高分子論文集
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56 巻, 10 号
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  • 清水 敏美, 八瀬 清志, 大西 里実, 増田 光俊, 小木曽 真樹, 浅川 真澄, 浅井 道彦, 中澤 郁郎, 岩浦 里愛
    1999 年 56 巻 10 号 p. 575-582
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子の両端に糖, オリゴペプチド, 核酸塩基部位をもつ双頭型合成脂質は水媒体中で自己集積により大きい軸比をもつナノスケールおよびメゾスケール構造体 (HARM) を形成する. それらHARMの微細形態と階層構造をできるだけ「生」状態に近い条件下で観察することを目的として, 共焦点レーザースキャン顕微鏡 (LSM), エネルギーフィルター透過型電子顕微鏡 (EF-TEM), クライオ電子顕微鏡 (cryo-TEM), 原子間力顕微鏡 (AFM), 暗視野光学顕微鏡 (DFLM) を応用した. 特に従来法による画像と新しい手法により得た画像を比較しながら, 最近の顕微鏡手法の特長を紹介する. 具体的には, (1) ねじれた繊維状HARMの三次元断面像 (LSM), (2) 幅が1μm以下の繊維状HARMの水中での直接観察 (LSM), (3) 染色操作を用いない繊維状HARMの電子顕微鏡観察 (EF-TEM), (4) 繊維状HARM表面の束縛水 (cryo-TEM), (5) 有機マイクロチューブの膜厚評価 (AFM), (6) 二重らせんロープ構造の光学顕微鏡観察 (DFLM) について述べる.
  • 大川 浩作, 建畠 秀樹, 山本 浩之
    1999 年 56 巻 10 号 p. 583-596
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本報では, 天然高分子およびその関連化合物からヒドロゲル, 繊維, およびカプセルを作製し, それらの形状と生分解性について, 写真を多用しながら報告する. はじあに, ヒドロゲルについて, ゲル形成に不可欠な高分子の架橋法を, (i) 化学的架橋法, (ii) 光架橋法, および (iii) 酵素架橋法, の三つの手法に分類して解説した. (i) では, ポリアミノ酸キトサン, および化学修飾リグニンのグルタルアルデヒドを用いた化学架橋によるヒドロゲル化, (ii) では光二量化能をもつクマリンを側鎖に有するポリリシンの光ヒドロゲル化, また, (iii) では, 酸化酵素を用いたポリアミノ酸の架橋不溶化反応について報告した. 次に, ポリカチオンとポリアニオンの溶液界面におけるポリイオンコンプレックス (PIC) 形成反応によりカプセルと繊維を作製し, 紡糸したキトサンージェランガム (多糖-多糖) およびポリリシンージェランガム (ポリアミノ酸-多糖) 繊維の形状と性質について述べた. さらに, タンパク質分解酵素と土壌糸状菌を用いた種々の天然高分子ヒドロゲルおよび繊維の生分解実験の結果を紹介し, 天然高分子化合物から作られる種々の形態が良好な生分解性をもつことを示した.
  • 川口 正美
    1999 年 56 巻 10 号 p. 597-608
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    散逸構造の一つであるビスコスフィンガリングによる成長パターンを, ヒドロキシプロピルメチルセルロース (HPMC) 水溶液, HPMC水溶液-シリカ懸濁液, およびHPMC水溶液-シリコーンオイルエマルションについて, 放射状および矩形ヘレ・ショウセルを用いて検討した. 本報ではこれらの実験結果を中心に高分子系のビスコスフィンガリングについてまとめた. 観察されるフィンガーパターンは, 高分子の濃度と分子量に依存する. 高分子鎖どうしの絡み合いが起こる濃度以上になると, フィンガーパターンは先端分岐からサイド分岐へと変化する. 高い分子量の場合, フィンガーの成長に伴うせん断力によって絡み合いが徐々に解けるために, フィンガーパターンは多様に変化する. 懸濁液やエマルションの分散系に空気を注入したフィンガーパターンは, 分散媒のものに似ている. エマルションにその分散媒に溶解する低粘性流体を低速で注入すると, 低粘性流体と分散媒との界面張力の違いによってトゲのあるパターンやひび割れパターンが観察された. これは, 高せん断力による分散系の会合構造の崩壊を伴うフィンガリングパターンと似ている. 高分子系のフィンガーの成長速度は, ニュートン流体のビスコスフィンガリングで成立するダルシー則を満足しないことがわかった.
