高分子論文集
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43 巻, 9 号
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  • 宮内 信之助, 皆川 格, 反町 嘉夫, 津端 一郎
    1986 年 43 巻 9 号 p. 535-541
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    n-ブチルリチウムを開始剤として, カーボンブラック (CB) にメチルメタクリラートをグラフトして得られるポリマーグラフト・カーボンブラック (GC) を用いて, 抵抗体を作製した. これらの抵抗体の抵抗率は10×105~3.3×105Ω・cmの範囲であったが, これらの抵抗率はCB含有量だけでなく, グラフト率や超音波処理にも影響される. すなわち, CB含有量が同じでも, グラフト率を大きくしたり, 超音波処理時間を長くすると, 抵抗率は大きくなった. 電子顕微鏡観察の結果, CBの分散性が抵抗率を支配していることがわかった. 抵抗-温度特性は40~140℃で測定されたが, 80℃以上で正の温度係数を示した. このPTC特性は抵抗率が大きくなると顕著になったが, 抵抗体の導電機構と関係づけられて説明がなされた. 抵抗の電圧依存性はパルス法で測定されたが, 高電圧で非オーミックな特性が観察され, 温度特性同様, 抵抗率の大きい試料で顕著であった. これらの特性には, CB粒子間に形成されるポリマーの薄膜が関係していると推定される.
  • 生川 洋, 川井 収治, 中保 治郎
    1986 年 43 巻 9 号 p. 543-548
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    不飽和ポリエステル樹脂, 充てん剤配合樹脂及び増粘樹脂の流動特性を, 共心二重円筒型及び毛管型粘度計を用いて測定した. またねじり振動子型レオメーターを用いてシートモールディングロンパウンド (SMC) の動的粘弾性を測定した. 文献値及び理論を引用して, 実験結果から樹脂及びその複合物の損失コンプライアンスJ″を推定し, 流動に基づく成分Jη″及び回復性の粘弾性変形に基づく成分J1″の和として表した. 不飽和ポリエステル樹脂及び充てん剤配合樹脂の場合はJη″がJ1″より大きい. これらの材料の成形性は良好である. 増粘樹脂及びSMCの場合には, 低温ではJη″はJ1″より小さいが, Jη′の温度による増加率がJ1″のそれより大きいので, 温度を高くするとJη″はJ1″より大きくなる. 実際に, 増粘樹脂及びSMCは, 低温では成形が困難であるが, 温度を高くすると成形性は良くなる. いずれの場合も, Jη″がJ1″より大きいときに, 材料の成形性は良好である. このように不飽和ポリエステル樹脂及びその複合物の成形性はJη″とJ1″の相対的な大きさと関係づけて論ずることができると考えられる.
  • 多留 康矩, 高岡 京
    1986 年 43 巻 9 号 p. 549-557
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    塗膜の表面 (0~40Å) における極性基の配向及び厚みをESCAにより調べた. その結果を要約すると次のようである.
    (1) メラミン樹脂塗膜の表面 (0~4.8Å) にはブチル基が配向し, 表面から4.8~10Åにおいては極性基 (トリアジン環やエーテル結合等) が局在している.
    (2) アミノアルキド樹脂塗膜の表面 (0~10Å) にはメラミン樹脂のブチル基とアルキド樹脂の炭化水素鎖が配向し, 12~25Åにおいては極性基 (トリアジン環やエステル基等) が局在している.
  • 戸谷 英樹, 扇澤 雅明, 西出 宏之
    1986 年 43 巻 9 号 p. 559-563
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    フルオロアルキルアクリラート (FAA) とメチルスチレン (MSt) のランダム及びグラフト共重合体膜を作成し, パーベーパレーション法で, 水-エタノール混合物に対する透過性を検討した. ランダム共重合体膜は水を選択透過した. ガラス転移温度 (Tg) と透過遠度に相関が認められ, この膜透過には膜中での透過物の拡散性が反映された. これは, 温度及び透過種の透過への影響によっても裏付けられた. 他方, グラフト共重合体膜ではFAAのはっ (撥) 水性・親エタノール性に基づき, エタノールの透過が認められた. 同じモノマーから成る膜でも, 共重合体のミクロ構造により透過性を変えられることが明らかとなった.
