エレクトロニクス,自動車,航空宇宙,家電,情報などさまざまな分野における技術革新に伴い,高機能性・高性能ポリマー材料の重要性が増し,近年,とくに高透明耐熱ポリマー材料への関心が高まっている.リビングラジカル重合を用いると,分子量,分子量分布,末端基構造,シークエンス構造などが精密に制御されたポリマーを合成することができ,これら構造制御されたポリマーは高機能性ポリマー材料の設計に利用されている.本報では,筆者らがこれまで取り組んできた透明耐熱ポリマー材料設計の研究の中から,リビングラジカル重合法を利用したアクリル系ブロック共重合体の合成に関する研究成果に焦点をあてて総括を行う.アダマンチル基を含むポリアクリル酸エステルの精密構造制御,高ガラス転移温度セグメントを含むポリアクリル酸エステルブロック共重合体の構造と物性,リビングラジカル重合による剛直鎖をもつポリフマル酸エステルの構造制御,ジチオベンゾエートおよびトリチオカーボネート型連鎖移動剤を用いた可逆的付加開裂連鎖移動重合によるフマル酸ジイソプロピルの重合反応制御,および剛直ポリフマル酸エステルセグメントを含むブロック共重合体の合成と特性解析に関する詳細を述べる.
ブロック共重合体が形成する,垂直配向したシリンダー状ミクロ相分離構造のグレイン成長の特徴を明らかにするために,Phase Field Crystal法による計算機シミュレーションを行った.これにより,ブロック共重合体の無秩序状態から垂直配向シリンダーが形成され,その後期過程でグレインが成長する様子がシミュレーションできた.その結果,グレインは時間のべき乗に従って成長することがわかった(グレインサイズ~tα).その成長指数αはシミュレーションを行う際に設定したノイズ強度に依存して,α=0.16 (ノイズ0)から,ノイズを大きくするにつれてα=0.33まで増加することがわかった.シミュレーション結果に基づき,グレイン成長がどのように進行するのか,グレインの境界近傍でミクロ相分離構造の配列の組み替えがどのように起こっているのかを考察した.その結果,グレインの内部には,点状の欠陥のみならず,線状の欠陥も存在していることがわかった.また,これらの欠陥は,グレイン境界の変遷を劇的にトリガーすることもわかった.グレイン成長の特徴としては,六方格子の極度のひずみが局在化することによる皺寄せ効果と,それによる「微小グレインの過渡的発生や素早い消滅」のような現象が見られた.グレインの境界が,ミクロドメイン個々の移動によりゆっくりと移動すること,また,グレインの境界の曲率が大きい部分では,これを解消しようとするために一気にグレイン境界の組み替えが起こることもわかった.このように,グレイン成長は,グレイン境界のダイナミックな変遷によっても駆動されていることが示唆された.
本研究では,異なる結晶化温度(Tc)で等温結晶化させたポリエチレン/ポリスチレンブロック共重合体(PE-b-PS)の示差走査熱量(DSC)測定における融解挙動をピーク分離法を用いて解析することで,その結晶化挙動を調査した.等温結晶化試料に対してDSC測定を行ったところ,Tcにほとんど依存しない高温融解ピークとTcに依存する低温融解ピークが観察された.前者は溶融状態からTcまでの急冷過程で結晶化した分岐成分をほとんど含まない結晶の融解,後者は等温結晶化過程で結晶化した分岐成分を含む結晶の融解に由来すると考えられる.さらに,より低温側にTcに依存するブロードな融解ピークも観察され,これは等温結晶化後の急冷過程で結晶化したPS界面近傍の結晶の融解によるものと考えられる.このようにDSC融解曲線のピーク分離により融解挙動を解析することで,結晶相におけるドメイン形成を予想することができた.
片側成分の分子量が揃ったブロック共重合体/ブロック共重合体ブレンドが示す相挙動について放射光小角X線散乱測定を用いて研究を行った.使用したブロック共重合体はpolystyrene-polyisoprene (SI)であり,polyisopreneの分子量を揃えてpolystyreneの分子量が異なる二つのものをブレンドした.polystyreneが長いSIのブレンド量を変化させて調査したところ,ブレンド量が10 wt%ではpolystyrene成分から成る球状ミクロドメインが無秩序球を形成し,30 wt%では面心立方格子,50 wt%ではシリンダー構造を形成した.以上のことから,一方の成分の分子鎖の長さが異なるブレンド系において,球状ミクロドメインが最密充填格子の一種である面心立方格子を形成することがわかった.
