高分子論文集
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71 巻, 12 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総合論文
  • 長谷川 正木
    2014 年 71 巻 12 号 p. 615-623
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    フェノール樹脂とアルミナセメント(AC)を主成分とする新しいタイプのポリマー・セメント複合材料を開発した.この研究は,“水の存在しない系中でセメントを固化させる”という従来の常識にない独創的発想が出発点となっている.えられる複合材料は高い曲げ強度(>200 MPa)を示すばかりでなく,すぐれた耐水性と耐熱性を示す.製造後のこの材料内のACは水和されていないが水中に浸漬すると徐々に水和物に変化してゆく.しかし,水中に1ヶ年間浸漬した後でもその曲げ強度は90%以上が維持されている.本報ではこの複合材料の原料組成,添加物の効果,製造工程について解説する.また,フェノール樹脂や添加物(ポリアミド,多価アルコール)について,モデル反応により,製造工程中に進行する化学反応挙動について考察した.これらの結果と材料の強度・耐水性・耐熱性の発現メカニズムとの関連について検討を加えた.さらに,本研究の概念を展開して耐熱性にすぐれたポリマー・石膏複合材料の開発も行った.
  • 樋口 昌芳
    2014 年 71 巻 12 号 p. 624-629
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    鉄,ルテニウム,銅の各イオンを含むメタロ超分子ポリマーは,電荷移動吸収に基づいてそれぞれ青,赤,緑色を呈し,電気化学的酸化や還元によって無色に変わるエレクトロクロミック特性を示した.鉄とルテニウムを含むポリマーや,鉄と銅を含むポリマーでは,マルチカラーエレクトロクロミック特性を示した.三つの配位部位を有する有機配位子を用いて分岐構造を有するメタロ超分子ポリマーを合成したところ,ポリマーフィルムがポーラスになり,エレクトロクロミック特性が向上した.また,用いる対アニオンの違いによっても特性は大きく変化した.一方,ユウロピウムイオンを含むメタロ超分子ポリマーでは,酸やアルカリの蒸気に反応して発光が変わるベイポルミネセンス特性を示した.ユウロピウムと鉄の両イオンを含むポリマーでは,鉄イオンの電気化学的酸化還元によって,発光のオン/オフがスイッチングした.
一般論文
  • 岡本 みずき, 横山 理英, 久保 拓也, 細矢 憲
    2014 年 71 巻 12 号 p. 630-636
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    硝酸イオンを吸着可能な機能炭を発泡ポリウレタンにハイブリッド化し,人工土としての利用を目的としたハイブリッドポリマーを作製した.ハイブリッド化による機能炭の硝酸吸着能への影響について検討した結果,ハイブリッド化によって,機能炭自体を直接用いる場合と比較して吸着能が若干低下するものの,時間をかけることで十分な吸着能を得ることが可能であることが明らかとなった.この吸着能の遅延効果は,人工土としての利用を考慮した場合には,利点となり得る.また,これらのハイブリッドポリマーは実際の河川水からの硝酸イオンの吸着にも有効であることが明らかとなり,ポリウレタンとのハイブリッド化で得られる人工土としての利用においても吸着した硝酸イオンが植物養分として機能し,固体に吸着した硝酸故に肥料当たりを起こすことなく遅効することで,発育にも貢献することが明らかとなり,水耕栽培ではない人工土利用において肥料成分のリサイクルに寄与する結果を得た.これらの成果は,機能炭および発泡ポリウレタン人工土単独を用いることでは達成されないことから,機能性人工土として意味があると考えられる.
