高分子論文集
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34 巻, 3 号
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  • 石田 真一郎, 千田 範夫, 増実 二郎, 金子 曾政
    1977 年 34 巻 3 号 p. 159-165
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    不均一系高分子溶液の拡散曲線から, 電子計算機を利用して拡散係数分布を求める方法を提案し, これがフェノール-ユリア-ホルムアルデヒド系共縮合樹脂に適用できることを確かめてその生成反応の研究に利用した. 試料をn成分に分割する場合, まず電子計算機内に発生させた擬似乱数によりn個の拡散係数から成る種々の組合せを選び出し, 拡散式に代入してそれぞれの組の拡散曲線を合成する. このうち実験拡散曲線に最も近い曲線を与える組がその試料の組成に最も近いものである. フェノール-ユリア-ホルムアルデヒド系共縮合樹脂の粘度拡散平均分子量と平均拡散係数との間に次式のような関係が成り立つことを見いだしたので, これを用いて拡散係数分布を分子量分布
    MVDA=0.17×10-10DA-2.5
    に変換し, 生成樹脂の分子量分布に及ぼす試薬のモル比の影響を検討した. その結果ホルムアルデヒドとフェノールのモル比 (F/P) を一定とした場合, ホルムアルデヒドとユリアのモル比 (F/U) が大きいほど生成樹脂の分子量は大きく, 分子量分布の幅は広くなり, また F/U が一定の場合は, F/P が大きいほど低分子量で分布幅の狭い樹脂が得られることが明らかとなった.
  • 石田 真一郎, 松井 順司, 小沢 忍, 金子 曾政
    1977 年 34 巻 3 号 p. 167-171
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    一般に重縮合反応において, 分子の反応性は分子量に依存しないとされているが, 付加縮合反応ではこれに反する実験結果が幾つか得られている. そこで, 著者らは電子計算機を利用して反応を追跡する方法を提案し, フェノール樹脂生成反応における分子の反応性を検討した. まず実験拡散曲線を解析して分子量分布を得, これから計算される分子量と分子数の値を電子計算機内に設置する. この中から, 分子量依存性を持つ確率で2分子を選択して反応をシミュレートし, その結果, 得られる分子量分布と実験結果とを比較した. この方法を湿式二段法によるフェノール樹脂生成反応の硬化過程に適用したところ, 塩酸およびアンモニア, いずれを触媒とした反応においても, 分子の反応性は分子量に比例することが認められた. このことは, 我々の実験条件において個々のポリマー中に含まれる1個のメチロール基は他のポリマー中のフェノールのいずれとも反応しうることを考慮すれば予期される結果であり, 本報で提案したコンピューター・シミュレーションによる反応の追跡が妥当であることがうかがえる.
  • 結城 康夫, 平林 久和, 川瀬 薫, 鯛家 忠男
    1977 年 34 巻 3 号 p. 173-177
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ガラス転位温度 (Tg) 16℃のガラス状2-アミノ4-N-メチルアニリノ-6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジン (AMIT) について, -78℃にて60Co-γ線を照射した試料の過冷却液体状態での後重合を検討した. 照射試料のDSC測定の結果はTgを過ぎた41℃から後重合による発熱がみられた. また30~110℃での後重合の結果, 重合温度に依存する重合率の飽和値がみられた. この重合率の飽和は活性種の失活によらず, 系のガラス化に依存することをESRスペクトル, Gordon-Taylorプロットなどにより確認した.
  • 鎌上 三郎, 浜島 求女
    1977 年 34 巻 3 号 p. 179-185
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    p-イソプロペニルフェノール (IPP) の2,2′-アゾビスイソブチロニトリルを開始剤とし, 60℃でラジカル重合, 共重合に関する研究を行った. IPPはビスフェノールAの熱分解により取得し, 無色針状結晶, 融点85℃のものを用いた. 単独重合の場合, 溶液状態では重合せず, 固体では紫外線, γ線の照射により重合は開始した. 共重合の場合, 空気の存在する系では重合が起こらず, 脱気した系では誘導期なしに重合は開始した. アクリロニトリル, アクリル酸メチル, アクリル酸エチル, メタクリル酸メチル, スチレン, イソプレン, ブタジェン, 酢酸ビニルなどと共重合を行った結果, アクリロニトリル, アクリル酸メチルなどとは交互性の強いコポリマーが得られたが, 酢酸ビニルとは共重合しなかった. 共重合のモノマー/コポリマー組成曲線からモノマー反応性比を求め, 更にIPPのQ-e値を算出し, IPPの反応性につき考察した.
