高分子論文集
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54 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 近藤 博昭, 木下 雅夫, 土屋 敏明, 武田 邦彦
    1997 年 54 巻 6 号 p. 365-374
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    コンピューター・シミュレーション手法を用いてポリフェニレンエーテル (PPE) の分解生成物の組成を求め, その結果に基づいてPPEの熱分解過程の研究を行った. その結果ベンゼン環が一つからなる単環体および二つの二環体のいずれにおいてもコンピューター・シミュレーションの結果と実験値は良好な一致を見た. 特に単環体の実験結果より推定した転位反応と開裂反応の確率パラメーターを用いた二環体のシミュレーション結果は実験値をよく説明する. また本熱分解条件におけるPPE主鎖のエーテル結合からメチレンブリッジへの転位率は78%であった. さらに側鎖メチル基の切断確率は主鎖の切断確率よりかなり小さく, 2~4%と求められた. 複雑な高分子の熱分解過程において, 実験から多くの反応の開裂確率を定量的に求めることは困難であり, コンピューター・シミュレーションを用いることが有用である. さらに本研究の結果, PPEの熱分解過程に関する反応経路がさらに明らかになったとともに, ランダム開裂を仮定した高分子の熱分解の数値計算方法が有効であることを示した.
  • 三島 聡子, 仲川 勤
    1997 年 54 巻 6 号 p. 375-383
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    揮発性有機塩素化合物 (VOC-Cl) を選択的に透過するパーベーパレーション膜の分離性の向上について検討を行った. 拡散性の優れたポリジメチルシロキサン (PDMS) 膜にフッ素化アルキルメタクリレート (FALMA) を収着させ, この状態で紫外線照射を行い, 膜内で重合させ, 改質PDMS膜を得た. 拡散性に基づく分離性に加えて, 他の分離の要素である分配性の向上を得ることができた. 収着実験の結果から, フッ素化アルキル鎖が長く, かつフッ素原子の数が多いFALMAの重合体を膜内に導入したPDMS膜はVOC-Clの分配性が高いことが, 示され, パーベーパレーションによる分離性も増大した. これは, 膜に導入されたVOC-Clの選択的な溶解性の増加によるものである. 疎水性であるFALMAの重合体を含む改質PDMS膜はVOC-Clに対し親和性を示し, これによって水に対するVOC-Clの高い分離性を得ることができた.
  • 山登 正文, 室橋 律子, 木村 恒久, 伊藤 栄子, 林 繁信
    1997 年 54 巻 6 号 p. 384-390
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ポリエチレン-1, 2-ジフェノキシエタン-p, p'-ジカルボキシレート (PEBC) の熱処理による構造変化について固体高分解能13C NMRを用いて検討を行った. 熱処理することによりNMRスペクトルは大きく変化し, 急冷試料や溶液中では1本のピークを示す3, 5位の芳香環の炭素に由来するピークが分裂した. 他のピークが分裂しなかったことから結晶多形によるものではなく, 13Cのγ効果に似た効果によるものと思われる. 熱処理試料の非晶成分は急冷試料よりも70℃で熱処理した試料のスペクトルに類似のスペクトルを示した. スピン格子緩和時間TIC緩和曲線は指数関数的減少を示さなかったので, それぞれの待ち時間に緩和するスペクトルを求めた. 熱処理試料中の非晶部分の分子運動性の分布は, 熱処理条件により変化することが示唆された.