  • 伊掛 浩輝, 大澤 雄貴, 小出 優一郎, 高田 昌子, 室賀 嘉夫, 栗田 公夫, 清水 繁
    2014 年 71 巻 12 号 p. 637-643
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    ポリ-L-乳酸(PLLA)およびポリ-D-乳酸(PDLA)両末端をエトキシシリル(ET)基で修飾したET-PLLAとET-PDLAを合成し,これらとシリカの複合化物をゾル–ゲル法で作製した.次に,各々の複合化物を混合しステレオコンプレックス(sc)結晶をもつポリ乳酸(sc-PLA)/シリカハイブリッドを調製し,その物性を調べた.低シリカ量のハイブリッドでは,sc結晶の形成が抑制されるため,sc-PLA単体よりも耐熱性,弾性率とも低下したが,高シリカ量では,ハイブリッド内部でシリカドメインが形成され,このドメインとPLLAおよびPDLA両末端のET基によってSi-O-Si結合を作り,三次元網目構造を形成するので,sc-PLA単体よりも耐熱性,弾性率が高くなった.すべてのハイブリッドの熱分解開始温度は,sc-PLA単体に比べて上昇した.
  • 吉永 耕二, 米澤 敦史, 本九町 卓, 小椎尾 謙
    2014 年 71 巻 12 号 p. 644-650
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)とポリ(アクリル酸)(PAA)のブロックポリマー(PMMA-b-PAA)の逆ミセルコア内でのZnOナノ粒子の合成,つづくPMMAとのハイブリッド化による高透明フィルムの作製を行った.PMMA-b-PAAの逆ミセルトルエン溶液へジエチル亜鉛を加えてコア内にZnO前駆体を包含したミセル溶液を調製し,この逆ミセル溶液を用いたキャスト法によるハイブリッドフィルムの作製はZnO粒子の凝集を招いた.ZnO前駆体を包含した逆ミセル溶液を凍結乾燥し,得られた粉末とPMMAとのホットプレスによって最大30 wt %のZnOを含有した透明性の高いZnO/PMMAハイブリッドフィルムを作製することができた.このフィルムの屈折率はZnO含有量とともに増大し,計算値と一致した.X線回折からZnO粒子が結晶化していること,およびTEM観察からPMMAバルク中にZnO粒子を含むドメインが存在していることが観察された.
ノート
  • 仲程 司, 北野 大樹, 辰巳 聡史, 藤原 尚
    2014 年 71 巻 12 号 p. 651-654
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    We report the preparation of chiral polymer nanotubes bearing terthiophene and BINOL units [(S)-TBOH-PNTs] and the encapsulation of metal nanoparticles (NPs) therein. The monomer, (S)-TBOH, was synthesized by coventional methods and electrochemically polymerized using porous alumina with a pore diameter of 200 nm on a platinum electrode. The electrolyte solution contained 7mM monomer [(S)-TBOH] and 0.1M Bu4NPF6 in CH2Cl2. A voltage of 1.00 V was applied for polymerization. The porous alumina was removed by dissolving in NaOH. The UV-vis spectrum of the PNTs in C2HCl2 exhibited a broad absorption peak at 425 nm which is ascribed to the polythiophene. The CD spectra of (S)-TBOH-PNTs and (R)-TBOH-PNTs, show intense Cotton effects and a mirror-image relationship. The PNTs and the encapsulated Au NPs in PNTs (Au NPs@(S)-TBOH-PNTs) were characterized by SEM, TEM and EDX analysis.
  • 林 俊行, 冨高 詩織, 那谷 雅則, 氏家 誠司
    2014 年 71 巻 12 号 p. 655-661
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    Side-chain liquid crystal polymers (SCLCPs) with different side-chain terminal groups were synthesized by radical polymerization of methacrylate mesogenic monomers. Their thermal properties and orientational behavior were examined by polarizing microscopy, DSC, and X-ray diffraction measurements. SCLCPs had an ethanol terminal as an end group of the polymer backbone. Liquid-crystalline block copolymers were obtained by the reaction of SCLCPs and diisocyanate with polyethylene glycol (PEG) core. The liquid-crystalline properties of the block copolymers resembled those of SCLCPs. The introduction of PEG chains led to the generation of hydrophilicity of the liquid-crystalline block copolymers. The liquid-crystalline block copolymer mixed with PEG showed a nematic phase with schlieren texture.
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