高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
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68 巻, 12 号
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総合論文
  • 出口 哲生
    2011 年 68 巻 12 号 p. 767-772
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    ジャーナル フリー
    希薄溶液中の環状高分子の回転半径に関する最近の理論的研究を紹介する.溶液中の環状高分子のトポロジーは合成される際に決定され,熱ゆらぎのもとで一定である.したがって,環状高分子の空間配置を理論的に表すためには,単なるランダム力だけではなく,トポロジーが一定であるという拘束条件を課す必要がある.ここで環状高分子のトポロジーは数学の結び目で表される.溶液の温度が θ 温度に近いとき,トポロジー効果は顕著となり,環状高分子の回転半径はトポロジー条件の存在しないランダム力だけの模型の場合と比較して大きな値となり,トポロジー的膨張を示す.数値シミュレーションに基づいて,良溶媒の場合にはトポロジー効果を現象論的に理解することができる.溶液の温度が対応する線形高分子鎖の θ 温度の場合,環状高分子鎖のスケーリング的振舞いは新しい様相を示し,新しい臨界現象の可能性が示唆される.
  • 圓藤 紀代司
    2011 年 68 巻 12 号 p. 773-781
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    ジャーナル フリー
    環状ジスルフィドの開始剤不在下における開環重合により高分子量のポリマーが生成した.得られたポリマーの NMR 解析から末端基の存在は認められず,ESI-MS から環状ポリマーの生成が確認された.生成ポリマーの熱的性質,機械的性質および異種環状ポリマーの存在下に行われた環状ジスルフィドの重合から空間的に束縛されたポリマーであるカテナンの生成が示唆された.また,モノマーに二つの環状ジスルフィド基をもつものと環状ジスルフィドの共重合から架橋構造を有するポリマーが得られた.さらに,環状ジスルフィドの重合から得られたポリマーは形状記憶特性を示した.弾性回復試験から環状ジスルフィドから得られたポリマーはエラストマーとしての性質を示した.
  • 山本 拓矢, 手塚 育志
    2011 年 68 巻 12 号 p. 782-794
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    ジャーナル フリー
    「かたち」からはじめる高分子設計に関する幾何学的基礎から合成化学プロセスの構築,さらに新機能創出をめざす「高分子トポロジー化学(Topological Polymer Chemistry)」がめざましい進展をみせている.本報では,やわらかい「ひも」状の高分子セグメントで組み立てられる「かたち(トポロジー)」の自由度に着目した,単環状および多環状構造高分子トポロジーの新規合成プロセスの開発,さらにこの成果をふまえた,高分子の「かたち」に基づくトポロジー効果によって創出される物理・化学・生物学的なブレークスルー機能・特性を探索する筆者らの最近の研究成果を報告する.
一般論文
  • 杉野 寛佳, 河合 英敏, 藤原 憲秀, 鈴木 孝紀
    2011 年 68 巻 12 号 p. 795-803
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    ジャーナル フリー
    イミン架橋型擬ロタキサンは,軸分子となるヒドリンダセンジホルミル体とジアミノマクロサイクル間のイミン結合形成によって構築される.このイミン架橋型擬ロタキサンは,中性および塩基性条件下においては脱スレッドしないため,さまざまな誘導化が可能である.本研究では,このイミン架橋型擬ロタキサンを軸部分で複数個連結したイミン架橋型オリゴ擬ロタキサンの構築を鍵反応として,イミン架橋型/水素結合型ロタキサン間スイッチング特性をもつオリゴロタキサンを創出した.イミン架橋型オリゴロタキサンは,イミン架橋型擬ロタキサンの軸末端を水素結合部位となるトリエチレングリコールエーテル鎖により連結してオリゴマー化した後,末端を封鎖することにより得られた.トリフルオロ酢酸を酸触媒とするイミン結合の加水分解により,いずれのオリゴロタキサンにおいても水素結合型ロタキサンへ独占的に変換されることが確認された.また,この加水分解溶液を加熱することによりイミン架橋型ロタキサンが再生し,温度変化によって環の位置が制御されるイミン架橋型/水素結合型間スイッチングが達成された.
  • 平山 尚美, 津留崎 恭一, 出口 哲生
    2011 年 68 巻 12 号 p. 804-810
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    ジャーナル フリー
    線状高分子のシータ温度(θl)上における,希薄環状高分子溶液の第二ビリアル係数 A2l)について議論する.θl 温度での環状高分子は,排除体積が見かけ上消失するが,トポロジー効果によって A2l)は正となる.理論的には,2 本の理想環状鎖がトポロジー的にからみ合う確率(からみ目確率 Plink)によって A2l)を計算することができる.最近,筆者らは,2 本の閉じたランダムウオーク(ランダムポリゴン:RP)どうしの Plink(R)を高精度なシミュレーションによって求め,さらにシミュレーション結果に良く合う Plink(R)のフィッティング式を提唱した.ここで,R は RP の重心間距離である.また,次の論文では,RP の任意の鎖長 N で有効な Plink の拡張フィッテング式を与えた.一方,高野らは高純度な環状ポリスチレン(PS)を合成し,A2l)の分子量 Mw 依存性を調べた.本研究では,この拡張フィッティング式を用いて計算した A2N 依存性と高野らの実験結果とを比較する.この結果,両者は定性的に一致し,実験で得られた A2l)が 2 体 RP のトポロジー効果から説明できることがわかった.しかし,Mw が大きい領域では実験値よりも理論値の方が大きくなり,定量的な説明には,3 体 RP のトポロジー効果などさらに複雑な要因も考慮する必要があると考えられる.
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