高分子論文集
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63 巻, 12 号
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一般論文
  • 棚橋 満, 高坂 典晃, 森 真生, 畑尾 卓也, 勝村 明文, 武田 邦彦
    2006 年 63 巻 12 号 p. 767-773
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    ビスフェノールAタイプのポリカーボネート (BPA-PC) を使用して熱サイクル試験を行った. 熱サイクル試験はBPA-PCと熱線膨張率 (CTE) の異なる銅板で試料を拘束して233~363Kおよび218~398Kの温度範囲で繰返し負荷をかけ最大5000サイクルまでの試験を行った. 拘束によってBPA-PC試料内部に発生するひずみで生じる破面の形態の観測を行った. その結果, サイクル数が増加するに従って破面に規則的で明瞭な縞模様が観測された. 縞模様は幅が広いものと狭いものの2種類存在し, 複雑な形態が観測された. また, 縞模様の数と形態は, 熱サイクル試験の温度変化, 幅により影響を受けており, 応力の大きい条件のき裂進展幅は約5倍であった. 熱サイクルの途中で高分子鎖の緩和は疲労現象に主たる役割を果たしていないと考えられる.
  • 栗間 昭宏, 中嶋 健, 西 敏夫
    2006 年 63 巻 12 号 p. 774-780
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    結晶性/結晶性ポリマーブレンドにおける相互侵入球晶 (interpenetrated spherulites : IPS) は異種の高分子どうしの球晶が衝突しても界面を形成せず, 一方が他方に侵入して成長を続けるという興味深いものである. poly(butylene succinate)/poly(ethylene oxide) (PBSU/PEO) は高融点成分PBSUが先に結晶化し, その後低融点成分PEOがPBSU球晶内に相互侵入しながら結晶化することが偏光顕微鏡の観察によりわかっている. このような相互侵入球晶の結晶化機構をより深く理解するために光学像と表面凹凸像を同時に得られる利点をもつ偏光近接場光学顕微鏡 (polarized scanning near-field optical microscopy : polarized SNOM) を使い, その結晶化をその場観察した. その結果, PBSUにPEOが侵入することで表面の消光リングの凹凸構造が大きくなり, それによってレターデーションが大きくなることが確かめられた.
  • 丹羽 敏彦, 加藤 明義, 横井 秀典, 田中 正剛, 木下 隆利
    2006 年 63 巻 12 号 p. 781-790
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    棒状のポリペプチド分子を用い, 空気/水界面で自己組織的に形成する分子膜のナノ構造について検討した. 用いたポリペプチドは, 両端に疎水性ヘリックス, 中央に親水性ヘリックスを配したトリブロック型両親媒性分子である. CD測定から, 同ポリペプチドの親水性部位はイオン化に伴いヘリックス⇔コイル転移を示し, pHに応答する分子素子であることが示唆された. AFM観察から, 空気/水界面に形成した単分子膜は, ナノ相分離構造に基づいて二次元規則配列し, 縞状パターン構造を形成することが示唆された. また同ナノパターンは水相pHに応じて消失・再現し, 分子のpH依存性が表面ナノ構造に反映されることが示された. さらに疎水性アルキル鎖で被覆修飾された鉄ナノ粒子の溶液を同膜上に滴下すると, 疎水性相互作用によりナノパターンの疎水性レーン上に選択吸着し, 同ナノ粒子が一定間隔をおいて連結集合していることが示された. 以上により, 両親媒性トリブロック型ポリペプチドの縞状パターンから, pH制御型のナノテンプレートとしての見込みが開かれた.
  • 上野 智永, 後藤 宏太, 石川 朝之, 武田 邦彦
    2006 年 63 巻 12 号 p. 791-798
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    ジフェニルカーボネート (DPC) をモデル物質に用いてポリカーボネート (PC) の熱分解生成物の定量的解析を行った. 従来からPCの熱分解生成物の解析と分解経路については研究が行われているが, 一酸化炭素 (CO), 二酸化炭素 (CD) などの低沸点熱分解生成物については定量精度の問題などで明確ではなかった. しかし, COの生成は熱分解時の有毒ガス発生, CDの生成については燃焼性制御の場合の炭化層形成を考慮するのに重要な因子である. そこで本報では熱分解生成物の定量精度の向上と検定を目的として, DPCをモデル物質に用いて未分離ピークをマススペクトルで分離定量する方法と熱分解生成物の元素および構造比制約を考案し, それをPCの熱分解とその分解生成物の定量的解析に適用した. その結果, メタン, 水, CO, それにCDの定量精度が向上し, 元素および構造比制約で検定すると熱分解生成物の定量精度が高いことが明らかになった.
  • 三輪 優子, 石田 宏之, 管野 敏之, 柳瀬 博雅, 重原 淳孝
    2006 年 63 巻 12 号 p. 799-804
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    複数個のアリル基をもつ反応性難燃剤とナイロン-6,6を混練して作製したコンポジットを成形加工した後γ線照射すると, 耐熱性や機械特性が向上する. これは難燃剤とナイロン-6,6との間に形成された架橋構造によるものと考えられる. 二種類の反応性難燃剤を用いて作製したコンポジットについて, 13C固体NMRスペクトルや緩和時間測定結果から, 形成された架橋の程度や架橋構造を考察した. その結果, 架橋反応は, γ線照射により生じた難燃剤のアリルラジカルとナイロン-6,6のNH隣接メチレン位ラジカルとのカップリングにより進行することが推定された. また, 難燃剤とナイロン-6,6の反応率や架橋度は難燃剤の構造に影響されることが示され, 自由体積の小さい構造をもつ反応性難燃剤から作製したコンポジットの架橋度の方が高いことが示された.
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