高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
54 巻, 12 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
  • 清水 敏美, 増田 光俊, 小木曽 真樹, 浅川 真澄
    1997 年 54 巻 12 号 p. 815-828
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子の両端に糖残基またはオリゴペプチド残基をもつ双頭型合成脂質の自己集積による繊維状高分子超構造体の構築について述べた. 2個のD-グルコース残基がアミド基を介して, 種々の長さの長鎖α, ω-ジカルボン酸と連結した双頭型糖脂質を合成した. これら1-グルコサミド系双頭型糖脂質は水中で, n-アルキレン鎖炭素数の偶奇に応じて, 前者からは繊維状の構造体を, 後者からは平板状または無定形固体を与える, 従来にない炭化水素連結鎖による新しい立体化学的効果を見いだした. 各構造体の赤外吸収スペクトル, 粉末X線回折, X線単結晶構造解析, 電子顕微鏡観察などから連結鎖が及ぼす偶奇効果の要因を考察し, 繊維状構造体中の三次元分子配列を推定した. また, オリゴグリシン残基を両端にもつジカルボン酸型双頭型ペプチド脂質を新たに合した. これらは水中で自発的に集積することにより, 従来に全く例のない, 多数のベシクル状会合体を内包するマイクロチューブ構造体を形成した. 単離したチューブ構造体の赤外吸収スペクトル, ジカルボン酸型双頭型ペプチド脂質のX線単結晶構造解析などからチューブ中の分子配列構造を推定し, チューブ生成メカニズムについて考察した.
  • 石曽根 隆, 平尾 明, 中浜 精一
    1997 年 54 巻 12 号 p. 829-842
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本論文では電子吸引性基を有するスチレン誘導体のアニオンリビング重合による鎖構造の規制された反応性ポリマーの合成について報告する. スチレン骨格に導入した電子吸引性基は, N, N-ジアルキルアミド基, オキサゾリン環, エステル基, N-アルキルイミノ基, (トリメチルシリル) エチニル基, N, N-ジアルキルスルホンアミド基, シアノ基である. これらのモノマーのアニオン重合はリビング的に進行し, 設計どおりの分子量と狭い分子量分布をもつポリマーを定量的に与えた. 成長鎖末端アニオンの反応性を生かして, さまざまなモノマー類との構造の明確なブロック共重合体の合成にも成功した. また, ヒ記モノマー類のアニオン重合性は, 電子吸引性基によってビニル基上の電子密度が低められることにより, 無置換のスチレンよりも大きく高められ, 逆に同様の置換基効果によって, 生成したリビングポリマーの成長鎖末端アニオンは求核性が低下していることが確かめられた.
  • 塚原 安久
    1997 年 54 巻 12 号 p. 843-854
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    末端メタクリレート型およびスチレン型の単分散ポリスチレンマクロモノマーをリビングアニオン重合法で合成し, これらをラジカル連鎖重合することにより, 種々の分岐長, 分岐数の構造の明確な高密度長鎖多分岐ポリスチレンが合成できることを示した. また, 得られた高密度長鎖多分岐ポリスチレンの分子特性およびバルク特性についてのこれまでの研究から, 多分岐構造に基づく以下の新しい実験事実が明らかとなった. 1) ガラス転移温度は, 特徴的な分岐構造依存性を示すと同時に, 成膜性についても直鎖型ポリスチレンとは異なり著しい脆性を示し, 高分子量体においても分子鎖の絡み合いが欠如して, バルク状態でも個々の分子が互いに独立に存在していることが示唆された. 2) 直鎖ポリスチレンとの2成分混合系において, 分岐構造に依存して相溶性・非相溶性が観察された. 3) 分岐構造に依存して柔軟なポリスチレン鎖からなる多分岐ポリスチレンに液晶相の形成が観察された. 4) 高密度多分岐に起因して主鎖の統計的セグメント長が著しく大きな値を有し, 分岐数の多いものでは溶液中においてロッド状の分子形態をとっていることがわかった. これらの結果を示すことにより, 高密度多分岐構造の導入によって, 対応する直鎖型ポリマーには見られない新しい分子特性およびバルク特性が発現することを明らかにした.