  • 加門 隆
    1986 年 43 巻 9 号 p. 565-571
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂へのポリメルカプタン硬化剤の種類及びその配合量, 硬化触媒量が硬化に及ぼす影響についてDSCを用いて速度論的に検討した. これらの硬化反応は二次式とはならず, SH基に無関係の自触媒二次反応であった. この反応式を用いて速度定数を決定した. 触媒量に対しては1/2次反応であった. これより開始反応は触媒をメルカプタンの反応による平衡反応と考えられ, この平衡からSH量に対しても1/2次が予想された. これらの結果をもとに, 反応式を誘導するとともに, その反応機構を提案した.
  • 結城 康夫, 国貞 秀雄, 野村 智彦
    1986 年 43 巻 9 号 p. 573-579
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    スルホン酸基をもつ新しいモノマーとして, 2-アミノ-4- (p [1] 及びm [2] -スルホアニリノ) -6-イソプロペニル-1, 3, 5-トリアジンをスルホフェニルビグアニドと塩化メタクリロイルとの反応により合成した. また比較のため2-アミノ-4- (p-スルファモイルアニリノ) -6-イソプロペニル-1, 3, 5-トリアジン [3] を合成した. ジメチルスルホキシドを溶媒, アゾビスイソプチロニトリルを開始剤として, これらの単独重合を行った. [1], [2] 及びそれらのホモポリマーはトリアジン環が弱塩基性のため分子内塩を形成している. [1], [2] (M2) とスチレン, メタクリル酸メチル, アクリル酸メチル (M1) とを共重合させた. また2-アミノ-4-アニリノ-6-イソプロペニル-1, 3, 5-トリアジンの塩酸塩及びp-トルエンスルホン酸塩とスチレン, メタクリル酸メチル, アクリル酸メチルとを共重合させた. この共重合パラメーターは [1], [2] の値と類似の傾向を示した.
  • 山口 宗明, 林 和子, 足立 公洋, 高橋 高子, 田中 勝敏
    1986 年 43 巻 9 号 p. 581-589
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    シラン及びチタンカップリング剤 (SCA及びTCA) で処理したガラスビーズ (GB) と, 酸無水物, ジアミンなどで硬化させたエポキシ樹脂との親和性を, 動的粘弾性, 圧縮強さ, SEM観察などで調べた. GBを最大充てんしたが, GBの容積分率は理論値の0.74とならず, 0.60~0.64の範囲にとどまる. SCA処理GBはTCA処理GBよりも, マトリックスとの親和性が大きいことが, 試料の切削面のSEM観察でわかる. 動的粘弾性の測定は室温から約250℃まで行った. 相対弾性率 (Ec′/Em′) が, 特にゴム領域 (Tg+50℃) において, 大きな試料はGBとエポキシ樹脂との親和性が大きい. また, SCA処理系はTCA処理系よりも圧縮強さが大きい. ゴム領域のEc′/Em′値と圧縮強さの比 (σcm) との間には, 良い相関性が認められる. このため, ゴム領域のEc′/Em′値により, 親和性の評価ができる.
