近年,天然多糖類であるアルギン酸やキトサンなどにタンパク質やペプチドなどを修飾した,組織工学用の材料の設計が注目されている.アルギン酸-カルシウムヒドロゲルは,分解時に多量に放出されるカルシウムイオンの影響により細胞毒性を示すことから,組織工学用足場材料としては使用範囲が限定される.そこで,カルシウムイオンをはじめとする 2 価の金属イオンを用いないアルギン酸ヒドロゲルが設計できれば,汎用性の高いアルギン酸ヒドロゲルの構築が可能となる.
本報では,β-シートペプチド(FEFK)
n; n=2, 3, 4, 5 をアルギン酸のカルボキシル基に化学修飾することでペプチド間の相互作用を架橋点にしたヒドロゲルの創出を試みた結果について報告する.架橋点となる β-シートペプチド[(FEFK)
n; n=2, 3, 4, 5]を Fmoc 固相法により手動で合成し,円二色性(CD)と赤外分光法(FT-IR)により二次構造の解析を行った結果,どの鎖長のペプチドも β-シート構造を形成していることが明らかになった.β-シートペプチドを修飾したアルギン酸を用いてゲル化を試みたところ,ペプチド鎖長が n=4, 5 のペプチドのみゲルを形成した.
そこで,ペプチドを修飾したアルギン酸の自己組織化の能力を水晶振動子微小重量測定法(QCM)により評価したところ,ペプチド鎖長が n=4, 5 の時のみ自己組織化が認められた.これらのことから,β-シートペプチドを架橋点に利用したアルギン酸ヒドロゲルの設計が可能となった.
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