ポリスチレン (PS) およびスチレン・アクリロニトリルランダム共重合体 (SAN) をグラフト鎖とし, 主鎖に無水マレイン酸 (MA) を含むグラフトコポリマーによるナイロン (PA6) /ポリカーボネート (PC) ブレンドの相容化を検討した. 溶融混練により作製したブレンド試料の, PA6/PC組成およびグラフト鎖の違いにより得られる多相構造パターン変化を透過型電子顕微鏡 (TEM) により解析し, グラフト鎖とPCとの相互作用に関して考察した. これらのポリマーは, PA6, PCどちらにも非相溶であるが, すべてのPA6/PC組成において, ブレンド系の分散性を向上させる効果があった. 特に, SANをグラフト鎖とする場合, PA6リッチブレンドにおいては, PCドメインの分散性を著しく向上させ, また, PCリッチブレンドにおいては, PA6ドメイン内部にPCドメインを取り込む二重構造, いわゆる“サラミ構造”が得られた. さらに, PA6/PC50/50の組成においては, PA6, PC両相が連続相を形成し, その上に, PA6相内部にPCドメインを取り込む二重構造が得られた. このような相容化の働きは, 溶融混練時におけるPA6とグラフトコポリマー間での化学反応により, グラフトコポリマーがPA6/PC界面に移行し, PCとコポリマーとの良好な相互作用によってもたらされると考えられる.
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