高分子論文集
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56 巻, 9 号
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  • 大河原 義明, 永井 一清, 仲川 勤
    1999 年 56 巻 9 号 p. 533-541
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, ヘキサフルオロブチルメタクリレート (n-C4F6) を収着させたポリ [1- (トリメチルシリル) -1-プロピン] (PMSP) 膜への紫外線照射およびγ線照射による改質膜の気体透過性・分離性およびその膜構造の相違についての研究を行った. 紫外線照射改質膜, γ線照射改質膜のいずれにおいても, 気体透過性は低下するものの気体分離性は向上した. 紫外線照射改質膜ではn-C4F6モノマーの膜内含有量を調節することによりこれらの透過性・分離性を制御することが可能であった. また, これらの膜は膜厚方向に非対称な構造を有していた. 一方, γ線照射改質膜は膜厚方向に均一な構造を有し, 同程度のn-C4F6モノマー含有量であっても紫外線照射改質膜よりも高透過性・低分離性を示した. これらの相違は紫外線とγ線のエネルギー透過力による改質膜の構造の違いにより生じ, これらが透過性および分離性に大きく寄与しているものと考察した.
  • 近藤 順治, 大木 祐和, 久保 博, 高木 幹夫
    1999 年 56 巻 9 号 p. 542-549
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    二官能性開始剤である2,3-ジフェニル-1,3-ブタジェンーマグネシウム (DPB-Mg) 錯体により, 新たに2-ビニルピリジン (2-VP) のアニオン重合を試み, ヘキサメチルポスホルアミド (HMPA) の添加効果, 重合温度の影響, 溶媒の効果, およびリビング性などについて詳しく検討した. HMPAを加えない系では開始反応効率 (f) はテトラヒドロフラン (THF) で0.09, ベンゼン中で0.39であったが, 開始剤に対するHMPA添加量を増やすにつれて改善され, [HMPA] / [DPB-Mg] ≧1でf=0.8 (THF中), 1 (ベンゼン中) となった. この場合の重合は非常に速く, THF中で3分, ベンゼン中で15分以内に90%以上の高収率でポリマー [P (2-VP)] が得られた. 重合温度も重合性に鋭く影響し, 最適温度はTHF中で0℃, ベンゼン中では5℃であると認められた. 得られたポリマーの分子量単分散性は, Mw/Mn尺度で1.4 (THF中), 1.3 (ベンゼン中) であったが, この開始剤によって調製したリビングP (2-VP) は, 連鎖移動や末端の失活が認められず, 設計された分子量をもち単分散性のよいP (2-VP) の合成に適することがわかった.
  • 白浜 博幸, 田中 玲, 長澤 誠, 安田 源
    1999 年 56 巻 9 号 p. 550-556
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (L-ラクチド) [poly (L-LA)] の長所 (高融点, 良好な機械的特性) を維持しながら, その硬くてもろい性質や生分解性の緩慢さを改善するために, デプシペプチド/ラクトン/ラクチド三元共重合体の調製を行った. モノマーとしてL-3, DL-6-ジメチル-2, 5-モルホリンジオン (L-DMO, 環状デプシペプチド), ε-カプロラクトン (CL), およびL-ラクチド (L-LA) を用いた. オクチル酸スズ (II) 触媒を用いて合成されたL-DMO/CL/L-LA三元共重合体は比較的高収率 (60~70%) かつ高分子量 (Mn=80000~140000) であった. 1HNMRや熱的特性の解析から, これら三元共重合体はランダムコポリマーであることが判明した. 得られた共重合体はすべて融点 (Tm) が110℃以上の結晶性ポリマーであった. さらに, これら共重合体の機械的特性を測定した. 引張強度はCL含有量の増加に伴いpoly (L-LA) に比べ徐々に低下したが, CLユニットを20mol%以上含む共重合体に対する破断時の伸びは非常に高い値となり, 柔軟性が大きく改善されていた. プロティナーゼK酵素による三元共重合体の分解性は, L-DMO含有量がわずか5mol%でもpoly (L-LA) に比べ大きく向上していた. これらの結果から, 本研究で用いたコポリマーのうちL-DMO/CL/L-LA (=5: 21: 74) 三元共重合体が (熱的および機械的) 特性と生分解性とのバランスが最もとれていると考えられる.
