高分子中に含まれる末端基や異種結合などの微量成分の同定と定量は高分子の物性や重合反応の理解にとって重要な意味を持つ. NMR用同軸二重試料管を用い, 信号強度の基準となる試料を封じた種々の濃度の基準内管を用意すると, 広範囲の濃度の試料成分の定量を高い精度で行えるので, 微量成分の定量にも有効な手法となる. 本研究では, 同軸二重試料管を用いてNMR用の重水素化溶媒中の残存水素, 水, 微量不純物の定量分析, ならびに, 二重試料管法を用いたNMR分析の定量限界について検討した. 定量限界は, 100MHz
1H NMRで成分量にして1.5ppm, 500MHz
1H NMRでは0.05ppmであり, その分析精度及び正確度は±10%以内であった. 市販の11種類の重水素化溶媒中の残存水素量は0.033~0.929w/v%ですべて保証値以内であった. H
2Oの量は0.003~0.045w/v%とかなりばらつきがあり, その他の微量の不純物は総量で水素含有量として15.99~1742×10
-5gH/
lであった. これらの重水素化溶媒の中には故意に重水を混入させたもののあることがわかった. 例えば, 重アセトンの
1H NMRにはH
2OとHDO,
2H NMRにはHDOとD
2Oによるシグナルが観測された. さらに, ポリマーの強い吸収とともに存在する微量成分の定量性を調べてNMR装置のダイナミックレンジについて検討し, 末端基定量による分子量測定の精度についても調べた.
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