  • 李 洪玲, 氏平 祐輔, 田中 聡美, 山下 俊, 堀江 一之
    1997 年 54 巻 6 号 p. 391-400
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ポリメタクリル酸アルキル (PMMA, PEMA, PnPMA, PiPMA, PnBMA) を~50Kからガラス転移点付近まで昇温して陽電子消滅寿命を測定し, 長寿命成分を解析して自由体積の大きさ, 数濃度, および, 大きさ分布を求めた. また, 陽電子消滅寿命曲線を非線形最小二乗近似して得られた第3成分の寿命 (τ3) の解析から得られた自由体積の平均半径は同寿命曲線をラプラス逆変換して得られた自由体積の分布曲線の最多頻度の半径と一致した. 得られた結果から自由体積の温度による変化を追跡し, エステルに結合したアルキル基の効果を調べた. 自由体積の大きさや濃度は, 誘電緩和や動力学特性の温度変化から得られた分子運動の緩和点で変化することが認められた.
  • 上田 一恵, 中井 誠, 服部 剛士, 山田 和信, 田井 和夫
    1997 年 54 巻 6 号 p. 401-406
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ε-カプロラクタムのアニオン重合により合成した高分子量ナイロン6について, 溶液粘度法, 光散乱法を用いて分子量を, GPC法を用いて分子量分布を評価した. 固有粘度 ([η]) は, ポリマー濃度を非常に低くして測定した溶液粘度から求めることができた. また光散乱法においても低濃度ポリマー溶液を用いる測定で重量平均分子量 (Mw) を得ることができた. 固有粘度と光散乱法で求めたMwとの間にはMark-Houwink-桜田の式; Mw=2.81×104× [η] 1.35Mw1,000,000までの広い範囲で成立することがわかった. GPC法で得た分子量分布 (P=Mw/Mn) は, 開始剤の官能基濃度が減少するにつれ低下し, 最高分子量のポリマーではP=1.49となり, 分子量分布の狭い高分子量ポリマーであることがわかった.
  • 井上 眞一, 岡本 弘, 古川 淳二
    1997 年 54 巻 6 号 p. 407-411
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    結合として非常に安定とされているイソシアヌレート結合の分解反応について検討を行った. 溶媒にジメチルホルムアミド (DMF) を用い, 触媒量 (水酸化カリウム/基質=1/50) の水酸化カリウムを添加したトリス (2-ヒドロキシエチル) イソシアヌレート (THEIC) 溶液を130℃で4時間反応させることにより, ほぼ定量的に分解され, 生成物として2-オキサゾリジノンを得た. 添加物として塩基性化合物である水酸化カリウムを用いることにより, 今までより, より温和な条件で容易に分解反応が進行することが明らかとなった.
  • 太田 正徳, 上石 洋一
    1997 年 54 巻 6 号 p. 412-416
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    水溶性ビニロン繊維に分子間架橋の導入を目的として, 2官能のエポキシドと2官能と3官能成分を含むエポキシドを架橋剤とする加工を施した. 加工は, それぞれのエポキシドについて, 熱処理系と溶剤処理系で行い, 加工糸について乾燥状態と湿潤状態における機械的性質を測定し, 弾性率, 架橋密度を算出した. その結果, 溶剤処理の方が湿潤状態で, より安定な架橋構造を形成しており, 2官能のエポキシドによる加工の方が膨潤度も高く, 力学的に有効な分子間架橋を効果的に形成していることが分かった.
  • 上遠野 浩樹, 阪上 輝夫, 庄司 益宏, 荻原 武男
    1997 年 54 巻 6 号 p. 417-420
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    安息香酸銅 (無水) はメチルメタクリレート (MMA) 中において2量体構造で存在しMMAには難溶な物質であるが, 銅錯体形成の配位子としてリン酸エステルを用いることにより, 銅イオンは単量体構造を有する錯体を形成して可溶化することがわかった. この単量体錯体は840nm付近に吸収ピークを有する700~1500nmのブロードな吸収を示す光学特性を有することがわかった. 重合性官能基を有するリン酸エステルを用いることによりMMAと共重合させることが可能となり, 銅錯体をポリメチルメタクリレート (PMMA) に均一に導入することが可能となった. この光学特性を有する銅錯体を導入することにより, 実用性の高い近赤外線カット機能を有するプラスチック製フィルターを実現することができた.
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