高分子論文集
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53 巻, 2 号
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  • 桑野 一幸, 西山 高司, 永田 勝也, 永澤 満
    1996 年 53 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    塗料の低粘度化を目的としてスチレン, n-ブチルメタクリレート, n-ブチルアクリレート, 2-エチルヘキシルメタクリレート, 2-ヒドロキシエチルメタクリレート, およびアクリル酸のランダムコポリマーから成る星型ポリマーの合成について研究した. この論文では, 試料とするマクロモノマーの純度, すなわち末端2重結合導入率を二つの方法によって測定した. 一つはSTN internationalによる帰属を用いた13C NMR法であり, 他の一つはメチルメタクリレートならびにスチレンとの共重合によって得られたポリマーのGPCクロマトグラムのピーク面積から求める方法である. 2方法共にほぼ同じ値が得られ, 13C NMR法がマクロモノマー純度決定に有効であることが明らかになった. この方法によって, ラジカル連鎖移動法により合成した数種のマクロモノマーの末端二重結合導入率などを比較した結果から, グリシジルメタクリレートとプレポリマーの反応の際に過剰の連鎖移動剤を除去することによって, 末端二重結合導入率ほぼ100%のマクロモノマーを得ることができることを示した.
  • 桑野 一幸, 西山 高司, 岩田 直樹, 永澤 満
    1996 年 53 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    自動車外板用塗料には耐候性, 耐薬品性などの点からアクリル系ポリマーが使用されている. 本研究では代表的なアクリル系モノマーであるメチルメタクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートのマクロモノマーを用いた星型ポリマーの合成法について研究した. また, これら合成した星型ポリマー溶液の粘度について研究し, 予想どおり星型化によって対応する線状ポリマー溶液と比較して溶液粘度のかなりの低下が見込まれることを確認した.
  • 多留 康矩, 小林 光一, 高砂子 昌久, 高岡 京, 荒井 正義
    1996 年 53 巻 2 号 p. 96-103
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    窒素のグロー放電を施した低密度ポリエチレン (N2-LDPE) およびエチレンのプラズマ重合膜 (N2-P-C2H4) のフィルム表面における, 親水性および極性基分率の経時変化に与える要因を接触角, X線光電子分光法 (XPS) 分析, および接着強度から調べた. N2-LDPEフィルムでは, 分解した極性低分子物質の離散 (グロー放電直後), グラフトされた極性基のフィルム内部への反転 ((グロー放電後約20日間) が同時に進行している. 一方, 2-P-C2N4フィルムでは, 極性低分子物質の離散が主要因である. グロー放電直後のN2-LDPEフィルムの表面には低分子物質が沈積しているため, フィルムの接着強度は弱いしかし, これを加熱した場合, フィルム上の低分子物質が離散するため接着強度は大きく向上した.
  • 草薙 浩
    1996 年 53 巻 2 号 p. 104-110
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分率座標を用いるMM2, MM3などの市販プログラムと異なり, 分子内部座標を用いて合成高分子等の繊維状高分子に特化した前報の高分子パッキングエネルギー最小化法のポテンシャル関数および変数を格子定数にまで拡張する改良を行った分子力学法プログラムを開発した. そして, ポリエチレンオキシドとポリエチレン結晶構造の計算を行ってこのプログラムの精度向上と拡張性を確かめた.
  • 草薙 浩
    1996 年 53 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    側鎖メチル基の立体反発により特異な2/1らせん構造をとるポリピバロラクトン (PPL) の結晶構造を高分子パッキングエネルギー最小化法を用いて計算し, X線解析により決められ結晶構造と良い一致を示す結晶構造モデルを得ることができた. そして, 2/1らせんコンフォメーションになる原因をファンデルワールスおよび静電相互作用エネルギーの視点から考察した. さらに, 分子鎖パッキングの可視化法によるPPL結晶断面図から2/1らせんがうまく結晶にパッキングしていることを確かめることができた.
  • 杉山 一男, 奥 晃政, 大賀 幸二
    1996 年 53 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    グルコース基とボスホリルコリン基で同時に表面を化学修飾した高分子材料の生体親和性を評価する目的で2-methacryloyloxy ethylphesphorylcholine (MPC) および2- (glucosyloxy) ethyl methacrylate (GEMA) をmethyl methacrylate (MMA) と乳化共重合して一連の三元コポリマー微粒子P (MPC/GEMA-co-MMA) を得た. XPS測定から, MPCとGEMA成分が粒子表面に濃縮されていた. また, 粒子表面にはヒドロゲル相が形成されており, 牛血清アルブミンやヒト血清γ-グロブリンの吸着を抑制することがわかった. さらに, P (MPC/GEMA-co-MMA) から溶液展開法で調製したフィルム上でマウス繊維芽細胞の培養試験をした結果, 正常な接着性を示した. 以上の結果から, 高分子材料の表面をMPCユニットとGEMAユニットで同時に化学修飾すると効果的に生体親和性が改善されることがわかった.
  • 草薙 浩
    1996 年 53 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    疎水性ポリマー収着水の赤外基準振動計算をポリマー構造をあらわに取り入れない第1次近似のGF行列法を用いて行い以下の結論を得た. (1) 一連の疎水性ポリマー収着水の3本の基本振動バンドνa (OH), νs (OH), δ (∠HOH) の軽水と重水の実測振動数は水分子のみの4つのカの定数: Kr (OH), Hφ (∠HOH), H…H原子間反発に関するFrrFを気体水の値から系統的に変化させることによって精度よく再現できることを明らかにした. (2) その結果, 収着水の赤外基本振動バンドνaとνsの二次元マップにおいて, 疎水性ポリマーと親水性ポリマーとが2本のマスター直線に分かれる理由を力の定数の視点から説明できることを見いだした.