  • 國武 雅司, 大平 昭博, 上村 忍, 坂田 眞砂代, 平山 忠一
    1999 年 56 巻 10 号 p. 609-616
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    電位制御吸着によるAu (111) 面へのシクロデキストリン類のナノチューブ形成と, 気-液界面から金属表面 (Au (111) 面) へ移送することにより作製したフラーレン類のエピタキシャル薄膜形成に関する研究を通して, 吸着を利用した二次元自己組織化 (Adsorption-induced self-organization) 法が二次元分子配列制御の手法としてたいへん有効であることが明らかになった. シクロデキストリン類のAu (111) 表面への吸着挙動では, 電極電位を負に分極させ, 適当に金属表面への分子の吸着を抑えることで, シクロデキストリン自身の自己組織化を誘起することができることを明らかにした. このような条件下で, シクロデキストリンはポリロタキサン中のシクロデキストリンの配列と類似のナノチューブ構造を, ポリマーの存在なしに自発的に形成する. さらに, フラーレンのような難水溶性分子であっても, 気-液界面のLangmuir膜を水平付着法でAu (111) 表面へ移し取ると, 真空蒸着法で作製した薄膜と同じエピタキシャル薄膜を形成できることが明らかになった. この系においても, 気-液界面から固-液界面に移送後, 電位操作で吸脱着を制御できたことから, 難水溶性有機分子であっても気-液界面から固-液界面に移送することで, 自己組織化を誘起させることが可能であることがわかる.
  • 伊藤 嘉浩
    1999 年 56 巻 10 号 p. 617-625
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    光リソグラフィーで刺激応答性の高分子ゲルを微細加工し, 刺激に応答したパターン変化を光学顕微鏡や原子間力顕微鏡 (AFM) で観察した. また, 刺激応答性高分子を多孔性膜表面に自己集積化し, 刺激に応答した物質輸送の制御を行うとともに, この孔近傍のAFM観察により孔径が変化するのを可視化することができた.
  • 鈴木 淳史
    1999 年 56 巻 10 号 p. 626-634
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子ゲルは, 液体を含んで膨潤した希薄で複雑な網目構造をもつ固体であり, それを構成する分子間に働く複雑な相互作用に起因してユニークな物性を示す. ゲルの体積相転移の研究から, ゲルのもつ多様な性質の基本原理が解き明かされようとしている. 本総説では, 相転移に伴うゲル表面のサブミリメートルサイズの巨視的パターン, メゾスコピックサイズの微視的表面構造とその変化, 不均一なバルクの網目構造と相転移について調べ, ユニークな構造と機能とのかかわりについて考察する.
  • Jung Bum AN, 斎藤 拓, 井上 隆, 扇澤 敏明, Bong Sup KIM
    1999 年 56 巻 10 号 p. 635-638
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    鋭敏色板を挿入しないで高分子球晶を偏光顕微鏡観察すると, 白黒のコントラストでマルテーゼクロスが見られるのが一般的である. これに対して, ポリトリメチルテレフタレート (PTT) 球晶は色板なしでも緑色や青色などの美しい干渉色からなる偏光顕微鏡像を与えることを見いだした. Michel-Levyによる干渉色図を用いて複屈折△n (球晶の半径方向の屈折率と接線方向のそれとの差) を評価したところ, それが約0.065と極めて大きいための発色であることがわかった. さらに, 球晶の中心から半径方向への干渉色の変化が見いだされた. これは, 球晶内の△nが一定ではなく, 中心から離れるに伴い増大するためであり, 球晶が秩序性を増大しながら成長したことを示唆していると考えられる. これまでに例のないこのような鮮やかで美しい偏光顕微鏡像を与えるPTTは球晶組織形成機構の解明という未解決問題を研究する上での有用なモデル試料として注目される.