A block copolymer consisting of regioregular poly(3-hexylthiophene) (P3HT) and electrically inert poly(styrene) (PSt) containing perylene diimide (PDI) at the junction (P3HT-PDI-PSt) was designed for photovoltaic applications and synthesized via Suzuki-Miyaura coupling of bromo terminated P3HT and the boronic ester with PSt containing the PDI unit. From grazing incidence wide angle X-ray diffraction analysis for the annealed thin films, it is found that incorporation of PDI hinders the growth of alkyl stacking in the (100) direction of the phase separated P3HT domain. Investigation of space-charge limited current characteristics in the hole-only devices reveals that higher SCLC mobility was observed in the P3HT-PDI-PSt than in the P3HT precursor in spite of the lower crystallinity.
α-末端にATRP開始基をもち,剛直らせん主鎖上に多数個のペンダントビニル基を有するマルチビニルポリマー(MOI-EO-26)は,体積100 nm3程度のナノフラスコ中に一分子だけ入れられた.そのナノフラスコ中で分子内ATRPを行うことによって,高い二重結合消費率で分子間重合が抑制された分子量分布の狭いラダービニルポリマーが合成された.MOI-EO-26 (Mw/Mn=1.03)は,ATRP開始基を有するチタンアルコキシド錯体を用いて2-(methacryloxyethoxy)ethyl isocyanate (MOI-EO)の配位リビング重合により合成され,さらにリサイクル分取SECにより分画することによって得られた.MOI-EO-26の分子特性解析は25°C,THF中,SAXS測定を用いて行われ,全長5.39 nmの棒状分子であることがわかった.また部分比容の値から棒の直径は1.35 nmと決定された.ナノフラスコは光学的に透明な逆相ナノエマルションからできており,分散相として2,2,2-trifluoroethanol (TFE),連続相としてヘプタン,界面活性剤として3-[dimethyl(octadecyl)ammonio]propane-1-sulfonate (C18APS)を用いて新規に調製された.MOI-EO-26を内包したナノフラスコの構造はSAXS測定から精密に特性解析され,全長17.6 nm,直径2.8 nmの円柱もしくは長軸11.4 nmと短軸1.45 nmの扁平楕円体であり,体積は80~100 nm3のナノサイズの試験管であることがわかった.ナノ試験管中に画分化されたMOI-EO-26の分子内ATRPが55°C,CuBrと三種類の配位子を用いて行われた.その結果,配位子に4,4′-dinonyl-2,2′-bipyridylを用いた場合,分子間の重合はまったく起こらず,二重結合消費率=61%,Mw/Mn=1.07で対応するラダーポリマー[poly(MOI-EO-26)]を回収率100%で得ることができた.Poly(MOI-EO-26)のSECにおける溶出体積はMOI-EO-26よりも大きくなり,ラダーポリマーは流体力学的にコンパクトな形態になることがわかった.また,poly(MOI-EO-26)をリサイクル分取SECで分画すると,大きい溶出体積の成分ほど二重結合消費が高く,最大で80%になることがわかった.
High molecular weight π-conjugated alternating copolymers were obtained by direct arylation polycondensation of 3,4-ethylenedioxythiophene (EDOT) with various dibromoarenes in the presence of a solid-supported palladium catalyst, PITS (palladium immobilized on thiol-modified silica gel). The counter part of the EDOT unit controlled the electrochemical HOMO and LUMO levels of the polymers. The existence of a diketopyrroropyrole electron-acceptor unit and/or a bithiophene electron-donor unit strongly affected HOMO and LUMO levels and their band gap. Poly(EDOT-alt-dithienyldiketopyrrolopyrole), PEDOTDPT, exhibited the narrowest electrochemical HOMO-LUMO band gap (1.15 eV) and an extremely wide light absorption region. An organic solar cell made with PEDOTDPT, [ITO/PEDOT:PSS/PEDOTDPT:PC61BM/Ca/Al/], showed an efficiency of 0.20%.