  • 山登 正文, 室橋 律子, 木村 恒久, 伊藤 栄子
    1996 年 53 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    芳香族高分子のβ緩和の機構を明らかにするため, ポリエチレン-1, 2-ジフェノキシエタン-p, p″-ジカルボキシレート (PEBC) の誘電的β緩和を測定した. PEBCはポリエチレンテレフタレート (PET) に相当するエステル部分を持つ, 芳香族エステルエーテルコポリマーである. PEBCのスペクトルからPETのスペクトルを差し引くことにより得られた差スペクトルは, 損失極大周波数がPETよりも高く, さらに見かけの活性化エネルギーはPETより小さかった. これらのことから, 差スペクトルはPEBCのエーテル部分に起因していると考えられる. っまり, PEBCのβ緩和はエステル基とエーテル基を含む部分の二っの緩和の和で表されることを示している. これは, 芳香族ポリエステルのβ分散に起因する分子運動が, 芳香環に挟まれた屈曲性の高い分子鎖部分の運動であるという先の報告を支持するものである.
  • 堀邊 英夫, 熊田 輝彦, 久保田 繁
    1996 年 53 巻 2 号 p. 133-141
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ベース樹脂, 溶解抑制剤, および酸発生剤からなる化学増幅系3成分ポジ型レジストにおいて, 溶解抑制剤に着目し, レジスト未露光部の溶解速度の低下を図った. 同一示性式の溶解抑制剤 (ジヒドロキシベンゼンの-OH基をtert-ブトキシカルボニル (tBOC) 基で保護した化合物) において融点を変化させ, レジストの溶解速度とそれらの関係について検討した. 溶解抑制剤の融点の上昇とともに, 未露光部の溶解速度は低下する傾向にあった. これらの原因をIR, TGAで調べた結果, 低融点の溶解抑制剤を添加した系は, プリベーク時に溶解抑制基 (tBOC) の大部分が熱分解しOH基に変化し溶解促進基になっていることが判明した. 低融点の溶解抑制剤を添加することにより膜の柔軟性が増加し, ベーク時に, 溶解抑制剤と残存フェノール (溶解抑制基の分解作用あり) との接触が促進されるため, 膜の溶解速度が高くなったと考えられる.
  • 林 貞男, 山中 拓也, 熊本 吉晃, 小林 勝, 平井 利博
    1996 年 53 巻 2 号 p. 142-148
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリメタクリル酸メチルを素材とした微小な口径 (0.23mm) の凸レンズアレイを作製し, 2枚を重ね合わせ, その間の光学を調べた. 第一面の個々のレンズの中には物体の倒立像がほぼ同じように結ばれた. これに第二面を重ねると, レンズアレイ間のレンズピッチが同じ場合は映像は発現しなかったが, 異なる場合は第一面の無数の倒立像が第二面で1個の映像にまとめ上げられた, 映像は, 第一面のレンズピッチが第二面のレンズピッチよりも大きい場合は直立像で, 逆の場合は倒立像で発現した. 第一面を固定し, 第二面を回転すると, 回転角度の増大につれ, 直立像は回転方向に横転しながら縮小し, 倒立像は回転方向とは逆の方向に立ち上がりながら縮小した. いずれの映像も, 第一面のレンズの倒立像のピッチと第二面のレンズのピッチとのモアレ縞で構成された模様の中に1個ずつ発現した. これらの映像の発現機構が詳細に検討された.
  • 宮下 美晴, 佐藤 理英, 木村 悟隆, 西尾 嘉之, 鈴木 秀松
    1996 年 53 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    種々の脱アセチル化度 (DD) を有するキチンとポリビニルアルコール (PVA) とのブレンドフィルムを, 酢酸水溶液からのキャスト法, あるいは, ジメチルアセトアミド-塩化リチウム溶液からの凝固再生法によって作製し得た. DSC熱分析および動的粘弾性測定によりブレンド試料の転移挙動と相構造を考察し, 両成分の相溶性に及ぼすキチンの部分脱アセチル化の効果を調べた. DD≈50%のキチンとPVAとのブレンドでは, キチン含有率の増加に伴ってガラス転移温度 (Tg) が高温側へとシフトし, 同時にPVA結晶の融点が系統的に降下するのが認められた. このようなブレンド組成に依存したTgシフトおよび融点降下現象は, キチン成分のDDが40~60%の場合に明瞭に観測され, DDがこの範囲外にあるときにはそれほど顕著ではない. これより, DD=40~60%のキチンを用いた場合には, 非晶領域で特に良好な相溶状態にあるキチン/PVA系ブレンド膜を調製しうることがわかった.
  • 前田 拓也, 元吉 治雄
    1996 年 53 巻 2 号 p. 155-157
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ゼラチン乾燥膜をホルムアルデヒド蒸気に曝露することにより架橋して耐水性を付与した生分解性プラスチックを調製し, 蒸気との反応時間が膜の物理的特性, 化学的特性, および生分解性に及ぼす影響を調べた. 架橋反応は膜表面から内部へ進行し, 反応時間によって水に対する溶解性が変化した. 生分解性を反応時間を変えることによってコントロールできる可能性が示唆された. 物理特性は, 架橋結合形成の影響をほとんど示さなかったが, 吸湿により変化することが認められた.
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