  • 岡橋 和郎, 二口 通男, 柴山 恭一
    1977 年 34 巻 3 号 p. 187-193
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    トリエタノールアミンチタネート-トリフェニルポレート錯体 (TAT-TPB錯体) によるエポキシ樹脂の硬化反応の知見を得るために, この樹脂のモデル化合物であるフェニルグリシジルエーテル (PGE) とTAT-TPB錯体との重合を105~150℃の温度で無溶媒下で行った. PGEとTAT-TPB錯体のそれぞれの関係における反応速度次数は2次で取り扱われ, これより求めた活性化エネルギーは8.47kcal/mol, 活性化エントロピーは-56cal・mol-1・deg-1であった. また, 120℃以下の重合温度では反応初期に誘導期間が観察される. TAT-TPB錯体のB-O結合およびN→B結合に起因する赤外吸収スペクトルの吸収は 1340cm-1と1380cm-1に出現するがPGEと反応させると, 前者は変化しないが後者は消失した. TAT-TPB錯体のモデル化合物によるPGEの重合はN→B結合部がOH基の存在において重合活性を示した. 以上のことは, TAT-TPB錯体によるPGEの重合機構がTAT-TPB錯体のN→B結合が解離し, N原子と錯体自身のOH基 (このOH基の酸素原子はTPBに配位する) がエポキシ基に関与するSN2機構によって進むことを示している.
  • 半田 隆, 吉澤 秀二, 池田 康久, 斉藤 実
    1977 年 34 巻 3 号 p. 195-203
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ブナ単板にスチレン (St) を含浸し電子線重合したWPCとポリスチレン (PSt) を注入したWPCの接線方向の動的粘弾性 (ET′, ET″) の温度依存性から3種類のET″の吸収ピーク (a, b, c) を分離した. 木材の200℃付近からのET′の低下に対応したET″の230℃付近の (a) は, セルロースおよびヘミセルロースの熱分解を伴う非結晶化によるセルロースフィブリルの配列の変化がもたらした木材高次構造の変化と考えられ, 照射WPCの (a) の低温への移動と等損失弾性点 (225℃) の存在は, 木材の伸びをもたらす木材実質部分の生成PStが木材高次構造の変化を低温で誘起したためである. PSt注入WPCの120℃付近の (b) はPStと実質部界面の相互作用によりPStの吸収 (Tg=95℃) が移動したためであり, 低分子量PSt注入WPCと照射WPCの120~200℃から分離した160℃付近の (c) は微細空隙のポリマーと実質部界面との密着性がよく強い相互作用により高温領域で増幅された吸収と解釈された.
  • 上出 健二, 真鍋 征一, 松井 敏彦, 坂本 冨男, 梶田 修司
    1977 年 34 巻 3 号 p. 205-216
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    酢酸セルロース (結合酢酸量54.1wt%) /金属塩/酢酸セルロースの良溶媒/酢酸セルロースの非溶媒系から構成された溶液を流延し, 成膜後水洗乾燥することにより平均孔径0.01~数μm, 空孔率30~85%の範囲の任意の孔径空孔率を持つ多孔膜を得た. 添加した塩により, (1) 多孔膜の単位面積当たりの孔数は増加し, (2) その孔形はなめらかな円形状になる. またこの系の成膜過程中の相分離特性を明らかにし, さらに成膜過程中の溶液状態を顕微鏡で観察した. その結果より以下の開孔機構が明らかとなった. すなわち, 流延後の溶媒蒸発に伴い溶液中には直径約0.05μmのポリマー濃厚相から構成された小粒子が出現し, (1) その一部は直ちに連続化したり, (2) 一部は約2μm径の大粒子となり, その後この大粒子は相互に隣接し連続化する. 更に引き続く溶媒蒸発, 洗浄, 乾燥に伴い (1) の場合には連続化した濃厚相は体積収縮を起こしその結果空孔が生じ, (2) の場合には粒子間のすき間が空孔となる. (1) と (2) とのいずれの場合が生じるかは, 相分離時の溶液組成による.