  • 高橋 利禎, 佐々木 隆, 中野 柳子
    1999 年 56 巻 10 号 p. 639-644
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    線状および星型ポリエチレングリコール (PEG) 球晶の表面層における周期的構造の発現機構を偏光顕微鏡, 落射照明式光学顕微鏡, 透過電子顕微鏡を用いて観察した. 落射照明式光学顕微鏡を用いることにより, 溶融状態よりスライドガラスとカバーガラスの制約された空間内で結晶化させたPEG球晶の表面層に, 周期的なまたはゆらぎのある周期的構造が形成されることが見いだされた. この周期的構造は光の干渉効果による色彩の周期的変化により特徴づけられる. 周期的構造は周期的な核形成と成長, それに引き続いて起こる一時的な成長の停止により起こることが示唆された. 一時的な成長の停止はカバーガラス付近に局所的に蓄積される発熱に帰せられる. 自由表面をもつ溶融物よりPEGを結晶化し場合には, 球晶の表面層に周期的構造は形成されなかった.
  • 鈴木 次郎, 関 基弘, 松下 裕秀
    1999 年 56 巻 10 号 p. 645-650
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (イソプレン-スチレン-2-ビニルピリジン) 三元ブロック共重合体の平衡状態の共連続構造がSchoenによって発見されたジャイロイドと類似の構造であることを透過型電子顕微鏡と小角X線散乱で実験的に証明した. 試料は全分子量6.4×104, 三成分の体積分率はポリイソプレン, ポリスチレン, 2-ビニルピリジンがそれぞれ0.22, 0.59, 0.19であり, 両端の成分の比率がほぼ等しいために超格子構造が形成される.
  • 堀内 伸, Ricardo RODORIGUES
    1999 年 56 巻 10 号 p. 651-659
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン (PS) およびスチレン・アクリロニトリルランダム共重合体 (SAN) をグラフト鎖とし, 主鎖に無水マレイン酸 (MA) を含むグラフトコポリマーによるナイロン (PA6) /ポリカーボネート (PC) ブレンドの相容化を検討した. 溶融混練により作製したブレンド試料の, PA6/PC組成およびグラフト鎖の違いにより得られる多相構造パターン変化を透過型電子顕微鏡 (TEM) により解析し, グラフト鎖とPCとの相互作用に関して考察した. これらのポリマーは, PA6, PCどちらにも非相溶であるが, すべてのPA6/PC組成において, ブレンド系の分散性を向上させる効果があった. 特に, SANをグラフト鎖とする場合, PA6リッチブレンドにおいては, PCドメインの分散性を著しく向上させ, また, PCリッチブレンドにおいては, PA6ドメイン内部にPCドメインを取り込む二重構造, いわゆる“サラミ構造”が得られた. さらに, PA6/PC50/50の組成においては, PA6, PC両相が連続相を形成し, その上に, PA6相内部にPCドメインを取り込む二重構造が得られた. このような相容化の働きは, 溶融混練時におけるPA6とグラフトコポリマー間での化学反応により, グラフトコポリマーがPA6/PC界面に移行し, PCとコポリマーとの良好な相互作用によってもたらされると考えられる.
  • 山口 浩靖, 岡 富久代, 蒲池 幹治, 原田 明
    1999 年 56 巻 10 号 p. 660-666
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポルフィリン (テトラカルボキシフェニルポルフィリン, TCPP) 二量体とポルフィリンに対する抗体との高次の錯体構造を原子間力顕微鏡 (AFM) により直接観察した. 抗体あるいは抗体-ポルフィリン錯体を緩衝液で希釈し, グラファイト基板上に滴下, 乾燥することにより大気中室温で分子レベルの構造観察に成功した. ポルフィリンダイマー存在下において抗ポルフィリン抗体がポルフィリンと非共有結合を介して連結し, 直鎖状あるいは環状の超分子構造を形成することが明らかになった.