  • 加藤 隆史
    1997 年 54 巻 12 号 p. 855-862
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    「明確な構造を有する液晶が水素結合による分子認識プロセスで形成可能」という新しい概念・手法により構築されたさまざまなタイプの超構造高分子液晶について, それらの構造と性質, その特徴について述べる. 水素結合の形成プロセスにより, 複数種のシンプルな構造の分子コンポーネントから側鎖型・主鎖型・ネットワーク型などの, さまざまな高分子液晶が得られ, 安定した液晶挙動を示した. さらに, 複合型・ホストーゲスト型などの新しい超構造高分子も作製された. 複合型構造の高分子は, ピリジン環を導入することにより骨格上での分子認識能を付与したポリアミドと安息香酸誘導体から得ることができた. これらは非共有結合で構築するため, 構造形成は自発的な分子自己組織化プロセスにより行うことができる. また構造も動的であり, 三次元ネットワーク構造でも液晶相を発現し, 可逆的な相転移が観察された. さらに, 配位結合の形成を利用した自己組織性主鎖型液晶高分子も得られた.
  • 田畑 昌祥, 曽根 岳之, 貞広 嘉和, 楊 武, 小林 辰, 稲葉 泰夫, 横田 和明
    1997 年 54 巻 12 号 p. 863-874
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    Rh錯体, [Rh (ノルボルナジエン) Cl] 2などは芳香族のモノ置換アセチレンの立体特異的な触媒として働き, シス体の相当するポリアセチレンを高収率で選択的に与えることを見いだした. トリエチルアミンあるいはアルコール溶媒がこの触媒の解離に関与するため有効な助触媒となることを見いだした. リビング的重合と超高分子量のポリマーの合成ができた. 生成した黄色の非晶ポリマーをトルエン処理すると暗赤色の擬ヘキサゴナル構造のカラムナーに転換することを見いだした. このシス体のポリマーを加圧するとトランス体へ異性化することを, レーザーラマン, UV, ESR法で確かめた. 加圧はトランス共役鎖を生成させ, この時ソリトンラジカルが生成安定化されることを見いだした.
  • 澤本 光男, 上垣外 正己
    1997 年 54 巻 12 号 p. 875-885
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本総合論文は, ラジカル重合において遷移金属錯体を用いた開始剤系により, リビング重合を実現するための一般的な原理および実例に関する総説である. 種々のビニルモノマーの重合に対して, 含ハロゲン化合物を開始剤とし, これに遷移金属錯体を活性化剤として組み合わせると, 生長活性種と共有結合性dormant種との平衡に基づいて, 分子量と構造が精密に規制されたリビングポリマーが生成することを明らかにした. またこれらのリビングラジカル重合による, 分子量分布の狭い高分子量ポリマー, ブロック共重合体, 末端官能性高分子, 星型多分岐高分子などの合成についても概説した.
  • 五所 亜紀子, 野村 亮二, 遠藤 剛
    1997 年 54 巻 12 号 p. 886-890
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ヨウ化サマリウム (SmI2) を開始剤としてp位にアミド基をもつスチレンのアニオン重合を行った. p-置換スチレンとしてN, N-ジメチル-4-ビニルベンズアミド (1), N, N-ジエチル-4-ビニルベンズアミド (2), N, N-ジイソプロピル-4-ビニルベンズアミド (3), N- (4-ビニルベンゾイル) ピペリジン (4) を用い, ヘキサメチルホスホロアミド (HMPA) 存在下ヨウ化サマリウムによる重合を検討した. HMPAをヨウ化サマリウムに対して5.8当量用いた条件下では55~96%の収率で相当するポリマーが得られた. 特に, 1は分子量分布の狭いポリマーを与えた. さらに, 2と過剰量のヨウ化サマリウムとの反応で, 52%の収率でホモカップリングした生成物が得られたことから, モノマーがヨウ化サマリウムにより一電子還元されアニオンラジカルを生成後, さらにこれがホモカップリングしてジアニオンを生じ, これが開始種となって重合が進行するものと考えられる.
  • 石田 雄一, 寺境 光俊, 柿本 雅明
    1997 年 54 巻 12 号 p. 891-895
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    パラジウム触媒を用いたCO挿入反応をAB2型モノマーである3, 5-ジブロモフェノールの重合に応用し, 高分枝全芳香族ポリエステルの合成を行った. 重合は一酸化炭素の吸収を伴い速やかに進行し, 生成したポリマーのIRスペクトルから, エステルのカルボニルによる吸収が確認された. また, 重合途中にエンドキャップ剤としてフェノール類を加えることにより, 溶解性の高いポリマーが得られた. m-クレゾールでエンドキャップしたポリマー (3) の分岐度を1H NMRスペクトルにより測定したところ, 約50%であった.