  • 平野 徹治, 藤井 孝昌, 天野 良太郎, 鬼村 謙二郎, 堤 宏守, 大石 勉
    1999 年 56 巻 9 号 p. 557-564
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリアミド6プレポリマーと4, 4′-アゾビス-4-シアノペンタン酸クロリドとから合成された2種類の分子量 (PA6ini-1, Mn=5×103; PA6ini-2, Mn=13×103) のポリアミド6ラジカル開始剤 (PA6ini) の固相および溶液中でのアゾ基分解挙動を, それぞれDSCおよびUV測定で検討した. 溶液中での分解は, ギ酸および2, 2, 2-トリフルオロエタノール (TFE) を溶媒として用いた. 固相でのアゾ基分解は, 4, 4′-アゾビス-4-シアノペンタン酸 (ACPA) よりも低温で開始し, また, ピークトップ温度はPA6iniの分子量が大きくなると低温ヘシフトした. 固相でのアゾ基分解活性化エネルギーは, PA6ini-1が102.3kJmol-1, 一方, PA6ini-2が88.9kJmol-1であった. ACPAおよびPA6iniの溶液中での分解速度は, 溶媒の影響を受けることが示唆された. また, TFE中でのPA6ini-2の分解速度は濃度の影響を受けた. しかし, アゾ基分解の活性化エネルギーに溶媒の影響は観察されなかった. また, 固相と溶液中のアゾ基分解活性化エネルギーはほぼ同じ値となった.
  • 清水 研一, 猪股 克弘, 野瀬 卓平
    1999 年 56 巻 9 号 p. 565-570
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリスチレンがシリンダー状にミクロ相分離するポリスチレンーエチレンプロピレン交互共重合体-ポリスチレントリブロック共重合体のせん断誘起配向挙動にせん断速度が及ぼす効果について, 小角X線散乱法を用いて検討した. 試料は直径1mm, 管長10mmの円管から220℃で, 6.08s-1から6080s1の範囲の異なる壁面せん断速度 (γ) で押し出すことにより作製した. γ=6.08s-1で作製した試料においては, ポリスチレンシリンダードメインは試料の外周部では流動方向に対して平行に配向しているが, 中心に近づくに従って流動方向の先端側を中心軸に向けるように傾き, この配向が試料中心部まで存在する配向挙動を示した. γ=6080s-1の試料においても同様に, シリンダードメインは外周部では流動方向に平行に配向し, 中心に近づくに従って流動方向に対して傾く配向挙動を示すが, 中心部では配向方向のランダムな領域が存在すると推測された. 流動方向に平行に配向したシリンダードメインが形成する六方格子は, (1010) 面が試料の側面に平行になるように面配向していた. このような面配向は, 壁面せん断速度が大きくなるに従って, 外周部から試料内部にまで, より広範囲に及ぶことがわかった.
  • 稲波 久雄, 斉藤 光子, 望月 雅文, 明畠 高司, 長谷川 富喜子
    1999 年 56 巻 9 号 p. 571-574
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンの部分燃焼熱分解ガス化過程において, 流動媒体である多孔質アルミナ粒子に保持される炭素質物質の質量分析を行い平均分子量を測定するとともに, 測定条件, イオン化方法, 試料溶媒について検討した. 炭素質物質はポリエチレンが開裂し300~1000の分子量分布をもつオリゴマーであった. 多孔板型ガス分散器を使用した場合, 分子量が300~600で単峰性の分布が得られ, 一方, 逆円錐型を使用した場合, 分子量が300~1000でブロードな分布が得られた. ポリマー由来のオリゴマーを質量分析する際, 溶媒としてトルエンを選択し, FD-MASS (FDMS) による測定を行うのが適当であると考えられる.
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