  • 堂寺 知成, 波田野 彰, 源馬 徹
    1999 年 56 巻 10 号 p. 667-673
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    格子上の高分子シミュレーション手法である対角線法の特徴と対角線法で複雑なブロック共重合体ミクロ相分離構造の形成に成功した理由を議論した. また, 実験的には未発見の構造である対称ABCD星形ブロック共重合体の作る胞晶 (Cell Crystal) 構造と非対称ABC星形ブロック共重合体作るシリンダー構造のコンピューター画像を示し, それらの幾何学的特徴を述べた. ABCトリブロック共重合体については, 4種類 (Gyroid, Double-diamond, ラメラ, シリンダー) の構造が得られた.
  • 森田 裕史, 川勝 年洋, 土井 正男
    1999 年 56 巻 10 号 p. 674-683
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリマーブレンド薄膜について, 動的平均場法を用いてシミュレーションを行った. 本研究では, 気相との自由界面および固体壁の効果を取り入れ, 両界面を含めた膜の構造について理論的な計算を行った. 動的シミュレーションから, 初期過程においてすでに, 自由界面近傍, 固体壁近傍, 内部に存在するバルクの三つの相分離が起こっていることが示された. 自由界面および固体壁近傍では, ラメラ状の相分離を示し, 特定成分の偏析が見られた. 一方, 内部のバルク領域では, このような秩序構造は示していない. 時間ステップの経過とともに, 内部におけるドメイン成長が起こる. これにより, 空気-ポリマー界面と固体壁の各近傍から膜の内部方向に層の成長が進み, 各ポリマーが界面近傍と膜内部の間で移行していく過程がとらえられた. また, この過程によって誘起されたと考えられる凹凸が自由界面上に観察できた.
  • 佐野 博成, 高山 森
    1999 年 56 巻 10 号 p. 684-692
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    透過型電子顕微鏡により高分子材料の微細構造を観察するための新たな試料作製方法を考案した. この方法は, 染色固定とイオンエッチングを組み合わせる方法であり, 従来は観察できなかった結晶ラメラの立体的構造や球晶構造のイメージを明確に知ることができる. また, 「Deeply Etched Section (DES) 法」と命名したこの手法はブレンド, アロイ, 複合材料の微細構造や三次元的構造の解明にも優れていることがわかった.
  • 佐野 博成, 松田 雅敏, 佐藤 寛樹, 野村 孝夫
    1999 年 56 巻 10 号 p. 693-701
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン (PP) と各種のエチレンーα-オレフィン共重合ゴムをブレンドした試料のせん断下における相溶解とその後の相分離挙動を光学顕微鏡と電子顕微鏡により研究した. その結果, 射出成形機内の高せん断下では相溶解が進んでいったん均一化し, 射出後せん断がゼロになり, その時点からスピノーダル分解が起こり, 共連続構造が形成することがわかった. また, その相分離速度はPPとエチレンーα-オレフィン共重合ゴムの一次構造に依存することが明らかになった.
  • 松田 秀夫, 吉田 信貴, 上原 宏樹, 山延 健, 甲本 忠史
    1999 年 56 巻 10 号 p. 702-708
    発行日: 1999/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレン・パウダー試料を透過型電子顕微鏡 (TEM) 観察するために, ガラス繊維布のバスケットを用いた四酸化ルテニウム染色後に薄切を行った. この方法により, 分子量分布の異なる高密度ポリエチレン (HDPE) および直鎖状低密度ポリエチレン (LLDPE) の3種の単結晶試料において, ラメラ・モルホロジーを横方向から観察することができた. これらを平面像と比較した結果, 今回用いた染色法によってTEM観察を行うと, 単結晶ラメラの積層状態がより定量的に議論できることがわかった. 分子量分布の広いHDPEおよびLLDPEでは, 多数のラメラの積層が観察され, 一方, 分子量分布の狭いHDPEでは単層ラメラが観察されるというモルホロジーの違いが明確になった. 今回用いた電子染色法は従来法に比べ, 1度の染色でTEM観察用試料作製が行えるという点で簡便であり, TEM像内でのコントラストが向上するという利点もある. 以上, 本方法は, 単結晶パウダー試料においても, ラメラ断面の直接観察が行える点で有用な方法であることがわかった.
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