高分子論文集
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73 巻, 3 号
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特集論文=ファイバーマテリアルI
総合論文
  • 檜垣 勇次, 矢野 貴大, 陶 迪, 椛山 博文, 高原 淳
    2016 年 73 巻 3 号 p. 225-232
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
    高分子鎖にSI-ATRP開始骨格を導入したポリメチルメタクリレート共重合体の電界紡糸繊維,アミノリシスとシランカップリング剤処理によりSI-ATRP開始骨格を導入した半結晶性芳香族ポリエステルであるポリブチレンテレフタレート(PBT)の電界紡糸繊維を,ポリスルホベタインブラシやフッ素系ポリマーブラシのグラフト化により改質し,濡れ性,水/油分離特性を評価した.フッ素系ポリマーブラシを付与することで,微細径繊維不織布はCassie-Baxter状態となり超撥水性を示した.一方,ポリスルホベタインブラシを付与することで,微細径繊維不織布は超親水化し,湿潤状態で油分の透過を抑制し,タンパク質の付着を抑制する効果を発現した.PBT電界紡糸繊維では,融点付近まで表面改質効果が保持され,優れた耐熱性を示した.
原著論文
  • 脇坂 港, 王 奕寒
    2016 年 73 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/04/06
    ジャーナル フリー
    ナノファイバーは,その優れた特性から幅広い分野への応用が期待され,多様な原材料や創製方法に関する研究開発が盛んである.原材料には,生分解性や生体適合性の観点から,天然多糖類が注目されている.新たなナノファイバー創製方法として,希薄なポリマー水溶液を冷却基板上に噴霧し,液体窒素を用いて急速凍結後に凍結乾燥させる方法により,0.4 wt%のキトサン水溶液からナノファイバーの形成をこれまでに確認している.本研究では,キトサン以外の水溶性多糖類(アルギン酸,β1,3-グルカン,デンプン,ヒアルロン酸)に対して,同手法を適用した.凍結乾燥体の構造は多糖類の種類により異なっていた.アルギン酸,β1,3-グルカン,ヒアルロン酸水溶液の濃度が0.4 wt%以下の希薄な場合には,ある程度向きの揃ったナノファイバーが得られた.デンプンの場合には,ナノファイバーが得られるものの配向性が失われ,凝集が観察された.
  • 附木 貴行, 山田 佑介, 北村 基, 吉村 治, 前田 理行, 西田 治男, 鵜澤 潔
    2016 年 73 巻 3 号 p. 238-243
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/04/26
    ジャーナル フリー
    その剛直な構造から,高強度,高弾性および低熱膨張性という非常に優れた物性を有した竹リグノセルロース短繊維(sLCBF)をポリ乳酸/ポリプロピレンアロイに混合し,バイオマス素材の活用による力学物性の向上について検討した.さらに,安定した繊維形状と超高強度のリサイクル炭素繊維(RCF)を補強材としたハイブリット複合体の開発を検討した.RCF品を5 wt%添加し,マトリックス樹脂との相溶性改善に無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)を用いて,流動特性,力学物性および帯電防止機能について測定を行った.その結果,MAPPの添加はRCF上での樹脂の界面せん断強度が顕著に増大し,ハイブリッド複合体の力学物性は,マトリックス樹脂に比べ,引張強度で168.7%まで向上した.さらに,帯電防止機能もsLCBFとRCFの配合により著しく向上した.結果として,sLCBFとRCFのハイブリッド繊維強化による相乗効果が示唆され強化材としての有用性が示された.
  • 山口 綾香, 橋本 保, 垣地 良紀, 漆﨑 美智遠, 阪口 壽一
    2016 年 73 巻 3 号 p. 244-251
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/04/26
    ジャーナル フリー
    酸の作用によって分解可能な2種類のアセタール結合含有ノボラック型エポキシ樹脂(CN-CHDMVGおよびCN-VBGE)と炭素繊維との接着性を評価するため,界面せん断強度をマイクロドロップレット法により測定した.CN-CHDMVGおよびCN-VBGEの界面せん断強度は,アセタール結合を含有していない従来の汎用的なフェノールノボラック型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂よりも高い値を示した.また,それぞれの樹脂を用いた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を作製し,塩化水素を含む酸性の条件下にてそれらの分解反応試験を行った.アセタール結合含有エポキシ樹脂を用いて作製したCFRPは,アセタール結合の選択的な切断により樹脂が分解し,炭素繊維を容易に回収することができた.また,塩化水素の濃度および樹脂の構造によっても分解反応の速度が異なることがわかった.回収した炭素繊維の表面をSEMにて観測した結果,表面上にエポキシ樹脂の残渣は見られず,また損傷のない状態で回収することができた.
