, 山川 真弘, 辻 正樹, 〓谷 信三
    1996 年 53 巻 6 号 p. 375-380
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエーテルエーテルケトン (PEEK) およびポリパラフェニレンスルフィド (PPS) 結晶 (共に斜方晶Pbcn) は, 単位胞の大きさは異なるものの, 単位胞内での分子鎖パッキングの類似性が高い同族ポリマーである. 本報では, これらのブレンド試料を作製し, 透過型電子顕微鏡観察を行った. 各ホモポリマーあるいはブレンド (各成分のフェニレン環数1: 1) の溶液を加熱したスライドガラスの間にはさみ, 溶媒の蒸発と同時にスライドガラスをずらすことによりずり変形を与え, 一軸配向の結晶性薄膜を作製した. defocus contrast法による明視野観察, ならびに暗視野観察により, 用いた3種類の試料は各々ずり方向に並ぶフィブリルを形成し, 同時に積層ラメラ構造を呈した. 電子線回折により, ホモポリマーと同様にブレンドも斜方晶であると予想され, ホモポリマーに対応させて指数付けを行った結果, ブレンド結晶の格子定数はホモポリマーのどちらとも異なっていた.
  • 白石 豊, 奈良崎 則雄
    1996 年 53 巻 6 号 p. 381-387
    発行日: 1996/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    射出圧縮成形法は, 通常の射出成形に比較して低圧下で成形が可能で経済的であり, 反り, ひけの問題解決のために適用されてきている. しかし, 圧縮成形法における流動解析研究は比較的少ない. 本研究においては, 射出行程を従来から使用している流動解析ソフトウェアを用い, 圧縮行程の解析に関しては圧縮による樹脂流動現象を推定するソフトウェアを作成し解析を行い, 実験による流動現象とを対比した. この場合, 樹脂の温度/圧力による圧縮性を考慮している. この対比結果より, 射出圧縮成形行程の数値解析が実成形に有効に活用できることが判明した.
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