立体規則性のポリマーであるシンジオタクチックポリスチレン(sPS)は,適当な溶媒中で熱可逆性ゲルを形成する.本研究では,sPS 物理ゲルの構造と物性に及ぼす溶媒効果を詳細に検討するために,sPS に対して平衡膨潤度
qmax の値が大きく異なるような 3 種類の溶媒(トルエン,シクロヘキサノン,クロロホルムで,この順に
qmax の値が大きくなる;つまり,この順により良溶媒となる)を選び出し,これらの溶媒中で sPS 鎖がそれぞれゲル化していく過程を時分割 FT IR/ATR 法による吸収スペクトルで追跡した.また,sPS 物理ゲルの架橋点の大きさ
S とヤング率
E を推算し,
qmax との関連性について検討した.
qmax の異なるいずれの溶媒中でも,sPS 鎖はランダムコイルから T
2G
2 型のコンホメーションを形成したが,
qmax の値が小さくなるほど(すなわち,より貧溶媒になるほど),その形成は早く起こった.しかも,コンホメーションの形成が早く起こるような溶媒環境下では,ゲルの高次構造の物理量である架橋点は大きく成長し,ヤング率も大きくなる傾向を示した.その際,ゲルのヤング率は架橋点の増大につれ,ほぼ直線的に増大した.
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