高分子論文集
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75 巻, 3 号
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特集論文=高分子分析I
素描
総合論文
  • 東海林 竜也, 坪井 泰之
    2018 年 75 巻 3 号 p. 243-253
    発行日: 2018/05/25
    公開日: 2018/05/25
    [早期公開] 公開日: 2018/04/04
    ジャーナル フリー
    溶液中を分散する鎖状高分子やナノ粒子のラマン分光情報を選択的に取得できれば,高分子の構造や物性をより精密に評価できるであろう.これに対し,光の電磁気学的作用である光圧を利用すると高分子を捕まえ,顕微分光学的手法により高分子構造を分析できる.筆者らは,この光ピンセット・顕微ラマン分光法を用いて,相分離により形成された温度応答性高分子リッチドメイン中の高分子濃度を見積ることに成功した.さらに,光圧により形成した高分子リッチドメイン中に,溶液中に微量に溶解する有機分子を抽出・検出する分析手法を開発した.本報では,代表的な温度応答性高分子であるpoly(N-isopropylacrylamide) (PNIPAM)の光捕捉挙動とそのメカニズム,および高分子リッチドメインの高分子濃度決定手法を中心に述べるとともに,光捕捉したPNIPAM分子集合体への蛍光色素分子の抽出・検出法についても述べる.
  • 寺尾 憲, 蒋 昕悦, 領木 研之, 長谷川 博一
    2018 年 75 巻 3 号 p. 254-264
    発行日: 2018/05/25
    公開日: 2018/05/25
    [早期公開] 公開日: 2018/04/04
    ジャーナル フリー
    近年の放射光技術の進展に伴い,従来の光散乱法では測定が困難であった低温・高粘性率溶媒などの条件でも,小角X線散乱法により高分子希薄溶液物性を高精度に決定できるようになってきた.この手法は,高分子の剛直性がとくに重要になる比較的分子量が低い領域における環状・分岐高分子の分子形態決定にも重要な役割を果たす.本報では前者の特殊条件下での線状高分子の測定例として,広い温度範囲にわたるポリスチレンの特性比,低温でサーモクロミズム現象を示すポリシランの分子形態と分子間相互作用の温度変化,そしてレオロジー測定に適したイオン液体などの高粘性液体中における多糖類の分子形態の決定について,その手法とともに紹介する.さらに,後者の非線状鎖の例として剛直な環状多糖誘導体,星形鎖,そして櫛形構造をもつ高分子電解質–棒状ペプチド複合体の分子形態の決定についてまとめる.
    Editor's pick

原著論文
  • 石田 崇人, 北垣 亮馬
    2018 年 75 巻 3 号 p. 265-274
    発行日: 2018/05/25
    公開日: 2018/05/25
    [早期公開] 公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー
    建築材料用ウレタン塗膜を低湿度環境で試料表面温度を変化させた環境で紫外線照射試験を行い,暴露による化学結合変化をFT-IR,ラマン分光で,弾性係数変化を超音波パルス法で測定し,それらの光劣化メカニズムについて議論した.この系では共役二重結合連鎖が有効に形成されず,黄変は目視で確認できなかったが,黄変につながる物質の変性が生じていることがラマン分光法の結果から示唆された.また,著名な劣化反応のNorrish反応は温度依存,光-Fries反応は温度非依存の傾向を示した.さらに,暴露による凝集状態変化に関与する指標(メチレン基とメチル基の吸光度比)を抽出し,弾性係数変化との関連を議論した結果,暴露初期においてはその指標である程度弾性係数の変化を説明できるが,暴露が十分進んだ系においては指標のみで弾性係数変化を議論することは困難であった.
  • 松浦 一喜, 松田 靖弘, 田坂 茂
    2018 年 75 巻 3 号 p. 275-279
    発行日: 2018/05/25
    公開日: 2018/05/25
    [早期公開] 公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー
    シンジオタクチックポリメチルメタクリレート(st-PMMA)はトルエンなどの溶媒やit-PMMAと錯体結晶を形成するが,通常,単独では非晶となる.本研究では,st-PMMAに対し,テトラヒドロフランを溶媒とし,溶媒揮発時に形成する構造とガラス転移温度よりも十分に高温で加熱し液体状態としてから冷却することにより形成する非晶構造およびアルミナナノ粒子界面で形成する非晶構造を検討した.その結果,コンフォメーションの異なる二つの非晶構造(非晶I型,非晶II型)が存在し,アルミナナノ粒子界面では成膜時のコンフォメーションが保存される.また,この非晶II型は,溶融させることで非晶I型へと変化することがわかった.
  • 永井 義隆, 神谷 嘉美, 本多 貴之
    2018 年 75 巻 3 号 p. 280-289
    発行日: 2018/05/25
    公開日: 2018/05/25
    [早期公開] 公開日: 2018/04/10
    ジャーナル フリー
    電子付録
    本報では,炭素同素体が高分子材料の熱分解に与える影響の解明の一助とすべく,ポリスチレン(PS)およびポリエチレン(PE)に対して種々の炭素同素体共存下にて熱分解–ガスクロマトグラフィー/質量分析法(Py-GC/MS)による測定を行った.また,それらの熱分解物に着目して通常の熱分解との比較を行った.多層カーボンナノチューブ(MWCNT)共存下において,PSおよびPEともにMWCNTの質量の増加に伴って,熱分解物の組成変化が顕著になることが確認された.また,MWCNT,単層カーボンナノチューブ,グラフェンナノプレートレットおよび松煙共存下での試料の熱分解物の組成変化を比較すると,すべてにおいて同様の傾向がみられた.また,炭素同素体共存下では,PSおよびPEに共通して末端二重結合を有する熱分解物のさらなる分解が確認された.
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