線状高分子のシータ温度(θ
l)上における,希薄環状高分子溶液の第二ビリアル係数
A2(θ
l)について議論する.θ
l 温度での環状高分子は,排除体積が見かけ上消失するが,トポロジー効果によって
A2(θ
l)は正となる.理論的には,2 本の理想環状鎖がトポロジー的にからみ合う確率(からみ目確率
Plink)によって
A2(θ
l)を計算することができる.最近,筆者らは,2 本の閉じたランダムウオーク(ランダムポリゴン:RP)どうしの
Plink(
R)を高精度なシミュレーションによって求め,さらにシミュレーション結果に良く合う
Plink(
R)のフィッティング式を提唱した.ここで,
R は RP の重心間距離である.また,次の論文では,RP の任意の鎖長
N で有効な
Plink の拡張フィッテング式を与えた.一方,高野らは高純度な環状ポリスチレン(PS)を合成し,
A2(θ
l)の分子量
Mw 依存性を調べた.本研究では,この拡張フィッティング式を用いて計算した
A2 の
N 依存性と高野らの実験結果とを比較する.この結果,両者は定性的に一致し,実験で得られた
A2(θ
l)が 2 体 RP のトポロジー効果から説明できることがわかった.しかし,
Mw が大きい領域では実験値よりも理論値の方が大きくなり,定量的な説明には,3 体 RP のトポロジー効果などさらに複雑な要因も考慮する必要があると考えられる.
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