  • 巽 大輔, 常樂寺 宏行, 青野 初, 松本 孝芳
    2016 年 73 巻 3 号 p. 252-257
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/05/02
    ジャーナル フリー
    セルロースは汎用の溶媒には溶解しない.塩化リチウムを含んだアミド系溶媒はセルロースを良好に溶解するものの,その溶解速度は非常に遅い.この点が,セルロースの分子特性についての研究,さらには種々の応用研究を妨げる要因となっている.そこで本研究では,セルロースの溶解促進法の開発を目的として種々の前処理とその過程におけるセルロースの分析を行った.その結果,エチレンジアミンによるセルロースの膨潤と,それに続くメタノールでの溶媒置換がセルロースの溶解促進には有効であることがわかった.この処理により,セルロースの結晶はセルロースIIIに転移していた.凍結乾燥処理もまた有効であった.これらの処理は,セルロースの分子量を低下させないことも明らかとなった.このような処理を経て得られたセルロース溶液を用いて希薄溶液物性および粘弾性特性を測定し,セルロースの分子特性の評価を試みた.
ノート
  • 道信 剛志, 村田 季美枝, 松本 英俊
    2016 年 73 巻 3 号 p. 258-261
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/02/09
    ジャーナル フリー
    Soluble, high molecular weight linear fullerene polymers were synthesized by the Cu(I)-catalyzed azide-alkyne cycloaddition polymerization between dialkyne-substituted C60 and diazide-substituted 1,3,5-tridodecyloxybenzene monomers. It was found that the alkylene spacer length significantly affects the solubility of the resulting polymers. After the optimization of the monomer structures as well as the purification by reprecipitation, soluble fullerene polymers with the number-average molecular weight (Mn) and polydispersity index (Mw/Mn) of 130,000 and 2.42, respectively, were produced. The fullerene polymers were soluble in common organic solvents, such as THF, CH2Cl2, CHCl3, and toluene. We found that fullerene polymer microfibers could be obtained by electrospinning of a CHCl3 solution at a certain polymer concentration.
一般投稿論文
総説
  • 宮元 展義, 山本 伸也
    2016 年 73 巻 3 号 p. 262-280
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/04/14
    ジャーナル フリー
    無機ナノシートは,無機層状結晶を剥離することで得られる極めて異方性比の大きいシート状ナノ結晶であり,二次元の無機高分子とも見なせる.溶媒に分散したナノシートは,ある条件下で配向して液晶相を形成する.筆者らはこれを「無機ナノシート液晶」と呼んでいる.このような異方性比の大きな二次元物体が形成する液晶は例が少なく,ソフトマターや複雑液体のモデル系として重要である.一方,無機ナノシート液晶は,半導体性や光触媒能など無機物特有のさまざまな機能を有するため,従来の有機分子に基づく液晶とは異なった幅広い応用が期待される.そこで本報では,無機ナノシート液晶について,基礎から応用まで概説する.まず,種々の無機ナノシート液晶の相転移挙動や構造などの基本的な検討を紹介した後,外場による巨視的配向制御や,ナノシート液晶の構造を固定化した複合ゲルなどの応用研究を紹介し,関連する理論的背景についても概説する.
  • 新田 晃平
    2016 年 73 巻 3 号 p. 281-293
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/04/01
    ジャーナル フリー
    高分子材料の破壊挙動が複雑な点は,炭素原子間の共有結合と二次的な分子間相互作用が力学応答を支配していることにある.高分子の破壊理論は主鎖の破断強度が実測の破壊強度値に比べて桁違いに高いことをどのように理解するのかということで発展してきた.ガラス状高分子では,内在する固有のき裂やひび割れが起点となって延伸方向に垂直に成長する巨視的クラックやき裂が起こる.結晶性高分子では,破壊の起点の発現は分子や原子レベルの量子論的な分子間相互作用による鎖間の解離によって起こる.いずれにしても,その微視的起点から巨視的なき裂への成長については速度論的さらには確率論的に解析され,最終的に連続体力学による応力とひずみに基づくエネルギー論的概念で解析できる.
原著論文
  • 高木 珠吏, 池田 卓也, 足立 馨, 塚原 安久
    2016 年 73 巻 3 号 p. 294-301
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/04/22
    ジャーナル フリー
    末端チオールポリスチレン(PSt-SH)の有機薄膜により銅表面の被覆を行い,その酸化耐性への影響について検討を行った.前報ではXPSと接触電気抵抗の評価により酸化耐性について検討したが,今回はCyclic voltammetry (CV)測定により酸化還元挙動の解析を試みた.CV測定で得られた銅の酸化還元曲線におけるアノードとカソード領域のピーク面積の積分値より酸化と還元にともなう電荷量を求め,これらより電極における酸化と大気雰囲気下における酸化の進行を評価した.その結果,高分子のPSt-SHで被覆した銅は,低分子のアルカンチオールの場合に比べて電極における酸化はやや大きいものの,大気中高温下での酸化の進行は極めて小さいまま保持され,150°Cに加熱しても酸化の進行がほとんど認められず,CV測定からPSt-SHの薄膜による被覆は銅の酸化耐性の付与に有用であることが示された.