  • 尾池 秀章, 貞苅 悦子, 手塚 育志
    1997 年 54 巻 12 号 p. 896-899
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    トリフルオロメタンスルホン酸無水物を開始剤として得られるリビングポリテトラヒドロフランと過剰のピロリジンを反応させ, 分子量が3600から7700までの両末端にピロリジン基を有するテレケリックポリテトラヒドロフラン (PTHF) (1) を合成した. NMR (1H, 13C), IR, およびGPC測定の結果, 高分子末端にほぼ定量的にピロリジン基が導入され, 二量化反応は生じないことがわかった. また1と種々のカルボン酸との反応を, 開環反応性を有する類似の4級アルキルピロリジニウム塩末端の場合と比較して検討した.
  • 圓藤 紀代司, 金田 徳康, 青木 修三
    1997 年 54 巻 12 号 p. 900-907
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    塩化ビニル (VC) の重合を3種類のブチルリチウム (BuLi) を用いて検討した. 重合収率はBuLiの種類に依存し, 重合活性はtert-BuLi>n-BuLi>sec-BuLiの順となった. tert-BuLiおよびn-BuLiによるVCの重合において, 生成ポリマーの分子量は重合収率の増加とともに増加した. 3種類のBuLiより得られたPVCの立体規則性はラジカル重合で得られるものとあまり変わらなかった. tert-BuLiおよびn-BuLiを用いて得られたPVCには, ラジカル重合で認められるようなアリル塩素, 短鎖分岐 (C1, C2分岐, C4分岐) や長鎖分岐などのの存在は認められず, 正規構造よりなる直鎖状のポリマーであることが明らかとなった. 初期分解温度および最大分解温度は3種類のBuLiより得られたPVC方がラジカル重合で合成した同程度の分子量をもつものより高かった. これはBuLiからのPVCには異常構造が存在しないためであると推測した.
  • 近藤 史尚, 岩泉 卓, 木村 宏, 武石 誠
    1997 年 54 巻 12 号 p. 908-913
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    光学活性アセタール化酒石酸とジアミン化合物との直接重縮合反応と得られたポリアミドの光学的性質について検討した. 三塩化リンーアセチルフェニルヒドラジンを縮合剤として用い, 40℃で5時間反応させることにより粘度1.3dl/gのポリアミドが合成できた. ここで得られたポリアミドとこのポリマーに相当するモデル化合物の円二色性スペクトルの比較よりポリマーの規則構造を有していることがわかった. このポリマーの安定構造をコンピューターにより計算させたところ, らせん構造を有していることがわかった. また, ジアミン成分としてアゾベンゼン構造を有するポリマーはアゾベンゼンの光異性化により可逆的に旋光度, 紫外可視光スペクトルを変化させた. アゾベンゼンの光異性化によるCDスペクトルの変化はポリマーの高次構造の変化を示した.
  • 大石 勉, 藤井 克行, 鬼村 謙二郎, 堤 宏守
    1997 年 54 巻 12 号 p. 914-922
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    光学活性N-マレオイル-L-フェニルアラニンシクロヘキシルエステル (CHPAM) のアニオン重合を行い, 得られたポリマーの構造と旋光性との関係を明らかにした. トルエン/テトラヒドロフラン混合溶媒中では, トルエンの割合が増加するに従って, ポリマーの旋光度は正の方向に変化した. テトラヒドロフラン中よりもトルエン中での重合の方がより不斉誘起が起こった. その不斉誘起は正の旋光度をもつトレオジアイソタクチック構造に起因している. メタクリル酸トリフェニルメチル (TrMA) またはメタクリル酸メチル (MMA) とアニオン共重合し, コポリマー組成の違いによるコポリマーの旋光性の違いについて検討した. n-ブチルリチウム/ (-) -スパルテインを用いたCHPAM-TrMA系アニオン共重合から得られるコポリマーはTrMAユニットのらせん性に基づく特徴ある旋光性を示した.
