高分子論文集
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49 巻, 4 号
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  • 帰属から分子設計まで
    中條 利一郎
    1992 年 49 巻 4 号 p. 259-273
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    筆者と共同研究者が行ってきたキャラクタリゼーションに関する研究をレビューした. ブロードラインNMRはポリエチレンの相関スペクトルの決定に用いた. 高分解能NMRをポリプロピレンに適用し, 二中心モデルのパラメーターを決定した. グリニヤール試薬で重合したポリメタクリル酸メチルの前末端基効果の決定についても述べた. 高分解能NMRは, また, アモルファス圧電性高分子の分子設計にも適用した. XPSから化学シフトと臨界表面張力の間に相関があることを見いだした. 最後に, SIMSを表面フッ素化ポリエチレンのdepth profilingに用いた.
  • 高原 淳, 是久 金造, 高橋 弘造, 梶山 千里
    1992 年 49 巻 4 号 p. 275-280
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子材料の水/固体界面の分析手段であるfreeze-etchXPS法の分析方法と応用例にっいて報告した. 水中ではポリスチレン (PS) /ポリエチレンオキシド (PEO) ポリマ-ブレンドとセグメント化ポリウレタン (SPU) の高い表面自由エネルギー成分が界面へ濃縮していることが確認された. また水中への浸漬に伴い, PS/PEOブレンドでは不可逆的な表面構造変化が観測された.
  • 朝倉 哲郎, 出村 誠, 中村 英二, 安藤 勲
    1992 年 49 巻 4 号 p. 281-287
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    Basic Pancreatic Trypsin Inhibitor (BPTI) のα-CHとNHプロトンの1H NMR化学シフトをX線回折より報告されている原子座標に基づいて, 理論的に計算した. α-CHプロトン化学シフトは, 環電流効果とカルボニル基の磁気異方性効果の和として, また, NHプロトン化学シフトは, これらの二つの効果に, さらに反磁性項を加えて評価した. BPTIのα-CH, ならびにNHプロトン化学シフトの計算値は, いずれも実測値をおおむね再現することができた. さらに, 化学シフト計算に基づいて, 溶液中では, Lys46のNHプロトンの関与した水素結合が存在することを指摘した. X線回折の結果では, この水素結合の存在は, 報告されていないが, 溶液のNMR研究では, 対照的にその存在が報告されてきた. このように, 化学シフト計算によってBPTI溶液と固体間の局所的構造の違いを明らかにすることができた.
  • 星村 義一, 山本 滋
    1992 年 49 巻 4 号 p. 289-296
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    電気絶縁材料として広く用いられている低密度ポリエチレンは, 誘電損が極めて小さく, 高周波用, 電力用ケーブルの被覆絶縁材料として広く用いられている. また, 医療用として人工血管, 人工鼓膜などの用途もあり, ポリエチレンの改質は, 重要な問題である. ポリエチレンの改質を行うため, 炭酸リチウム添加ポリエチレンをγ線照射し, フーリエ変換赤外吸収スペクトルにより調べた結果, OH結合, C=C結合の増加が明らかになった. この炭酸リチウムの添加のγ線照射 (106Gy) ポリエチレンは, X線回折による結晶化度の消滅温度が無添加, 石英添加よりも20℃も上昇し, 耐熱性であることを確認した. さらに, 炭酸リチウム添加ポリエチレンは, 走査型電子顕微鏡よりラメラの消滅が明らかにされ, 偏光顕微鏡によるmaltese crossの消滅と一致することを見いだした.
  • 写真法による構造解析との比較
    小幡 寛, 奥山 健二
    1992 年 49 巻 4 号 p. 297-303
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    イメージングプレート (IP) は位置分解能の良さ, 広い検出領域と均一な感度を持つ二次元検出器である. 本論文ではIPを繊維状高分子の結晶構造解析に用いるために, IPからの積分強度を得るためのDATA処理方法を検討し, 処理ソフトを開発した. 構造解析を行うに当たり強度測定は以下のように求めた. 回折点を扇子形の枠でくくりその内側部分の積分強度を求めた. また枠の中の四隅の最低値を用いてバックグランド強度を求め, 積分強度からこれを差引いて真の積分強度とした. 従来法での解析結果と比較すると, 露光時間が10分の1程度で済む上に, 積分強度が容易に測定可能となった. 従来法で構造解析が終了しているpoly (p-benzamide) をこのIP法で強度測定したところ, R因子が4.0%下り17.0%になった.
