ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチル (PDM) の存在下で, 過硫酸カリウム (KPS) を開始剤としてメタクリル酸メチルの水媒体不均一重合を行ったところ, dead-end重合の様相を呈し, そのことがPDMによるKPSの著しい分解加速に基づくことを認めた. そこで, その加速現象をメタクリル酸ジメチルアミノエチル (DM) の場合との比較検討などより明らかにしようとした. 得られた主結果は次のとおりである. 1) PDMはDMに比べて約5倍の加速能を有した. 2) PDM分子中, 約10%がプロトン化されている場合に最大の分解初速度 (
V0) が得られた. 一方, DMでは単に未プロトン化量が増加するに従い,
V0が増大した. 3) 部分四級化PDMにおいて, 系中の未プロトン化DMユニットを一定に保った場合, 四級化率が高くなるにつれて
V0は飛躍的に増大した. しかし, 完全四級化PDMとPDMのブレンド系では, 前者の存在による
V0の変化は全く認められなかった. 4) 過酸化水素に対する分解加速能はDMの方がPDMより大きく, また, PDMの部分プロトン化および四級化は分解加速に寄与しなかった. 以上の結果より, PDMによるKPSの著しい分解加速は, S
2O
82-アニオンが, PDM分子中の一部プロトン化により分子鎖近傍に形成されるカチオン性高電場のために分子鎖近傍に濃縮され, その結果, 還元能を有する未プロトン化ユニットとの反応の確率が高まるという, いわゆる高分子効果に基づくと推定した.
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