  • 川口 正剛, Djoko Poernomo SOEWITO, 伊藤 浩一
    1997 年 54 巻 12 号 p. 923-929
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    多角度光散乱-サイズ排除クロマトグラフィー (MALLS-SEC) を用いて, テトラヒドロフラン (THF) 中, 25℃で種々の無秩序分岐ポリスチレン (PS) のキヤラクタリゼーションを行い, ラジカル重合における分岐高分子生成に関する基礎的な知見を得た. PS試料は, 無触媒熱開始で重合したもの, アゾ系あるいは過酸化物系開始剤を添加して重合したもの, さらにはジビニルベンゼンと共重合することによって合成したものである. 分子量分布の狭いPSスタンダードに対するMALLS-SEC測定は, この装置が信頼性の高いz-平均2乗回転半径 (<S2>z) と重量平均分子量 (Mw) を測定していることを示した. 無触媒熱重合で合成したPSの<S2>zは, 同一分子量のPSスタンダードの<S2>zとすべての分子量範囲にわたって一致しており, ほとんど分岐していないPSであると結論した. 一方, カーボネート系過酸化物開始剤を用いた系では, 高分子量側に分岐ポリスチレンが生成している可能性が示された. 無秩序分岐高分子鎖に対する収縮因子の値から, 非摂動無秩序分岐の理論で評価された分岐密度が決定された.
  • 寺本 正和, 瀬 和則
    1997 年 54 巻 12 号 p. 930-938
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    (p-イソプロペニルフェネチル) ポリ (α-メチルスチレン) マクロモノマー (PSM, Mn=8400) を高真空下, 室温においてカリウム鏡 (K) と反応させて, それぞれを単離することには成功していないが, 3種類の高分子開始剤 (K+- (PSM) n-K+, n=1, 2, 4) を合成した. イソプレン (Is) をこれらの高分子開始剤で重合させて, それぞれの開始剤種に対応する3本腕と4本腕と6本腕の (PSM) n-s- (PIs) 2の星型-ブロック共重合体 (n=1, 2, 4) を合成した. (PSM) 1-s- (PIs) 2が主生成物であり, その収率は75%以上であった. 三つの (PSM) n-s- (PIs) 2のそれぞれについて, PIs組成分布と分子量分布は狭く, 新たに合成されたPIs鎖の腕の分子量は互いに同じ値であった. このような解析結果はPIs組成が異なる三つの試料: SSI-1 (PIs重量比が33%) とSSI-2 (56%) とSSI-3 (85%) について, 同じであった. さらに, 重合に用いたIsの仕込み量に比例してPIs鎖の腕の分子量が増加した. これらの事実より, IsはK+- (PSM) n-K+高分子開始剤によってリビングアニオン機構により重合したと思われる.
  • 須賀 康裕, 村井 佳子, 斉藤 軍夫, 奥 淳一, 高木 幹夫
    1997 年 54 巻 12 号 p. 939-946
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ [ビス (ジメチルビニルシリル) メタン] の2個のケイ素原子に挟まれたメチレンのメタル化反応を, sec-またはtert-ブチルリチウム (sec-, tert-BuLi) に対し種々の添加剤を加えた系を用いて行った. その結果, テトラヒドロフラン中-78℃, sec-BuLi/tert-ブトキシカリウム (tert-BuOK) により, 均一系でメタル化反応が進行した. このメタル化反応を詳細に検討したところ, 1) 分子量2400~16000のポリマーを用いた場合, この条件下では, メタル化率は40~50%であり, 2) sec-BuLi/tert-BuOKは, ビス (ジメチルビニルシリル) メタンユニットの2倍量の添加でメタル化反応が十分進行することがわかった. また, 最高メタル化率は50%であった. このポリアニオンと2種のクロロシラン類の反応による官能基導入についても検討した.
  • 畑中 研一, 太田 早苗, 門倉 健, 粕谷 マリア
    1997 年 54 巻 12 号 p. 947-950
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    無水糖誘導体のカチオン開環重合によって得られた人工多糖2, 4-ジ-O-ベンジル- (1→6) -α-D-グルコピラナンのC-3位にD-キシロース誘導体の枝を導入した. イミデート法を用いた場合, キシロシル化反応ではグリコシル化反応などど比較してアノマー選択性の制御が困難であることもわかった. 一方, 天然多糖であるカードランに位置選択的な保護基の導入を行い, C-6位にグルコース誘導体の枝を導入した.