  • 呉 馳飛, 浅井 茂雄, 住田 雅夫, 宮坂 啓象
    1992 年 49 巻 4 号 p. 305-310
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    カーボンブラック (CB) を充てんしたポリスチレン (PS) と分子末端変性ポリスチレン (MPS) の電気伝導度のパーコレーションしきい値と溶融状態における電気伝導度の時間変化を測定し, それらの試料の破断面の走査型電子顕微鏡 (SEM) 写真の画像統計処理によるCBの分散性を解析して, CBの分散状態と凝集過程に及ぼす分子末端変性の効果を検討した. 変性PSでは, 一定の成形時間において電気伝導度が急激に上昇する臨界体積分率, 及び一定の体積分率における臨界成形時間はPSよりはるかに大きい. また, 一定のCB充てん量において変性PSの電気伝導度はPSより小さい. 破断面のSEM写真の画像統計処理の結果は, PSの分子末端変性がCBを均一分散させ, CBの凝集を抑制していることを示し, 上記の電気伝導の測定結果とよく対応している.
  • 三木 哲郎, 鈴岡 章黄, 香西 恵治
    1992 年 49 巻 4 号 p. 311-316
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    離型剤, 難燃剤を配合したガラス繊維強化ポリエステル樹脂の表面組成が, 成形条件によりどのように変化するかをESCAで明らかにし, 表面組成規制の機構について検討した. 溶融樹脂を空気, 水, 金型で冷却すると表面O/C (酸素/炭素) 比が, この順に増し, 離型剤の表面への偏析は, 空冷で著しく金型成形では抑制されている. 金型温度を高くするかまたは樹脂温度を低くすると, 表面O/C比は小さくなり, 離型剤の表面偏析が起こりやすくなる. 一方, 金型成形物を熱処理すると表面O/C比が減少し離型剤の表面偏析が進行した。これらの現象は, 表面エネルギーの大きい基板に接触して得た膜の界面側表面が, 表面エネルギーの大きい組成となることならびに界面由来の表面は, 熱処理により表面エネルギーが小さくなるという基板上溶媒キャスト膜で認めた現象とよく類似しており, 界面組成が界面エネルギーを小さくする界面偏析によることを明らかにした。
  • 荻野 賢司, 丸尾 享, 佐々木 稚人, 佐藤 寿弥
    1992 年 49 巻 4 号 p. 317-325
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    スチレンーメタクリル酸エステル共重合体の化学組成による分離を, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いて行った. 順相及び逆相HPLCを用いると, スチレンーメタクリル酸メチル共重合体は, 吸着機構によって分離した. 試料の分子量が減少するにつれて, 溶出体積もわずかに減少した. 分子量の効果は, 逆相HPLCの方が順相HPLCに比較して小さかった. ゲルの排除限界が小さくなると, 試料の分子量の効果が大きくなり分離能が悪くなった. モノマー間の極性の差が小さいスチレンーメタクリル酸ブチル共重合体を分離する場合, アクリルアミドカラムを用いた順相HPLCにおいては, 試料の溶出順序が, 良溶媒の種類に依存した. 溶出順序の違いは, ゲルと試料及び溶離液間に形成する水素結合によって説明できる. 逆相HPLCにおけるスチレンカラムの選択性は, ゲルと試料のフェニル基間の特異的な相互作用から生じたものと考えられる.
