高分子論文集
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31 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 上出 健二
    1974 年 31 巻 3 号 p. 147-163
    発行日: 1974/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    最近著者らによって詳細に解明されてきた, 溶解度の分子量依存性を利用した分子量分別法の研究の現状を簡単に要約した。多成分系高分子/溶媒系の相平衡を非常に厳密に電算機を利用して計算し, 得られた結果を実験と比較した。原試料の分布特性や実験操作条件 (たとえば, 初濃度, 分別区分の大きさ, 再分別法, 高分子/溶媒間の相互作用係数の濃度依存性など) と分別特性との関連性をとくに分別沈殿法を中心に明らかにした。さらに, 原試料の分布を評価するための二つの方法 (Schulz法と上出法) の特長を比較検討した。
  • 山本 保, 今浦 雅一, 内藤 善彦, 大河原 信
    1974 年 31 巻 3 号 p. 164-170
    発行日: 1974/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    メルカプチドやその類縁系によるポリ塩化ビニル (PVC) のチオエーテル化反応を検討し, つぎの結果を得た。
    (1) RSNaを用いるチオエーテル化反応は, ジメチルホルムアミド (DMF) 中, 室温でよく進行し, PhSNa (当量) の場合反応率は80%に達する。
    (2) RSH+無機塩系 (DMF, 50℃) ではNaCNが最もすぐれるが, RSHがp-チオクレゾール (当量) の場合, K2CO3でも (DMF, 60℃) 90%の反応率に達し, C=Cの生成も少ない。
    (3) アリルオレカプタンの場合, その前駆体として扱いやすいチオウロニウム塩とNaOH (DMF, 40℃) を用いても, (1) の場合とほぼ同程度 (~50%) のチオエーテル化が可能である。
    (4) PVCがまったく不溶の水中での反応でも, PhSNa (当量) と第四級アンモニウム塩型の界面活性剤を用い (80℃), 20%程度までのチオエーテル化が可能である。
    (2), (4) について, 簡単に反応機構を論じた。
  • 山本 保, 今浦 雅一, 大河原 信
    1974 年 31 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 1974/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル (PVC) のチオエーテル化で得られたフェニルーおよびアリルチオエーテルとクロラミンTとの反応を行ない, モデル化合物との比較, IR, 元素分析, 化学的手段により生成ポリマーの構造を検討した。フェニルチオエーテルの場合は, おもにスルフィルイミン (S-Nイリド) 構造を生成するが, 一部主鎖中の二重結合とClaisen型の転位を起こし, 主鎖にNで結合したスルフェンアミド構造を副生する。C=Cを置換基としてもつアリルチオエーテルの場合は, 生成するスルフィルイミンはほとんどClaisen型転位を起こし, 主鎖にSで結合したスルフェンアミド構造をもっPVCを与える。これらPVC誘導体の反応性, 安定性などについても検討した。
  • 西野 潤, 吉田 徹, 牧野 伊作, 南谷 俊治, 玉置 克之, 坂口 康義
    1974 年 31 巻 3 号 p. 177-180
    発行日: 1974/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    シュウ酸ジビニルを合成し, 数種の条件下でアゾビスイソブチロニトリルを用いて重合させた。塊状および比較的高濃度のベンゼン溶液中での重合では不溶性のポリマーを与えたが, 非常に希薄な溶液中 (10g/l以下) では, 可溶性ポリマーが得られた。可溶性ポリマーの赤外吸収スペクトル (IR) は環化重合がかなり起こったことを示した。これらのポリマーはアルカリ加水分解によりポリビニルアルコール (PVA) にかえた。誘導PVAのIR, 過ヨウ素酸消費量, アセタール化速度, アセチル化物の加水分解速度は, このPVAがかなりの量の頭-頭構造を有することを示した。ある種の金属イオンは, 普通PVAよりもより強固に, これらPVA試料と結合するものと考えられる。
  • 大津 隆行, 田島 哲夫
    1974 年 31 巻 3 号 p. 181-185