  • 高野 敦志, 二ノ倉 英樹, 渡辺 修, 風間 武雄, 五十野 善信
    1997 年 54 巻 12 号 p. 951-957
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子量ならびに分子量分布の制御されたポリ (4-ヒドロキシスチレン) を合成するために, 水酸基の保護基としてメトキシメチル基を有する4-メトキシメトキシスチレン (MMS), ならびにメチル基を有する4-メトキシスチレン (MS) のリビングアニオン重合について検討した. いずれのモノマーからもテトラヒドロフラン (THF) 中, 195Kでsec-ブチルリチウムを開始剤に用いてアニオン重合させることにより, 目的とするポリマー前駆体を定量的に得ることができ, またスチレンとブロック共重合が可能であることが確認された. ポリ (MMS) ではTHF中, 塩酸を用いることにより, 定量的に脱保護が可能であることが明らかとなった. また, ポリ (MS) ではクロロホルム中, ヨウ化トリメチルシランにより同様に定量的脱保護が可能であることが明らかとなった. これらの結果はメトキシメチル基およびメチル基が水酸基を有するモノマーのアニオン重合において, tert-ブチルジメチルシリル基やtert-ブチル基と同様に保護基として有用であることを示す.
  • 高野 敦志, 小沢 宙, 風間 武雄, 五十野 善信
    1997 年 54 巻 12 号 p. 958-965
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン (PS) とポリイソプレン (PI) からなるAnBn星型共重合体を合成するため, 4, 8, 12官能クロロシラン化合物にリビングPSとリビングPIを2段階で逐次カップリング反応させた. 1段目は1, 1-ジフェニルエチレンで末端修飾したリビングポリスチレンと結合剤との反応で, カップリング率を50%あるいはそれ以下に制御できることを確認した. 2段目はブタジエンで末端修飾したリビングポリイソプレンと1段目でのカップリング生成物との反応である. 最終生成物からGPC分取操作により星型共重合体を単離し, NMR法および膜浸透圧法により目的とする構造を有する星型共重合体が得られていることを確認した. モルフォロジー観察の結果, 腕鎖の分子量が10000程度の星型共重合体試料ではブロック共重合体と同様のミクロ相分離構造が観察されたが, 腕鎖の分子量が40000程度の試料のミクロ相分離構造では緩慢な界面が認められた. これは多重分岐と高分子量による分子運動性低下によるものと考えられる.
  • 廣田 安信, 中西 太, 木下 隆利, 辻田 義治, 吉水 広明
    1997 年 54 巻 12 号 p. 966-973
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    剛直で棒状のα-ヘリックス分子鎖に沿って, イオン認識能を有する4′-アミノベンゾ-18-クラウン-6-エーテルを一次元的に配列したシーケンシャルコポリペプチドを調製した. 側鎖ベンゾクラウンエーテルに基づくエキシマー発光により, その一次元的配列構造を確認した. このポリペプチドと金属イオンとの相互作用を分光蛍光測定により評価した結果, セシウムイオンと非常に安定な2: 1のサンドイッチ型錯体を形成することが示された. さらにピクレート抽出測定からもこれを裏付ける結果が得られ, シーケンシャルコポリペプチドの側鎖4′-アミノベンゾ-18-クラウン-6-エーテルの一次元的配列構造は, セシウムイオンと非常に安定な2: 1のサンドイッチ型錯体を形成するのに適していることが示された.
  • 高田 十志和, 松岡 英夫, 平佐 崇, 松尾 十峰, 遠藤 剛, 古荘 義雄
    1997 年 54 巻 12 号 p. 974-981
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    2, 2′-Biphenolおよび1, 1′-bi (2-naphthol) をジオール成分として, さまざまな試薬と反応条件で芳香族環状炭酸エステルの合成を検討した結果, ホスゲンを用いない方法として2当量のp-nitrophenyl chloroformateと2当量の第3アミンと反応させる合成法が最も高収率で対応する環状炭酸エステル3, 5を与えた. 3, 5の構造シミュレーションから環歪みによる5の高い開環反応性が示唆された. 5のアニオン開環重合を検討した結果, 非常に穏やかな条件下, 速やかに重合が進行し, 対応するポリ炭酸エステル10 (Mn 15000程度) が定量的に得られることがわかった. また, このポリマーは1, 1′-bi (2-naphthol) とbis (4-nitrophenyl) carbonateを用いる重縮合によっても得られることがわかった. 熱分析, 粉末X線解析, および重合時の体積変化についても検討した.
feedback
Top