  • 久後 行平, 北浦 達朗, 西野 潤
    1992 年 49 巻 4 号 p. 327-334
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ビスフェノールAポリカーボネート (PC) /ポリエチレンテレフタレート (PET) ブレンド膜の表面構造を, フーリエ変換赤外全反射法 (Fr-IR-ATR) により解析した. その結果, PC/PETブレンド膜表面の化学組成はバルク組成とほぼ一致し, 表面偏析も認められなかった. ブレンド膜表面のC=O吸収バンド領域では, PC成分とPET成分に対応する二つのピーク以外に, 新しいピークやショルダーなどは見られず, 本実験のブレンド表面についてエステル交換反応は認められなかった. さらに, PCとPETのC=O吸収ピークはブレンド組成に依存してシフトして, 少し深い表面層ではPET組成の約20~50wt%で大きなシフトを示し, 海-島構造の逆転が推測された。またさらに, ブレンド表面からの深さに依存して, 相分離構造のドメインサイズが変化し, 表面近傍に比べて深い表面層ではより小さなドメインであることが示唆された.
  • 畑田 耕一, 寺脇 義男, 北山 辰樹
    1992 年 49 巻 4 号 p. 335-344
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子中に含まれる末端基や異種結合などの微量成分の同定と定量は高分子の物性や重合反応の理解にとって重要な意味を持つ. NMR用同軸二重試料管を用い, 信号強度の基準となる試料を封じた種々の濃度の基準内管を用意すると, 広範囲の濃度の試料成分の定量を高い精度で行えるので, 微量成分の定量にも有効な手法となる. 本研究では, 同軸二重試料管を用いてNMR用の重水素化溶媒中の残存水素, 水, 微量不純物の定量分析, ならびに, 二重試料管法を用いたNMR分析の定量限界について検討した. 定量限界は, 100MHz 1H NMRで成分量にして1.5ppm, 500MHz 1H NMRでは0.05ppmであり, その分析精度及び正確度は±10%以内であった. 市販の11種類の重水素化溶媒中の残存水素量は0.033~0.929w/v%ですべて保証値以内であった. H2Oの量は0.003~0.045w/v%とかなりばらつきがあり, その他の微量の不純物は総量で水素含有量として15.99~1742×10-5gH/lであった. これらの重水素化溶媒の中には故意に重水を混入させたもののあることがわかった. 例えば, 重アセトンの 1H NMRにはH2OとHDO, 2H NMRにはHDOとD2Oによるシグナルが観測された. さらに, ポリマーの強い吸収とともに存在する微量成分の定量性を調べてNMR装置のダイナミックレンジについて検討し, 末端基定量による分子量測定の精度についても調べた.
  • 小笠原 誠, 香西 恵治, 渡辺 博佐, 高田 忠彦, 堀井 文敬
    1992 年 49 巻 4 号 p. 345-351
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレート (PET) 繊維の結晶及び非晶相からなる相構造を固体高分解能13C NMR法により検討した. 13Cスピン-格子緩和時間 (T1) の測定により, T1=160~200sの結晶成分とT1=14~28s及び0.9~1.8sの非晶2成分とが存在することを明らかにした. これらのT1の違いを利用して測定したメチレン炭素の結晶成分の共鳴線は, ガウス曲線を用いて, シャープな成分とブロードな成分に分離されることが分かった. X線回折法による結晶の乱れについての解析に基づいてシャープな成分を規則性の高い結晶成分, ブロードな成分を結晶格子の乱れた成分に帰属した. 一方, 単一パルス系列により測定した全成分を反映したスペクトルのメチレン炭素の共鳴線から結晶成分の共鳴線を差し引くことにより非晶成分の共鳴線を求めた. また, 結晶成分と全体の共鳴線の積分強度の比較により, 結晶化度を決定した. 定長下, 150℃で熱処理したPET繊維の場合この方法で決定した結晶化度は0.39で, 密度法で求めた結晶化度とほぼ一致した.