  • 芹田 元, 神山 宣彦, 村井 幸一
    1986 年 43 巻 9 号 p. 591-595
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    負の金ゾル, 正の銀ゾルのような荷重ゾルを用い, 透過型重子顕微鏡 (TEM) を利用して, 粘土鉱物の表面荷電を測定する方法を研究した. 表面電荷は, 主として, TEMの下で表面の荷電ゾルが吸着されているかどうかを観察し確認した. 粘土鉱物の表面電荷は, おもに, 外部表面にさらされている酸素イオン, あるいは, 水酸基から生じていることが示唆された. アイオネンポリマーで凝集されたカオリン粒子表面は, 負の金ゾルが一面に密に吸着しているのを観察することにより, 0.5gのカオリンに対して10ppmのアイオネンポリマー添加で, その粒子表面はポリマーで包囲されることが確認された. ポリ (2-ビニルピリジン) の四級アンモニウム塩 (四級化率37%) で凝集されたカオリン粒子は負の金ゾルが部分的に密に吸着されるのが観察された. このように粒子面に負の金ゾルが部分的に吸着していることは, モザイック型の凝集機構を支持する.
  • 横山 隆, 金城 徳幸, 若島 喜昭
    1986 年 43 巻 9 号 p. 597-602
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    シリコーン系, 熱可塑系, 及びイミド系などの各種ポリマーが, 恒湿度雰囲気下 (25℃, 0~75%RH) で半導体素子に及ぼす影響を調べるために, 各ポリマーの吸湿率, 及び透過係数などを測定し, 水分の拡散係数を算出した. 次に, ポリマー, 及び水分などの影響を評価できるように工夫した電界効果型トランジスタの残留電流を測定した。残留電流は, ポリマーの種類によって異なり, 印加時間の延長, 及び湿度の増加などによって増大する傾向を示した. この残留電流は, 拡散係数D, 時間t, 及び相対湿度 Px (%) などを含む関数として表せることを導き出した. log Ir=mPx+n・log (Dt) +log C, ここで, m, n及びCなどは, ポリマーの種類及び, 素子の構造によって決定される係数である. 拡散係数を比較することにより, 恒湿度雰囲気下で残留電流が増大する機構について考察した.
  • 成田 宏, 成川 正樹, 荒木 幹夫
    1986 年 43 巻 9 号 p. 603-608
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    種々の芳香族ヒドラジドと塩化銅 (II) との系でメタクリル酸メチルの重合を行った. 重合速度は置換基のHammettの置換基定数の順には並ばなかった. 以前に報告した, 脂肪族ヒドラジドを用いた系での結果では, 置換基のTaftの置換基定数の値が大きくなると重合速度が増加し, この結果と違っている. しかし, NMRや可視吸収スペクトルの極大値での結果では同様の結果が得られた. 用いたヒドラジド化合物のNMRスペクトルの-NH-基のプロトンの化学シフト値の低磁場にあるものの方が, また, こ のものの銅 (II) 錯体の可視吸収スペクトルの極大吸収の波長の長波長側にでるものの方が重合速度が速かった.
  • 早川 忠男, 井上 克彦, 松崎 敦
    1986 年 43 巻 9 号 p. 609-611
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    種々のモル比のコポリ (D-p-ヒドロキシフェニルグリシン, D-リシン) をN-カルボン酸無水物法で合成した. アルコール水溶液中でコポリマーのpH変化やアルコール濃度変化による構造変化を円偏光二色性の測定から検討した. D-p-ヒドロキシフェニルグリシン含量50%以下のコポリマーは50%メタノール水溶液中pHを増加させるとランダムコイル構造からα-ヘリックス構造に転移する. また同コポリマーはpH 11.5の水溶液中でβ構造で存在するがエタノール濃度を増加させるとα-ヘリックス構造に転移する.
  • 片岡 紘三, 今井 恒夫, 赤井 弘
    1986 年 43 巻 9 号 p. 613-615
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    吐糸している蚕の液状フィブロインの走査型電子顕微鏡観察及び見掛けの吸光度の測定からその微細構造を検討した. その結果, 直径1~2μmの球状構造が後部及び中部糸腺の液状フィブロインに, 直径5~10μmの液胞が中部糸腺の液状フィブロインに観察された. 液胞の形成は液状フィブロインの濃度約16%以上で現れた.
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