  • 岡本 秀正, 高田 清, 岩井 正
    1977 年 34 巻 3 号 p. 217-224
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    種々の条件下で厚さ15μのシンジオ-1,2-ボリブタジエンフィルムを空気中でγ線照射し, ラィルム重量およびIRスペクトルの変化を検討した. フィルムの重量は誘導期閥を経て線量とともにほぼ直線的に増加した. IRスペクトルの変化は, 主としてビニル基の減少とOH基およびC=O基の生成であった. OH基はアルコールおよびハイドロパーオキサイド, C=O基は不飽和ケトン, 酸, 飽和ケトン, アルデヒド, エステルおよび過酸のうち主として飽和ケトンからそれぞれ成ることが分かった. 酸化反応の初期では, 重量増加速度およびOH基, C=O基の生成速度はいずれも線量率のほぼ1/2乗に比例した. また, これらの速度は温度とともに増大し, 見掛けの活性化エネルギーはいずれも5~6kcal/molであった. さらに, 30℃で照射して得られたフィルムを空気中に放置すると, 後反応が徐々に進行することが分かった. これらの結果に基づいて, 環化橋かけ反応に伴う連鎖的な酸化反応の機構を考察した.
  • 池野 忍, 三川 礼, 宇野 敬吉, 岩倉 義男
    1977 年 34 巻 3 号 p. 225-233
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    耐熱性, 機械的性質に優れたポリマーを得る目的で, p-ビス (フェニルアミノジメチルシリル) ベンゼンと, 2価フェノールとを溶融重縮合させて, 一般式が 
    で表されるポリマーを得た. 得られたポリマーは, ベンゼン, THF, クロロホルムなどの有機溶媒に可溶で, フィルム, 繊維形成能を有していた. TGAでは400℃まで熱重量減少がみられず, ポリマーの耐熱性は優れていた. しかしながら, 耐水性, 耐アルカリ性は, シロキサン結合のポリマーよりも劣っていた. 2価フェノールとして, ビフェノールを用いたポリマー, およびそのTCNQ, クロラニルとの電荷移動錯体の誘電率を測定したが, 錯体化による誘電率の増加は非常にわずかであった.
  • 山本 清香, 辰巳 正和
    1977 年 34 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    スチレンとジメチルスチレン (DMS) 類とのカチオン共重合を行った. 重合溶媒として四塩化炭素, 二塩化エチレンおよびニトロベンゼンを, 重合触媒としてSnCl4, AiBr3, TiCl4, BCl3およびBBr3のルイス酸を用いた. 共重合の結果, モノマー反応性比はDMSそしてルイス酸触媒の酸強度および重合溶媒の極性などの共重合条件で複雑な変化を示すことが分かった. 共重合条件とモノマー反応性比との関係を論じた.
  • 末広 哲朗, 大島 栄次
    1977 年 34 巻 3 号 p. 241-248
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    不活性ふんい気下のポリマーの熱分解において, その主鎖がランダムに開裂する場合の分解の挙動を動力学的に検討した. その結果, 任意の重合度分布をもつポリマーの分解に伴う, 重合度分布と数平均重合度および蒸発による重量の減少の経時変化を与える式が解析的に得られた. 特に数平均重合度の低下率と重量減少の経時変化については, これらが分解前のポリマーの重合度分布の型の影響を受けず, 数平均重合度の初期値と蒸発の起こる鎖長の範囲によってのみ決定されることが動力学式からは説明される. またポリエチレンの不活性ふんい気での熱分解をランダム開裂と仮定して実験を行い解析結果と比較した. 重量減少率の経時変化を比較した結果, C-C結合のランダム開裂による消失速度定数は415℃においてk=2.8×10-2hr-1が得られた
  • 讃井 浩平, 今村 博司, 緒方 直哉
    1977 年 34 巻 3 号 p. 249-252
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    各種液晶を溶媒として用い, 種々の条件下でメタクリル酸エステル類のラジカル重合を行い, 得られたポリマーの立体規則性に対する液晶溶媒の効果を検討した. 液晶溶媒中で得られたポリマーの収率および溶液粘度はベンゼン中に比べて高くなった. また, メタクリル酸エステルのアルコキシ基の長さはポリマーの立体規則性に大きく影響した. すなわち, メタクリル酸メチル (MMA) の重合では, ベンゼン溶媒と液晶溶媒とで得られたポリマーの立体規則性に差がないのに対しメタクリル酸n-ブチル, 2-エチルヘキシルあるいはn-ドデシルのように長いアルコキシ基を持つモノマーでは, 液晶溶媒の方がベンゼンよりもアイソタクチックトリアッドの割合の大きいポリマーを与えることを見いだした.
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