  • 白神 昇, 田中 浩三, 美濃部 正夫
    1992 年 49 巻 4 号 p. 353-359
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリマーブレンド, ポリマーアロイなど多相系の高分子材料の組織構造観察法として, 低加速電圧 (5kV~30kV) の電界放射型走査透過像観察 (FE-STEM) 法の可能性について検討した. その結果, この方法が微小な密度差 (0.02g/cm3程度) や組成差を明暗のコントラスト差として可視化できる極めて有用な手法であることを見いだした. 当手法は, (1) 多相系高分子材料の組織構造が無染色で観察できる, (2) 試料の電子線損傷が従来のTEM法と比べて小さい, (3) 像の解釈が容易である, (4) 適用範囲が広い, (5) 操作やコントラストの調整が容易である, (6) 分析感度が高い, (6) 軽元素, 特に窒素の検出法としてオージェ電子分光法 (AES) の利用が可能である, など優れた特徴を有しており, 極めて実用的な手法であることが判明した.
  • 胡 紹華, 堀井 文敬, 小谷 壽, 生川 洋, 秋山 昭次, 梶谷 浩一
    1992 年 49 巻 4 号 p. 361-371
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ジメチルスルホキシド (DMSO) 溶液及び水溶液から紡糸した高強力PVA繊維 (以下それぞれDMSO系及び水系繊維と呼ぶ) について, 固体高分解能13C NMR法を主として用い, 結晶ならびに非晶領域の構造及び各領域の水素結合状態を検討した. DMSO系及び水系繊維ではそれぞれ最大16倍及び14倍の延伸が可能であり, 引張強度はそれぞれ20.6及び13.6g/d, 引張弾性率はそれぞれ444g/d及び361g/dに達した. いずれの系の繊維の結晶及び非晶成分においても, CH共鳴線は3本に分裂した. これらのスペクトルのlineshape解析を行い, 前報の方法に基づいて分子内水素結合の生成確率paを計算した. その結果, 両系繊維の非晶成分のpaは, 延伸倍率とともに著しく増大して, 1に近づくことが明らかになった. このことは, いずれの系の繊維の非晶領域においてもmシーケンスの分子間水素結合は延伸により切断され, 分子内水素結合が生成することを示す。これに対して, 結晶領域では両系繊維の構造に違いが認められた, すなわち, DMSO系繊維の結晶成分のpaは延伸に伴ってほとんど変化しないが, 水系繊維のそれは延伸倍率の増大とともにかなり増大した. この結果より, DMSO系では結晶領域の構造が延伸によってほとんど変化しないが, 水系繊維では延伸の影響が結晶領域にまで及ぶと推定した.
  • 林 隆史, 渡邊 昭彦, 田中 肇, 西 敏夫
    1992 年 49 巻 4 号 p. 373-382
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    代表的な3成分非相容性ポリマーアロイの一つであるナイロン6, 6/ポリフェニレンオキシド (PPO) /ジエン系ゴムについて, その電子顕微鏡像を我々の開発したディジタル画像解析法を用いて, モルフォロジーを定量化した. 定量化したモルフォロジーとアイゾット衝撃強度, 引張強度, 曲げ強度, 熱変形温度などの諸物性との相関を検討した. その結果, いくつかの興味深い相関関係が得られた.
  • 甲本 忠史, 神代 恭, 中村 好雄, 渡辺 由佳, 大島 隆一
    1992 年 49 巻 4 号 p. 383-387
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子材料表面の電子顕微鏡観察に用いられている試料調製法であるカーボンレプリカ法によって材料の最表面層がカーボン膜に付着して剥離することを利用し, 種々の高分子表面のカーボンレプリカ膜について顕微FTIR測定を行ったところ, 本法が表面の新しい解析法として有効であることが明らかになった.
  • 岡 幸広, 高橋 彰
    1992 年 49 巻 4 号 p. 389-391
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アミロース分子をジメチルスルホキシド1: 水99混合溶媒に溶解し, 瞬間凍結乾燥法でグラファイト基板に吸着させ, STM観察を行った. 孤立したアミロース分子は芋虫状の形態を示し, 分子量16000のアミロースに対し, 分子長L=11±2nm, 単位長さ当たりの分子量ML=1400±300dalton/nmが得られ, この値は透過電顕法及びX線小角散乱法の結果と一致した. したがってアミロース分子がグラファイト上で擬ヘリックス構造をとっていると推定された.
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