    発行日: 1974/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    反応性モノマーとして, また反応性ポリマーの合成原料として有用なメタクリル酸クロリド (MAC) のラジカル重合ならびにメタクリル酸メチル (MMA) との共重合について研究した。ベンゼンあるいはジオキサン中, アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として封管中でMACの重合を行なったところ, 重合率約10%以下では時間と共に直線的に均一系で重合が進行し, 全重合反応の見掛けの活性化エネルギーは22.5kcal/molと求められた。重合速度は開始剤濃度の1/2次に, モノマー濃度の1.2次に比例し, これらのMACラジカル重合挙動はMMAの場合とよく類似することがわかった。また, 上記溶媒中で重合した混合物を直接あるいは一度石油エーテルでポリマーを単離したのち, 水あるいはメタノール中に加えて加熱しても, 相当するポリメタクリル酸あるいはポリMMAは得られなかったが, ポリマーを濃硫酸で加水分解し, のちジアゾメタンでエステル化することによってポリMMAを得ることができた. この方法で, MACの重合で生成するポリマーの分子量ならびに立体規則性を評価した。
    MAC (M1) とMMA (M2) の40℃におけるラジカル共重合結果より, 次のようなモノマー反応性比ならびにQ1, e1値が得られた。
    r1=0.65, r2=0.25; Q1=5.08, e1=1.75
  • 深沢 康俊, 和田 英一
    1974 年 31 巻 3 号 p. 186-189
    発行日: 1974/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    フェニル核をもつジエポキサイドとフェニル核をもたないジエポキサイドを各種の分率で混合し, アミンで硬化させ橋かけ間分子量を等しくした各硬化物について, ガラス状領域では硬化物中のフェニル核の分率が減少するほど弾性率は増大し, 比容積は減少するが, ゴム状領域ではフェニル核の分率が増大するほど弾性率は増大する。ゴム状領域での平衡弾性率からTobolskyのゴム弾性状態式中のfront factor (φ) を求めると, この値は硬化物中のフェニル核の増大につれて増大する。また, エポキシ硬化物で-80~-50℃の温度範囲に現われるβ分散のtanδ値は硬化物中のビスフェノールA部の分量と共に増大する。
  • 奥居 徳昌, 河合 徹
    1974 年 31 巻 3 号 p. 190-196
    発行日: 1974/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    要旨 エチレン-酢酸ビニルランダム共重合体の融液からの等温結晶化物の融解挙動より, chain folding crystallizationが共重合単位の組成, その分布および結晶化温度に大きく影響されることを明らかにした. すなわち, かなり広い組成範囲にわたって折りたたみ型結晶化と束状型結晶化の2成分結晶化 (bicomponents crystallization) が観察され, 共重合体中の非晶単位の増加とともに折りたたみ型結晶の割合は減少してゆき, 束状結晶の割合は増加してゆく。これらの挙動をランダム共重合体の結晶化において, (結晶性連鎖長による) 結晶化分別がこの2成分結晶化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。この折りたたみ型結晶と, 束状結晶の割合を結晶化し得る成分がすべて結晶化した場合について, 組成および過冷却度の関数としてあらわす理論式を導き, かくして得られたこれら二つの結晶型式の分率が, DSC曲線より得られたそれとよく一致することを示した。
  • 畠山 立子, 伊藤 栄子, 金綱 久明
    1974 年 31 巻 3 号 p. 197-198
    発行日: 1974/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリカーボネイトの溶媒による結晶化の過程を, 熱処理による場合と比較した。結晶化物の示差走査熱量計による融解曲線から得られた熱量をもとにして, 結晶化速度を計算し, 熱処理による結晶化は半減時間が37時間もかかるのにもかかわらず, 溶媒による場合は数分であって, ポリカーボネイトは他のポリエステル類に比べて, 結晶化への溶媒効果が大きいことが確かめられた。
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