  • 東 信夫, 阪口 壽一, 橋本 保
    2016 年 73 巻 3 号 p. 302-309
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/04/26
    ジャーナル フリー
    電子供与基および電子求引基を側鎖に有するポリ(ジフェニルアセチレン)を合成し,その発光特性について明らかにした.電子供与基としてオクチロキシ基とトリメチルシリル基を有するジフェニルアセチレンモノマーを合成し,TaCl5/n-Bu4Sn触媒を用いてメタセシス重合した.得られたポリマーに対してニトロ化,スルホン化,およびカップリング反応を行い,電子求引基を導入した新規ポリ(ジフェニルアセチレン)を合成した.オクチロキシ基を有するポリ(ジフェニルアセチレン)の側鎖ベンゼン環へのニトロ化とスルホン化によって,それぞれ繰返し単位あたり約0.40と1.0の置換度をもつポリマーを得ることができた.ヨードベンゼン部位を有するポリマーに対してp-エチニルベンゾニトリルを試薬として薗頭カップリングを行い,反応度が約0.75のシアノ基を有するポリ(ジフェニルアセチレン)を得た.電子供与基のみを有するポリマー(2a)は強い発光を示したが,ニトロ化ポリマー(2aN)およびスルホン化ポリマー(2aS)は発光を示さなかった.トリメチルシリル基を有するポリマー(2b)に電子求引基を導入しても,発光特性に変化は見られなかった.一方,より強い電子供与性を示すオクチロキシ基を有するポリマー(2c)に電子求引基を導入すると蛍光極大波長が大きくレッドシフトした.このように電子供与基と電子求引基をポリ(ジフェニルアセチレン)側鎖に導入することでより長波長領域での発光を可能にした.
  • 橋本 保, 大橋 大地, 飯沼 篤, 徳永 理子, 漆﨑 美智遠, 阪口 壽一
    2016 年 73 巻 3 号 p. 310-318
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/04/11
    ジャーナル フリー
    種々の官能基を有するビニルエーテルモノマー[n-ブチルビニルエーテル(NBVE),2-メトキシエチルビニルエーテル(MOVE),t-ブチルジメチルシリロキシエチルビニルエーテル(TBSiEVE),トリシクロデカンビニルエーテル(TCDVE)]を,2-アセトキシエチルビニルエーテルの塩化水素付加体(AcEVE-HCl)を開始剤系として用い,-30°Cでリビングカチオン重合した.この重合系に架橋剤として1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(CHDVE)を加え反応させ,コア架橋型星型ポリマーを合成した.その後,開始末端部分のエステル基をヒドロキシ基に変換し,種々の多官能性星型ポリビニルエーテルポリオール(star-PNBVE-OH, star-PMOVE-OH,star-PTBSiEVE-OH,star-PTCDVE-OH)を合成した.さらに,得られた各星型ポリオールをジイソシアナートと反応させ,フィルム状に成形された各架橋ポリウレタン(star-PNBVE-PU,star-PMOVE-PU,star-PTBSiEVE-PU,star-PTCDVE-PU)を合成した.柔軟な側鎖置換基を有するstar-PNBVE-PU,star-PMOVE-PU,star-PTBSiEVE-PUのガラス転移温度(Tg)は-37°Cから-11°Cであり,剛直な側鎖置換基を有するstar-PTCDVE-PUのTgは95°Cであった.また,親水性官能基を有するstar-PMOVE-OH水溶液やstar-PMOVE-PUとstar-PTBSiEVE-PUの脱保護により得られたstar-PHEVE-PUは温度応答性を示した.
  • 今本 翔也, 香西 博明
    2016 年 73 巻 3 号 p. 319-325
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/05/02
    ジャーナル フリー
    本報では,溶解性および発光性に優れたポリオキサジアゾール類の合成を目的として,側鎖にフェノチアジンやアルキル基を有するPODの合成を行った.その結果,ポリマーの重量平均分子量(Mw)約13000~175000であり,ポリマーはクロロホルムやTHFに溶解した.TG測定の結果,ポリマーの10%熱重量損失温度は300°C以上の値を示し,高い熱安定性を示した.蛍光スペクトル測定から,THF溶液では410 nm,420 nm,460 nmにピークを確認し,青色の発光が見られた.また,フィルムでは410 nm,430 nm,540 nmにピークを示し,黄色の発光が観察できた.いくつかのポリマーは優れた製膜性を有しており,引張試験からは柔らかいフィルムであることがわかった.
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