高分子論文集
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32 巻, 6 号
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  • 松本 恒隆, 大久保 政芳, 尾上 勧
    1975 年 32 巻 6 号 p. 333-337
    発行日: 1975/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチル (PDM) の存在下で, 過硫酸カリウム (KPS) を開始剤としてメタクリル酸メチルの水媒体不均一重合を行ったところ, dead-end重合の様相を呈し, そのことがPDMによるKPSの著しい分解加速に基づくことを認めた. そこで, その加速現象をメタクリル酸ジメチルアミノエチル (DM) の場合との比較検討などより明らかにしようとした. 得られた主結果は次のとおりである. 1) PDMはDMに比べて約5倍の加速能を有した. 2) PDM分子中, 約10%がプロトン化されている場合に最大の分解初速度 (V0) が得られた. 一方, DMでは単に未プロトン化量が増加するに従い, V0が増大した. 3) 部分四級化PDMにおいて, 系中の未プロトン化DMユニットを一定に保った場合, 四級化率が高くなるにつれてV0は飛躍的に増大した. しかし, 完全四級化PDMとPDMのブレンド系では, 前者の存在によるV0の変化は全く認められなかった. 4) 過酸化水素に対する分解加速能はDMの方がPDMより大きく, また, PDMの部分プロトン化および四級化は分解加速に寄与しなかった. 以上の結果より, PDMによるKPSの著しい分解加速は, S2O82-アニオンが, PDM分子中の一部プロトン化により分子鎖近傍に形成されるカチオン性高電場のために分子鎖近傍に濃縮され, その結果, 還元能を有する未プロトン化ユニットとの反応の確率が高まるという, いわゆる高分子効果に基づくと推定した.
  • 佐野 孝, 小郷 良明, 井本 立也
    1975 年 32 巻 6 号 p. 338-341
    発行日: 1975/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    スチレンの高圧塊状重合を60℃で2000kg/cm2までの圧力下においてアゾビスイソブチロニトリル (AIBN) を開始剤として行った. 重合初期速度よリスチレンの60℃における重合の全反応の活性化体積は-15cm3/molと得られた. また各重合率におけるポリマーの平均分子量を測定した. その結果から圧力が高くなるに従って, 定常状態の仮定は低い重合率でくずれていることが分かった. 圧力が高くなるに従って重合系の粘度は同じ重合率であっても高くなり, 生長ポリマーの拡散が粘度の増加によって抑制されるために高圧下では定常状態がくずれていると思われる. 一般にスチレンの場合にはゲル効果は起こらないといわれているが, この結果からスチレンの場合においても, 特に高圧下における重合ではゲル効果が見られる. さらに2000kg/cm2では高重合率になるとモノマーの拡散さえ抑制されるという結果が, ゲルパーミエイションクロマトグラフィーによる分子量分布の結果から得られた.
  • 漆崎 美智遠, 松井 修一, 坂本 正一, 相田 博
    1975 年 32 巻 6 号 p. 342-348
    発行日: 1975/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    窒素気流下で無水マレイン酸-スチレン共重合物の熱安定性を検討した. 共重合物は200℃までは安定であるが, それを越すと初めに主鎖の切断が起こり, つづいて低分子化合物が生成するが, 橋かけ結合は生じない. 主な分解生成物はトルエン, スチレン, エチルベンゼン, 1,3-ジフェニルプロパン, 3-フェニル-2-シクロヘキセノン, γ-フェニル酪酸, 二酸化炭素, および水などである. これらの結果より主な分解機構を推定した.
  • 佐々木 寛治, 藤野 澄
    1975 年 32 巻 6 号 p. 349-356
    発行日: 1975/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレート (PET) エレクトレットについて表面電荷の等温的経時変化, 導電率, 誘電分散およびコンタクトレス電極による熱刺激電流 (TSC) の測定を行い, それぞれの方法で得られる緩和時間の相互関係を検討した. このエレクトレットの表面電荷の寿命をGubkinの現象論を用いて求めた. 見掛けの導電率は電界方向によって大きく異なった. TSCのピーク温度から求めた2種類の緩和時間はそれぞれ誘電的および導電的緩和時間と一致したが, この方法から表面電荷の寿命を推測することは困難であった. この寿命は電界方向によって異なる見掛けの導電的緩和時間と比例関係にあることが示された.
