高分子論文集
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71 巻, 4 号
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総説
  • 松本 和也, 宮田 隆志
    2014 年 71 巻 4 号 p. 125-142
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    刺激応答性ゲルは,温度やpHなどの外部環境変化に応答して体積変化を示すことから医療分野や環境分野に利用できるスマートマテリアルとして注目を集めている.最近では,疾病などのシグナルとなる生体分子を認識して体積変化する刺激応答性ゲル(生体分子応答性ゲル)も報告されるようになり,ドラッグデリバリーシステムや診断システムなどを構築するためのスマートバイオマテリアルとしての利用が期待されている.このような生体分子応答性ゲルを創製するためには,標的生体分子に対する分子認識とそれによってネットワーク構造変化する応答機能とを連携させなければならない.そこで,これまでは生体分子認識による高分子網目の親水性・疎水性の変化や荷電状態の変化に基づいて生体分子応答性を示すゲルが報告されてきた.最近では,可逆的に結合解離する分子複合体をゲル内の動的架橋点として導入することにより生体分子応答性ゲルが合成されており,タンパク質や糖類をはじめとしたさまざまな標的生体分子に応答するゲルの設計が試みられている.本報では,抗体の抗原認識能などの生体分子機能を利用することによりデザインされた生体分子応答性ゲルについて,国内外の関連研究とともに筆者らの研究を概説する.
一般論文
  • 浪越 毅, 橋本 保, 牧野 祐介, 奥永 陵樹, 漆﨑 美智遠, 阪口 壽一
    2014 年 71 巻 4 号 p. 143-148
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    ジビニルエーテルの酢酸付加体(1)とEt1.5AlCl1.5を組合せた開始剤を用い,酢酸エチルの存在下,トルエン中,0℃の重合条件下で合成したリビングポリ(2-アダマンチルビニルエーテル)[ポリ(2-AdVE)]の成長末端変換反応を停止剤に水を用いて行い,アルデヒド末端テレケリックポリ(2-AdVE) (Polymer 1)を合成した.さらに,そのアルデヒド末端をNaBH4により還元してヒドロキシ末端テレケリックポリ(2-AdVE) (Polymer 2)を合成した.得られたPolymer 2は,分子量と分子量分布が制御され(サンプルI:Mn=1,500,Mw/Mn=1.47;サンプルII:Mn=3,200,Mw/Mn=1.48),1H NMRによる分析によりPolymer 1の末端アルデヒドが定量的にヒドロキシ基に変換されていることがわかった.またPolymer 2のヒドロキシ基のアセチル化およびウレタン化反応による,定量的な末端基変換反応が可能であった.
  • 小野 皓章, 藤原 広匡, 西村 伸
    2014 年 71 巻 4 号 p. 149-158
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    NBR分子鎖の運動性の不均一性を支配する要因を検討するためアクリロニトリル(AN)の平均連鎖長がほぼ1で,AN組成比が異なり架橋点間分子量(Mc)が同等な試料およびAN組成比が等しくMcの異なる試料について,パルス 1H NMRによりT2測定を行った.これらの試料は異なるT2をもつ3種の構造で構成されることが判明した.未加硫NBRの再沈殿前後の結果から,T2が最も長い成分はNBRに含まれる不純物に相当すると判断した.Mcの異なる加硫NBRのT2およびその 1H比をMcと比較し,加硫前後のT2およびその 1H比をブタジエンモノマーの平均連鎖長(LnBU)と比較した.その結果,加硫NBRのT2およびその 1H比はMcの影響よりもLnBUの影響を大きく受けることがわかった.以上より30℃における加硫NBRの分子鎖の運動性の不均一性は未加硫NBRのLnBUにより支配され,加硫の影響は小さいと結論した.
  • 中島 江梨香, 上野 智永, 市野 良一, 武田 邦彦
    2014 年 71 巻 4 号 p. 159-168
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    高分子材料の欠点である燃焼性を克服するために,高分子材料の熱分解と燃焼性について研究を行ってきた.高分子化合物の熱分解は,主鎖のランダムな分解,あるいは高分子鎖の末端で三量体などの化合物を生成する場合,解重合が起きる場合がある.本報では,ランダム開裂とともに末端の特定部位からの開裂が同時に起こる,ポリプロピレンとポリスチレンについて熱分解と燃焼性の関係性を研究した.熱分解生成物ばかりではなく,高分子材料の分子量が大きな影響を与えることを見いだした.分子量の違いによって燃焼状態が異なり,分子量の高い試料と低い試料では熱分解後の分子量分布の変化が異なること,特定の燃焼条件下ではある特定の分子量において燃焼しないということが明らかになった.ポリオレフィン類およびポリスチレンのように社会で大量に使用されているプラスチックにおいて,構造的に燃焼しないものが発見されたことは今後安心安全な社会の進展に大きく寄与する.
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