  • 石田 紘靖, 山路 功
    1975 年 32 巻 6 号 p. 357-362
    発行日: 1975/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    1-フェニル-1, 3-ブタジエン (PBD) および, 核置換PBD類 (ArBD類) のカチオン重合における置換基の種類, 重合触媒, 重合温度, 重合溶媒の重合性および生成ポリマーの分子量に与える影響について検討した. これらモノマーのカチオン重合性は, 置換基の電子吸引性が増加するにつれ減少し, その順序は, p-メチル置換PBD>PBD>p-クロル置換PBD>m-クロル置換PBD>p-ニトロ置換PBDの順であった. 0℃でのカチオン重合での生成ポリマーは, いずれも低分子量で, その数平均分子量は1300~4900であったが, -78℃での重合では, 6700まで増加した. いずれのモノマーの重合速度も, 重合溶媒の誘電率の増加とともに上昇することが観測された. PBDとArBD類のカチオン共重合を行いモノマー反応性比を求めた. そのハメットプロットから, 反応定数ρ+は, -1.50が得られ, ArBD類のカチオン重合における置換基効果は, 核置換スチレン類の置換基効果の約0.7倍に小さくなることが判明した.
  • 十時 稔, 川口 達郎
    1975 年 32 巻 6 号 p. 363-373
    発行日: 1975/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    種々の条件下で熱処理されたナイロン6および66の延伸糸の融解挙動を既報のreorganizationを禁じた熱分析方法で測定した. 融解挙動に影響する熱処理条件には, 既報の熱処理温度, 張力の他に熱処理時間, 試料中の水分, 昇温速度, 加熱手段などがある. 試料をその融点 (Tmoc) 以上の温度のシリコンオイル浴にできるだけ急激に浸せきしても (昇温速度は5000℃/min以上), 既存の結晶は融解せずに完全化するだけの, きわめて完全化速度の大きい結晶の存在が明らかにされた. したがって, 熱処理試料の諸物性が急激に変化し始める熱処理温度をMandelkernらの定義に従って臨界熱処理温度 (T*) とすると, 一般にT*Tmocなる関係がある. 熱処理過程で既存の結晶の完全化またはsuperheatingが起きないときにのみT*Tmocに等しい. 少なくともナイロン延伸系に関する限り, T*からTmocを推定することは適当でない.
  • 山本 晃, 浜田 一人, 富田 晃
    1975 年 32 巻 6 号 p. 374-377
    発行日: 1975/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリマー中の大豆タンパクが0~50wt%までの大豆タンパク・アクリロニトリルグラフト共重合溶液を, 30%濃度の塩化亜鉛水溶液を凝固浴として直接紡糸し, 得られた繊維の性質を調べた. その結果は次のとおりであった. 大豆タンパク含有率の増すほど繊維における触感, 光沢などの特徴が増し, また染色性, 吸湿性, 耐摩耗性の増大が認められた. 機械的性質や湿熱特性などの繊維物性は大豆タンパク32%まではあまり変わりはなかったが, 43%以上になると著しい低下が認められた.
  • 藤山 光美, 名郷 訓也
    1975 年 32 巻 6 号 p. 378-379
    発行日: 1975/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ロール温度を変えることによリゲル化度を調節したポリ (塩化ビニル-プロピレン) -ポリプロピレンオキシドグラフト共重合物につき, そのゲル化状態を電子顕微鏡で観察し, 一方, 高化式フローテスタにより毛管流動特性の測定を行い, 流動特性に及ぼすゲル化度の影響を検討した. 破断面の電子顕微鏡観察より, ロール温度160℃までは直径約0.6μのめいりょうな二次粒子が観察されたが, 180℃になると均一構造に近づいた, ゲル化が進むにつれて, 粘度は低下し, 末端補正係数は増大し, ストレートPVCの場合と逆の傾向を示した.
  • 大石 勉, 木村 規
    1975 年 32 巻 6 号 p. 380-383
    発行日: 1975/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    N- (1-ナフチル) -マレイミド (I) の単独重合および共重合をアゾビスイソブチロニトリル (II) を開始剤として, テトラヒドロフラン中, 60℃で行った. 単独重合の初速度Rpは, Rp=k [I] 1.6・ [II] 0.55となった. kは速度定数である. 全重合反応の活性化エネルギーは24.4kcal/mol, 頻度係数は8.5×1011となった. I (M1) とスチレン (M2) との共重合におけるモノマー反応性比はr1=0.0, r2=0.15となった. また, I (M1) とメタクリル酸メチル (M2) との共重合におけるモノマー反応性比はr1=0.036, r2=1.89となり, これよりIのQ1, e1値を算出し, それぞれQ1=0.75, e1=2.0を得た.
  • 大柳 康
    1975 年 32 巻 6 号 p. 384-386
    発行日: 1975/06/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリスチレンおよび高密度ポリエチレン溶融体の細孔流動特性に及ぼすStatic Mixerの混練効果を実験的に検討した. 用いたダイは長さと径の比が2,5, および10の細孔をそれぞれ持つStatic Mixerをレザーバ内に装てんしたものとStatic Mixerを装てんしないものの2種である. その結果細孔壁面における見掛けのせん断速度と加圧力との関係線図でめいりょうに判定できる正常流動からspirallingへの遷移する限界せん断速度は, 流動混練を行ったものの方が, これを行わないものに比べて高くなる現象を見いだした.
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